1 単元名土地のつくりと変化 2 授業づくりの視点 第 6 学年 1 組理科学習指導案 指導者 子どもの興味 関心の実態本学級の子どもたちは, 登下校時に造成地の様子はよく目にし, 色の違う土地の様子を見たり, 雨が降った時には, 土砂が流れていく様子を見たりしている 学校では, 休み時間, 運動場やくまっ子の森でサッカーやおにごっこ 基地遊びをした経験をもっており, 晴れの日や雨の日によって土の状態が変わることを知っている このように, 土地の表面の状態には目を向けている様子が伺える しかし, 自分たちが生活している地面の下の様子についての会話は全く聞かれず, 意識して生活していないといえる 子どもの能力の実態子どもたちは, 植物の栽培活動やくまっ子の森での遊び活動, 土だんご作りの経験から, 土地は主に土でできているととらえている さらに海や山に行った経験から, 砂浜やごつごつした岩が見られることも知っている しかし, 土地の様子や構成物の違いを意識している子どもはほとんどいない つまり, 多くの子どもたちは, 土地は土や砂, 小石や大きな岩などからできていると捉えているが, 土地が複数の構成物が層をなし, 地層として広範囲に堆積していることや, 地層が火山の噴火 地震などの自然の大きな力によって時間をかけて変化するとはとらえてはいない 学び方については, 問題解決の方法を理解し, 見通しをもって観察 実験などを行い, その結果をもとに, 自分の予想と照らして考察することができるようになってきた 一方, 自然の事物 現象についての要因や規則性 関係を推論しながら調べる力は十分ではない 教材の分析本単元のねらいは, 土地のつくりや土地のでき方について興味 関心をもって追究する活動を通して土地のつくりと変化を推論する能力を育てるとともに, それらについての理解を図り, 土地のつくりと変化についての見方や考え方をもつことができるようにすることである 土地は子どもたちにとって身近な自然であるにもかかわらず, その土地のつくりや変化に目を向けている子どもはほとんどいない このような子どもたちが, 土地は礫 砂 泥 火山灰などが幾重にも層状重なって地層をつくっていたり, 広い地域を連ねるように広がっていたりすることを知る本単元は, 時間的な長さや空間的な広がりという新しい視点で身近な自然を見直すという上で意義深い また, 北九州の自然の財産である若松北海岸を取り上げて学習することは, 自然の変化のスケールの大きさを実感することができるとともに, 郷土の自然を愛する心情を育てるという点で大変意義深い また, 見つけた事実を関係付けて推論しながら追究する力をはぐくむことができるという点からも大変意義深い 本単元の系統本学級の子どもたちは, 第 5 学年 流れる水の働き の単元において, 川の水の流れの速さや, 土地の変化の様子や, 水底の石の様子に違いがあることを学習し, 流れる水の働きと土地の変化の関係についての見方を学んでいる 本単元では, 身の回りの土地を調べ, 地層のでき方や地層の広がりをとらえるようにしたり, 土地の変化について自然の作用と関係付けながら調べ, 土地は火山の噴火や地震などによって変化することをとらえるようにしたりして, その獲得した内容 事実を関係付けながら, 土地のつくりと変化についての見方や考え方をもつことができるようにする さらに, 中学校の 火山と地震 地震の重なりと過去の様子 の学習へとつながり, 地球レベルでの過去から現在の連続性へと土地のつくりと変化についての見方を一層深めていくことになる 3 単元の問題 土地のつくりや変化を調べよう 写真やデジタル教材を見て, 気づいたことを話し合おう しま模様に見える土地は, どのようなものからできているのか調べよう 地層はどのようにしてできたのか調べよう 土地は火山活動や地震によってどのように変化するか調べよう 若松北海岸の地層のでき方や変化の仕方を考え, 伝えよう
4 単元の目標 自然事象への関心 意欲 態度 身の回りの土地やその中に含まれる物, 土地の変化, 土地の変化と自然災害との関係などに興味 関心をもち, 自ら土地のつくりと変化の様子を調べようとする 土地をつくったり変化させたりする自然の力の大きさを感じ, 生活している地域の特性を見直そうとする 科学的な思考 表現 土地の様子や構成物などから, 土地のつくりと変化のきまりについて予想や仮説をもち, 推論しながら追究し, 表現することができる 土地のつくりや変化の様子について数地点の土地の構成物を関係付けてしらべ, 自ら調べた結果と予想を照らし合わせて推論し, 自分の考えを表現することができる 観察 実験の技能 ボーリング資料や映像資料などを活用したり, 安全に野外観察を行ったりしながら, 土地のつくりと変化の様子について工夫して調べることができる 土地のつくりと変化の様子を調べ, その過程や結果を記録することができる 自然事象についての知識 理解 土地は, 礫, 砂, 粘土, 火山灰及び岩石からできており, 層をつくって広がっているものがあることを理解する 地層は, 流れる水の働きや火山の噴火によってでき, 化石が含まれているものがあることを理解する 土地は, 火山の噴火や地震によって変化することを理解する 5 展開計画と評価規準 ( 総時数 15 時間 ) 追究過程 問 題 把 握 主な学習活動評価規準 1 土地をつくっているもの < 第 1 時 > 写真やデジタル教材を基に土地の様子について話し合い, 学習問題を作る < 第 2 時 > 地域のボーリング資料を基に縞模様に見える土地はどのようなものからできているのか調べる 縞模様の広がりについて粘土模型や二地点のボーリング資料を基に調べる < 第 4 時 > GT の話を聞いたり, 標本を見たりして化石について調べる 土地の縞模様や地層のでき方 変化及び, 自分たちの住んでいる地面の下の様子に興味 関心をもって自ら調べようとしている ( 関 意 態 ) ボーリング資料や映像資料を活用して, 土地の縞模様は, 礫, 砂, 粘土など層の構成物が異なることによることを理解している ( 知識 理解 ) 地層の粘土模型や二地点のボーリング資料から, 地層の広がりについて考察し, 自分の考えを持つことができている ( 思考 表現 ) 化石にはいろいろな種類があることや化石から生きていたときの環境を知ることができることを理解している ( 知識 理解 ) 2 < 第 1 時 > 地層に含まれている物を観察し, 地層のでき方について話し合う < 第 2 時 > 流れる水の働きによる地層のでき方について調べる 地層に化石やまるみをもった礫が含まれていることから, 地層のでき方について仮説をもち推論しながら追究し, 表現している ( 思考 表現 ) モデル実験で地層のでき方を調べ, その過程や結果を記録している ( 技能 )
問 題 追 究 総合 生活化 地層のでき方 3 土地の変化 4 身近な地域の地層 岩石のでき方や岩石の種類について調べる < 第 4 時 > いろいろな地層が見られるわけについて考える 海底でできた地層が地上で見られるわけについて考える < 第 5 時 > 火山の働きでできた地層について調べる < 第 1 時 > 火山活動や地震によって, 土地がどのように変化するのかを話し合う < 第 2 時 > 火山活動による土地の変化について調べる 地震による土地の変化について調べる < 第 1 2 時 > 若松北海岸の地層の様子を観察し, わかったこと 考えたことを書く 若松北海岸はどのようにしてできたのかについて話し合う 本時 岩石には, 礫岩や砂岩, 泥岩があることを理解している ( 知識 理解 ) 川の浸食作用や土地の隆起などでできた変形した地層などの資料から, なぜこのような地層ができたのか, 自分なりに考えを持ち, 表現することができている ( 思考 表現 ) 火山の噴火によってできた礫や火山灰の鉱物などの観察を通して, 地層には, 火山の働きでできているものがあることを理解している ( 知識 理解 ) 土地は火山活動によって変化することに興味 関心をもち, その変化の様子について自ら調べようとしている ( 関心 意欲 態度 ) デジタル教材や図書資料などの資料を活用して火山活動による土地の変化の様子を調べている ( 技能 ) デジタル教材や図書資料などの資料を活用して地震による土地の変化の様子を調べている ( 技能 ) 自分たちの住んでいる若松北海岸の地層を意欲的に見学し, その特徴に気づいている ( 関心 意欲 態度 ) 調べたいくつかの事実を関係付けて, 若松北海岸の地層のでき方を推論し, 自分の考えを表現している ( 思考 表現 ) 6 本単元における具体的手立て (1) 知的好奇心を喚起し, 見方や考え方を深める単元構成や事象提示の工夫子どもが, 日々生活している地面の下の不思議を実感し知的好奇心を喚起しながら, 土地のつくりや変化の見方や考え方を深めることができるように, 土地はどのようにしてできて, どのように変化してきたのだろう という子どもの思いを核として, 土地の構成物から土地のでき方, 自然の作用との関係付けから土地の変化へと追究意欲が高まるように学習展開を工夫する 具体的には, 問題把握の段階では, 写真やデジタル教材 自分たちが住んでいる土地のボーリング資料 化石の実物などを効果的に提示したり, ミュージアムティーチャーから話を聞いたりして, 土地をつくっているものについて興味 関心をもって追究することができるようにする 問題追究の段階では, 岩石の実物に触れたりモデル実験をしたり, デジタル教材や図書資料を見たりして調べ, 土地のでき方や変化について推論することができるようにする 総合生活化の段階では, 北九州の自然の財産である若松北海岸の地層を実際に見に行き, そのでき方 変化の仕方をそれまでの学習を生かして推論し, 伝え合う学習へと単元を展開する
第 6 学年理科単元 土地のつくりと変化 土地のつくりや変化についての見方や考え方 (2) 言語活動モデルを活用した段階的な指導結果の考察から結論に至るまでの過程において, 子どもが友だちとの対話を通して, 土地のでき方と変化の仕方について推論しやすいように, 言語活動モデルに基づき, 以下のように言語活動プランを作成し活用する まず, 前時に若松北海岸の地層のできたわけについて自分の仮説を書く場を設定する 事実確認の段階では, 若松北海岸で見つけたこと わかったことを事実として確認する 関係付けの段階では, グループ内で自分の考えを発表し, 友だちの意見を取り入れながら, グループの考えとして言葉カードを活用してホワイトボードにまとめるようにする その際, 化石 傾斜 などの地層の事実と 流れる水の働き 地震 などの既習内容を関係付けて考え, 根拠をもって地層のでき方 変化の仕方の推論ができるようにする 意味付けの段階では, それぞれのグループの発表の共通点を話し合ったり,GT の話を聞いたりして, 土地のつくりや変化には, 太古の昔からの自然の作用が関わっているという見方や考え方へと深めることができるようにする
(3) 子どもの思考の深まりを見取る判定基準と個に応じた指導の手立て個に応じた適切な支援を行うために, 本時に行う科学的な思考 表現の評価については, 評価規準をもとに, 学習活動に即した具体的な判断の基準を設定する 判断の基準については, 子どもの記述例を想定して, 評価を行う 評価の場面 < 思考 表現 > 書く 描く活動 2 の場面において学習ノートにまとめを記述する場面 B と評価した例 貝の化石が見られたので, 海底であったと考える おおむね満足 (B) 調べたいくつかの事実を関係付けて, 若松北海岸の地層のでき方を推論し, 自分の考えを表現している ( 記述分析 発言分析 ) 評価事例 判断規準及び方法 評価のポイント :B 自分が調べた地層の事実 貝の化石 から, その化石が生きていた場所 海底 を推論している 評価のポイント :A 地層の変化の原因を自分の考え ( 海底 隆起 ) に, 他のグループの考え ( 流れる水の働き 地震 ) を加味して推論している 十分満足 (A) 調べたいくつかの事実を関係付けて考え, 他のグループの意見を加味して若松北海岸のでき方を推論し, 自分の考えを表現している ( 記述分析 発言分析 ) A と評価した例 流れる水の働きで海底に堆積していった土地が地震によって, 隆起した 指導の手だて :C 自分の考えを書けないでいる子どもには, 自分の調べた若松北海岸の事実 ( 例 : 貝の化石 ) とグループで話し合った変化の根拠 ( 隆起 ) を地層の写真や板書 ( 絵図 言葉 ) などで視覚的に確認させ, 事実と変化の根拠をつないで若松北海岸のでき方をノートに書くよう支援する
7 本時の学習平成 24 年 11 月 16 日 ( 金 ) 5 校時於 6 年 1 組教室 (1) 主眼若松北海岸の地層がどのようにしてできたのかについて話し合う活動を通して, いくつかのの事実を関係付けて地層のでき方 変化の仕方を推論し, 表現することができるようにする (2) 準備学習ノート, 学びの足跡, 若松北海岸の写真, 地層の構成物の実物 (3) 展開 学習活動と子どもの意識 教師の関わり ( ) と評価 ( ) 1 前時までの学習を振り返り, 本時のめあてを 学びの足跡を活用して, これまでの学習を振り返る 確認する ( めあて ) 若松北海岸の地層は, どのようにしてできたのだろうか 若松北海岸を見学して見つけたこと 気づいたこと ( 貝の化石や地層の傾斜など ) を確認する 2 若松北海岸の地層のでき方についてグループで話し合う ( 予想されるグループの考えの例 ) 元は, 海底だった しかし, 大きな力が働いて, 地面が押し上げられた その後, 打ち寄せる波に削られた 本来, 大きな粒から堆積するはずが, 小さい粒が下に堆積しているのは, 時代がちがうからだ 地層が斜めになっているのは, 地震が起きて, 土地が傾いた 最初に前時に書いた自分の考えを一人一人話すようにする その際, 根拠を明確にして話すことを確認する 話し合いがスムーズに進んでいるかに気をつけてグループを回り, 地層の写真と言葉カードを活用して, 意見を整理する助言を行う GT の太田さんにも, 各グループの話し合いを聞いて, 児童の考え方のよいところを見つけてもらうようにする ホワイトボードを使いながら話し合いを進めさせ, 絵や図 言葉を自由に書き込ませて表現させるようにする 子どもが友だちとの対話を通して, 土地のでき方と変化の仕方について推論しやすいように, 言語活動プランを活用し, 以下の順で対話を仕組む (1) 若松北海岸の地層の事実の確認 (2) いくつかの事実を関係付けた考察 ( 書く 描く 1) (3) 他のグループの発表を受けた地層のでき方 変化の仕方のまとめ ( 書く 描く 2) の順に対話を仕組む 3 話し合った結果を発表し, 話し合う 4 若松北海岸のでき方を推論し, まとめる グループで話し合った若松北海岸の地層のでき方 変化の仕方について, いくつかのグループに発表させ, 自分の考え方と比べて聞くように指示する 付け加えたい考えや, なるほどと思う考えを発表したりする場を設け, 友だちの考え方を理解できるようにする 若松北海岸のでき方を,6-1 の考えとしてまとめるよう, 指示する 他のグループの考えを取り入れてまとめようと声をかける 調べたいくつかの事実を関係付けて, 若松北海岸の地層のでき方を推論し, 自分の考えを表現している ( 思考 表現 )
6-1 の考え ( 例 ) 昔, 海だったところに流れる水の働きで土地がつもり, 地震が起きて土地が隆起して地層ができた 5 ゲストティーチャーの太田さんのお話を聞く 太田さんに児童の考え方を認めてもらうとともに, 若松北海岸の地層の特徴や, でき方 変化の仕方について, 話してもらうようにする 6 本時の学習を振り返り, 本単元のまとめをする 土地のでき方を自然の力って考えるのは楽しすごいな かったな 一枚ポートフォリオで自分の考えの変容や学び方を価値づけている振り返りを紹介し賞賛することで, 一人一人が本時及び今までの学習の価値を具体的に振り返ることができるようにする