平成 26 年 4 月 26 日 南海トラフ巨大地震に関する徳島県阿南市の視察についてのご報告 ( 視察 : 平成 25 年 7 月 22 日実施 ) 危機管理対応委員会委員中本欽也 1
この発表では 以下の 2 つにポイントを絞ってお話させて頂きます 津波想定区域で阿南市が行っている防災対策 津波想定区域の地価の動向 2
私たちが視察に行った阿南市の特徴 発光ダイオードで有名な日亜化学工業があり 工業生産額は徳島市にも劣りません 日亜化学工業からの法人税のお陰で 防災対策を行える財政力があります 野球に力を入れており 阿南市役所には野球のまち推進課があります 阿南市の人口 76,718 人 兵庫県で同じくらいの人口 の都市は たつの市 3
四国の港湾における地震 津波対策に関する基本方針 ( 参考資料 平成 25 年 4 月 ) 国土交通省四国地方整備局作成資料 阿南市では 30 年以内に南海トラフの地震が発生する確率が 60% 程度と言われています 阿南市はこのあたり 4
阿南市中心地域の海岸沿いで想定される最大クラスの津波の高さ ( 平成 25 年 4 月徳島県説明資料 ) 阿南市中心地域の海岸沿いでは 11.9m の津波の高さが想定されています 5
東日本大震災における津波でどのくらいの高さか 阿南市中心地域の海岸沿いで想定される最大クラスの津波の高さは 南相馬市で起きた津波の高さと同程度 南相馬市の津波の被害 阿南市では 南海トラフの地震が起きたときには このように甚大な津波の被害が起こる可能性があります それでは 阿南市がこのような津波の被害を防ぐためにどのような試みを行っているか見ていきましょう 6
高台に移転した幼稚園 保育所 2 1 まず 防災公園からスタート 旧橘小学校が幼稚園と保育所になったことから 橘小学校も移転 4 3 昭和 21 年の南海大地震で浸水した公示阿南 -4 全体像を掴むため視察のルートからご説明します 資料ご提供 : 公益社団法人徳島県不動産鑑定士協会阿部宏士会長 7
阿南市が行っている防災対策その 1 ( 橘地区防災公園 ) 芝生広場を兼ねた約 3200 m2が 津波避難場所 防災公園では約 1600 人収容できる 海岸から約 400m だが浸水しない 標高 10~15m 8
橘地区防災公園にある備蓄倉庫 橘地区防災公園では 災害時のために食料や飲料水 テント 毛布などを保管しています その他特徴的なこととしては 防災仕様のトイレやソーラー照明等があります 備蓄倉庫 ( 海抜 10.2m) 9
徳島県阿南市の視察 ( 橘地区防災公園の視察 ) 防災公園の総事業費は約 5 億 4500 万円 橘地区防災公園 10
徳島県阿南市の視察 ( 橘地区防災公園 ) 普段は地域住民が憩う公園として利用 してもらっている 災害時は炊き出し用のかまどとして 利用できるベンチ 8 基 11
徳島県阿南市の視察 ( 高台移転した幼稚園と保育所 ) スロープを下り 公園から北東の高台に移転された 幼稚園と保育所へ移動 12
高台移転した幼稚園と保育所についてお話しする前に 高台に移転する前の幼稚園と 保育所がどこにあったかお話しします 標高 1.6m 高台に移転する前の幼稚園と保育所は 標高 1.6m 程度で 浸水想定 5~10m のエリア もともと 国道 55 号沿いに幼稚園 と保育所がありました もともと 国道 55 号沿いに幼稚園と保育所がありました 13
阿南市が行っている防災対策その 2 ( 高台移転した幼稚園と保育所 ) 子供たちを津波被害から守るために高台移転が計画された 想定浸水深 2~3m 想定浸水深 5~10m 14
徳島県阿南市の視察 ( 高台移転した幼稚園と保育所 ) 高台移転によっても浸水被害の恐れが全くないわけではないが 町内では海岸から遠く 高台になるほど安全度が増す 最大想定浸水深 2~3m なので 2 階に避難すれば大丈夫 山が近くに見える 標高が高い 15
徳島県阿南市の視察 ( 高台移転した幼稚園と保育所 ) その他特徴的なこと 墓地を活用 こちらの階段から上の墓地に避難すれば津波の被害を防ぐことが出来る 16
阿南市が行っている防災対策その 3 ( 高台移転した橘小学校 ) 旧橘小学校が幼稚園と保育所になったことから 橘小学校も高台に移転した 17
県の資料によると高台に移転した 橘小学校の標高は 22.8m 標高 22.8m 高台に移転した小学校 幼稚園 保育所は 子供たちの安全を守るだけでなく 震災時に地元住民の避難場所として活用出来ます 18
阿南市で行われている防災対策のまとめ 阿南市で行われている防災対策として 1 橘地区防災公園 2 高台移転した幼稚園 保育所 3 高台移転した橘小学校 橘地区防災公園 の 3 つを見てきました 高台移転した幼稚園 保育所 高台移転した橘小学校 19
阿南市で行われている防災対策のまとめ 阿南市では 地元要望により 公共施設を中心に 20 年程前から対策が進められてきました それでも やっと昨年の春に 1 避難公園 2 幼稚園 保育所 3 小学校の移転などの一連の事業が完成しました 防災対策の要望が出てきても それを実現するまで時間がかかる 私たちの日頃からの防災意識と地元への働きかけが重要です 20
津波想定区域の地価の動向 津波想定区域の地価動向は 阿南市の地価公示の地価の推移により検証します 地価公示阿南 -4 津波想定区域の浸水深 5~10m の地点 ( 視察対象 ) 地価公示阿南 -5 津波想定区域の浸水深 3~4m の地点 地価公示阿南 -9 津波想定区域の浸水深 0m の地点 地価公示とは 一般の土地の取引に対して指標を与えることを目的として毎年 1 回 1 月 1 日時点における標準地の 1 m2当たりの地価を公表することをいいます 阿南市に地価公示の地点は 14 地点あります 全国に地価公示の地点は 23,380 地点あります 21
この浸水想定図は 最大クラスの津波が発生した場合における浸水想定エリアを表示しています 地価公示阿南 -4 津波想定区域の浸水深 5~10m の地点 22
浸水想定エリアの地価の推移 ( 地価公示阿南 -4) 地価公示阿南 -4 徳島県阿南市橘町大浦 27 番 7 外 津波想定区域の浸水深 5~10m の地点 ( 視察対象 ) 23
県の資料によると 地価公示阿南 -4 の標高は 1.5m くらい 阿南市中心地域の海岸沿いでは 11.9m の津波の高さが想定されているので かなり危険なエリアです 標高 1.5m 地価公示阿南 -4 24
浸水想定エリアの地価の推移 ( 地価公示阿南 -4) 昭和 21 年の南海大地震で浸水した 地価公示阿南 -4 徳島県阿南市橘町大浦 27 番 7 外 25
浸水想定エリアの地価の推移 ( 地価公示阿南 -4) 津波想定区域の想定浸水深 5~10m の地点 ( 視察対象 ) 平成 23 年 3 月 11 日東日本大震災 26
浸水想定エリアの地価の変動率 ( 地価公示阿南 -4) 津波想定区域の想定浸水深 5~10m の地点 ( 視察対象 ) 平成 23 年 3 月 11 日東日本大震災後の地価 27
この浸水想定図は 最大クラスの津波が発生した場合における浸水想定エリアを表示しています 地価公示阿南 -5 津波想定区域の浸水深 3~4m の地点 地価公示阿南 -4 津波想定区域の浸水深 5~10m の地点 ( 視察対象 ) 地価公示阿南 -4 地価公示阿南 -5 28
浸水想定エリアの地価の変動率 ( 公示阿南 -4 及び阿南 -5) 変動率 0%( 横ばい ) 2.4% 平成 20 年 9 月 15 日リーマンショック 5.0% 地価公示阿南 -5 浸水深 3~4mのエリア 6.2% 回復が違う 地価公示阿南 -4 浸水深 5~10m のエリア 平成 24 年 12 月 26 日第二次安倍内閣 9.6% 8.6% 平成 23 年 3 月 11 日東日本大震災後の地価 29
地価公示阿南 -9 津波想定区域の想定浸水深 0m の地点 この浸水想定図は 最大クラスの津波が発生した場合における浸水想定エリアを表示しています 地価公示阿南 -4 津波想定区域の浸水深 10m の地点 ( 視察対象 ) 30
浸水想定エリアの地価の変動率 ( 公示阿南 -4 及び阿南 -9) 変動率 0%( 横ばい ) 0.8% 平成 20 年 9 月 15 日リーマンショック 平成 24 年 12 月 26 日第二次安倍内閣 4.1% 5.0% 地価公示阿南 -9 浸水深 0m のエリア 地価公示阿南 -4 浸水深 5~10m のエリア 8.8% 8.6% 9.6% 平成 23 年 3 月 11 日東日本大震災 31
津波想定区域の地価の動向のまとめ 平成 26 年時点の下落率 阿南 -4 想定浸水深 5~10mの地点 ( 視察対象 ) 8.6% 阿南 -5 想定浸水深 3~4mの地点 2.4% 阿南 -9 想定浸水深 0mの地点 4.1%( 市の中心から遠いエリア ) 注 : 想定浸水深 0mの阿南 -4より 阿南-9のほうが下落率が高いのは 浸水深という要因以外の要因の影響 ( 都心への距離など ) が大きかったからだと思います 阿南 -4の1 年間の下落率 8.6% は 地価公示地方圏 ( 住宅地 ) の平均変動率 1.5% と比べてかなり高い下落を示している 32
津波想定区域の地価の動向のまとめ 東日本大震災の被災地でも 津波被災地は 短期的には土地取引はゼロで 価格が付かなかったと聞いています また 災害危険区域の指定 ( 建築基準法第 39 条 ) により 建物の建築が規制され 私権の制限が行われました 中長期期的には土地の買い上げが行われているそうです ふるさと 家族 思い出は私たちにとってかけがえないものであり 浸水想定エリアでは それを失うリスクがあります 地価は 需要と供給により決まるのですが 浸水想定エリアは 浸水リスクにより 中長期的には需要 ( 人口 ) が減少していきます それに連動し 周辺の商店街等の店舗が撤退し 利便性が悪くなり ますます 需要 ( 人口 ) が減少するという悪循環が起こる可能性があります まとめとして 現在 浸水想定エリアは この負のスパイラルの初期段階に入っており 地価の大幅な下落が続いていると言えます 我々不動産鑑定士は 浸水想定エリアをベースにこのような震災リスクを考慮した分析を今まで以上に行っていかなくてはなりません 以上 この後で発表のある和歌山でも同じように浸水想定地域では 同じような傾向が見られると思われます 本日は ご静聴ありがとうございました 33
本日は ご清聴ありがとうございました 今後とも 宜しく御願いいたします 34