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9MHz) のプローブで近位より対象を高解像度で観察できる経腟超音波法が用いられる それ以降の観察は主に経腹超音波法によって行われることが多い 必要に応じて経腟 経腹法の両者をうまく使い分けるのがよい 婦人科疾患の診断に関しては一方の走査法に依存すると思わぬ見落としが生じうるので注意する また胎児の観察も経腟超音波では観察断面の設定や視野に制限があることにも留意する 1. 妊娠の確定診断子宮内に着床する正常な妊娠であることは 子宮内に胎 (Gestational Sac:GS) を証明することによってなされる 超音波によってGSがあると認識できるようになるのは 早くても4 週の後半である 妊娠 5 週 ( 受精後 3 週 ) には正常の経過であれば100% の例でGSが確認できるはずである 6 週以降は卵黄 (Yolk Sac) と胎芽心拍が確認されるようになる ( 図 1) GSを構成する絨毛膜は全体に厚く発育し 円形 または楕円形の周囲が高輝度の 胞として観察される このwhite ringと呼ばれる絨毛膜のエコー像と子宮外妊娠などで観察されるような肥厚した脱落膜によって囲まれた分泌物や血液が貯留 した状態でみられるpseudo GSとの鑑別が問題となることがある 2. 妊娠週数 分娩予定日の診断妊娠週数 分娩予定日が不明確であれば その後の胎児発育評価は意味をなさない 分娩予定日は最終月経から算出するのが基本である ART(assisted reproductive technology) などによる妊娠で排卵日 受精のタイミングが明らかな場合は 受精のタイミングを2 週 0 日とする 月経不順など排卵が遅れている可能性がある場合は 超音波の計測値をもとに妊娠週数 分娩予定日を修正する必要が生じる 妊娠初期の胎芽の発育には個体差がほとんどないとされるため 1) 妊娠週数( 予定日 ) を確認する あるいは修正する目的で超音波による諸計測が行われる 妊娠初期には主に頭臀長 (crown rump length:crl) が胎児計測値として用いられる ( 図 2) CRLの基準値は 計測値から妊娠週日を確認することを目的として算定されているため 妊娠週日はCRLの関数で表される すなわち CRLの値を入れると妊娠週日が計算されるという意味で CRLの評価はCRLが mm 週日 ± 日という表記が正しい 注意しなけ 図 1 妊娠 6 週 GS ()

図 2 妊娠 9 週 CRL の計測 ればならないことは CRLを妊娠週数算定のパラメータとした場合の診断精度の信頼限界である 基準値は CRL 10~40mmの範囲 妊娠週日では8 週 0 日から11 週 0 日までの間で用いる必要がある この範囲外でCRLを用い妊娠週日を推定することは誤差が大きく 行うべきではない 2) 妊娠 10 週以降では児頭大横径 (biparietal diameter:bpd) の計測が可能で 妊娠週数確認のパラメータとしてはこちらを用いるべきである CRLの計測の正確性を保証できる週数を考慮し 計測値のばらつきから検討すると 妊娠 9 週前後のCRL 妊娠 12 週前後のBPDの2 点の計測値をもとに妊娠週数を確認するのが最も精度が高いと考えられる 9 週 12 週前後の2 点 (CRL BPDともに20mm 前後の計測値を示す時期 ) の超音波検査を必須とすることには計測値の分析より科学的妥当性があると考えられる 3) 臨床上必要と考えられる場合には 妊娠 12~16 週までの間に妊娠の週数の修正を行うべきである 予測される計測値による妊娠週日とどの程度誤差があったら修正すべきかに関しては議論があるが 平均値から3~4 日 ( 平均値を含む7 日以内範囲 ) 以上の誤差 ( ずれ ) があれば修正する方がよいとする意見が多い 基礎体温や排卵誘発処置で排卵時期が確定できる症例では CRLの計測で誤差があると思われても基本的に修正はすべきではない 早産や低出生体重児など先天的な異常を伴う児の場 4) 合は 初期から小さい (CRLも小さい) とする報告もあり 妊娠週日の修正を行う場合は必ず1 週以上間隔をあけた複数ポイントでの計測値を参照すること GSの所見や経時的なCRL BPDの計測情報を総合的に検討することが重要である 超音波には原理的にも計測手技においても誤差が生ずることを念頭に置き ワンポイントの計測値での妊娠週数の修正は厳に慎むべきである 初期の超音波計測値の基準値の1 例を示す ( 図 3) 日本ではほとんどの症例が妊娠初期から医療機関に受診し 妊娠初期に数回の超音波検査を受けることが一般的であることが 諸外国と大きく異なるところである 妊娠管理における予定日の正確性が担保され 発育 / 発達評価できることが 日本の産科医療の特徴である ()

1) 正常妊娠経過の確認経腟超音波では 妊娠 5 週後半ごろから胎芽の拍動が観察されるようになる 正常な胎児心拍 (FHB) 数の推移については90~100bpmで始まり ほぼ直線的に増加し 9 週中ごろに170~180bpmのピークを示し 以後漸減し 16 週には150bpmほどになる 胎芽の発育と心拍数をみて初期の妊娠経過が正常か否かを評価する 妊娠初期の (mm) 60 50 40 30 20 10 GS CRL BPD 流産率は15% 程度とされているが 妊娠の8 週のレベル CRLでは15mmまで到達し 正常な心拍数が確認できれば ( 図 4) それ以降の流産率は数% とされる 2) 胎児数 多胎の診断 ( 膜性診断 ) 多胎の診断 特に膜性診断はこの時期に必ず行っておくべきである 諸外国では初期の超音波検査が必ずしも必須とされていないこともあり 出生前に膜性診断がつけられていないことも多い 膜性は周産期管理や予後に大きく影響する 基本的にはGSが二つであれば二絨毛膜性である 絨毛膜が胎 の全周にみえる妊娠 10 週までに確認しておくべきであろう GSが一つであり 胎芽が二つみえる時には一羊膜か二羊膜の診断が問題となる 羊膜数 = 卵黄 の数であり 卵黄 の数が羊膜が描出しがたい場合の一絨毛膜双胎の膜性診断のポイントである ( 図 5) また 一絨毛膜性の場合は両者の発育差の有無 無心体などの一方の児の異常の有無にも注意する 一絨毛膜一羊膜双胎は稀ではあるが 結合双胎など胎児奇形の頻度も高いので注意する 0 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15( 週 ) 妊娠週数 図 3 妊娠初期の計測値の基準曲線 図 4 胎児心拍 (FHB) の確認 ()

図 5 多胎の膜性診断 3. 異常妊娠の診断異所性妊娠など異常妊娠に関しては本項では割愛する 妊娠初期に流産 多胎妊娠との鑑別において臨床上問題となる事象に絨毛膜下血腫がある 妊娠初期に胎 全周にわたる厚い絨毛膜があるため 厚い子宮内膜との間隙が血腫のようにみえたり もう一つのGSがあるようにみえたりすることがある 実際 妊娠初期では 絨毛膜下血腫とvanishing twinなどとの区別が難しい症例もあるが 解剖学的理解と注意深い観察で鑑別は可能である 併用すべきである 子宮筋腫もよくみられる所見であるが 妊娠初期の子宮筋の局所収縮が筋腫や腺筋症のように観察されることもある 卵巣 腫では黄体 胞 (lutein cyst) が最も多くみられる所見であるが 超音波の所見上は一側性のsimple cystであり 多くは長径 6cmを超えず 妊娠 14~15 週には消失する 卵巣腫瘍として発見されるものとして 皮様 腫が最も頻度が高いが 経腟超音波法のみに頼ると 腸管のエコーにまぎれて見落としたりすることがあるので 必要に応じて内診や経腹超音波を行うべきである 4. 子宮および付属器の診断 ( 婦人科疾患の診断 ) 妊娠初期の超音波検査で子宮の形態異常 子宮筋腫や卵巣腫瘍が偶然発見されることも少なくない 比較的よくみられる子宮の形態異常には双角子宮などがあるが 経腟超音波でGSやCRLの計測のみにとらわれていると 子宮の形態異常を見落としてしまうこともある 妊娠初期の経腟超音波においては子宮の形 GSの着床部位 付属器の所見も必ずチェックすべきである 経腟超音波では視野が限られるため 必要に応じて経腹超音波も 5. 胎児異常の診断 ( 胎児形態異常 胎児染色体異常の確率に関するリスク評価 ) この時期にも多く胎児異常 ( 奇形 ) の診断が可能である 多くの胎児異常の早期診断の報告は妊娠 10 週以降である 妊娠 10 週を越えると 経腟超音波により胎児の頭部 体幹 四肢が明瞭に観察可能になるため 大き 5) な外表奇形の診断が可能となる 詳しくは成書を参照されたい この時期の所見で注意しておかなければならないのは妊娠 8~10 週頃にみられる生理的臍帯ヘルニア 10(10)

である これは腹腔内に還納され 妊娠 12 週以降にみられることはない 妊娠初期の胎児のスクリーニングというと 欧米でルーチン検査として行われている胎児頸部の無エコー領域 NT(nuchal translucency) の計測に関することが臨床上よく問題になる いわゆる血清マーカー検査と同様 21 trisomyなどの染色体異常をその発生確率でスクリーニングする方法論で 欧米諸国では積極的に行っているが わが国では倫理的問題 人種的 宗教上の問題などを含め 施策として全例に行うことにはいまだ議論があるのが実情である NTはその厚み3mmあるいは 3.5mmをカットオフ値とし NTの基準値の中央値からのズレ 年齢から求められたリスクを加味した確率値で評価される NTに加えてnasal boneの有無や ( 図 6) 静脈管血流波形の所見を加えるとさらに確率推定の精度が上るとされている 6) NTなどのソフトマーカーは21 trisomyを疑う一つのサインに過ぎないこと あくまでも母体年令を主変数とする確率診断 ( リスク評価 ) にすぎないこと NTがみえること自体は正常でもあることを理解しておく必要がある 不完全な情報の広がりにより妊娠初期の超音波検査 NT 出生前検査 遺伝診断 のような誤解を生じないよう 検査する側もされる側も妊娠初期の超音波検査の意義をよく理解しておく必要がある 7) したがって通常の検診では4までをルーチンとし 5に関しては全例に必須な検査とはいえないこと またアウトカムが術者の診断技量に大きく結果が左右されるため 同意と説明を希望者に対して十分に行うことが 専門医が行うべきものではないかと考えている 実際の臨床に際しては 効率よく超音波検査を行うために 妊娠初期の各時期における観察 計測項目をよく整理しておくとよい ( 図 7) 妊娠中期妊娠中期における超音波検査の目的としては以下の項目が挙げられる 1 胎児発育診断 EFW 評価 2 胎盤 臍帯所見 羊水量の確認 3 子宮頸管の観察 4 胎児 well-beingの診断 5 胎児異常の診断 図 6 NT の計測 nasal bone の観察 11(11)

婦人科疾患の診断 GS 確認 胎児形態異常の診断 妊娠部位の診断 FHB NT 多胎膜性診断 BPD CRL 尿中 HCG 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14( 週 ) 図 7 妊娠週数ごとの観察 計測項目 1. 胎児発育診断胎児各部の計測値とそれらから計算される推定児体重 (estimated fetal weight:efw) の値が 胎児の発育が正常か否かの評価に用いられる 基本的な胎児計測断面 2 8) ( 図 8) と計測法を以下に概説する 児頭大横径 (biparietal diameter:bpd): 胎児頭部の正中線エコー (midline-echo) が中央に描出され 透明中隔腔 (septum pellucidum) および 四丘体槽 (cisterna corpora quadrigermina) が描出される断面で超音波プローブに近い 頭蓋骨外側 (O) から対側の頭蓋骨内側 (I) までの距離を計測する 胎児腹部計測 : 腹部周囲長 (abdominal circumference: AC) または腹部前後径 腹部横経 [APTD(antero-posterior trunk diameter) TTD(transverse trunk diameter)] を用いる 計測断面は胎児の腹部大動脈に直交する断面で 胎児の腹壁から脊椎までの距離の前方 1/3から1/4の部位に肝内臍静脈が描出され 同時に胃胞が描出される断面を設定する 腹壁から脊椎棘突起先端までをAPTD これに直交する横径をTTD 腹部の外周の周囲長をACとして計測する ACは直交する二直線 ( 通常は前後径と横径 ) により作成される楕円で 腹部周囲長を近似計測するエリプス ( 近似楕円 ) 法による計測とする 大腿骨長 (femur length:fl): 大腿骨の長軸が最も長く 両端の骨端部まで描出される断面で 化骨部分の両端のエコー中央部分の距離とする 妊娠中期以降は長幹骨のすべてが描出されるわけではなく 超音波ビームに近い一部の反射エコーにしか描出されないことを念頭に置き 可能な限り 骨端化骨部の中央部分の直線距離を計測するように心がける 胎児体重推定には超音波医学会推奨式またはその原式を用いる 2 8 9) EFW=1.07 BPD 3 +3.42 APTD TTD FL 9) EFW=1.07 BPD 3 +0.30 AC 2 FL 2 8) 本式は 出生直後の新生児の比重 体積の実測値を用いて構築された胎児の体重を頭部の重さ+ 躯幹の重さで表した理論式であり 実測の超音波計測値を多数集積して作成された回帰式ではないことが特徴で FGR(fetal growth restriction) などプロポーションの異なる胎児での推定精度の向上や週数 体重に偏らない一定の誤差範囲での体重推定を目的として作成されたものである 9) ( 図 9) 胎児体重推定に関連して必ずといってよいほど議論となるのが その推定誤差に関することである 上記の方式を用いた場合 その誤差とは 体重 週数や児のプロポーションなどに関係なく すべてのレンジで偏 12(12)

図 8 胎児計測の基本部位 差 10% 程度の誤差で体重を推定できることを意味する すなわち 体重 1,000gであれば標準偏差 ±100g 3,000g であれば ±300gということになる 体重が大きいほど誤差の絶対値が大きくなり 感覚的に推定式の信頼性が欠けるような誤解があるが EFWの推定誤差は一定の範囲内であり 数学的に誤差が大きいわけではないことを理解しておく必要がある 各超音波計測値 EFWの基準値はデータの分布の正規性が確認されているため 1.64SD( 標準偏差 ) が95パーセンタイル -1.64SDが5パーセンタイルに相当する 3-5) 胎児発育の評価は時系列データとして扱い チャート上にデータをプロットすると理解しやすい 最新の超音波機器にはこのようなプログラムが搭載されており 超音波固有の計測誤差や 検者による計測誤差などがあることを念頭においたうえで 発育の時系列データとして計測値 EFWを評価すべきである 先に述べたように 妊娠中期の発育評価はすでに決定された妊娠週数という時間軸における計測値を評価するものであり その週数における分布 すなわち 週 日で 推定 グラム SDというように評価すべきである 超音波機器のプログラムは計測値が何週相当であるかも表示するが そ 図 9 胎児体重推定式とその理論 れは本来の使い方ではなく 当該計測値が何週何日の平均値であるというだけの参考値である 発育評価の指標としては意味がなく 患者の誤解を生ずる表現で使うべきではない 推定体重に関して説明をする際には 胎児の発育には個体差があること 超音波計測には誤差が伴うことを十分理解されるように心掛ける 13(13)

EFW 評価通常 新生児の出生体重を評価する目的で出生時基準 10) 11) 体重曲線 ( 小川 板橋 ) が用いられているが EFW の評価にこの基準値を用いることには問題がある なぜなら この種の出生時基準体重曲線は早産児を多く含む出生児の体重の値を集積して作られたものであり 37 週以前の基準値はあくまでも 早産に至った児 の基準値で 基本的に理想的な子宮内環境の正常発育を必ずしも表してはいないと考えられるからである EFWの評価基準としてこのような新生児出生時基準体重曲線を用いて評価を行うと 早い時期から発症するFGRを見逃す 2 8) 可能性が高い EFWの評価にはEFWの基準値 曲線を子宮内胎児発育曲線として使用すべきである 12) 実際の臨床における体重推定の主たる目的はFGRのスクリーニングであろう FGRという病態は 元来その胎児がもつ発育のポテンシャル ( 発育の速度 ベクトル 率 ) が内的あるいは外的要因により抑制された状況にあるものと理解される したがって FGRはある時点での計測値やEFWのみでなく 妊娠週数という時間軸上の発育経過をみて診断 ( 判断 ) されるべき疾患群として 捕らえるべきである 出生後の当該週数での新生児の体重をもとに10~90パーセンタイルのものをappropriate for date(afd) 出生体重が10パーセンタイル未満の症例をLFD 90パーセンタイル以上のものをheavy for date(hfd) と定義し その新生児の出生前の子宮内環境や 発育の程度の指標としてきた すなわちLFDで出生した児であればFGRがあったことは推察できるが 必ずしもFGR=LFDを意味しないことに留意すべきである 発育評価基準として何 gという絶対値ではなく SD 値と用いることでさらに客観的に発育の個別評価ができる可能性がある 13 14) どのレベルでFGRを疑うか あるいは診断するかについては現実的に明確な基準はないが -1.5SDでは少なくともFGRの可能性のある群と考えて管理する 前述のごとく 出生後の新生児の診断で用いる出生時基準曲線と胎児の発育を評価するEFW の基準曲線とは異なることから 出生前はEFWにより FGRと診断されたが出生した新生児側からはAFDであると判断されたというような事態が生じる しかし 結果的に早産児の中では基準範囲内の体重での出生であったが 理想的子宮内環境にあると仮定した胎児の体重 110 100 90 BPD(mm) 80 70 FL(mm) 80 70 60 50 40 30 20 60 50 40 30 20 10 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 40 35 AC(cm) 30 25 20 15 10 5 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 4,500 4,000 EFW(g) 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 図 10 胎児発育評価のための基準値 ( 基準曲線 ) 1(1)

の基準からすれば小さいということで EFWを用いた FGR LFDの診断として誤っているわけではない 12 14) 臨床で用いられている超音波計測値 EFWの基準値 ( 曲線 ) を図 10に示す ないが 1 胎児発育が正常であること 2 羊水量が十分あること 3 胎動が認められると 4 胎児基準心拍数が正常で 不整がみられないことは最低限確認しておくべきであろう 2. 胎盤 臍帯所見 羊水量の確認胎盤の位置の確認も重要である 妊娠 20 週代前半頃までは 子宮峡部が開大していないため 正確に胎盤の位置を同定して低置 前置胎盤の診断を下すことが難しいことがあることに注意する 低置 前置胎盤の最終的診断は経腟超音波法で 組織学的な内子宮口を同定して行うべきであるが 後壁付着の場合は位置の診断が経腟法だけでは判断を誤ることがあり 胎盤の位置は必ず経腟 経腹の両手法で確認すべきである 臍帯は血管数やその付着部位を確認しておく 単一臍帯動脈の場合には他の合併奇形を伴う頻度が比較的高いとされる 羊水の量を数量化して評価するのは現実的には難しい 病的な羊水過多 過少の診断は超音波の観察での主観的評価で臨床上は十分であろうが より客観的に表す方法として羊水腔を計測する方法がある 羊水腔のうち最大ポケットを描出しその部位の垂直長を測定して 16cm 以上ならば重度の羊水過多 2cm 以下なら過少と判断する方法や より誤差やばらつきを少なくする方法として羊水腔を四つの部分に分け [ 四分円法 (fourquadrant technique)] その部分の羊水腔の垂直距離を計測し合計したAFI(amniotic fluid index) を算出する方法が提唱されている 15) AFIが25cm 以上ならば羊水過多と5cm 以下なら過少と判断する方法である 3. 子宮頸管の観察早産の予知という観点から 経腟超音波による子宮頸管の観察の有用性が報告されている 16 17) 具体的には頸管長がその指標として計測される 頸管長は組織学的内子宮口を同定し 子宮頸管線の長さを計測する 妊娠 30 週以前では25mmを頸管長のカットオフ値とする報告が多い 16 17) 頸管無力症の診断には妊娠 20 週前後の頸管の観察が有用とされるが 早産予知のスクリーニングのパラメーターとしては偽陰性と偽陽性とも存在することに留意する必要がある 5. 胎児異常の診断妊娠 20 週前後の時期に 多少時間をかけて胎児の観察を行うことで多くの胎児の形態異常のスクリーニングが可能である 具体的な方法については別項にて解説があるので この時期に行うとよいと外来レベルで行えるチェックポイントを表 1に示しておく 通常の胎児計測を行いつつ 系統的に胎児各部の観察を行うとよい 表 1 妊娠中期 (20 週前後 ) 胎児異常のチェックポイント胎児計測児頭大横径 BPD 大きさは正常? 躯幹計測 AC APTD TTD 大腿骨長 FL 推定時体重 EFW 羊水量過多 過少頭部頭蓋内構造対称性小脳脳室脈絡叢顔眼窩 口唇胸部肺大きさ異常腫瘤胸水の有無心臓大きさ位置 軸四腔断面流出路左室 右室 3 vessel view 腹部胃泡位置 大きさ膀胱腎臓異常 腫瘤エコーの有無腹水の有無脊椎彎曲腫瘤エコーの有無四肢長さ ( 手指 ) 開いている? 4. 胎児 well-beingの診断この時期の胎児 well-beingを確認する確立した方法は 臍帯 胎盤 2 動脈 1 静脈位置 1(1)

妊娠後半期の超音波診断基本的には妊娠中期と同様であるが 主たる目的は胎児発育診断および胎児 well-beingの診断であろう 胎児奇形などの診断は 胎児が大きくなると困難になる場合もあるため いわゆる胎児異常のスクリーニングは必要であれば中期までに行っておくべきである したがって 外来レベルでは胎児計測とEFWの評価 羊水量の測定 胎動 FBMのチェックが行えればよいであろう SD 値を用いたFGRの臨床的診断手法に関しては簡略的にすでに述べたが 胎児の血流計測も胎児 well-being の指標として重要ではあるが 臍帯血流波形の異常は FGRや臍帯 胎盤異常に伴うことが多いため 外来レベルのスクリーニングでは必須とはいえず この時期には積極的に心拍モニタリングを行うことのほうが臨床的には重要度が高いと考えられる 臍帯血流波形の計測例を図 11に示す 超音波を用いた胎児 well-beingの指標としてよく知られたものに Manningら 18) により提唱された方法で biophysical profile score(bps) がある これは 胎児心 拍所見に胎児呼吸様運動 (FBM) 胎動 筋緊張 羊水量の情報を加えたスコアリング法 ( 表 2) である 心拍以外の情報は胎児の未熟性の影響が少ないとされ NST のバックアップテストとして有用とされる 妊娠週数に関するパラメータがないこと 心拍数の異常の有無 呼吸様運動の有無などを同じ重みでポイント化しているなど 病態生理学的評価法としては問題が多いと思われるが 胎児 well-beingの臨床的スクリーニング法として有効な手法である 10 点を正常とし 胎羊水量正常の8 点は10 点と同様にあつかう 羊水量減少であれば分娩を考慮する 3D/4D 超音波法について胎児の疾患の診断には3D 超音波がその威力を発揮する ボリュームデータを任意断面で切り出したり CT のようにマルチスライスの表示も可能であったりと 解剖学的構造が容易に把握できるようになった 単純にスキャンすれば誰でも容易に診断にたる画質をもつボリュームデータが得られるわけではなく 通常の2D 図 11 臍帯血流計測 Resistance index や pulsatility index がその指標として用いられる. 1(1)

表 2 Biophysical profile score(bps) 項目正常 (2 点 ) 異常 (0 点 ) ノンストレステスト (non-stress test) 胎児呼吸様運動 (fetal breathing movement) 20 40 分の観察で,15bpm 以上かつ15 秒以上の一過性頻脈が2 回以上 30 分間の観察で,30 秒以上持続する胎児呼吸様運動が1 回以上認められる 20 40 分の観察で,15bpm 以上かつ15 秒以上の一過性頻脈が1 回, もしくは認められない 30 分間の観察で,30 秒以上持続する胎児呼吸様運動が認められない 胎動 (gross fetal body movement) 筋緊張 (fetal tone) 羊水量 (amniotic fluid volume) 30 分間の観察で, 胎児体幹や四肢の運動を3 回以上認める ( 連続した運動は1 回と数える ) 30 分間の観察で, 四肢の伸展とそれに引き続く屈曲運動, もしくは手の開閉運動を1 回以上認める羊水ポケットが2cm 未満 30 分間の観察で, 胎児体幹や四肢の運動が2 回以内 30 分間の観察で, 四肢の伸展屈曲もしくは手の開閉運動を認めない羊水ポケットが2cmを超える 図 12 妊娠 8 週の経腟超音波による胎芽像 3D 構築像で生理的臍帯ヘルニア ( この時期でみられるのは正常 ) が観察できる. 1(1)

胎児心臓 下大静脈 下行大動脈 図 13 胎児心臓 / 血管のカラードプラ3D/4D 表示 STIC(spacio temporal image collection) という技術により, 心臓の動き, 血流をvolume dataとして取り込み,4d 画像として構築できる. と同様 acoustic shadowやアーチファクトを考慮しつつ 目的の領域の画像情報が含まれるような方向で ボリュームデータを得ることが肝要である 診断という意味では一枚のきれいな2D 画像が データ量としては勝る3Dで収集して再構築した画像より有用である場合も多いのである しかしながら 立体的な位置関係の把握では3Dにかなうものはない ( 図 12) カラードプラによる血流情報の3D/4D 表示も 今までは得られなかったような子宮内の情報を提供してくれるようになった ( 図 13) これらの方法を駆使することにより 多くの胎児疾患の診断が妊娠中期までの早い時期に診断が可能になってきている しかしながら診断技術の進歩に耐えうる周産期の医療体制の構築が急務である おわりにまず超音波で胎児を計測 観察することが わが国における妊婦健診の一般的なスタイルとなった感がある しかしながら産科医不足が現実となった現在 妊婦健診 の基本に立ち戻り 健診に超音波を用いている意義を鑑みて ポイントを押さえた効率のよい超音波検診システムを再構築する必要があるのかもしれない 胎児計測に関する基準値 回帰式を曲線のデータ 発育評価用のチャートのサンプル (JUSM/Shinozuka) は筆者のサイト http://www.shinozuka.com から必要に応じてダウンロードして使用されたい 参考文献 1)Robinson HP, Fleming JE:A critical evaluation of sonar "crown-rump length" measurements. Br J Obstet Gynaecol 82:702-710, 1975 2) 超音波胎児計測の標準化と日本人の基準値の公示について. 超音波医学 30:J415-438, 2003 3) 篠塚憲男, 田口彰則 : 胎児発育の解析からみた妊婦健診における超音波検査の至適時期と回数に関する検討に基づく超音波検査のminimal requirementに関する提言. 厚生労働科学研究補助金 わが国における新しい妊婦検診体制構築のための研究 ( 主任松田義雄 ). 平成 21 年度総括 分担研究報告書 :66-95,2010 1(1)

4)Smith GC, Smith MF, McNay MB, et al:first-trimester growth and the risk of low birth weight. N Engl J Med 339: 1817-1822, 1998 5) 竹内久彌 : 超音波胎児病学. 南江堂, 東京,2009 6)http://www.fetalmedicine.com/ 7)http://www.jsog.or.jp/ethic/H23_6_shusseimae.html 8) 篠塚憲男, 升田春夫, 香川秀之, 他 : 超音波胎児計測における基準値の作成. 超音波医学 23:879-888, 1996 9)Shinozuka N, Okai T, Kohzuma S, et al:formulas for fetal weight estimation by Ultrasound measurements based on neonatal specific gravities and volumes. Am J Obstet Gynecol 157:1140-1145, 1987 10) 小川雄之亮, 岩村透, 栗谷典量, 他 : 日本人の在胎週数別出生時体格基準値. 日本新生児学会誌 34:624-632, 1998 11) 板橋家頭夫, 藤村正哲, 楠田聡, 他 : 新しい在胎期間別出生時体格標準値の導入について. 日本小児科学会雑誌 114:1271-1293, 2010 12) 篠塚憲男 : 胎児発育 児体重推定 ( 産婦人科検査法, 研修コーナー ). 日本産婦人科学会雑誌 59:"N-168"-"N-173", 2007 13)Yoshida S, Unno N, Kagawa HN, et al:prenatal detection of high-risk group for intrauterine growth restriction based on sonographic fetal biometry. Int J Gynecol Obstet 68: 225-232, 2000 14)Shinozuka N, Taguchi A:Ultrasound diagnosis and management of intra-uterine growth restriction. Ultrason Rev Obstet Gynecol 6:157-162, 2006 15)Moore TR, Cayle JE:The amniotic fluid index in normal human pregnancy. Am J Obstet Gynecol 162:1168-1173, 1990 16)Lams JD, Goldenberg RL, Meis PJ, et al:the length of the cervix and the risk of spontaneous premature delivery. N Eng J Med 334:567-572, 1996 17)Guzman ER, Ananth CV:Cervical length and spontaneous prematurity: Laying the foundation for future interventional randomized trials for the short cervix. Ultrasound Obstet Gynecol 18:195-199, 2001 18)Manning FA, Morrison I, Lange IR, et al:fetal assessment based on fetal biophysical profile scoring: experience in 12,620 referred high-risk pregnancies. I. Perinatal mortality by frequency and etiology. Am J Obstet Gynecol 151: 343-350, 1985 1(1)