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The TRC News, 201705-01 (May 2017) リチウムイオン 2 次電池用セパレータ開発動向 東レ株式会社フィルム研究所石原毅 要旨リチウムイオン 2 次電池において正極と負極を絶縁する目的でセパレータが使用されている セパレータの構造と安全性 / 充放電特性の関係を示すと共に セパレータの構造分析を通じた最新の開発状況を報告する ( 本稿は 2016 年 12 月 15 日に開催された弊社主催 第 2 回蓄電池ユーザーズミーティング での 特別講演を基に構成したものです ) 1. リチウムイオンバッテリー (LIB) の概要 1-1. 市場動向 LIB 市場に関する調査によると 2020 年には 高容量化が進んだ EV/PHEV のマーケット および民生用のマーケットがより高いエネルギー密度の分野で伸びると予測されている こうした高容量化の流れがある一方 出力特性を要求する HEV 用途もあり 高出力と高容量化の二つのトレンドがある 市場の規模から判断した場合 円筒とパウチの用途が EV/PHEV においては約 50% 以上 民生においては約 90% 以上のマーケットを占めるであろうと予想されており 我々もこうした用途を中心に電池の高容量化がさらに進んでいくと考え 高容量化に適した LIB セパレータの開発を進めている 1-2.LIB の構成とセパレータの機能セパレータは LIB の中で 負極と正極の間に挿入され使われている 図 1 に代表例として 円筒の電池を示す 通常の電池においては 電気絶縁性を担保するという最も基本的な能力を発揮する必要がある 同時に リチウムイオンがこのセパレータを通して移動することで電池が機能することから 短期的な出力特性のみならず 長期的な寿命で透過性を担保することが当然ながら必要となる 1 図 1 LIB 構造とセパレータの機能通常時の電池機能に加えて 異常時の安全性確保という点から 電池が異常になった場合に セパレータとして果たすべき機能が三つある 一つ目が 電池に機械的変形が加わった場合にも電極間の絶縁性を保つという 機械的強度 二つ目が 何らかの異常反応が起こって電池内に高温な条件が発生した場合 セパレータの穴が塞がり 電極間のリチウムイオンの流れを停止して安全に電池の機能を止める シャットダウン (SD) 機能 三つ目が リチウムイオンの流れを遮断した後 さらに電池内の温度が上がった場合においても電極間の短絡を防ぐという機能 溶融形状保持性 メルトダウン(MD) 特性 である 1-3.LIB セパレータの種類セパレータの主な作り方として 湿式法と乾式法がある ( 図 2)

図 2 代表的な LIB セパレータの特徴 引き伸ばされたフィブリルが発達し 厚み方向に真っすぐな孔 ( 直進孔 ) 構造が形成されている 乾式法が孔の開いている部分と開いていない部分が交互に並ぶような構造になっているのに対し 湿式法は 均一な構造が面内 断面に形成されているという特徴を有している 湿式法は乾式法と比べて 強度面に優れ 孔構造も緻密になっているので 非常時に孔が閉塞するシャットダウン機能も低温にて高速に働く 乾式は直進孔が存在することから 電池に組み込んだ際の抵抗値が低い特徴を持っており また 一軸延伸なので フィルムの幅方向に関して収縮しにくい長所を持つ 乾式法は樹脂だけで微多孔膜を作る方法で 一例として 一軸延伸によって作るプロセスを紹介する 溶融した樹脂をインフレーション法 ( チューブラー法 ) により 薄いフィルムを形成し これを切りながら巻き取って 原反を作る この原反を熱処理等で安定化させ 特殊な延伸条件下で一軸方向に延伸しながら開孔させ 製膜する方法である 一方 当社製品セパレータフィルム SETELA( セティーラ )( 詳細後述 ) は湿式延伸プロセスで作っている 先ず 原料となる樹脂と溶剤を溶融混錬し 板状シートを作製する 次に 本シートを延伸することで 微多孔を形成する その後 投入した溶媒を洗浄して除去し 乾燥 熱安定化を施した後 製品として巻き取るというプロセスである ( 図 3) 原料樹脂の組成 延伸 安定化条件により 物性をコントロールする 2. セパレータフィルム SETELA( セティーラ ) 当社製品 SETELA( セティーラ ) は世界初ポリエチレンゲル延伸微多孔膜で 図 4 左の AFM 像 (5μm ) に示す通り 繊維状のポリエチレンフィブリルで構成され 貫通孔でありながら微細なネットワークをつくっている点が特徴で 流量径で約 20~100nm サイズの均一な微細孔が開いている 不織布と似ている という指摘も多いが 一般的な不織布に比べるとフィブリル径が細く また延伸によってポリエチレンのフィブリルが形成されることから 不織布と違って強度面で著しく高いという特徴を持っている 厚みは 5~25μ m までの製品をラインナップしている 図 3 湿式延伸プロセス概要図 2 に SEM 断面写真を示す MD が長手 TD が幅 ZD が厚み方向である 乾式法については インフレーション法の特徴として 樹脂の間に長手方向に 2 図 4 ポリエチレン微多孔膜 セティーラ この膜をリチウムイオン電池用のセパレータとして用いた場合には先に述べた構造上の特徴が生かされ 優れた電池性能に寄与するだけでなく 電池の安全性 信頼性を担保するということで 以下の三つの特徴を

持つ 一つ目がシャットダウン特性 リチウムイオン電池の中で異常反応が起きた場合に熱暴走を抑止する機能として組み込まれている 二つ目がメルトダウン特性 これは 高温になった場合でも絶縁性を維持できる機能である 三つ目が 電池の中に用いられた場合に何らかの力がかかり変形した場合にも 電極間の絶縁性を維持することができる機械的強度を持つことである このような特徴を持つポリエチレン微多孔膜だが 商標名は SETELA( セティーラ ) と名付けている これは構造から考えて 分離機能と膜構造の二つの特徴があることからラテン語を用いて組み合わせた造語で SE は 離れた 分離する TELA は 織物 微細構造 の意味から取った SETELA の基となる技術は 1984 年ポリエチレンのゲル延伸による微多孔膜作製技術の開発に遡る 開発当時は分離膜として フィルタなどの用途開発を進め 7 年ほど用途探索および連続製膜技術開発を行っていたところ 1991 年に電池メーカーから LIB セパレータに使えないかという提案を受け 事業化にたどり着いた これが世界で初めて開発された LIB になり 初めて採用されたケースとなる 3. セパレータ物性による電池特性の改良 と 電池に組んだ場合の電解液の浸透速度が上がる傾向がある 一方 小孔径では 電池に使った場合にデンドライト (dendrite: 樹枝状結晶 ) の成長が防止され また破壊電圧が上がる特徴がある ( 図 6) 図 6 孔径制御によるセパレータ特性制御図 7 に 高出力化に関する孔径の影響を示す 穴径 ( 平均流量径 ) が大きくなる ( 約 1.7 倍 ) と気体透過性は良くなり ( 約 1.3 倍 ) ほぼ同等のインピーダンス ( 約 1.1 倍 ) を示す また 小孔径と大孔径を比べた場合 容量保持に関しては変わらないという結果が得られており リチウムイオンの拡散性に関しては 孔径の影響は小さく 曲路率という形状の複雑性によって支配されている 結論として 小孔径でも高出力化について対応可能と考えている 当社製品 SETELA( セティーラ ) について 図 5 に示す幾つかの観点からまとめたものを紹介する 図 7 電池出力特性に対する孔径の影響 図 5 セパレータ物性による電池特性の改良 3-1.LIB の高出力化 長寿命化当社の微多孔膜は 製法によって大孔径 ~ 中孔径 ~ 小孔径を作り分けることができる 孔径を大きくする 3 寿命に対する孔径の影響について 同じセパレータを用い サイクル試験により調べた結果を 図 8 に示す 横軸にサイクルの回数 縦軸に容量を取っており 400 サイクル後のインピーダンスを比較した場合 大孔径のサンプルにて劣化が進行した現象が見られた

図 8 細孔径の電池サイクル特性への影響小孔径にてサイクル特性が優れた一つの解釈として小孔径に比べ大孔径は電極とセパレータ界面の構造が不均一になり易く イオンの流れが不均一になり 流れやすいところにリチウムイオンが集中し この影響がサイクル後半に容量劣化という形で表れているのではないかと推測している 高容量化において今後予想される長寿命化の要望を受けて検討した結果を紹介する 電池容量を上げる方法は 電極量を増やす および 電極の種類を変えて高電圧化することにより容量を増やす方法がある 高電圧化の場合 セパレータが何らかの形でダメージを受ける可能性があり 新しい樹脂をポリエチレンに添加することにより 耐久性を向上させることを検討した ( 図 9) 算値 プロット ( 何れも相対値 ) において 縦軸の数字が大きいほどセパレータは劣化している 電池に用いられる通常の温度 電圧に比べて 厳しい条件にて劣化を加速させ 評価を行った 標準的なポリエチレン製セパレータについて 初期はそれほど変化せず ある時間から徐々に劣化が進む ( 積算容量値が増加する ) ことが確認された 耐酸化性樹脂を添加した 2 試料 ( 改良品 A B) について 立ち上がり時間が遅くなる効果が確認され この理由を明らかにするため 構造解析を実施した 解析に 顕微ラマン分光法を用いた 顕微ラマンは 顕微鏡にラマンを合体させたもので 図 10 の LiCoO 2 粒子実測例に示す通り 顕微鏡像とあわせて ミクロンサイズの XY 方向組成分布 ( 本例ではリチウム ) を明らかにすることができる また 試料ステージを Z ( 上下 ) 方向にずらせることで XYZ の 3 次元のマッピングもできる 図 10 ラマン分光法による二次元構造分析 図 9 耐酸化性樹脂添加による長寿命化検討トリクル充電試験 ( 自然放電した分をすぐに充電する ) によりセパレータに対する負荷をかけ続け 充電電流値 ( 電池性能が劣化すると増加 ) をモニターし 劣化状態を追跡した 図 9 の 時間 vs. 電圧 電流積 4 セパレータの表面 20μm 四方を分割し 顕微ラマン分光で検出された添加樹脂由来のピークとポリエチレンのピークの相対強度をマッピングした ( 図 11) 添加樹脂の濃度が高い部分を赤色で 濃度が低くなるのに従い 黄色 青色の順で表示している 改善効果大の改良品 A は 比較的濃度の高い赤い部分が多く目立ち 最も低くなっている部分が黄色にとどまっているのに対し 改善効果小の改良品 B は 赤い部分があるものの 濃度の低い青いゾーンが散在し 分布に違いがある 本マッピングをヒストグラム化すると 両改良品とも最も比率が多い最頻値は 0.6~0.7 のゾーンで変わらないが 改良品 B が最頻値を中心に均一に分布しているのに対し 改良品 A は最頻値よりも高濃度領域に偏って分布している 添加樹脂比率が 0.5~0.6 よ

りも高濃度側の比率を求めると改良品 A は約 85% 改良品 B は約 65% となり 改良品 A では添加された樹脂がセパレータの表層に高比率で均一に存在し 耐久性が改善されたと考えられる のような電極材料は充放電に伴って電極の体積膨張を伴う傾向がある セパレータに圧縮応力がかかることから セパレータの耐圧縮性検討として プレス試験による模擬実験を実施した ( 図 13) 改良 5μm 品において 80 1MPa で押し続けても膜厚はほぼ変化せず 耐圧縮性に優れることを確認した 図 11 顕微ラマン法によるセパレータ表面構造解析 3-2.LIB の高容量化図 12 は 12μm 以下の薄膜セパレータの突刺強度 ( 針状のもので押した際の破膜強度 ( 相対値 ) を示した 当社では膜厚 5~25μm をラインナップとして持っており これまでは 12μm が主流だったが 今後 電極を電池の中に多く入れたいという要望から 5μm のセパレータを求めるユーザーの方が増えると見込んでいる この様な背景の基 樹脂設計や延伸法を改良し 強度について従来品比 20~30%UP 9μm 品とほぼ同等の強度を 5μm 品で達成したというのが最近の進捗である 図 13 セパレータの耐圧特性について 4. 総括今後進む LIB の高出力化 長寿命化 高容量化 高安全化に寄与するセパレータ開発を進めていく ( 図 14) 図 14 総括 図 12 薄膜品による高強度化検討 また 高容量化を進めるに当たり 単位体積当たりの電気容量の大きい電極材料を用いる方法があり こ 5 高出力化と長寿命化に関しては 細孔の制御と樹脂設計の最適化でニーズに合わせた提案をしたいと考えている また 電池の高容量化手法として 単セル当たりの電極量を増やすというアプローチには高強度薄膜品の展開を進めている 本稿では省略したが 高安全化に関しては 積層化技術を用いた SD 温度の低温化及び MD 温度の高温化 二つのアプローチでより安全な電池システムへの提案を検討している

今回の発表でも幾つか 最新の分析手法を活用した開発例を示した ラマン分光法によりセパレータの構造解析を行い セパレータ表面構造と高寿命化の関係を明らかにすることができた また 断面 SEM によりセパレータの構造を可視化し 製造方法の違いによる構造 / 物性差を明らかにした 今後 東レリサーチセンターの最新分析手法等を活用し 次世代のセパレータ開発を進める 石原毅 ( いしはらたけし ) 東レ株式会社フィルム研究所 103-8666 東京都中央区日本橋室町 2-1-1 日本橋三井タワー 6