Microsoft Word _メアド

Similar documents
資料1 受援計画策定ガイドラインの構成イメージ

id5-通信局.indd

2 1 図 2 連邦政府と地方との役割分担 ( 出典 :FEMA) 2 2. 米国の危機管理システムの変遷 1950 Disaster Relief Act Civil Defense Act National Flood Insurance Act

アンケート調査の概要 目的東南海 南海地震発生時の業務継続について 四国内の各市町村における取り組み状況や課題等を把握し 今後の地域防災力の強化に資することを目的としてアンケート調査を実施 実施時期平成 21 年 11 月 回答数 徳島県 24 市町村 香川県 17 市町 愛媛県 20 市町 高知県

第 1 章実施計画の適用について 1. 実施計画の位置づけ (1) この 南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画 に基づく宮崎県実施計画 ( 以下 実施計画 という ) は 南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法 ( 平成 14 年法律第 92 号 以下 特措法 と

reference3

02一般災害対策編-第3章.indd

<323091E693F18FCD208E96914F959C8BBB82CC8EE F DF82E98FE382C582CC8AEE967B934982C88D6C82A695FB2D322E786477>

(溶け込み)大阪事務所BCP【実施要領】

「南九州から南西諸島における総合的防災研究の推進と地域防災体制の構築」報告書

宮城県総合防災情報システム(MIDORI)


目次 はじめに P3 1 災害 緊急の範囲 P3 2 時間と場所を考慮した対応の必要性 P3 3 時間ごとの対応 P4 4 場所ごとの対応 P5 5 デジタルサイネージの提供コンテンツ P6 6 緊急時を意識したデジタルサイネージシステム P6 7 情報の切替 復帰の条件 P7 8 緊急運用体制 P

先行的評価の対象とするユースケース 整理中. 災害対応に関するユースケース. 健康に関するユースケース. 移動に関するユースケース. 教育に関するユースケース. 小売 物流に関するユースケース 6. 製造 ( 提供した製品の保守を含む ) に関するユースケース 7. 農業に関するユースケース 8.

東京事務所版 BCP 実施要領目次応急頁 < 第 1グループ> 直ちに実施する業務 1 事務所における死傷者の救護や搬送 応急救護を行う一時的な救護スペースの設置 運営 備蓄の設置 医療機関への搬送 1 2 事務所に緊急避難してきた県民や旅行者等への対応 避難 一次避難スペースの運営 指定避難所への

<4D F736F F F696E74202D E9197BF E63189F18DD08A518BD98B7D8E9691D491CE8F888AD68C578FC892A D89EF8B636E2E B8CDD8AB B83685D>

<ハード対策の実態 > また ハード対策についてみると 防災設備として必要性が高いとされている非常用電源 電話不通時の代替通信機能 燃料備蓄が整備されている 道の駅 は 宮城など3 県内 57 駅のうち それぞれ45.6%(26 駅 ) 22.8%(13 駅 ) 17.5%(10 駅 ) といずれも

1 首都直下地震の概要想定震度分布 (23 区を中心として震度 6 強の想定 ) 首都直下地震 想定震度分布 出典 : 中央防災会議首都直下地震対策検討ワーキンググループ 首都直下地震の被害想定と対策について ( 最終報告 ) ( 平成 25 年 12 月 ) 2

資料1 第3回災害救助に関する実務検討会における意見に対する回答

( 社会福祉施設用作成例 ) (4) 施設管理者は, 緊急時連絡網により職員に連絡を取りましょう (5) 施設管理者は, 入所者の人数や, 避難に必要な車両や資機材等を確認し, 人員の派遣等が必要な場合は, 市 ( 町 ) 災害対策本部に要請してください (6) 避難先で使用する物資, 資機材等を準

病院機構災害医療センター ( 以下 災害医療センター という ) に DMAT 事務局を設置する 都道府県は 通常時に DMAT 運用計画の策定 医療機関等との協定の締結等を行い 災害時に 計画に基づき DMAT を運用し 活動に必要な支援 ( 情報収集 連絡 調整 人員又は物資の提供等 ) を行う

二戸市地域防災計画 ( 震災編 ) の一部修正の新旧対照表現行改正案 目次 ( 震災編 ) 目次 ( 震災編 ) 第 1 章総則 第 1 章総則 第 1 節 計画の目的 351 第 2 節 計画の性格 352 第 2 節の2 災害時における個人情報の取り扱い 352 第 3 節 防災関係機関の責務及

資料 2-3 超大規模防火対象物等における自衛消防活動に係る訓練の充実強化方策 ( 案 ) 平成 30 年 10 月 31 日 事務局

平成18年度標準調査票

奈良県ライフライン 情報共有発信マニュアル 第 3.3 版 平成 24 年 7 月 奈良県ライフライン防災対策連絡会

< F2D E968CCC8DD08A5191CE8DF495D281458D718BF38DD0>

3 歯科医療 ( 救護 ) 対策 管内の歯科医療機関の所在地等のリスト整理 緊急連絡網整備 管内の災害拠点病院 救護病院等の緊急時連絡先の確認 歯科関連医薬品の整備 ( 含そう剤等 ) 自治会 住民への情報伝達方法の確認 病院及び歯科診療所での災害準備の周知広報 - 2 -

< F2D817991E F1817A8C46967B2E6A7464>

☆配布資料_熊本地震検証

<4D F736F F F696E74202D E9197BF817C A96688DD081458CB88DD082CC8DA18CE382CC8EE682E DD2E >

防災 減災への民間情報の活用の必要性 東日本大震災において 明らかになった課題 従来の情報収集の取組 職員による現地調査 報道機関からの情報 通報 検知器 ( センサー ) 課題 対応できる人員の限界 小さな地域に関する情報の不足 紙情報が多い 情報の整理 管理が困難 設備 維持費用が大きい 上記課

チェック式自己評価組織マネジメント分析シート カテゴリー 1 リーダーシップと意思決定 サブカテゴリー 1 事業所が目指していることの実現に向けて一丸となっている 事業所が目指していること ( 理念 ビジョン 基本方針など ) を明示している 事業所が目指していること ( 理念 基本方針

IT時代の震災と核被害

下の図は 平成 25 年 8 月 28 日の社会保障審議会介護保険部会資料であるが 平成 27 年度以降 在宅医療連携拠点事業は 介護保険法の中での恒久的な制度として位置づけられる計画である 在宅医療 介護の連携推進についてのイメージでは 介護の中心的機関である地域包括支援センターと医療サイドから医

Microsoft PowerPoint - 資料2 防衛省資料(セット).pptx

スライド 1

大規模災害対策マニュアル

Microsoft Word - GH.docx22.docx

( 平成 20 年 10 月版 ) 国内事故対策要領 ~ 事件 事故発生時の連絡体制と初動対応について ~ 社団法人全国旅行業協会

30 第 1 部現地における災害応急活動 阿蘇大橋付近の被害状況 ( 熊本県阿蘇郡南阿蘇村 ) 熊本城の被害状況 ( 熊本県熊本市 ) 2

<4D F736F F D F8E968BC695F18D908F918E9197BF335F93A A5>

平成 30 年度救急業務のあり方に関する検討会報告書の概要 消防庁救急企画室 はじめに 消防庁救急企画室では 高齢化を背景として救急需要が増大する中 救急車の適正利用の推進や救急業務の円滑な実施と質の向上等 救急業務を安定的かつ持続的に提供し救命率の向上を図ることを目的に 平成 30 年度救急業務の

事業継続計画(BCP)作成用調査ワークシート

<4D F736F F D B4C8ED294AD955C8E9197BF E894A8AFA8B7982D191E495978AFA82C982A882AF82E996688DD091D490A882CC8BAD89BB82C982C282A282C4816A48502E646F63>

<4D F736F F D A8D CA48F43834B C E FCD817A E

火山防災対策会議の充実と火山活動が活発化した際の協議会の枠組み等の活用について(報告)【参考資料】

地震被害予測システムにより建物被災度を予測 また 携帯電話と地図を利用した 被害情報集約システム では GPS 機能と地理情報システムとの連係により 現在位置周辺にある同社施工済物件を検索し 物件や周辺の被害状況を文字 静止画 動画を添付して報告することができる これら被害情報を地理情報システムに集

スライド 1

第3回検討会_質の向上WG検討状況報告

第 5 部 南海トラフ地震防災対策推進計画

自衛隊の原子力災害派遣に関する達

Microsoft PowerPoint - 【参考配布】広域.pptx

の復旧状況に関する長期的な見通しを可能な限り明らかにしながら 復旧の段階に 応じた役割の分析を行う 5) 交通事業者ヒアリング調査沿線地域に関係する交通事業者 ( 鉄道事業者 2 社 バス事業者 2 社 タクシー事業者 2 社その他 ) に聞き取り調査を行い 定性的な利用特性や地域の公共交通の問題点

大規模災害等に備えたバックアップや通信回線の考慮 庁舎内への保存等の構成について示すこと 1.5. 事業継続 事業者もしくは構成企業 製品製造元等の破綻等により サービスの継続が困難となった場合において それぞれのパターン毎に 具体的な対策を示すこと 事業者の破綻時には第三者へサービスの提供を引き継

(取組名を記載)

文化庁平成 27 年度都道府県 市区町村等日本語教育担当者研修 2015 年 7 月 1 日 生活者としての外国人 に対する日本語教育の体制整備に向けた役割分担 日本語教育担当者が地域課題に挑む10のステップ よねせはるこ米勢治子 ( 東海日本語ネットワーク )

験をいかし 地域防災力充実強化計画のような形で 地方公共団体や関係団体の事業まで含む関連施策を網羅した総合計画を作成し 関係者がその実施状況を点検しながら 状況に応じて必要な修正を加えつつ 粘り強く全体を着実に実行するという いわば施策実行のシステムを確立して 地域防災力充実強化の実をあげるようにす

諸外国の火山防災体制

緊急緊急消防援助隊について消防援助隊の概要 目的 地震等の大規模 特殊災害発生時における人命救助活動等を効果的かつ迅速に実施する消防の援助体制を国として確保 創設の経緯等 阪神 淡路大震災での教訓を踏まえ 平成 7 年に創設 平成 15 年 6 月消防組織法の改正により法制化 平成 16 年 4 月

Ⅱ アメリカ合衆国の災害対策の歴史と組織 1 National Ocean Atmospheric Administration NOAA The National Climate Center NCDC PL89-3

1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/

イ留意事項 ( ア ) 対処基本方針が廃止された場合は 救援の継続や復帰のための措置について 何らかの措置により行います ( イ ) 復帰のための措置 a 誘導以外の措置 b 市長 知事による誘導 (2) 別紙第 1 情報計画 参照 2 構想 (1) 活動方針市 ( 環境防災課ほか各課 ) は 県

緊急緊急消防援助隊について消防援助隊の概要 目的 地震等の大規模 特殊災害発生時における人命救助活動等を効果的かつ迅速に実施する消防の援助体制を国として確保 創設の経緯等 阪神 淡路大震災での教訓を踏まえ 平成 7 年に創設 平成 15 年 6 月消防組織法の改正により法制化 平成 16 年 4 月

目次 1 目的 1 2 医療機関及び行政機関等との協力関係の確保 1 3 事業主体 1 (1) ドクターヘリ 1 (2) 防災消防ヘリ 1 4 定義 1 (1) ドクターヘリ基地病院 1 (2) 地域救急医療体制支援病院 1 (3) ヘリ救急搬送体制支援病院 2 (4) 出動区分 2 5 ドクターヘ

PowerPoint プレゼンテーション

【堀内分担研究添付資料2】医療機関(災害拠点病院以外)における災害対応のためのBCP作成指針

一防災 減災等に資する国土強靱化基本法案目次第一章総則 第一条 第七条 第二章基本方針等 第八条 第九条 第三章国土強靱化基本計画等 第十条 第十四条 第四章国土強靱化推進本部 第十五条 第二十五条 第五章雑則 第二十六条 第二十八条 附則第一章総則 目的 第一条この法律は 国民生活及び国民経済に甚

油漏洩 防油堤内 にて火災発生 9:17 火災発見 計器室に連絡 ( 発見 者 計器室 ) 発見後 速やかに計 器室に連絡してい る 出火箇所 火災の状況及び負傷者の発生状況等を確実に伝え 所内緊急通報の実施 火災発見の連絡を受 けて速やかに所内 緊急通報を実施し 水利の確保 ( 防災セ ンター 動

学校の危機管理マニュアル作成の手引

平成 31 年度 地域ケア会議開催計画 魚津市地域包括支援センター 平成 31 年 4 月

市町村における住民自治や住民参加、協働に関する取組状況調査

防災業務計画 株式会社ローソン

Microsoft Word - 【関係者】運用ガイドライン doc

<4D F736F F D F815B A BD90AC E93788E968BC695F18D E352E3135>

自衛隊の補給支援活動に関する特別世論調査 の要旨 平成 21 年 3 月内閣府政府広報室 調査時期 : 平成 21 年 1 月 22 日 ~2 月 1 日調査対象 : 全国 20 歳以上の者 3,000 人有効回収数 ( 率 ):1,684 人 (56.1%) 1 補給支援活動の認知度 平成 21

なお 本通知は 地方自治法 ( 昭和 22 年法律第 67 号 ) 第 245 条の 4 第 1 項の規 定に基づく技術的助言として発出するものであることを申し添える 2

4 研修について考慮する事項 1. 研修の対象者 a. 職種横断的な研修か 限定した職種への研修か b. 部署 部門を横断する研修か 部署及び部門別か c. 職種別の研修か 2. 研修内容とプログラム a. 研修の企画においては 対象者や研修内容に応じて開催時刻を考慮する b. 全員への周知が必要な

<4D F736F F F696E74202D F093EF8A6D95DB8C7689E681768DEC90AC82CC8EE888F882AB2E B8CDD8AB B83685D>

3 4

国土技術政策総合研究所 研究資料

5_【資料2】平成30年度津波防災教育実施業務の実施内容について

平成 28 年熊本地震における対応 平成 28 年熊本地震 ( 前震 :4/14 本震 :4/16) において 電力 ガス等の分野で供給支障等の被害が発生 関係事業者が広域的な資機材 人員の融通を実施するなど 迅速な復旧に努めた結果 当初の想定よりも 早期の復旧が実現 また 復旧見通しを早い段階で提

東日本大震災 (H ) 地震時の情報収集や提供に関する課題 国 地方公共団体などが連携した被災者や物資輸送者への交通関係情報の提供 大震災直後は 各管理者から別々に通行止め情報等が提供されたため 被災地までの輸送ルートの選定が困難な状況 国が集約して提供を始めたのは10 日以上過ぎた3/

4 災害時における他機関 他施設との協定の締結状況災害時に他機関 他施設との協定を結んでいる施設は 97 施設で 1 か所と締結している施設が多くありました 締結先は 地元自治会 町内会 病院 近隣施設 社会福祉施設 物流会社 福祉ネットワーク 市町村等でした 図 2 災害時における他機関 他施設と

04 Ⅳ 2(防災).xls

社会・環境コミュニケーションレポート2008

2. 防災拠点の代替施設の指定防災拠点施設が被災し使用不能となれば 災害対策本部等が設置できず 活動体制全体に遅れが生じ 迅速な災害対応を指揮することが困難となるとともに 災害対応以外の業務 ( 通常業務 ) を行うことも困難となるため 代替施設での対応が必要となります そのため 防災拠点施設におい

会場 - 全国 9 都市で実施 地 開催 会場 北海道 8 7 ( ) 北海道庁別館 11 階第 4 研修室 8 8 ( ) 札幌市中央区北 3 条 7 丁 巨大災害に備えて 地域別総合防災研修 東北 ( ) ( ) 北陸 ( ) (

<4D F736F F F696E74202D E6C8D918D8793AF95F18D908F C4816A8A C55F F4390B394C52E707074>

<4D F736F F D20967B95B681698DC58F498D D8E968C888DD A2E646F63>

自己点検・評価表

<4D F736F F D E58B4B96CD93C18EEA8DD08A518E9E82C982A882AF82E98D4C88E68D718BF38FC E89878EC08E7B97768D6A>

大規模イベント開催時の危機管理等における消防機関のあり方に関する研究結果について ( 概要 ) 研究の趣旨 現在 国際社会では各地で多様な形態のテロが発生し また NBCテロ災害等 特別な備えが必要となる事案が発生する恐れも増してきている 2019 年のラグビーワールドカップ 2020 年のオリンピ

<838A815B835F815B834A838A834C C42E786C73>


時間災害状況等の推移関係機関関係機関の活動内容道府県 ( 防災本部 ) の留意事項 ( 評価の視点 ) 1 日目 3.1 地震に基因する標準災害シナリオ 9:00 (0:00) 地震発生 ( 震度 6 強 ) 特定事業所 施設等の緊急停止措置 災害拡大防止上必要な施設の手動停止操作 地震発生後 速や

1 検査の背景 我が国の防災の基本法として災害対策基本法 ( 昭和 36 年法律第 223 号 ) が制定されている 同法によれば 内閣府に中央防災会議を置くとされ 同会議は 災害予防 災害応急対策及び災害復旧の基本となる防災基本計画の作成 その実施の推進 防災に関する重要事項の審議をそれぞれ行うな

Rodrigo Domingues UNDP Borja Santos Porras/UNDP Ecuador UNDP Kazakhstan 2

~BCP から BCM へ ~ 静岡県事業継続計画モデルプラン ( 第 3 版 ) の概要 静岡県経済産業部

5 安全 減災措置 建物建物は地震対策はなされていますか? 耐震補強 耐震 制震 免震設備状況 ( リスト ) 耐震 安全性診断 ( 発災前 ) 耐震 安全性診断を受けていますか? 施行証明書 実施状況 ( リスト ) 応急危険度判定 ( 発災後 ) 転倒 転落の防止措置 6 本部への被害状況の報告

Transcription:

3.2.1.5 災害時ロジスティック能力 (1) 業務の内容 (a) 業務の目的効果的 効率的 柔軟的な災害対応を実現するために 基本的な問題を示し 災害時ロジスティック能力を科学的根拠に基づく対処法を総合的地震災害シナリオという形で体系的に整理する (b) 平成 24 年度業務目的東日本大震災の際の岩手県での災害対応におけるヒトとモノのロジスティック管理の実態を関係者の証言をもとに再構成し そこから得られる問題点と対処方策を体系化し 災害回復のためのシナリオとしてまとめる (c) 担当者 所属機関役職氏名メールアドレス 岩手医科大学救急医学講座助教秋冨慎司 (2) 平成 24 年度の成果 (a) 業務の要約総合的地震災害シナリオの構築および災害時ロジスティック能力の向上のために 今回の東日本大震災の教訓を各専門家および実際に災害対応を行った関係者から聞き取り調査を行った そこから効果的な災害対応の実現にとって欠かせない基本的な問題の構造を提言して頂き それに対する科学的根拠に基づく対処法を整理した (b) 業務の成果総合的地震災害シナリオの構築および災害時ロジスティック能力の向上のため まずは必要な情報を集約化する作業部会を開催した 作業部会は一年間で計 4 回開催した 参加者は岩手県庁災害対策本部職員 第 9 師団司令部関係者をはじめとした実際に支援を行った関係者である それに加えて 国会議員や各関係省をはじめとした全国から支援を行った県外の関係者からの聞き取り調査 およびアメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁 (Federal Emergency Management Agency of the United States 略称:FEMA) の元職員からもヒアリングを行った 以下に各関係者から提言 ( 想定外の場合でも対応できる Crisis Management の観点から見て 問題点と指摘される項目を抽出した 参照資料は ISO の 22320 と FEMA の資料による ) された問題の対処方法の要点を提示する 議事録に対応した項目は 1) 危機管理の考え方について 2) 災害時のロジスティックス標準化のための基準について 3) 災害時のロジスティックスの実際について 4) 通信について 5) 民間に求められる役割と能力について 94

6) 災害対応者の能力向上のための e-ラーニングについて 7) 被災市町村における行政機能回復について 8) その他の課題について 9) 海外から見た日本の災害対応の現状についてに区別する 1) 危機管理の考え方について a) リスクマネージメント ( 危機管理 ) の考えである減災 防災だけでは対策は不十分である b) コンシクエンスマネージメント (consequence management) として 発災後の被害者の救助 救命を中心的に構築する必要がある 2) 災害時のロジスティックス標準化のための基準について a) 人道援助災害を行うために必要な知識 国際基準としてのスフィア基準などの国際標準も参考にして基準をつくるべき 3) 災害時のロジスティックスの実際について a) 発災後の 需要と供給 の瞬時の同期化の必要性 b) 4 つの R に分けて時間軸として整理 : Reduce, Reuse, Repair, Recycle c) ロジスティックスには人材育成が欠かせない 1 現地における通信 情報伝達確保業務 2 現場における対応チームの調達 連携業務 3 関係機関との調整 連携業務 4 資機材 医薬品 活動支援器材 生活必需物資の調達 供給業務 5 被災者 避難者の保健衛生確保業務 6 対応チームの安全確保業務 7 民間企業 団体との連携強化による 外部資源の活用の必要性 8 ICS に準じたロジスティクス組織体制の構築により機能専門特化 9 被災地行政機関 地元関係機関の協力体制の構築 10 災害情報処理能力を超えた場合 全体を見て臨機応変な対応能力育成 d) 災害ロジスティックス業務を担う要員の教育及び研修を行う組織設立 e) 過去の災害活動の記録 経験を集積 分析して今後の災害対応に活かす環境整備 f) 情報共有を行うためのツールとして クラウド型災害情報システムの開発 g) 初動と情報収集 収集項目の検討と供与におけるガイドラインの作成 災害初動時における携行リストの統一 h) 各機関と情報共有可能な統一的な情報システムの構築 機関毎に保持する情報システムを組織横断的に結び付ける i) ロジスティクス拠点構想として物資 搬送手段 通信 生活環境等の全国拠点設置 通信 輸送及び移動 調達 ( 医療 生活他 ) 本部運営機能の強化 情報収集 共有 隊員の捕食 仮眠 休憩を取ることのできる機能 資機材 95

医薬品等の補給機能も有するベースキャンプ 4) 通信について a) 平時から利用できる通信衛星基盤や観測衛星基盤の必要性 1 静止軌道の通信衛星は 輸送車 輸送船などからの積荷 車両 位置など情報送信 通信衛星経由で物流センターなどへの情報配信による状況把握 2 観測衛星から得られる情報により 被災前の地理情報収集し 災害時は被災前の地理情報と重ね合わせることで 変化域として崩落 落橋 道路寸断 甚災地域など情報抽出 3 被災自治体のみならず自衛隊 警察 消防など救援活動 救援物資などで 被災道路状況を交通管理センターなどで把握し 物流ルート計画などで利活用 5) 民間に求められる役割と能力について a) 自治力 が防災 減災の要 補完の原則 がしっかり機能することで それぞれの支援は 最大効果をあげられる b) 地域コミュニティの課題解決力をあげる 平時から地域の資源 課題を見つけ よりよい地域の実現に向け 改善 活用を行うことで 地域の現状共有 課題解決手法の習得 住民ネットワークの構築 につながり 地域の課題解決力 が向上する c) 地域コミュニティ の役割の明確化自治会 自治防災組織の役割を明確化 さらに時系列で整理するとともに 市町村そして個人の役割との関係性を整理することによって 効果的な活動につながる d) 責任の共有化 緊急時 そして平時においても 役割 は分担しても 責任 は地域 行政が互いに持ち合い 協働で地域づくりを行うことによって 緊急時での何らかの機能欠損や不慮の事故があった場合にも 影響を最低限にすることができる e) 地域コミュニティ の定義の共有自治会 自主防災組織をはじめ 地域の様々な役員 機能を 同じコミュニティの区割り で行うことで 地域内の機能連携は進めやすい そのためにも地域コミュニティの役割 単位 機能などの 定義 とその活動を推進するための 仕組み を構築しておくことが必要である 6) 災害対応者の能力向上のためには e ラーニングについて災害対応者の能力向上のためには e ラーニングによる研修が有効であるが この際には下記の点に留意すること a) e ラーニングは 防災訓練に参加できない職員も含めて 職員で共通した災害状況イメージを保有できる 防災訓練などの写真 動画の活用により リアルな災害イメージの共有につながる b) リーダーと対応者等 レベル別役割別で教材を分ける 96

c) e ラーニングは 身体技術の向上は図れない よって 技能訓練や実際に体を動かす災害対応訓練と連携した研修が必要 d) e ラーニングは学習履歴を記録できる これらのデータを保持しておくことにより 研修履歴別 スキル別の職員のランク付けや ランク付けに応じた訓練や役割付けなどが可能となる 7) 被災市町村における行政機能回復について被災市町村における行政機能回復プロセスは下記の図 1 のようにまとめられる 1 行政の被災 2 影響 負荷 3 被災地の行政現場 支障 支援なければ 安定的持続的な被災者対応 支援申出 報道対応 復旧復興対応 活動の主体: 職員の健康確保 4 行政ロジスティクス 急務 行政ロジスティクスが必要! 図 1 行政ロジスティックス強化による被災地行政機能回復のプロセス 被災した行政は 庁舎は使用不可能 食事制限 ライフライン途絶 職員犠牲によるマンパワー低下 行政データ喪失 精神的苦痛が伴う状況である しかし 被災者支援を行い 復旧 復興活動を継続しなければならない しかし 行政職員は被災者でもある いち早い復旧 復興のためには 物資のみならず人員支援も含めた行政への強力な ( 行政ロジスティクス ) 後方支援体制を構築する必要が 97

ある 8) その他の課題について a) 緊急被ばく医療への理解不足 教育訓練の実施 b) 受援システムの確立 如何に助けてもらうか 助けてもらい易い体制づくり c) 支援者を保証するシステムの確立 支援者が災害時の支援活動を確かにできる と請合うことができるシステムの確立 ( 教育システムの確立 ) d) 支援者を保障するシステムの確立 支援者に障害のないように保ち 支援者の活動が損なわれないように護るシステムの確立 e) 支援者を補償するシステムの確立 支援者に万が一損害等が発生した場合 それを補い償うシステムの確立 9) 海外から見た日本の災害対応の現状について a) 日本政府は包括的で現実的な計画がない b) 日本は国家レベルの ICS(Incident Command System) や NIMS(National Incident Management System: 国家危機管理体制 ) がない c) ボランテイアや寄付の有効活用ができていない d) 対応の連絡が トップから だけであり現場の情報が吸い上げにくい e) 避難所の管理が統一化していなく迅速性に欠ける f) 生存者の衛生 ( 栄養 ) に関する対応が確立していない g) 日本政府は自衛隊に依存しすぎる h) 各組織がそれぞれの計画をもっていて統一性がない i) 政府レベルで災害対応に熟練した職員が不足 j) 教訓から学ぶためのシステムがあまりない k) 災害の トップ を任命し以下のことを明確化し実行する 1 危機管理の包括的な権限と責任 2 外部の組織との統一した計画 3 統一した危機管理のトレーニングの提供 4 熟練した職員や指揮官の長期間におよぶ育成 (c) 結論ならびに今後の課題東日本大震災では 大地震 大津波 原子力発電所事故 放射能漏れ 放射能汚染等 災害対応が多岐にわたる複合的災害であった また 通信は衛星携帯電話もつながりにくく 一週間目には救急車に入れるガソリンすらなくなる状況であった 元々 広域災害における問題抽出は困難を極めるが 今回の東日本大震災のような未曾有の大災害は近代史において膨大で詳細な記録はなく 近年の急激なIT 化にともなう社会基盤の多岐 広域かつ複雑化のため より一層注意して慎重に進めなければ全体像 98

の欠落につながり 不十分な災害対応になると思われる このため 海外の危機対応システムとも比較検討を行う必要があり 海外で機能的に活用されているシステムが日本で活用できるか またもともと日本に存在するシステムとの整合性はどうなるか等 さらに問題抽出する必要がある 平成 24 年度に明らかになった対応上の課題を出発点としながら 平成 25 年度はさらに問題抽出を進める また 一年目の作業部会で集積したロジスティック関係者からの資料及び証言を元に その対応および行動に対して科学的根拠が存在しているか検討 抽出後 複合的災害時の場合にも活用できる総合的地震災害シナリオとして整理する 東日本大震災の際の岩手県での災害対応におけるヒトとモノのロジスティック管理の実態を関係者の証言の問題点を同時に抽出し 必要なシステムを考察し国際的標準に基づくシステムと比較検討し 災害回復のためのシナリオとしてまとめる (d) 引用文献なし (e) 学会等発表実績学会等における口頭 ポスター発表なし 学会誌 雑誌等における論文掲載なし マスコミ等における報道 掲載なし (f) 特許出願, ソフトウエア開発, 仕様 標準等の策定 1) 特許出願なし 2) ソフトウエア開発なし 3) 仕様 標準等の策定なし (3) 平成 25 年度業務計画案総合的地震災害シナリオを構築するために 東日本大震災の際の岩手県での災害対応におけるヒトとモノのロジスティック管理の実態を関係者の証言を作業部会で集積したのち問題点を抽出 その後その問題点に対して必要なシステムを再構成し 国際的標準に基づくシステムと比較検討し 災害回復のためのシナリオとしてまとめ 災害時ロジスティック能力の開発につなげる 99