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60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 9 月 8 日 独立行政法人理化学研究所 組織のダメージを感知して炎症を引き起こす受容体を発見 - マクロファージが担う生体危機管理システムのメカニズムを解明 - 風邪のウイルスやさまざまな病原菌による感染 あるいは火傷や打撲など 私たちの身体は ダメージを受けるとそれに対応するように免疫システムが働き 防御します 通常 細胞は役目を終えたり 寿命になると 一定の割合で死んでいきます この死細胞は マクロファージ ( 食細胞 ) によって速やかに取り込まれ炎症を起こすことありません ところが 身体にダメージを与えるような大量の死細胞が発生する状況になると マクロファージが炎症性サイトカインを放出 血液中の好中球を集めるなどして炎症反応が起こります しかし この炎症反応を引き起こすメカニズムは未知のままでした 何故炎症反応がおこるのか? 炎症反応の役割は何か? 生体の危機管理システムの解明が待たれていました 免疫 アレルギー科学研究センター免疫シグナル研究グループは 主にマクロファージに発現し 細胞にストレスが加わると誘導されるタンパク質 Mincle に着目しました その結果 Mincle が自己組織の損傷を感知し 炎症を誘引する受容体であること発見 炎症反応の謎ときを前進させました そのメカニズムは 受容体 Mincle と 情報伝達を担うタンパク質 FcRγ が細胞膜領域内で電気的に引き合い ( 会合 ) 炎症性サイトカインの生産を促すというものです Mincle 抗体を投与しておいたマウスでは 組織ダメージ後の炎症性サイトカインの産生が見られないなどの知見も得ています さらに 核内に存在するタンパク質 SAP130 が 細胞死に伴って細胞外に放出されると Mincle はこれを感知し 好中球を動因 その部位に炎症反応を引き起こすことも明らかにしました 組織がダメージを受けたときには 死細胞の除去とともに組織の再構築 修復が重要です Mincle の機能の発見は 組織再生や再生医療に新たな道を提供することになります

図 Mincle シグナルのマクロファージでの働き

報道発表資料 2008 年 9 月 8 日 独立行政法人理化学研究所 組織のダメージを感知して炎症を引き起こす受容体を発見 - マクロファージが担う生体危機管理システムのメカニズムを解明 - ポイント 自己組織の損傷を感知する危機センサーとして働く受容体を同定 大量の細胞死を感知 炎症性サイトカイン産生を促す機能を持つ 組織損傷後の修復過程のメカニズム解明や再生医療への応用に期待独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事長 ) は 細胞にストレスを加えると発現するC 型レクチン Mincle 1 が 自己組織の損傷を感知し 炎症を誘起する受容体であることを発見しました これは 理研免疫 アレルギー科学総合研究センター ( 谷口克センター長 ) 免疫シグナル研究グループの斉藤隆グループディレクター 山崎晶上級研究員らの成果です 私たちの体をつくっている細胞は 常に一定の割合で死んでいきます これらの死細胞は 通常マクロファージ ( 食細胞 ) 2 によって速やかに取り込まれ 炎症を起こさず処理されます ところが 感染 梗塞 腫瘍などによって大量の細胞死が起こると もはや既存の処理システムでは対処できず マクロファージが炎症性サイトカイン 3 を放出し 好中球 4 が集められて 局所的な炎症反応が起こると知られていました しかし マクロファージが 死細胞を認識して炎症性サイトカインを放出する つまり炎症反応を引き起こすメカニズムは解明されていませんでした 研究グループは ストレスによって強く発現が誘導され 機能が未知のタンパク質 Mincleに着目して 機能解明を進めました その結果 Mincleの細胞膜領域が正電荷を持ち 同じ細胞膜領域に負電荷を持つタンパク質のFcRγ 5 と会合することを発見しました FcRγは 免疫応答を担う基本構造である ITAM 6 を持っており 実際に MincleがFcRγを介して活性化シグナルを伝え マクロファージからの炎症性サイトカインの産生を促すことも明らかにしました さらに 研究グループは Mincleに結合し Mincle-FcRγ 複合体を活性化させる物質の探索を進め 死細胞が共存する時だけに Mincle-FcRγ 複合体が活性化することを突き止めました そのメカニズムは 死細胞から放出されるSAP130 と呼ばれるタンパク質が Mincleを直接活性化する というものでした さらに研究グループは Mincleの働きを止める抗体をマウスに投与しておくと 大量の細胞死が起こっても 炎症が誘導されないことを見いだしました これらの結果から Mincleは 大量の細胞死を感知して炎症性サイトカイン産生を促す活性化受容体であり 生体内での組織ダメージを速やかに感知するセンサーとして働いていることが明らかとなりました 死細胞を認識して活性化シグナルを誘導するC 型レクチンの発見は 世界で初めてであり Mincleの機能解析をさらに進めることで 組織損傷後の修復過程のメカニズム解明や 再生医療への応用が期待されます 本研究成果は 米国の科学雑誌 Nature Immunology ( 9 月 7 日付け : 日本時間 9 月 8 日 ) に掲載されます

1. 背景私たちの体を構成している細胞は 役目を終えたり 生存時間がなくなるなどして 常に一定の割合で死んでいきます これら死細胞は 通常マクロファージ ( 食細胞 ) によって速やかに取り込まれ 炎症を起こすことなく静かに処理されることが知られています ( 非炎症的取り込み ) ところが 壊死 梗塞 腫瘍などによって大量の細胞死が起こると もはや既存の処理システムでは対処できず マクロファージから炎症性サイトカインが放出され 好中球が血管から呼び集められるなどして炎症反応が起こることが知られていました ( 感染を伴わない炎症 ) しかし この炎症反応を引き起こすメカニズムは解明できていませんでした Mincle は 細胞膜に存在する C 型レクチンと呼ばれるファミリーに属するタンパク質の 1 つで 主にマクロファージに発現し さまざまな刺激やストレスで発現が誘導されることが知られていましたが その結合物質や機能は未知のままでした 2. 研究手法と成果研究グループは ストレス応答の遺伝子発現解析から Mincle がストレスによって強く発現が誘導されてくることを見いだし 何らかの形で生体の異常の感知に関与していると考えました その構造に注目すると Mincle の細胞膜領域には 正に荷電した特徴的なアミノ酸 ( アルギニン ) が存在し しかもそのアルギニンは 生物種間で保存されていることがわかりました ( 図 1 左 ) この特徴から 正電荷と引き合う負電荷を細胞膜領域に持つ ITAM 共役活性化サブユニット (FcRγ CD3ζ DAP10 DAP12 など ) と会合する可能性を考えました そこで 詳細な結合実験を進めた結果 予測どおり Mincle が FcRγ と特異的に会合することを見いだしました ( 図 1 右 ) FcRγ を持つ ITAM は 活性化シグナルを伝える配列であるため Mincle が活性化受容体として働くことを強く示唆できました 実際 Mincle を認識するモノクローナル抗体 7 (Mincle 抗体 ) を樹立し この抗体でマクロファージを刺激したところ TNF( 腫瘍壊死因子 ) や MIP-2( マクロファージ炎症タンパク -2) などの炎症性サイトカインが大量に産生されることを発見しました FcRγ タンパク質欠損マウスでは Mincle 抗体による炎症性サイトカインの産生は 全く見られませんでした この結果より Mincle が FcRγ を介して活性化シグナルを伝える 活性化受容体であることが初めて明らかとなりました さらに研究グループは Mincle が何を認識する受容体かを調べるために インジケーター細胞システムを構築しました ( 図 2 上 ) これは Mincle が活性化すると導入された緑色蛍光タンパク質 (GFP:Green Fluorescence Protein) により インジケーター細胞が緑色に光るシステムです この細胞と候補物質を共に培養することで あらゆる候補を選別できる効率的なシステムですが 残念ながら候補の中から Mincle を活性化する物質は発見できませんでした ところが 驚くべきことに このインジケーター細胞を単独で 栄養分を補うことなく数日間培養していると たくさんの緑色に光る細胞が表れてきました この時 緑色の細胞の近くには 栄養分がなくなって死んでしまった細胞を多く観察しました ( 図 2 下 ) この時に Mincle 抗体で Mincle の働きを止めておくと 細胞は緑色に光らなかったことから 死細胞由来の 何か が Mincle に結合し 活性化シグ

ナルを伝えていることがわかりました そこで その 何か の分子を同定するために Mincle 結合分子を内面に吸着するカラム ( 図 3) を作成しました 死細胞の細胞抽出液をこのカラムに流すことで Mincle に特異的に結合するタンパク質だけがカラムに吸着 分離し 探索することができます その結果 SAP130(Spliceosome associated protein 130) と呼ばれるタンパク質が Mincle に特異的に結合することがわかりました SAP130 は 核内に存在するタンパク質で 膜タンパク質である Mincle が認識できるとは容易には考えられませんでした しかし 細胞死に伴う SAP130 の局在の変化を調べたところ 大量の SAP130 が細胞死 ( 特に後期死細胞 ) に伴って細胞外に放出されることがわかりました 研究グループはさらに Mincle の働きを止める Mincle 抗体をマウスに投与しておくと 生体内で大量の細胞死が起こっても その部位に好中球がほとんど呼び集められない つまり炎症が抑制されることを見いだしました つまり Mincle は 通常は細胞外に存在しない SAP130 が 細胞外に多く存在している状況を素早く感知することで生体のダメージを察知し 周囲に知らせる役割を持つことが示されました ( 図 4) 3. 今後の期待組織が大きなダメージを受けた後の組織修復に Mincle のシグナル伝達が寄与している可能性があります 通常の 非炎症的 な処理機能では対応しきれない大きなダメージを受けた場合 好中球の動員による 炎症的 な大規模な死細胞の除去や 組織の再構築が 組織修復に重要となることが考えられ 今回の Mincle の機能の発見は組織再生 再生医療の分野にも新しい観点を与える重要な発見です さらに SAP130 が snrnp 8 と呼ばれる 自己免疫疾患における主要な自己抗原の構成成分であることから Mincle のシグナル伝達が自己免疫疾患に関与している可能性もあります 通常 厳密に抑えられている Mincle の発現制御が破綻した場合や 慢性ストレスで Mincle の発現が上昇した場合には 自己抗原を認識してしまい 異常な活性化シグナルを伝達し 炎症を増悪させてしまうことが考えられます 実際に 関節炎自然発症ラットの責任遺伝子領域に Mincle 遺伝子が含まれていることや ヒトリウマチ患者で Mincle が高発現していることも報告されており Mincle が自己免疫疾患の増悪因子である可能性があります このため Mincle の働きを人為的に抑えることが 自己免疫疾患治療へのアプローチにつながる可能性も考えられます ( 問い合わせ先 ) 独立行政法人理化学研究所免疫 アレルギー科学総合研究センター免疫シグナル研究グループグループディレクター斉藤隆 ( さいとうたかし ) Tel : 045-503-7037 / Fax : 045-503-7036 上級研究員山崎晶 ( やまさきしょう )

Tel : 045-503-7039 / Fax : 045-503-7036 横浜研究推進部企画課 Tel : 045-503-9117 / Fax : 045-503-9113 ( 報道担当 ) 独立行政法人理化学研究所広報室報道担当 Tel : 048-467-9272 / Fax : 048-462-4715 Mail : koho@riken.jp < 補足説明 > 1 C 型レクチン Mincle (Macrophage inducible C-type lectin) レクチンとは 糖結合活性を持つタンパク質の総称 下等生物から高等生物まで あらゆる生物種において広く保存されているファミリーであり 数多くの分子種を有する このうち Ca 2+ 要求性を持つもの (Ca 2+ 結合ドメインを有するもの ) を C 型レクチンと呼ぶ Mincle は マクロファージに発現する C 型レクチン 2 マクロファージ ( 食細胞 ) 白血球の 1 種 主に生体内の異物 ( 細菌 ウイルス 死細胞など ) を貪食することによって除去する重要な役割を担う 3 炎症性サイトカイン本来 微生物感染などに応答して マクロファージ 樹状細胞から産生され 好中球などの動員を促して微生物排除を助ける働きを持つ 4 好中球白血球の 1 種 多くの顆粒を持つのが特徴 微生物が侵入するとその現場に速やかに集積し 貪食や顆粒に含まれる酵素や活性酸素の放出を介して微生物除去に働く この反応が過剰な場合は自己組織損傷を引き起こしてしまうため 炎症疾患においてはしばしば 悪玉 と考えられている ところが近年 異物の速やかな除去 自己組織の再構築によって組織修復を助ける 善玉 としての役割も提唱されている 5 FcRγ もともと抗体レセプター (Fc レセプター ) のサブユニット (γ 鎖 ) として同定された膜結合タンパク質 ITAM を持ち 活性化シグナルを伝える重要な働きを持つ Fc レセプターのみならず ほかのいくつかのレセプターと会合し 活性化シグナル伝達を担っている 6 ITAM(immunoreceptor tyrosine-based activation motif) T 細胞抗原レセプター B 細胞抗原レセプター 抗体レセプターなど 免疫応答にかかわるレセプターに共通して見られる基本構造 チロシンを 2 個タンデムに持つ

特徴的な構造を有し このチロシンがリン酸化されることが下流へのシグナルの引き金となる 7 モノクローナル抗体目的のタンパク質を免疫した動物より調整した 単一の抗体産生細胞に由来する抗体 レセプターに対するモノクローナル抗体は しばしば標的分子の会合のブロックに有用であり 抗 TNF 抗体 抗 IL-6 レセプター抗体など医薬品としての成功例も多い 8 snrnp (small nuclear ribonucleoprotein) mrna のスプライシングに関与する 多くのタンパク質サブユニット RNA サブユニット (snrna) から成る複合体 snrna は特徴的な配列を持つ一本鎖 RNA で ウイルス RNA に類似しているため TLR7 による誤認識と自己免疫疾患とのかかわりも報告されている また snrnp はヒト自己免疫疾患における自己抗原としても有名である 図 1 Mincle の分子構造 ( 左 ) ほ乳類の Mincle 細胞膜領域のアミノ酸配列上からマウス ラット ヒト R が正の電荷を持つアルギニンで 種を越えて保存されていることがわかる ( 右 ) FcRγ の ITAM の中には負の電荷を持つアミノ酸があり Mincle のアルギニンと電気的に引き寄せあう FcRγ のチロシン ( 図中の Y) がリン酸化されることで 下流へのシグナルの引き金となる

図 2 インジケーター細胞システム ( 上 ) インジケーター細胞システムの反応機構 ITAM 下流で活性化される転写因子 NFAT に緑色蛍光タンパク質 GFP をつないだ Mincle- FcRγ 複合体から活性化シグナルが細胞内に入ると GFP が細胞内に発現し 活性化した細胞が可視化される ( 下 ) 死細胞 ( 赤 ) の増加に伴い緑色の蛍光を発する細胞が出現する 緑色の細胞の多くは赤色の細胞の近傍に観察される

図 3 Mincle に結合するタンパク質を抽出するカラムのシステム Mincle を内壁に吸着させたカラム (Ig-Mincle- 結合カラム ) で Mincle と結合する分子だけを抽出するシステム まず 死細胞抽出液を 3 回空のカラムに流し カラム壁面に吸着する分子を除く その次に Ig(Mincle を壁面につなぎ止めるためのタンパク質 ) に結合する分子を除くために Ig だけを結合したカラムに 2 回流す そして 壁面に Mincle を結合させたカラムに流し 結合していない分子を洗い流した後 Mincle 結合分子を溶出する

図 4 Mincle シグナルのマクロファージでの働き 死細胞が少ないときには マクロファージによる非炎症的取り込みによって死細胞の除去を行う ( 左 ) が 過剰量の死細胞が存在した場合には Mincle によりマクロファージが活性化し 炎症性サイトカインが産生 放出され 局所的な炎症が起こる ( 右 )