目次 1. 内部不正に関する状況 報道から 実態調査から 2. 内部不正の起きる要因と対策 3. 内部不正防止ガイドラインについて 2

Similar documents
PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F F696E74202D202895CA8E86816A89638BC694E996A78AC7979D8EC091D492B28DB88A E >

目次 1. はじめに 2. 内部不正による情報漏えいの危険性 3. 情報漏えい対策ポイント 4. 情報漏えい発生時の対応ポイント 5. 参考資料の紹介 ( 講師用 ) Copyright 2015 独立行政法人情報処理推進機構 2

ネットワーク機器の利用における セキュリティ対策 独立行政法人情報処理推進機構技術本部セキュリティセンター大道晶平

事故前提社会における           企業を支えるシステム操作統制とは

内部不正を防止するために企業は何を行うべきなのか

ガイドラインの構成 1 章背景 2 章概要 3 章用語の定義と関連する法律 4 章内部不正のための管理の在り方 付録 Ⅰ 内部不正事例集 付録 Ⅱ チェックシート 付録 Ⅲ Q&A 集 付録 Ⅳ 他のガイドライン等との関係 付録 Ⅴ 基本方針の記述例 Copyright 2013 独立行政法人情報処

イ -3 ( 法令等へ抵触するおそれが高い分野の法令遵守 ) サービスの態様に応じて 抵触のおそれが高い法令 ( 業法 税法 著作権法等 ) を特に明示して遵守させること イ -4 ( 公序良俗違反行為の禁止 ) 公序良俗に反する行為を禁止すること イ利用規約等 利用規約 / 契約書 イ -5 (

PowerPoint プレゼンテーション

PowerPoint プレゼンテーション

営業秘密管理実務マニュアル

安全なウェブサイトの作り方 7 版 の内容と資料活用例 2

Microsoft Word - guideline02

マイナンバー制度 実務対応 チェックリスト

[2] 有用性 生産方法 販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報 とされ 具体的には 製品の設計図 製法 顧客名簿 販売マニュアル 仕入先リストなどが挙げられます ここでいう 有用な とは 実際に事業活動に使用されていたり 使用されることによって 経費の節約 経営効率の改善などに役立

QMR 会社支給・貸与PC利用管理規程180501

外部からの脅威に対し ファジング の導入を! ~ さらなる脆弱性発見のためのセキュリティテスト ~ 2017 年 5 月 10 日独立行政法人情報処理推進機構技術本部セキュリティセンター小林桂 1

中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン付録 8 情報資産管理台帳 (Ver.1.4) 業務分類 情報資産名称 備考 利用者範囲 管理部署 個人情報 個人情報の種類要配慮個人情報 マイナンバー 機密性 評価値 完全性 可用性 重要度 保存期限 登録日 脅威の発生頻度 ( 脅威の状況 シートで設定

経営の重要課題としての情報セキュリティ対策

はじめに 個人情報保護法への対策を支援いたします!! 2005 年 4 月 個人情報保護法 全面施行致しました 個人情報が漏洩した場合の管理 責任について民事での損害賠償請求や行政処分などのリスクを追う可能性がござい ます 個人情報を取り扱う企業は いち早く法律への対応が必要になります コラボレーシ

目次 1. 背景および目的 2. 調査概要 3. アンケート調査 判例調査方法 4. 営業秘密を取り巻く環境の変化の調査 5. 営業秘密の漏えい実態 6. 営業秘密の漏えいを検知する活動 7. 営業秘密の漏えい対策の取組状況 8. 漏えいを経験した企業の認識 9. 営業秘密管理を経営の問題と捉えてい

最初に 情報セキュリティは中小企業にこそ必要!! 機密性は 情報資産へのアクセスを最小限度に留めることで 購入する情報資産の金額を最小にします 完全性は 情報資産が正確 正しく動くことを保証し 業務を効率化します 可用性は 欲しい情報を欲しい時に入手できることで 業務時間を短縮します Copyrig

目次 2017 年情報セキュリティインシデントに関する調査結果 ~ 個人情報漏えい編 ~( 速報版 ) の解説 個人情報漏えいインシデントの公表ガイダンスについて 2/23

基本編_個人情報管理の重要性(本編)

企業内部の不正行為による情報流出リスク

不正競争防止法と営業秘密

1. 元職員による働きかけの規制 ( 第 38 条の 2 関係 )1 1 離職後に営利企業等 1に再就職した元職員(= 再就職者 ) は 離職前 5 年間に在職していた地方公共団体の執行機関の組織等 2の職員に対して 当該営利企業等又はその子法人と在職していた地方公共団体との間の契約等事務 3につい

スマートデバイス利用規程 1 趣旨 対象者 対象システム 遵守事項 スマートデバイスのセキュリティ対策 スマートデバイスの使用 スマートデバイスに導入するソフトウェア スマー

1.IT 機器の安全対策 えどがわ在宅ネットのみならず 施設のあらゆる医療情報システムは 厚生労働省の 医療情報システ ムの安全管理に関するガイドライン 第 4.2 版を考慮して 安全管理の対策を適切に講じる必要があ りますが ここでは えどがわ在宅ネットに関連する対策についてその主なポイントを記述

安全な Web サイトの作り方 7 版 と Android アプリの脆弱性対策 独立行政法人情報処理推進機構 (IPA) 技術本部セキュリティセンター Copyright 2015 独立行政法人情報処理推進機構

PowerPoint プレゼンテーション

個人情報管理規程

中小企業向け サイバーセキュリティ対策の極意

情報セキュリティ 10 大脅威 大脅威とは? 2006 年より IPA が毎年発行している資料 10 大脅威選考会 の投票により 情報システムを取巻く脅威を順位付けして解説 Copyright 2017 独立行政法人情報処理推進機構 2

目次 1. 中国における商業秘密の定義およびその要件について 商業秘密保護について 商業秘密保護の具体的な管理方法について 法的責任... 4

はじめてのマイナンバーガイドライン(事業者編)

目次 1. 営業秘密保護のこれまでの取組 2. 営業秘密を巡る近年の情勢 人を通じた技術流出海外拠点からの技術流出サイバー攻撃による技術流出技術提携先等からの技術漏えい 3. 営業秘密を巡る国際情勢 4. 営業秘密の今後の方向性 2

PowerPoint プレゼンテーション

学校の個人情報漏えい事故の発生状況について 本資料は 平成 25 年度 ( 平成 25 年 4 月 1 日 ~ 平成 26 年 3 月 31 日 ) に学校 教育機関 関連組織で発生した 児童 生徒 保護者らの個人情報を含む情報の漏えい事故についての公開情報を調査し 集計したものです 学校や自治体が

Microsoft Word - 内部統制システム構築の基本方針.doc

中小企業向け サイバーセキュリティ対策の極意

情報システムセキュリティ規程

情報セキュリティ 10 大脅威 大脅威とは? 2006 年より IPA が毎年発行している資料 10 大脅威選考会 の投票により 情報システムを取巻く脅威を順位付けして解説 Copyright 2018 独立行政法人情報処理推進機構 2

<355F838A E837D836C B E696E6464>

情報漏えいCS3.inx

直しも行う これらの事務については 稟議規程 文書管理規程 契約書取扱規程は管理本部長が所管 情報管理規程 情報セキュリティ管理規程はコンプライアンス推進部長が所管し 運用状況の検証 見直しの経過等 適宜取締役会に報告する なお 業務を効率的に推進するために 業務システムの合理化や IT 化をさらに

財団法人日本体育協会個人情報保護規程

総論 Q1 民間事業者はどのような場面でマイナンバーを扱うのですか A1 民間事業者でも 従業員やその扶養家族のマイナンバーを取得し 給与所得の源泉徴収や社会保険の被保険者資格取得届などに記載し 行政機関などに提出する必要があります 原稿料の支払調書などの税の手続では原稿料を支払う相手などのマイナン

この資料は マイナンバー制度 実施にともない企業( 事業者 ) が行われることをご紹介し情報セキュリティ対策や罰則についての誤った情報のため過大な準備をされることがないようお伝えし その上で なりすまし 犯罪等防止のため自社に応じたムダの少ない情報セキュリティ対策を検討されるための資料です

ALogシリーズ 監査レポート集

ISMS情報セキュリティマネジメントシステム文書化の秘訣

個人情報保護規定

目次 1. はじめに 背景 目的 調査概要 文献調査 内部不正による情報セキュリティインシデントに関する概況 環境犯罪学に関連する理論の整理 本調査における定義と分類 アンケート

(平成26年度)「個人情報の取扱いにおける事故報告にみる傾向と注意点」

点で 本規約の内容とおりに成立するものとします 3. 当社は OCN ID( メールアドレス ) でログインする機能 の利用申込みがあった場合でも 任意の判断により OCN ID( メールアドレス ) でログインする機能 の利用をお断りする場合があります この場合 申込者と当社の間に利用契約は成立し

<4D F736F F D208CC2906C8FEE95F182C98AD682B782E98AEE967B95FB906A93992E646F63>



目次 Ⅰ. 内部通報制度の意義等 事業者における内部通報制度の意義 経営トップの責務 本ガイドラインの目的と性格... 3 Ⅱ. 内部通報制度の整備 運用 内部通報制度の整備... 4 (1) 通報対応の仕組みの整備... 4 ( 仕組

(2) 情報資産の重要度に応じた適正な保護と有効活用を行うこと (3) 顧客情報資産に関して 当法人の情報資産と同等の適正な管理を行うこと (4) 個人情報保護に関する関係法令 各省庁のガイドライン及び当法人の関連規程を遵守すると共に これらに違反した場合には厳正に対処すること ( 個人情報保護 )

8. 内部監査部門を設置し 当社グループのコンプライアンスの状況 業務の適正性に関する内部監査を実施する 内部監査部門はその結果を 適宜 監査等委員会及び代表取締役社長に報告するものとする 9. 当社グループの財務報告の適正性の確保に向けた内部統制体制を整備 構築する 10. 取締役及び執行役員は

情報漏えい事案等対応手続(中小規模事業者用)

Microsoft Word Aプレスリリース案_METI修正_.doc

Microsoft Word - sp224_2d.doc

目 次 第 1 はじめに 2 1 ガイドライン策定の目的 2 2 ガイドラインの対象となる防犯カメラ 2 3 防犯カメラで撮影された個人の画像の性格 2 第 2 防犯カメラの設置及び運用に当たって配慮すべき事項 3 1 設置目的の設定と目的外利用の禁止 3 2 設置場所 撮影範囲 照明設備 3 3

ます 運送コンシェル は会員の皆さまの IP アドレス クッキー情報 ご覧になった広告 ページ ご利用環境などの情報を会員の皆さまのブラウザから自動的に受け取り サーバ ーに記録します 取得情報の利用目的について 運送コンシェル または 運送コンシェル が認める団体( 以下 運送コンシェル 等 とい

目次 取組み概要 取組みの背景 取組みの成果物 適用事例の特徴 適用分析の特徴 適用事例の分析結果から見えたこと JISAによる調査結果 どうやって 実践のヒント をみつけるか 書籍発行について紹介 今後に向けて 2

日商PC検定用マイナンバー_参考資料

第 号 2014 年 4 月 1 日独立行政法人情報処理推進機構 今月の呼びかけ あなたのパソコンは 4 月 9 日以降 大丈夫? ~ 使用中パソコンの判別方法 乗り換えプランを紹介 ~ マイクロソフト社 Windows XP と Office 2003 のサポートが 2014

程の見直しを行わなければならない 1 委託先の選定基準 2 委託契約に盛り込むべき安全管理に関する内容 (2) 個人データの安全管理措置に係る実施体制の整備 1) 実施体制の整備に関する組織的安全管理措置 金融分野における個人情報取扱事業者は ガイドライン第 10 条第 6 項に基づき 個人データの

技術的制限手段に関する現状 BSA ザ ソフトウェア アライアンス 2017 年 2 月 15 日

企業倫理・企業行動に関するアンケート集計結果(概要)

Ⅰ. マイナンバー制度概要 マイナンバー法の厳しい罰則規定 ( 民間企業 個人に係わるもの ) 行為懲役罰金 1 正当な理由がなく マイナンバーファイルを 提供 4 年以下 200 万円以下 2 不正な利益を得る目的で マイナンバーを 提供 盗用 3 年以下 150 万円以下 3 不正アクセス等によ

本プレゼンのポイント 脅威を知ることが対策への近道 2

1 策定の目的 この手引書は 茅ヶ崎市地域防犯カメラ ( 以下 地域防犯カメラ という ) の設置及び運用について配慮すべき事項を定めることにより 地域防犯カメラの有用性とプライバシー保護等との調和を図り 地域防犯カメラを適切かつ効果的に活用し 茅ヶ崎市の安心して安全に暮らせるまちづくりを推進するこ

Ⅰ はじめに 1 ガイドラインを策定する目的 大阪市は 政令指定都市の中でも街頭犯罪が多い都市となっており 安全で安心して暮らせるまちづくりのための対策が必要となっています その中で 防犯カメラは 24 時間撮影が可能であることから 犯罪の抑止効果があるとともに 犯罪発生時には容疑者の特定にも役立つ

個人情報流出に関するお問い合わせ窓口変更のお知らせ 2010 年 1 月 4 日 個人情報流出に関するお問い合わせ窓口変更のお知らせ 弊社では 1 月 4 日より 下記のとおり問い合わせ窓口を変更しますので お知らせいたします ダイヤル IBM お客様相談センター (1 月 4 日より ) フリーダ

<4D F736F F D208DBB939C97DE8FEE95F18CB48D EA98EE58D7393AE8C7689E6816A2E646F63>

品質マニュアル(サンプル)|株式会社ハピネックス

目次 1. はじめに 本調査の実施概要 既存調査研究のまとめ 海外の調査研究 国内における既存調査 関連する心理学の理論 本調査における定義と分類 事例調査

NEC CSR レポート 2016 CSR 経営ガバナンス社会環境 全社の管理体制 個人情報保護管理者 個人情報保護マネジメントシステムの実施及び運用に関する総括的な責任及び権限を持つ者 ( 特定個人情報保護責任者を兼ねる ) 特定個人情報保護責任者 特定個人情報の取り扱いに関する責任および権限を

組織内CSIRTの役割とその範囲

保健福祉局地域福祉課

TPT859057

個人情報分析表 類型 K1: 履歴書 職務経歴書 社員基礎情報 各種申請書 誓約書 同意書 入退室記録 教育受講者名簿 理解度確認テスト 本人から直接取得 社員管理に利用する 保管庫に保管する 廃棄する 残存 1. 同意を得ないで取得する 1. 目的外利用する 1. 紛失する 1. 廃棄物から情報漏

第 2 章 個人情報の取得 ( 個人情報の取得の原則 ) 第 4 条個人情報の取得は コンソーシアムが行う事業の範囲内で 利用目的を明確に定め その目的の達成のために必要な範囲においてのみ行う 2 個人情報の取得は 適法かつ公正な方法により行う ( 特定の個人情報の取得の禁止 ) 第 5 条本条各号

ください 5 画像の保存 取扱い防犯カメラの画像が外部に漏れることのないよう 一定のルールに基づき慎重な管理を行ってください (1) 取扱担当者の指定防犯カメラの設置者は 必要と認める場合は 防犯カメラ モニター 録画装置等の操作を行う取扱担当者を指定してください この場合 管理責任者及び取扱担当者

<はじめに> 退職後, 民間企業等に再就職した者による現職職員への働きかけ規制などにより, 職員の退職管理を適正に行い, 職務の公正な執行及び公務員に対する住民の信頼を確保するため, 地方公務員法が改正され, 平成 28 年 4 月 1 日に施行されました 本市では, 改正法の施行に伴い, 旭川市職

<8B4B92F681458CC2906C8FEE95F195DB8CEC2E786C7378>

青森県情報セキュリティ基本方針

PowerPoint プレゼンテーション

14個人情報の取扱いに関する規程


2 診断方法および診断結果 情報セキュリティ対策ベンチマークは 組織の情報セキュリティ対策の取組状況 (25 問 + 参考質問 2 問 ) と企業プロフィール (15 項目 ) を回答することにより 他社と比較して セキュリティ対策の 取組状況がどのレベルに位置しているかを確認できる自己診断ツールで

<4D F736F F D D A2E8A4F959488CF91F590E682CC8AC493C295FB96402E646F63>

きっかわ法律事務所 企業法務研究会(平成22年2月15日)資料            

問 2 戦略的な知的財産管理を適切に行っていくためには, 組織体制と同様に知的財産関連予算の取扱も重要である その負担部署としては知的財産部門と事業部門に分けることができる この予算負担部署について述べた (1)~(3) について,( イ ) 内在する課題 ( 問題点 ) があるかないか,( ロ )

自治会における 個人情報取扱いの手引き 霧島市市民環境部市民活動推進課

セキュリティテスト手法 ファジング による脆弱性低減を! ~ 外部からの脅威に対し 製品出荷前に対策強化するために ~ 2016 年 5 月 12 日独立行政法人情報処理推進機構技術本部セキュリティセンター情報セキュリティ技術ラボラトリー鹿野一人 1

注意すべきポイント 1 内定承諾書は 内定者の内定承諾の意思を明らかにさせるものです 2 2 以降の注意すべきポイントについては マイ法務プレミアムで解説しています

Transcription:

組織における内部不正とその対策 2017 年 5 月独立行政法人情報処理推進機構技術本部セキュリティセンター

目次 1. 内部不正に関する状況 報道から 実態調査から 2. 内部不正の起きる要因と対策 3. 内部不正防止ガイドラインについて 2

1. 内部不正に関する状況報道から :2016 年度も相次いだ内部不正事件 報道月事件の概要不正行為者動機 2016 年 6 月 A 市内のプロパンガス会社の社員 ( 当時 ) が 同社の営業秘密である顧客情報等を不正に取得し同業他社に開示したとして 不正競争防止法違反 ( 営業秘密の領得 開示 ) の容疑で逮捕された 6 月 B 市の元職員が 同市が管理する特定健康診断の対象者名簿等 約 13 万件の個人情報を不正に持ち出したとして 同市個人情報保護条例違反の容疑で逮捕された 退職者 退職者 所属する企業への不満 不明 7 月 C 機構事務所の元契約職員が C 機構の持つ個人情報を不正取得したとして 独立行政法人個人情報保護法違反の疑いで逮捕された 11 月 D 社の業務委託先である E 社社員が D 社発注工事 2 件の設計金額に関する情報を F 社に漏えいし 落札していた E 社社員と F 社役員及び法人としての F 社は 不正競争防止法違反で略式起訴された 11 月 G 社の元契約社員が 顧客のクレジットカード情報を不正に使用し 利益 ( 合計約 270 万円 ) を得たとして 不正競争防止法違反及び電子計算機使用詐欺の容疑で逮捕された G 社は自ら疑義のある取り引きを発見 内部調査を進めるとともに 警察に通報し 捜査に全面的に協力した 元契約社員は 2016 年 8 月に懲戒解雇された 退職者 委託先社員 退職者 ストーカー行為をするため 受注活動を有利にしたかった 不明 2017 年 1 月 H 区役所の元臨時職員が 勤務中に住民情報システムに接続し 個人情報を盗み見て女性宅に侵入したとして 同区個人情報保護条例違反と住居侵入の疑いで逮捕された 退職者 ストーカー行為をするため 2 月オンラインショップのプラットフォームを提供している I 社の元社員が ネットショップの運営者情報を含む 32,800 件の個人情報及び営業関連データを無断で社外に持ち出していたことが判明した 2 月 J 社の元専務と元社員が 営業秘密にあたる製品の技術情報を漏えいしたとして 不正競争防止法違反 ( 営業秘密侵害 ) 容疑で逮捕された 退職者 退職者技術者 不明 製品を製造販売しようとした ( 出典 ) 報道事例を基に IPA が作成 3

1. 内部不正に関する状況報道事例 : 元社員による営業秘密不正取得 2015 年 1 月 家電量販店 AA 社の元社員が退職前に事務所のパソコンに遠隔操作ソフトをインストールし 転職先 ( 競業企業 ) のBB 社の業務用パソコンから遠隔操作ソフトを通じて不正に営業秘密にあたる情報を取得したとして不正競争防止法違反 ( 営業秘密の不正取得 ) の容疑で逮捕された AA 社 元社員は 2013 年 12 月に AA 社を退職後 2014 年 1 月に BB 社に転職 2 つのルート 遠隔操作 元部下を手引き 退職後 90 日間アカウントが有効 遠隔操作 元社員 BB 社 1 退職前にパソコンに遠隔操作ソフトをインストール 2 転職先の BB 社から遠隔操作で営業秘密を不正取得 取得した営業秘密の一部は BB 社内で参照されていた 元社員の 20 年来の元部下 メールで送付 4

組織への影響 内部不正を発生させてしまった K 社 特別損失 260 億円 ( 情報セキュリティ対策 お客様への対応等 ) 新規営業活動の一時停止 役員 2 名 ( 代表取締役副会長 取締役 ) の引責辞任 内部不正を発生させてしまった内部不正の影響 L 社は大きい 応札辞退 指名停止 : L 社 6ヶ月 子会社 5 社 3カ月 役員 3 名 ( 執行役副社長 1 名 執行役常 2 名 ) 減俸 30%(1カ月 ) BB 社 (AA 社から営業秘密を持ち出したとして逮捕された元従業員の転職先 ) 不正競争防止法違反容疑で書類送検 (AA 社の営業秘密を転職者から不正取得したと判断 その後不起訴となった ) 2016 年 4 月 AA 社は営業秘密の不正使用について BB 社に対し 50 億円の損害賠償を求める民事訴訟を起こす ( 現在審理中 ) 不正競争防止法では 法人の従業員が業務に関して違反行為をした場合 法人に対しても 5 億円以下の罰金刑を科す ( 両罰規定 ) 5

1. 内部不正に関する状況内部者による営業秘密流出の実態 営業秘密の流出者は 2012 年度調査では 中途退職者 が最多 (50.3%) であったが 2016 年度調査では 現職従業員等のミス によるものが最多 (43.8%) 中途退職者向け対策が進んだ企業が増えたと推測 (n=105) 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 現職従業員等のミスによる漏えい 43.8% 中途退職者 ( 正規社員 ) による漏えい 24.8% 取引先や共同研究先を経由した漏えい 現職従業員等による具体的な動機をもった漏えい 外部からの社内ネットワークへの侵入に起因する漏えい 4.8% 7.6% 11.4% 2012 年度調査では 50.3% 2012 年度調査では 26.9% 中途退職者 ( 役員 ) による漏えい取引先からの要請を受けての漏えい外部者の不正な立ち入りに起因する漏えい退職した契約社員による漏えい退職した派遣社員による漏えい定年退職者による漏えいわからない 3.8% 3.8% 2.9% 2.9% 1.9% 1.0% 4.8% 2012 年度調査では 9.3%( 微増 ) その他 9.5% ( 出典 )2012 年度調査 : 経済産業省 : 人材を通じた技術流出に関する調査研究報告書 (2013 年 3 月 ) 2016 年度調査 :IPA 企業における営業秘密管理に関する実態調査報告書 (2017 年 3 月 )

1. 内部不正に関する状況内部者による営業秘密流出の実態 営業秘密の漏えい先は 国内競業他社 が32.4% と最も多い 22.9% の企業が漏えい先が わからない と回答 漏えい先を把握できていない (n=105) 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 35.0% 国内の競業他社 32.4% 国内の競業他社以外の企業 11.4% 外国の競業他社 10.5% 外国の競業他社以外の企業 わからない 4.8% 漏えい先を把握できていない 22.9% インターネット上に掲載されてしまった 社内の他部署の従業員等に開 されてしまった等 その他 30.5% ( 出典 )2016 年度調査 :IPA 企業における営業秘密管理に関する実態調査報告書(2017 年 3 月 ) 7

1. 内部不正に関する状況内部者による営業秘密流出の実態 営業秘密の漏えい先は 国内競業他社 が32.4% と最も多い そのうち 内部不正による漏えいが多くを占める 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 35.0% (n=105) 国内の競業他社 25.7% 32.4% 国内の競業他社以外の企業 7.6% 11.4% 外国の競業他社 4.8% 10.5% 外国の競業他社以外の企業 わからない 4.8% 4.8% 18.1% 漏えい先を把握できていない 22.9% インターネット上に掲載されてしまった 社内の他部署の従業員等に開 されてしまった等 その他 25.7% 30.5% 全体 内部不正 ( 出典 )2016 年度調査 :IPA 企業における営業秘密管理に関する実態調査報告書 (2017 年 3 月 ) アンケートデータを基に作成 8

1. 内部不正に関する状況実態調査から : 調査概要 内部不正による情報セキュリティインシデント実態調査 (2016 年 3 月 3 日公開 ) 調査方法 :Webアンケート 調査対象 : 業種別 従業員数別に抽出した民間企業における従業員等 3,652 名 内部不正を行った経験がある者 ( 内部不正経験者 )200 名 調査期間 :2015 年 11 月 25 日 ~30 日 主な調査項目 : 回答者の企業属性 個人属性および企業状況 情報セキュリティインシデントの発生状況 ( 内部不正も含む ) 内部不正対策の実施状況 内部不正発生時の対応 経営者 システム管理者と従業員の意識 出典が示されていないグラフ等はすべて 当該調査結果によるもの 各グラフには報告書の頁数 図番を示す その他 : 内部不正による被害を経験した企業へのインタビュー等を実施 9

1. 内部不正に関する状況実態調査から : 内部不正の発生状況 所属する企業組織で外部攻撃や内部不正が発生しているかどうか ( 報告書 P.12 図 1) 300 名以上 (N=1,278) 300 名未満 (N=2,374) 18.5% 外部攻撃があった 5.4% 8.6% 内部不正があった 1.6% 42.5% 外部攻撃や内部不正はは発生していない 66.6% 35.2% わからないわからない 26.8% 10

1. 内部不正に関する状況実態調査から : 内部不正の詳細 ( 内部不正経験者 ) 内部不正経験者が起こした内部不正の詳細 ( 報告書 P.15 図 9) ( 複数回答 ) 11

1. 内部不正に関する状況実態調査から : 内部不正を行った理由 ( 内部不正経験者 ) 故意ではない違反が多いが 故意も一定程度存在 ( 報告書 P.16 図 10) 内部不正経験者 (N=200) ルールを知っていたがうっかり違反した 40.5% ルールを知らずに違反した 業務が忙しく 終わらせるために持ち出す必要があった 17.5% 16.0% 処遇や待遇に不満があった ルールはあったが ルール違反を繰り返している人がいたので 自分もやった 持ち出した情報や機材で転職や企業を有利にしたかった 企業 組織や上司などに恨みがあった 11.0% 7.0% 3.5% 3.0% 故意による内部不正 持ち出した情報や機材を換金したかった 1.5% ( 単数回答 ) 12

1. 内部不正に関する状況実態調査から : 故意の情報持ち出しの行為者 動機 対象情報 手段 ( 内部不正経験者 ) 情報の持ち出しには USB メモリ 電子メールが多く用いられる ( 報告書 P.19 表 10 を編集 ) 組織での対策は USB メモリ等の外部記録媒体に関する利用ルールの徹底 および利用制限が有効と考えられる 項 1 位 2 位 3 位 為者システム管理者 23.5% 技術者 開発者 22.1% 経営層 役員 17.4% 不正 為の動機 業務が忙しく終わらせるため持ち出した 38.1% 処遇や待遇に不満があった 26.1% 持ち出した情報や機材で転職を有利にしたかった 16.7% 対象情報顧客情報 48.3% 技術情報 36.9% 営業計画 32.9% 持ち出し 段 USB メモリ 53.0% 電 メール 28.9% 紙媒体 18.8% 故意の不正行為経験者のみ (n=98 不正行為の動機 は n=84) 不正行為の動機 以外は複数回答 13

1. 内部不正に関する状況実態調査から : 情報持ち出し手段への対策状況 しかし 有効と考えられる対策について 方針やルールがない 企業も ( 報告書 P.22 図 17 P.24 図 18 より一部抜粋 ) 300 名以上 (n=500) モバイル機器や USB メモリ等の記録媒体を外部に持ち出す場合には 持ち出しを承認し記録等を管理している 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 13.2 16.0 20.6 34.8 15.4 私物のモバイル機器 記録媒体の持ち込みおよび業務利 を制限している 12.2 18.6 21.4 34.2 13.6 300 名未満 (n=1,000) モバイル機器や USB メモリ等の記録媒体を外部に持ち出す場合には 持ち出しを承認し記録等を管理している 53.2 14.0 8.9 10.6 13.3 私物のモバイル機器 記録媒体の持ち込みおよび業務利 を制限している 54.0 13.6 9.7 9.7 13.0 1 針やルールはない 2 針やルールがある ( 実施なし ) 3 2に加えてに実施あり ( 確認なし ) 4 3に加えて定期的に確認している ( 監査を含む ) 5 わからない 14

1. 内部不正に関する状況実態調査から : 内部不正を行った者への処分の状況 内部不正を行った者へ処分や起訴はしなかったという回答が3 割 ( 報告書 P.36 図 33) (%) 0 10 20 30 40 50 60 懲戒処分や起訴はしなかった 30.9 社内規定に従い懲戒処分とした 51.7 警察に相談した ( 被害届を出した ) 13.4 刑事告訴 告発した 10.7 民事訴訟した 9.4 15

1. 内部不正に関する状況実態調査から : 懲戒や起訴をしない理由 十分な証跡が取れておらず 処分ができなかった可能性 (%) ( 報告書 P.36 図 34) 0 10 20 30 40 50 懲戒処分や起訴ほどの被害が出なかった 41.3 証拠がない 情報が不足している 風評被害などイメージダウンとなることを懸念した 自社に対する信用失墜を懸念した 30.4 30.4 32.6 不正行為を行った個人を特定できなかった 23.9 公になることで競合他社が優位になることを懸念した 19.6 処分対象の従業員が退職されると困る 10.9 起訴の手続きがわからなかった警察 法的機関から事前に起訴を否定された懲戒処分や起訴できることを知らなかった法的機関から国家安全保障に関連するといわれた 2.2 0.0 0.0 0.0 その他 2.2 16

1. 内部不正に関する状況実態調査から : 内部不正防止に有効と考える対策の比較 経営者等が重要視していない対策が内部不正行為の抑止 に有効 ( 報告書 P.42 表 13) 内部不正経験者 経営者 対策システム管理者 順位 割合 順位 割合 ネットワークの利用制限がある ( メールの送受信先 1 位 50.0% の制限 Webメールへのアクセス制限 Webサイト 2 位 30.3% の閲覧制限がある ) 2 位 46.5% 技術情報や顧客情報などの重要情報にアクセスした人が監視される ( アクセスログの監視等を含む ) 4 位 27.0% 3 位 43.0% 4 位 25.0% 技術情報や顧客情報などの重要情報は特定の職員のみがアクセスできる 職務上の成果物を公開した場合の罰則規定を強化する 1 位 43.9% 12 位 12.8% 5 位 23.5% 管理者を増員する等 社内の監視体制を強化する 11 位 13.1% ( 内部不正経験者 :n=200 経営者 システム管理者 :n=1500) 17

2. 内部不正の起きる要因と対策内部不正を生み出す 3 要因 : 不正のトライアングル 内部不正は 動機 プレッシャー 機会 正当化 の 3 要因が揃った時に発生する 動機 プレッシャー不正行為に至るきっかけ 原因 : 処遇への不満やプレッシャーなど ( 業務量 ノルマ等 ) 人事に不満 金銭問題を抱えている 高いノルマを課されている 機会 不正行為の実行を可能 または容易にする環境 : IT 技術や物理的な環境及び組織のルールなど 広いシステム管理権限 持ち出し可能な環境 同じ業務を長期間担当 正当化自分勝手な理由づけ 倫理観の欠如 : 都合の良い解釈や他人への責任転嫁など 正当に評価がされない サービス残業 会社がわるい ドナルド R クレッシー ( 米国の組織犯罪研究者 ) による 18

2. 内部不正の起きる要因と対策内部不正防止対策は 3 要因の低減 組織対策として重要なこと = 動機 プレッシャー と 機会 の低減 動機 プレッシャー 機会 正当化 組織として能動的に低減できるのは動機と機会 3 要因を低減 職場環境整備 不満の解消等 監視 不正行為の抑止 ( 必ず見つかる 利益にならない ) 内部不正防止対策 動機機 機 技術対策アクセス管理 ログ管理 暗号化等 機 組織対策体制 内部統制 法令遵守強化等 正 モニタリング 通報制度等 誓約書署名等 19

2. 内部不正の起きる要因と対策状況的犯罪予防 状況的犯罪予防 の 5 原則 1. 犯行を難しくする 2. 捕まるリスクを高める 3. 犯行の見返りを減らす 4. 犯罪の誘因を減らす 5. 犯罪の弁明 ( 言い訳 ) を許さない 犯罪学者の Cornish & Clarke(2003) が提唱した都市空間における犯罪予防の理論 主眼 : 監視者設置等で外部からのコントロールが可能な 環境 を適切に定める犯罪機会 動機を低減し 予防する犯罪予防策直接的に犯罪を防止する対策間接的に犯罪を防止する対策 20

2. 内部不正の起きる要因と対策状況的犯罪予防から応用 状況的犯罪予防の考え方を内部不正防止に応用した 5 原則 1. 犯行を難しくする ( やりにくくする ) 対策を強化することで犯罪行為を難しくする 2. 捕まるリスクを高める ( やると見つかる ) 管理や監視を強化することで捕まるリスクを高める 3. 犯行の見返りを減らす ( 割に合わない ) 標的を隠したり 排除したり 利益を得にくくすることで犯行を防ぐ 4. 犯行の誘因を減らす ( その気にさせない ) 犯罪を行う気持ちにさせないことで犯行を抑止する 5. 犯罪の弁明をさせない ( 言い訳させない ) 犯行者による自らの行為の正当化理由を排除する 機会 を低減 動機 を低減 正当化 を低減 21

2. 内部不正の起きる要因と対策内部不正対策をはじめよう やりにくくする割りに合わない適切なアクセス権限管理最小権限の原則 重要情報へのアクセスを制限 やると見つかる ログの記録と定期的な監査 監視 言い訳させない ルール化と周知徹底私物の業務利用 記録媒体等の持ち出しルール等 IC カード バイオメトリックス認証 アクセス権限者 未承認 PC 未承認モバイル 秘 営業秘密 重要情報へのアクセスを制限 承認 記録 持ち込み禁止 持ち出し 承認済 顧客データベース等 一般情報 操作ログ 内部不正の抑止罰則規定の強化 その気にさせない 内部不正対策の継続した見直し 改善 22

2. 内部不正の起きる要因と対策内部不正対策は一石二鳥?! 外部攻撃やランサムウェア対策にも有効 適切なアクセス権限管理 は 内部不正をやりにくくする対策としても有効 ( 例 ) 適切なアクセス権限管理 により ランサムウェアから守られている図 ( 出典 )IPA ランサムウェアの脅威と対策 ~ランサムウェアによる被害を低減するために~ 23

3. 内部不正防止ガイドラインについて組織における内部不正防止ガイドラインのご紹介 内部不正を防止するための環境整備に役立てて頂くためのガイドライン 内部不正チェックシートで現状の対策状況を把握 1 対策の指針 ポイントを理解するリスクに対する具体的な対策を立案するためのヒント 組織における内部不正防止ガイドライン 第 4 版 内部不正チェックシート ( 付録 ) 2 具体的な実施策を立案する製品 ソリューションを検討 参考 )JNSA 内部不正対策ソリューションガイド内部不正ガイドラインの30の対策項目を実現するための製品やサービスをまとめたソリューションガイド http://www.jnsa.org/solguide/index.htm JNSA: 特定非営利活動法人日本ネットワークセキュリティ協会 https://www.ipa.go.jp/security/insider/index.html 24

情報セキュリティマネジメント試験 IT 利 部 の情報セキュリティ管理の向上に役 つ国家試験あらゆる部 で必要な 情報セキュリティ管理の知識を体系的に習得できます 受験をお勧めする 個 情報を扱う全ての 業務部 管理部 で情報管理を担当する全ての 試験実施 年 2 回実施 ( 春期 秋期 ) 春期 : 4 第三 曜 秋期 :10 第三 曜

試験の主なメリット セキュリティ を積極出題 エントリー シート等活 仕事に役 つ セキュリティ に強くなる 就職に役 つ ) 戦略 財務等 幅広い出題 う(えみね あい が備えておくべきITに関する基礎的 な知識が証明できる国家試験です 上峰 亜衣 すべての社会 学 パソコンを利 して受験するCBT 式なので 都合の良いとき に受験可能 お申込みはiパスWebサイトで常時受付中 公式キャラクター iパス は ITを利活 する