大区画圃場整備を契機とした力強い担い手育成への挑戦 活動期間 : 平成 16 年 ~ 継続中 射水市大門地域は10a 区画の未整備な湿田が多かったため 順次大区画圃場整備事業に取り組まれてきた 農林振興センターでは 圃場整備後の栽培管理 大区画ほ場のメリットを生かすため 組織化の合意形成及び法人設立を支援するとともに 低コスト生産や複合化を指導してきた その結果 法人は9 組織 1 経営体当たりの面積は56haと担い手育成が図られるとともに 直播面積は2 倍 複合部門導入組織は11となり 省力 低コスト生産 経営の複合化が経営体に定着した 具体的な成果 1 大区画圃場を使いこなす担い手の育成 複数の集落営農組織の合併による広域法人設立による経営体質強化 (H15 H24) 11 経営体当たり面積 48ha 56ha ( 参考 :1 集落平均面積 27ha) 2 水稲主要 3 作業時間 65% 削減 3 法人数 ( 広域法人 )1 組織 (1) 9 組織 (3) 図 1 1ha 大型圃場でのコンバイン 2 台による収穫作業 図 2 主要 3 作業の作業時間比較 (A 営農 トラクタ 田植機 コンハ イン ) 2 圃場整備後の主穀作の安定化 水稲の品種選定や土壌分析による施肥設計により 安定的な収量品質を確保 緑肥作物の大豆増収 (3 割 up) への効果実証により ヘアリーベッチ面積は71haに拡大 3 省力生産と稲作依存から脱却 水稲直播面積の面積拡大 (H15 H24) 1 直播面積 42ha 87ha 2 乾田 V 溝直播 0ha 2ha 園芸作物導入経営体 3 組織 11 組織 普及指導員の活動 担い手の育成 平成 16~24 年 話し合いによる組織化の合意形成支援 と経営基盤の強化を図るため 法人化を誘導平成 17~20 年 既存の 3 集落営農組織 ( 協業 任意 ) の一層の作業性向上とオペレーター ( 専従 者 ) 確保等のため 3 組織の合併による 100ha 規模の農業生産法人設立を支援 主穀作の安定化 平成 16~24 年 圃場整備直後の水稲作付に際し 短稈品種の選定や土壌分析による施肥設計や生育状況に応じた肥培管理を指導 大豆の収量品質向上や土づくりのため 緑肥作物のヘアリーベッチ作付を推進 省力生産と複合化 平成 23~24 年 従来からの湛水直播に加え 作業 作期分散が図れる乾田 V 溝直播の取組みの提案と栽培管理指導平成 16~24 年 農産物価格の低迷や余剰労力活用のため こまつなやえだまめ等の園芸作物導入ときめ細やかな栽培指導 普及指導員だからできたこと 農業者との信頼関係が築かれていたからこそ 法人化や新規作物の導入に理解が得られた 試験場や他県の技術を活用することで 新技術 新品目の提案 導入拡大ができた
1. 取組の背景射水市大門地域は 10a 区画の未整備な湿田が多く 営農上の大きな障害となっていた 昭和 62 年に下条地区で県内初の大区画圃場整備が実施されたのを皮切りに 順次圃場整備が進んでいる 大区画圃場整備事業が現在の 経営体育成基盤整備事業 になってからは 農地集積に加えて法人化等の担い手育成を促進しており 普及の関わりが重要になってきた このようなことから 集落営農組織設立や法人設立の支援を一層強化するとともに 大区画圃場整備に対応した効率の良い作業体系 省力 低コスト栽培技術の提案や複合化支援など 経営力の強い経営体育成をねらいに活動を展開している 2. 活動内容 ( 詳細 ) (1) 大区画圃場を使いこなす担い手の育成 [ 平成 17~20 年 ] 平成 15 年に 7 つの組織が合併した 150ha 規模の広域法人が設立した それを参考に 既存の協業組織があった串田地区の 3 集落で 平成 17 年から施工された経営体育成基盤整備事業 ( 大区画化 ) の実施を契機に 一層の作業性向上にに加えて オペレーター ( 専従者 ) 確保など将 図 1 レーザ - レベラを活用した均平作業 来に向け持続的に発展しうる営農体制の構築のため 3 組織の合併による 100ha 規模の農業生産法人設立を支援した 組織設立及び法人化に当たっては アンケート調査の実施 集落検討会の開催 法人化のメリット等の説明 経営試算の提示など 合意形成に向けた取組を行った (2) 大区画圃場整備後の主穀作生産の安定化 [ 平成 16~24 年 ] 水稲圃場整備後 1 作目は乾土効果により窒素発現量が多くなるため 水稲では短稈品種作付の誘導 土壌分析による施肥設計の提案や実証圃の設置による肥培管理指導を行うなど 安定的な栽培に向けた支援を行なってきた 大豆大豆の収量品質向上と土づくりのため 緑肥作物導入試験圃を設置した結果 収量の 3 割増加およびしわ粒減少が確認され 大豆前のヘアリーベッチ作付を指導した (3) 省力生産と稲作依存農業からの脱却 [ 平成 23~24 年 ] 直播大区画圃場の効率性を活かすため直播栽培を推進した 従来からの湛水直播に加え 秋季代かきによる作業分散や鳥害対策などの効果が確認されている乾田 V 溝直播栽培の実証圃を設置し 生育状況を確認しながらきめ細かく
肥培管理を指導した [ 平成 16~24 年 ] 園芸作物の導入による経営の複合化将来の経営の一端を支える主力品目の一つとなるよう 組織化された労働力を活かした園芸作物の導入による複合化を推進している 品目選定 ( こまつな えだまめ ブロッコリー キャベツなど ) や作付けローテーションを含めたきめ細かな栽培技術指導を行うとともに JA と連携して販路確保などの定着化支援を行っている (4) 土地改良部門との連携 [ 平成 23~24 年 ] 所内で会議録等を農業普及担当と土地改良事業実施担当の双方で回覧するなど情報共有や連携を密に行ない 事業の進捗状況を確認しながら 法人化推進等に取組んできている また 土地改良事業実施担当に大麦 大豆や野菜栽培上の排水対策などの重要性を圃場整備時に提言するなど 連携しながら効率的な条件整備を進めている 3. 具体的な成果 ( 詳細 ) (1) 大区画圃場を使いこなす担い手の育成 3 つの協業組織の合併による 100ha 規模の農業生産法人 A 営農組合が平成 20 年 2 月に設立された 広域法人設立後は大区画圃場での大型機械導入に加 え 組織的なオペレーター育成により 水稲作業時間は 65% 短縮された 集落を越えた広域営農体制は 今後の推進方向の一つのモデルと評価され ている また 今年中に 70ha 規模の農業生産法人が設立し 次年度以降も 2 つの法人設立が計画されている 60 56 10 48 8 7.2 40 6 20 4 2.5 2 0 0 H15 H24 施工前 施工後 面積 (ha) 図 2 1 経営体当たりの経営規模の比較 図 3 圃場整備前後の水稲作業時間の比較 (A 営農 トラクタ 田植機 コンハ イン作業 ) (2) 大区画圃場整備後の主穀作の安定化水稲は 圃場整備後初年目でも倒伏がほとんどなく 射水市内の他地域と同レベルの収量 品質を確保している また 大豆では ヘアリーベッチ作付けの効果が確認され ヘアリーベッチの面積が前年の 2 倍に拡大する経営体があるなど 大門地域のヘアリーベッチ面積は 71ha に拡大している 作業時間 (hr/10a)
図 4 1ha 大型圃場でのコンバイン 2 台による収穫作業 図 5 鋤込前のヘアリーベッチ (3) 省力生産と稲作依存からの脱却大門地域の水稲直播栽培の面積は平成 24 年に 87ha と射水市内の直播面積の 4 割を占めている 今年 2ha 区画大圃場で行った乾田 V 溝直播は 収量が 540kg/10a 確保できたことから 次年度は 2 法人で 5ha 規模に拡大して実施する予定である また 園芸作物を導入した経営体は 11 組織と複合化も定着してきており 射水市の特産である えだまめ の産地形成に大いに貢献している 図 6 2ha 圃場での乾田 V 溝直播播種作業 図 7 えだまめ収穫機械による実演会 4. 農家等からの評価 コメント (( 農 )B 営農組合代表理事 C 氏 ) 大区画圃場整備は平成 13 年に完成し 平成 16 年に農事組合法人を設立した 圃場整備直後の栽培管理や法人設立の支援などを受けてきた また 今年初めて乾田 V 溝直播栽培を行ったが 丁寧に管理方法を指導してもらい満足のいく結果が得られた 来年は 3 筆 4ha で行う予定をしている 5. 普及指導員のコメント ( 高岡農林振興センター射水班長尾島輝佳 主任沼田史子 ) 先人の普及員が支援した集落営農組織を法人化するなど 時代に適応した活動を継続している 今年取り組んだ 2ha 区画大圃場での乾田 V 溝直播
は初めての試みであり 指導する立場としても緊張が続いたが 先進事例や試験研究機関との連携により 高い単収と品質が確保できた また 広域合併法人の設立は スケールメリットの発揮や後継者の確保育成のため 今後とも一層進めていく必要があると考えている 6. 現状 今後の展開等大区画圃場整備を契機に 生産の組織化 法人化など着実に地域農業を担う経営体の体質強化が図られている 今後 新たに大区画圃場整備事業が大門地域で 3 集落 216ha で取り組まれ 合わせて法人の設立も予定されており 今後も将来を見据えた営農組織の広域連携や合併法人化など 一層の経営基盤の強化 安定化を図ることや 経営の一端を担う複合部門の拡大に 引き続き支援を行っていく必要がある