3. 自立的 持続的な復興 被災者支援活動の推進に向けた NPO 法人等の運営力強化方策の検討 3-1. 復興 被災者支援活動における工夫 ポイントの抽出 整理ヒアリング調査を行った全事例に関して 復興 被災者支援活動を行うNPO 法人等の活動に共通して見られる工夫やポイントについて 人材育成 広報 外部との連携 協力 を中心に 整理を行った 事例 No. は 2-1(2) ヒアリング調査対象の選定 (12 ページ ) を参照のこと (1) 人材育成 研修や OJT の実施等による 長期スパンでの人材の育成研修や講座の開催により 各団体のスタッフや 活動に参加するボランティアのスキルアップが図られている また 専門家や他のNPO 法人などとの交流を通じて 人材の育成に取り組む団体も見られる 事例 No. 具体的な工夫 ポイント パソコン操作等のスキルアップのための研修への参加により 長いスパンでスタ 4 ッフを育成していく方針としている 参加メンバー個人が有するネットワークを活用し テーマに応じた専門家を招聘 7 した活動を行ったり 他の NPO との連携を通じた活動により メンバーの育成を図っている 団体のメンバーが町内出身者であり 社団法人化以前より復興まちづくり推進員 8 として活動に取り組んでいたため 現場でノウハウを積み上げる OJT による人材育成につながっている ボランティア養成講座による育成や リーダー研修やスキルアップ講座の開催な 9 ど ボランティアのレベルに応じた人材育成を展開している 国内外から訪れるボランティアには防災や教育などの専門家や研究者が多く 交 15 流を通じてスタッフの人材育成を図っている (2) 広報 SNS やウェブサイト マスコミの活用による情報発信ポスターやチラシ 会報誌などの紙媒体に加え Facebook などの SNS やウェブサイトを通じた情報発信を行っている団体が多く見られた 加えて マスメディアへの情報提供や取材対応等 マスメディアの活用により 活動の状況や今後の取組 活動の理念などの周知に積極的に取り組んでいることが分かる 事例 No. 具体的な工夫 ポイント Facebook などの SNS やウェブサイト マンスリーサポーター用の会報誌 ( 半年に 3 1 回発行 ) の発行や活動報告会の開催等により 活動の状況や理念を発信し 活動の見える化を実施 4 ポスター チラシなどの費用のあまりかからない方法や 講演会や研修会を通じ 105
事例 No. 具体的な工夫 ポイントた情報発信に加え ホームページの立ち上げや SNS の活用を検討している また マスコミからの取材申し入れは全て対応している フリーペーパーの発行や Facebook などの SNS といった多様な手段により広報を実 7 施 Web デザイナーが専門家として参加するなど 積極的に展開している 団体が発行する毎月のニュースレターや単発のイベント情報等を 市内の避難者に対し松戸市が発送するなど 市の協力により 発信力が大きく向上している 12 松戸市の記者クラブとの交流にも努めており 月に2 回程記者発表を行い 積極的に団体の活動を発信している 13 ウェブサイト テレビや新聞の取材等マスメディアを活用した活動状況の発信 (3) 外部との連携 協力 既存のネットワークの活用による 多様な主体との連携 協力地域住民や事業者 NPOやボランティア団体 社会福祉協議会や青年会議所などとの連携 協力により事業を進めている団体が多くみられる その連携 協力は 震災以前から活動を行う中で形成されていたネットワークによるものが多く また そのネットワークにより 地域外から学識経験者を招聘したり 他地域との交流会を実施するなど 地域内外を問わず連携 協力が図られていることが伺える 事例 No. 具体的な工夫 ポイント 教室の企画や講師の派遣をNPO 法人等と連携して実施するなど 幅広い人脈を 1 活用して活動を進めている かねてより市民活動促進のための中間支援組織や担い手育成の必要性を提案するとともに 社会福祉協議会や地域づくり団体 NPO ボランティア等との大規模な交流会を開催するなど 地域のリーダーとなる団体等との交流を以前より図 4 っていたことから 強いリーダーシップを発揮 宮城県内のNPOの活動拠点である みやぎNPOプラザ の運営等を通して 多様な人材のネットワークを有していたことから 市民活動プラザや市民活動フォーラム設立 運営にあたり適切な学識経験者を招くことが出来た 教育関係者との意見交換を行う等 教育委員会等とのネットワークが構築されて 10 いる また 県内各地の学校教育コーディネーターの交流会の開催により 学校教育コーディネーターの緩やかなつながりが構築されている 震災前から行政や青年会議所等の協力を得て地域づくりの支援を行っていたこと 13 から 市町村の協力が得やすい土台があった 地域住民の信頼や 活動を通じて協力を申し出る事業者も多くなり 必要な資機 14 材の提供や寄附等も増えている 106
3-2. 課題の抽出 整理 アンケート ヒアリングを通じて明らかとなった 復興 被災者支援活動を行う NPO 法人等 が自立的 持続的に活動を継続していくにあたっての課題を抽出 整理した (1) 活動体制の強化 人材育成 NPO 等で復興 被災者支援に携わる人材は 事務能力やコミュニケーション能力に加え 活動に対する思いや志を有しているかが重要である 研修等で培えるものではない思いや志を持った人材の確保 活動体制の整備及び人材の育成が喫緊かつ将来を見据えての課題となっている また ニーズに応じた活動の展開や事業拡大を支える 専門的スキルを有するマネジメント人材の確保 育成が多くの団体において共通の課題となっている 加えて 東日本大震災の風化が進んでおり ボランティア人数が年々減少している中 活動に賛同 参加するボランティアの確保も課題となっている (2) 活動資金の確保行政からの委託費や助成金の活用 イベント参加料や寄附金などの収入により事業を実施している団体が多いが 今後の事業の継続が困難と捉えている団体は少なくないことから 活動資金の確保が喫緊の課題となっている アンケート結果では 収入を増やす手段として 行政からの委託費 補助金 助成金 事業の収入 寄附金 会費収入 を検討している団体が多くなっている 行政からの要請にとどまらず 行政への働きかけも含めた協働による事業の実施を進めるとともに 自主事業の展開による活動資金の確保が必要となっている また 災害から時間が経つにつれて 被災地に対する国民の意識が風化し 寄附の減少につながっている中 自主事業の実施 拡大による自主財源の確立に加え 活動への理解をきっかけとした会員の加入による会費収入や寄附金の増加に向けて 広報活動の積極的展開を図ることが重要である (3) 法人格の取得ボランティア団体 任意団体等として活動する団体については 対外的な信頼性の確保の上でも 寄附金を集める上でも NPO 法人を取得し 更には寄附者が税制上の特例措置を受けられる認定 NPO 法人を目指すことが 今後の活動の継続 発展に向けて重要である (4) 地域の担い手の育成災害後に構築したコミュニティ等において 災害復興住宅への移転や仮設団地からの転居などにより 自治会役員のなり手が不足しており 今後の継続した活動が困難となる状況が見られている また 地域での活動を担う人材が不足している状況もあることから 担い手の確保 育成が急務となっている 107
3-3. 自立的 持続的な復興 被災者支援活動の推進に向けた NPO 法人等の運営力強 化方策の検討 アンケート ヒアリング調査の結果を踏まえ 自立的 持続的な復興 被災者支援活動の推進 に向けた NPO 法人等の運営力強化方策の検討を行った (1) 復興 被災者支援に取り組むNPO 法人等の運営力強化に向けた方向性 1) マネジメント人材の確保 育成による活動の活性化 復興 被災者支援活動を進めていくうえでは ステークホルダー間の意見調整等を担う人材や NPO 法人等の活動と地域をむすび 地域のさまざまな担い手の参画を促進し 活動を展開していくマネジメントを担う人材の存在が重要となる 活動の中心的な役割を担うことができる人材や 多くのNPO 法人等で課題となっている人材の確保 育成は急務となっており 加えて 人材の確保 育成には長期的な視点が必要であることから このような人材の掘り起しや育成に関する支援を行っていくことも優先度の高い事項だと考える 2) 資金調達の円滑化による活動の自立性 持続性の向上 復興 被災者支援活動に取り組むNPO 法人等にとって活動資金の確保が常に大きな課題となっていることが考えられる 一方 NPO 法人等の中には 行政との協働事業化や自主事業等の展開によって活動資金を確保している事例も見られる 活動資金を自前で確保できるNPO 法人等の育成を図ることで 自立性 持続性の高い活動を促進するとともに NPO 法人等の資金調達に関する支援の充実を図ることが重要である 3)NPO 法人等に対する信頼性の向上と理解の促進 NPO 法人等の活動に関して 積極的に情報発信していくことが重要となる また NPO 法人等の数を増加させていくことで NPO 法人等の活動に対する認識と理解を深めるとともに N PO 法人等自身の信頼性や自立性を高めていくことが重要である 4) 多様な担い手の拡大と協働の取組の推進 復興 被災者支援の活動を継続 発展させていくためには 活動の担い手となるNPO 法人等をさらに拡充させていくことが重要である また 外部との連携 協力が活動の推進に大きく寄与していることから 協働の取組を促進させていくための支援が重要である 108
(2) 具体的な取組の提案 前述した課題や支援の方向性に対応する具体的な取組 方策等について 整理を行った 1 多様な担い手間や地域との調整を担う人材の確保 育成 1) に対応 2 資金調達を支援する仕組みづくり 2) に対応 マネジメント人材の育成 寄附への動機づけを促進させる取組 新規事業開拓への支援 活動を通して賛同者を増やす資金調達の仕組みづくり 3NPO 法人等の信頼性や自立性の向上 3) に対応 認定 NPO 法人等の普及促進と育成 NPO 法人等の活動状況等の透明性 の確保 活動の担い手の拡大 4 多様な担い手による復興 被災者支援活動の推進 4) に対応 様々な担い手の連携 協働を推進する行政の体制づくり 5 各分野や地域の中核的な役割を担う NPO 法人等の育成 1) に対応 各分野や地域の中核的な役割を担う NPO 法人等によるノウハウ移転 ビジネスモデル化などの支援 NPO 法人等による情報発信 6 取組の情報発信 3) に対応 行政による情報発信 1 多様な担い手間や地域との調整を担うマネジメント人材の確保 育成ステークホルダー間の情報共有や建設的な議論の促進 考え方や方向性の共有といった役割を担う人材や NPO 法人等と地域をつなぎ 活動に対する地域住民等の関心を高めて参加を促進させるとともに 活動を担う人材の確保 育成にも取り組むことができる専門的なスキルを有するマネジメント人材の育成が重要であり 人材交流を通じてノウハウの共有等を図っていくことも重要になると考える マネジメント人材の育成地域に存在するコミュニティや 震災後に新たに形成されたコミュニティにおいて活動を行っていくにあたっては 地域の住民や関係者等の活動への参加 協力を促していくため 地域のことを熟知し 地域住民との信頼関係を構築することのできる人材が必要となる このような人材の確保 育成を進めるとともに 人材交流等を通じてノウハウの共有を図ることも重要である 109
2 資金調達を支援する仕組みづくり円滑な資金調達を実現するためには 新規事業開拓等による事業収入の拡大 寄附による収入の拡大 活動への理解促進及び賛同者による支援の確保等の基金の活用等が考えられる そのためのノウハウをNPO 法人等が習得できるような取組を実施することで NPO 法人等の資金調達のスキル ノウハウの向上を図っていくことが重要である 寄附への動機づけを促進させる取組東日本大震災の発生から時が経つにつれて 人々の意識の中で風化が進み 寄附の減少等が現れ始めている 今後 NPO 法人等が活動のための資金を確保していく上で 市民や企業等からの寄附は重要な資源であることから 寄附に対する関心を高めるとともに 十分な情報提供を行い 寄附者のインセンティブを高める環境を整備することが重要である 新規事業開拓への支援アンケート調査では 活動資金の収入増の手段として 独自事業の収入 を挙げるNPO 法人等が全体の3 割であり 独自事業の開拓や拡充を重視しているNPO 法人等が多いことがうかがえる 事業開拓に関する実践的な研修等の学びの機会の充実 事業開拓に関するハンズオン支援が可能な団体の紹介 人材派遣等の充実といった具体的な支援を図っていくことが重要である 活動を通して賛同者を増やす資金調達の仕組みづくり各団体の活動の恩恵を受ける地域では 活動に対する理解や賛同を得やすいと考えられる 活動を実施する地域の住民や事業者等から寄附や出資を受けることで 活動を継続していく方向性も考えられる 3NPO 法人等の信頼性や自立性の向上 NPO 法人等の信頼性が高まることによって 様々な参加の拡大 ( 活動への参加 寄附 NP O 法人等への会員登録 行政や企業との協働促進等 ) につながることが期待されることから N PO 法人等の取得促進に向けた様々な取組や支援を行っていくことが重要である 認定 NPO 法人等の普及促進と育成 NPO 法人等の認定を受けることで 寄附者が税制優遇措置を受けられるようになり 寄附者の増加や社会的信用 認知度が高まることが期待できることから NPO 法人等の取得に向けた支援に取り組んでいくことが重要である NPO 法人等の活動状況等の透明性の確保地域住民やその他の関係主体等の参加を促進させていくためには 効果的な情報発信による活動等の周知に加えて NPO 法人等自身の信頼性を向上させていくことが重要となる また 行政や企業等との協働を進める場合や NPO 法人等への寄附を募る場合においても NPO 法人等自身やその活動への信頼を高めておくことが必要である そのため NPO 法人等自身も信頼性の向上に向けて 団体ホームページ等で事業報告 会計報告を随時公開したり 会計基準に準拠した会計を行うことを遵守する等の取組によって NP O 法人等活動の透明性を高めていく取組が重要となる また 協働を考える企業や融資を検討する金融機関 寄附を考える市民等がその可否を判断できる適切な判断材料として NPO 法人等の 理念 ( 行動指針等 ) ビション 等を提供していくことが重要である 110
4 多様な担い手による復興 被災者支援活動の推進以前はNPO 法人等単独で取り組んでいた活動が 事業を契機として多様な主体と協働で取り組むことで 事業の効果の拡大や効率化につながったり より質の高いサービスの提供につながったりするなど 様々な効果がみられた 協働はNPO 法人等と行政 企業等との新たな事業展開の可能性も秘めていることから 既存の協働の体制に加え より多くの担い手が参加する取組を展開していくことが重要である 活動の担い手の拡大活動に参加する関係主体がそれぞれの役割を担い それらの相乗効果により活動の拡充につながった事例が多かったことから 活動の中心を担うNPO 法人等をはじめ 関係主体を含めた全体の成長につながったと考えられる このような状況を捉えて 育ちつつあるNPO 法人等に対する支援の充実を図り 更なる育成を促すとともに 任意の組織として地域で熱心に活動を続けている団体等のNPO 法人化に向けた支援の充実にも取り組み 担い手となるNPO 法人等の拡大を図っていくことが重要である さらに地域課題の解決に多様な担い手の協働が有効であったことから NPO 法人等と企業のマッチングやNPO 法人等と自治会 商店街等との協働を進めるなど より多くの担い手が参加できるような取組が必要である 様々な担い手の連携事業を通じた様々な関係主体との協働の推進によって目に見える成果につながり 信頼関係が構築されたことで その後の取組の継続 発展に対する支援が得られるケースが多く見られた 今後も 地域の活動主体と行政 企業 NPO 法人等 大学等が互いの信頼関係を保ちながら取組を進めていくことで 協働の活性化につながっていくと考えられる 協働を推進する行政の体制づくり協働を推進するためには 行政やNPO 法人等が単独で単発的に取組を行うのではなく 協働の取組の実施を促進する事業の枠組みや 継続的に協働を推進できる体制づくりが必要である 5 各分野や地域の中核的な役割を担うNPO 法人等の育成今回のヒアリング調査の結果から NPO 法人等自身のもつ特殊なノウハウや 事業スキーム等を活用して他地域へ展開するような中核的な役割を担い始めているNPO 法人等がいくつか見られたことから 自立的 持続的な復興 被災者支援活動の推進に向けて中核的な役割を担うN PO 法人等を育てていくことが望まれる 各分野や地域の中核的な役割を担うNPO 法人等によるノウハウ移転 ビジネスモデル化などの支援自立的 持続的な復興 被災者支援活動を支援していくためには NPO 法人等自身が自らビジネスモデルを構築していくことが重要である 支援活動を自ら展開しながら それぞれ活動分野や地域においてビジネスモデルを構築していくことで 中核的な役割も担うことが可能なNP O 法人等も育ってきており このようなNPO 法人等の専門分野における豊富な経験と高いスキルやノウハウを他のNPO 法人等へ伝える取組 ( 事例集など支援内容を分かりやすく整理した情報の提供 ノウハウ移転やビジネスモデル構築に資する交流会の開催等 ) が必要である 111
報の提供 ノウハウ移転やビジネスモデル構築に資する交流会の開催等 ) が必要である 6 取組の情報発信震災以降 各地で復興 被災者支援活動を行ってきているが 多岐にわたる活動に対する認識や理解が進んでいるとは言えない状況にある また 震災の風化が進む中 人々の関心も薄まる傾向にある 今後も 取組を継続的かつ効果的に情報発信することで 活動の意義や内容について理解が深まるようにするとともに 地域や関係主体の参加を促進させていくことが重要である NPO 法人等による情報発信各団体において 事業での成果や今後の取組の状況を 継続的に自身のホームページやマスコミ等を通じて情報発信していくとともに イベントの開催等を通じて活動の周知に取り組んでいくことが重要である また 近年利用が急速に広まっているフェイスブック ツイッター等の SNS を活用し 団体や活動の情報発信を図っていくことも効果的な方法の一つだと考えられる 行政による情報発信先進的な活動を行っているNPO 法人等については 国や地方公共団体がその活動の内容や特徴 活動を進める上での工夫やポイント等について とりまとめ 優良事例としてホームページ上等で情報発信 周知を図っていくことが必要である 112
平成 26 年度 東日本大震災の被災地における NPO 法人等による 復興 被災者支援の推進に関する調査 平成 27 年 3 月発行 内閣府委託調査 調査実施 : 株式会社日本能率協会総合研究所東京都港区芝公園三丁目 1 番 22 号 TEL 03-3578-7500( 代表 ) FAX 03-3432-1837