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通常の市中肺炎の原因菌である肺炎球菌やインフルエンザ菌に加えて 誤嚥を考慮して口腔内連鎖球菌 嫌気性菌や腸管内のグラム陰性桿菌を考慮する必要があります また 緑膿菌や MRSA などの耐性菌も高齢者肺炎の患者ではしばしば検出されるため これらの菌をカバーするために広域の抗菌薬による治療が選択されるこ

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褥瘡発生率 JA 北海道厚生連帯広厚生病院 < 項目解説 > 褥瘡 ( 床ずれ ) は患者さまのQOL( 生活の質 ) を低下させ 結果的に在院日数の長期化や医療費の増大にもつながります そのため 褥瘡予防対策は患者さんに提供されるべき医療の重要な項目の1 つとなっています 褥瘡の治療はしばしば困難

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5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

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染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

27 年度調査結果 ( 入院部門 ) 表 1 入院されている診療科についてお教えください 度数パーセント有効パーセント累積パーセント 有効 内科 循環器内科 神経内科 緩和ケア内科

別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

330 先天性気管狭窄症 / 先天性声門下狭窄症 概要 1. 概要気道は上気道 ( 鼻咽頭腔から喉頭 ) と下気道 ( 気管 気管支 ) に大別される 指定難病の対象となるものは声門下腔や気管に先天的な狭窄や閉塞症状を来す疾患で その中でも先天性気管狭窄症や先天性声門下狭窄症が代表的な疾病である 多


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562 当院におけるプロカルシトニンとプレセプシンの比較検討 東恭加 1) 加藤淳子 1) 井元明美 1) 上霜剛 1) 秋篠範子 1) 兵庫県立柏原病院 1) はじめに プロカルシトニン (PCT) は 細菌性敗血症のマーカーとして日常診療に用いられており 当院でもイムノクロマト法 (PCT-Q:

(2) 傷病分類別ア入院患者入院患者を傷病分類別にみると 多い順に Ⅴ 精神及び行動の障害 千人 Ⅸ 循環器系の疾患 千人 Ⅱ 新生物 千人となっている 病院では Ⅴ 精神及び行動の障害 千人 Ⅸ 循環器系の疾患 千人 Ⅱ 新生物 147.

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10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

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Title 入院加療を要した歯性感染症の臨床統計的検討 星野, 照秀 ; 五月女, 寛明 ; 日高, 真吾 ; 市島, 丈裕 ; Author(s) 野口, 沙希 ; 三條, 祐介 ; 浮地, 賢一郎 ; 澁井, 武夫 ; 片倉, 朗 ; 野村, 武史 Journal 歯科学報, 116(1): 37-42 URL http://doi.org/10.15041/tdcgakuho.1 Right Posted at the Institutional Resources for Unique Colle Available from http://ir.tdc.ac.jp/

38 星野 他 入院加療を要した歯性感染症の臨床統計的検討 呼吸苦症状を認める場合 全身状態 発熱 栄養状 症の重篤化に関連すると考えられた糖尿病 慢性関 態 基礎疾患 が不良な場合 血液検査で炎症の程 節リウマチ その他ステロイド治療中の疾患を有し 度が重篤な場合などが挙げられ その際は積極的に ていたのは150例のうち15 3 であった 図2 ま 入院加療を行っている た 図2に示す疾患以外に63の疾患の既往を認め た 結 果 原因歯 原因疾患 上下顎ともに大臼歯に多かった下顎が上顎に比 性差 年齢 男性は99名 女性は51名 男性の方が女性に比較 べ多く その中でも第2 3大臼歯が原因歯となる して約2倍多かった年齢は2歳から91歳 平均年 場合が多く 全体の59 3 を占めていた乳歯が原 齢は50 3歳であり 30 40歳代が最も多かったま 因の場合も全て乳臼歯が原因歯であった 図3a た10歳以下の入院も5名おり これらの症例はいず b 原因疾患は根尖性歯周炎が最も多く113例 次 れも小児科と連携を取り加療していた 図1 いで智歯周囲炎27例 抜歯後感染が7例であった 基礎疾患 起因菌 好気性 Gram 陽性球菌 Streptococcus 属が最も多 基礎疾患を有していたのは150例中96例 64 0 であり その中でも多く認められたのは高血圧症32 く ついで偏性 Gram 陰性桿菌である Prevotella 属 例 糖尿病16例 心疾患16例 心筋梗塞6例 狭心 Fusobacterium 属などの β -lactamase 産生菌が高頻度 症5例 その他5例 脳血管障害10例 脳梗塞8例 に検出された好気性菌と嫌気性菌の混合感染は 脳出血1例 一過性脳虚血発作1例 であった炎 図1 男女比 年齢分布 図3a 図2 原因歯 上顎 図3b 38 基礎疾患 重複あり 原因歯 下顎

歯科学報 Vol 116 No 1 2016 39 図6a 図4 起因菌 重複あり 図6b 図5 入院期間 初診時白血球数 初回使用抗菌薬 重複あり 45 5 であったまた未検査 検出できなかった症 例は48例であった 図4 初回使用抗菌薬 歯性感染症は起因菌の同定が終了しない間に抗菌 薬を投与する場合が多い今回 初回に使用した 抗菌薬は Penicillin 系 Cephem 系 第3世代 が83 を 占 め たPenicillin 系 で は Ampicillin-Sulbactam Cephem 系は Ceftriaxone が多かった最も使用頻度 が多かったのは Ceftriaxone だった2013年以降は 図6c 初診時 CRP β -lactamase 阻 害 薬 を 含 む Ampicillin-Sulbactam や Cefoperazone-Sulbactam の使用が増加傾向を示した 図5 31 94mg/dl 最 低 値2 0mg/dl で あ っ た 図6a b c 入院期間 初診時白血球数 初診時 CRP 炎症の波及経路 入院期間は最短2日 最長で42日であり 平均 下顎大臼歯を原因とした顎下隙への波及が最も多 は8 9日であったま た 初 診 時 白 血 球 数 は 平 均 く76例 次いで頬隙51例だった舌下隙 オトガイ 12 591/μl 最高値23 200/μl 最低値2 100/μl であ 下隙 翼突下顎隙はほぼ同数であった咽頭周囲隙 り 初 診 時 CRP の 平 均 は10 12mg/dl 最 高 値 は への波及は全体の13 3 であったまた 骨膜下膿 39

40 星野 他 入院加療を要した歯性感染症の臨床統計的検討 図8a 図7 全身麻酔による緊急手術件数 炎症の波及経路 重複あり 瘍など隙へ波及を認めない症例が10例であった 図 7 全身麻酔による緊急手術 術後気道管理 全身麻酔下に消炎手術を行った症例は28例であ り 男性19名 女性9名であった調査期間内で 年々増加傾向を認めた術後は全症例が集中治療室 ICU または高度治療室 HCU で術後管理を行っ 図8b たまた 術後気道管理の目的で気管切開した症例 術後気道管理 は8例 気管内挿管チューブを留置した症例は4 例 術後直ちに 抜 管 し た 症 例 は16例 だ っ た 図8 であること また受診患者の来科地域において 全 a b 体の4264人 84 0 が千葉県であり なかでも市川 市が3055人 60 2 を占めていたと報告している 考 察 市川市で口腔外科を有する総合病院は当院のみであ 今回我々は 入院加療を要し 原因歯の特定が るため 他の2 3次救急医療機関との連携を行い 可能であった歯性感染症患者150例について検討を 歯科口腔外科疾患の患者を受け入れる体制を整えて 行った患者数の年次的推移は2010年が23例 2011 いるため 急性症状のある重症歯性感染症患者が多 年が27例 2012年が37例 2013年が54例 2014年が く来科したと考えられた 当院は救急外来を設置している総合病院であるた 9例であった 性差は男性99名 女性51名と男性に多く 過去の 1 3 4 め 歯科 口腔外科には医学的問題を有する患者が しかし 平均年齢 多く受診するしたがって 関連する各科への対診 は50 3歳であり 過去の報告と比較して高い結果と を必要とする場合が多かった今回初診時の白血球 なったこれは当病院が地域における中核病院 救 数が2 100/μl であった症例を経験したその症例 急病院であることや歯科大学の付属総合病院であ は 救急外来を受診し 智歯周囲炎で全身倦怠感と り 周辺地域の総合病院からの転院や救急搬送など 40 の発熱を認めたため入院となった骨髄性疾患 自力で受診できない患者を多く受け入れているた 精査のため血液内科へ対診を行ったその後血液内 め 高齢者の受診が多くなったと考えられる伊藤 科にて骨髄穿刺を行ったが 原因は明らかではな 報告と同様の傾向を認めた 5 ら は2012年度の市川総合病院歯科 口腔外科の初 かった炎症が消退後も汎血球減少症を呈していた 診患者のうち50歳代以上が5076人中2663人で52 5 ため 血液内科へ転科した歯性感染症で受診した 40

μ β -lactamase β -lactamase Prevotella Peptostreptococcus Prevotella intermedia β -lactamase Prevotella β -lactamase β -lactamase

β Key words : odontogenic infection, phlegmone, hospitalization, antibiotic, causative agent β Prevotella Fusobacterium μ The Shikwa Gakuho