1. はじめに肉用牛の飼養管理は, 頭数増加や飼育技術の進歩により変化する. たとえば, 農家当たりの飼養頭数増加は, 作業者数や 1 人当たりの作業時間に変化がなければ,1 頭当たりの作業時間を短縮させる. こうした状況は, 作業者数の増加や, 機械化による省力化を進めることで, 補うことが行われ

Similar documents
現在 本事業で分析ができるものは 1 妊娠期間 2 未経産初回授精日齢 3 初産分娩時日齢 / 未経産妊娠時日齢 4 分娩後初回授精日 5 空胎日数 6 初回授精受胎率 7 受胎に要した授精回数 8 分娩間隔 9 供用年数 / 生涯産次 10 各分娩時月齢といった肉用牛繁殖農家にとっては 極めて重要

Microsoft Word - 宮崎FMDマニュアル⑦ 指針別紙(評価)

和牛開始マニュアル

資料 6-1 指定食肉 ( 豚肉及び牛肉 ) の安定価格肉用子牛の保証基準価格等算定概要 生産局 平成 27 年 12 月

6-1 指定食肉 ( 豚肉及び牛肉 ) の安定価格肉用子牛の保証基準価格等算定概要 生産局 平成 27 年 1 月

農業高校における繁殖指導とミニ講座による畜産教育支援 大津奈央 中島純子 長田宣夫 飯田家畜保健衛生所 1 はじめに 管内の農業高校では 教育の一環とし て 繁殖雌牛4頭を飼育し 生徒が飼養 いた また 授業外に班活動として8名が畜 産部に所属していた 管理を担うとともに 生まれた子牛を県 飼養管理

11 年度以降 これまでに採択した新規参入者は215 者である 道県別にみると 宮崎県が38 者と最も多く 次に鹿児島県の34 者 北海道の31 者 長崎県の26 者となって いる ( 図 1) なお 直近の採択となった 26 年度は 5 県 7 事業実施主体で 新規参入者 10 者を採択した 図

「牛歩(R)SaaS」ご紹介

(Taro-09\221S\225\ \221S\225\266\217\274\226{.jtd)


乳牛の繁殖技術と生産性向上

肉牛生産管理ご紹介

2 肉用牛肥育経営安定特別対策事業 ( 牛マルキン ) について 牛マルキンとは 肉用牛肥育経営の安定を図ることを目的として 肉用牛肥育経営の収益性が悪化した場合に 生産者の拠出と機構の補助により造成した基金から 粗収益と生産コストの差額の8 割を補塡する事業である 粗収益は期間中に食肉卸売市場また

通常 繁殖成績はなかなか乳量という生産性と結びつけて考えることが困難なのですが この平均搾乳日数という概念は このように素直に生産性 ( 儲け ) と結びつけて考えることができます 牛群検定だけでなく色々な場面で非常に良く使われている数値になりますので覚えておくと便利です 注 1: 平均搾乳日数平均



( 図 7-A-1) ( 図 7-A-2) 116

A 農場の自家育成牛と導入牛の HI 抗体価の と抗体陽性率について 11 年の血清で比較すると 自家育成牛は 13 倍と 25% で 導入牛は 453 倍と % であった ( 図 4) A 農場の個体別に症状と保有している HI 抗体価の と抗体陽性率を 11 年の血清で比較した および流産 加療

< F2D382E8D9596D198618EED82C982A882AF82E98B8D94928C8C9561>

Microsoft PowerPoint - 02 廣田部長.pptx

ph

子牛育成の参考書 ~ 子牛育成プロジェクトの調査結果から ~ 平成 26 年 3 月 東松浦農業改良普及センター唐津農業協同組合上場営農センター北部家畜保健衛生所

ニュースリリース 農業景況調査 : 景況 平成 3 1 年 3 月 1 8 日 株式会社日本政策金融公庫 平成 30 年農業景況 DI 天候不順響き大幅大幅低下 < 農業景況調査 ( 平成 31 年 1 月調査 )> 日本政策金融公庫 ( 略称 : 日本公庫 ) 農林水産事業は 融資先の担い手農業者

解 説 一方 乳成分にも違いが見られた 分娩後30日以内 産牛100頭規模の農場としている 損失額の計算は で乳脂肪率が5 を超える場合は栄養不足で体脂肪の ①雄子牛の出生頭数減少 雄子牛の売却減 ②雌子 過剰な動員が起こっていると判断できる この時期に 牛の出生頭数減少 更新牛購入コスト ③出荷乳

国産粗飼料増産対策事業実施要綱 16 生畜第 4388 号平成 17 年 4 月 1 日農林水産事務次官依命通知 改正 平成 18 年 4 月 5 日 17 生畜第 3156 号 改正 平成 20 年 4 月 1 日 19 生畜第 2447 号 改正 平成 21 年 4 月 1 日 20 生畜第 1

(Microsoft Word -

Highlights Employment increased in Ontario, Saskatchewan, and Manitoba. There was little change in the other provinces. More people were employed in c

Microsoft Word - 02肉牛研究室

豚における簡便法を用いた産子数の遺伝的改良量予測 ( 独 ) 農業 食品産業技術総合研究機構畜産草地研究所 石井和雄 豚の改良には ある形質に対し 優れた個体を選抜してその個体を交配に用 いることで より優れた個体を生産することが必要である 年あたりの遺伝的改良量は以下に示す式で表すことができる 年

平成 19 年度 家畜市場肉用牛取引実績報告書 ( 平成 19 年 4 月 ~ 平成 20 年 3 月 ) 財団法人沖縄県畜産振興基金公社 沖縄県浦添市伊奈武瀬 ( 沖縄県中央卸売市場 2 階 ) 電話 098-(869)7027 FAX 098-(869)7030


褐毛和種(熊本系)の遺伝的能力の推移について

目 次 農作物共済の当然加入制 1 水稲共済が任意加入制になると 掛金の納入期限はどのようになりますか 1 引受方式の取扱い 2 今回の改正により 引受方式は今後どのようになるのですか 2 3 水稲共済の一筆半損特例の掛金は いくらになりますか 3 4 一筆半損特例は 畑作物共済及び果樹共済にも導入

年 ( 平成 25 年 )10 月 235 (1) 繁殖管理の基本は? 繁殖管理では 早期の子宮と卵巣の回復 的確な発情の発見 適期授精に気をつけることが重要と言われています 分娩後四十日経っても発情兆候のない牛は 獣医師に検診を依頼することも必要です 二回目(四十日~五十日)に良い発


<4D F736F F D AAE90AC94C B835794D48D8682C882B5816A915395B68CB48D652E646F63>

<4D F736F F D B4B92F6976C8EAE A6D92E894C5816A2E646F63>

ふくしまからはじめよう 農業技術情報 ( 第 39 号 ) 平成 25 年 4 月 22 日 カリウム濃度の高い牧草の利用技術 1 牧草のカリウム含量の変化について 2 乳用牛の飼養管理について 3 肉用牛の飼養管理について 福島県農林水産部 牧草の放射性セシウムの吸収抑制対策として 早春および刈取

まえがき 我が国は いまだ経験したことのない経済社会の構造の変化に直面し 大きな転換点を迎えており 変化に対応したスピード感のある取組が求められています 酪農 肉用牛生産については 農家戸数や飼養頭数の減少など 生産基盤の弱体化により 生乳生産量が減少し また子牛価格が高騰しており この状態を放置す

研究報告本文.indd

Microsoft Word - H21_全国集計_解析編.doc

参考1中酪(H23.11)

家畜共済の特長 家畜共済は 畜産農家 特長 1 低額な掛金 NOSAI の家畜共済は 国の政策保険です 掛金の約半分を国が負担するので 生産者様の負担はぐっと小さくなります 搾乳牛 100 頭あたり 5 割補償約 473 万円 肥育牛 100 頭あたり 5 割補償約 172 万円 繁殖牛 100 頭

肉用牛 _ 生産コスト縮減に向けた主な取り組み 2 放牧 放牧は 放牧に取り組む前と比べて 飼料費を約 25% 労働費を約 35% 削減できることから 肉用牛繁殖農家の所得向上に有効な手段である また 放牧に取り組むことで 増頭につながった事例もある バヒアグラス草地への放牧 水田放牧 矮性ネピアグ

酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針について 我が国農業における畜産の地位 酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針 ( 酪肉近 ) について 酪肉近のポイント

B 農場は乳用牛 45 頭 ( 成牛 34 頭 育成牛 7 頭 子牛 4 頭 ) を飼養する酪農家で 飼養形態は対頭 対尻式ストール 例年 BCoV 病ワクチンを接種していたが 発生前年度から接種を中止していた 自家産牛の一部で育成預託を実施しており 農場全体の半数以上の牛で移動歴があった B 農場

農林水産省より 2015 年農林業センサス結果の概要 ( 確定値 ) が公表されましたので 富山県の概要について 次のとおりお知らせいたします 2015 年農林業センサス結果の概要 ( 確定値 ) について ( 農林業経営体調査 富山県分 ) - 農業経営体数が減少する一方 法人化や経営規模の拡大が

スライド 1

近畿圏鉄道市場における競争の特質

H24/08/00

The Journal of Farm Animal in Infectious Disease Vol.2 No NUTRITION AND METABOLISM IN CALF 総 説 子牛の栄養 代謝の特異性 久米新一 京都大学大学院農学研究科 ( 京都市左京区

The Journal of Farm Animal in Infectious Disease Vol.2 No DELAYED PARTURITON AND INFLUENCE OF INDUCED PARTURITION ON CALVES 総 説 黒毛和種繁殖雌牛の分娩遅延の要

スライド 1

別記様式 ( 第四号関係 ) 記入例 農業経営改善計画認定申請書 平成 年 月 日 庄原市長様 農業法人の場合は 法人名と代表者氏名を書き 法人の設立年月日も必ず記入する 申請者 フリガナ住所 所在地 フリガナ氏名 名称 フリガナ 代表者 ショウバラシ 庄原市中本町 ノウギョウ農業 ナカホンマチ タ

岡山農総セ畜研報 6: 55 ~ 59 (2016) < 研究ノート > 黒毛和種における繁殖性向上を目指した飼料給与体系の検討 福島成紀 木曽田繁 滝本英二 Examination of the Feeding Method Aiming at Improving reproductive Per

2 The Bulletin of Meiji University of Integrative Medicine 3, Yamashita 10 11

表紙(確).xlsx


たかということになります 従って これからは妊娠率という考え方が必要になってくると考えています もちろん 受胎率という考え方を否定しているのではありません さて 畜産経営の中の繁殖を考える上で重要なことは 繰り返しになりますが受胎率ではなく妊娠率であると考えられます しかし 人工授精や受精卵移植を行

黒毛和種の受動免疫による呼吸器病ワクチネーション効果と飼養管理 現場では時間的 労力的な制約から十分実施されることは少なく断続的に発生する呼吸器病の対応に苦慮する事例が多い また 黒毛和種は乳用種に比べ幼齢期の免疫能が劣る [5] のに加え ロボットでは運動量増に伴う栄養要求量の増加 闘争によるスト

< F835A83938A6D95F12E786C73>

CHEMOTHERAPY Fig. 1 Body weight changes of pregnant mice treated orally with AM- 715 Day of sestation

ñ{ï 01-65

LAGUNA LAGUNA 10 p Water quality of Lake Kamo, Sado Island, northeast Japan, Katsuaki Kanzo 1, Ni

I

千葉県における温泉地の地域的展開

図 1 全国の繁殖雌牛数と主要市場の子牛価格の推移 全国の繁殖雌牛数 ( 千 ) ( 千円 / ) 全国の繁殖雌牛数 主要市場の子牛価格 ( 右軸 ) 主要市場の子牛価格 平成 13 14

Bostock hay fever ,

22.Q06.Q

大分県農業共済組合 大分県農業共済組合作成 収入保険と既存制度の掛金及び補てん金の比較 ( 大分県 ) 品目 : 米 平均収入 100 万円作付面積 83a 単収 504kg/10a シナリオ 1 販売価格が 地域平均で シナリオ 2 販売価格が 個人のみで シナリオ 3 自然災害により 地域全体が

< F2D30325F90568B8C91CE8FC6955C81698AEE967B97768D6A816A2E6A7464>

広島総技研畜技セ研報 Bull,Hiroshima Pref. Tech.Res.Ins. Livest.Tech.Res.Cent. ISSN 広島県立総合技術研究所 畜産技術センター研究報告 Bulletin Hiroshima Prefectural Technology

Microsoft Word - ★調査結果概要3.17版new.doc



物単位当たりの生産費用が逓減することによる利益 2 規模が拡大することで労働の生産力の増大により収益が逓増することによる利益 3 規模の拡大による生産物の品質水準の確保が 規模の利益 である 1の生産費用の逓減による利益は 一般的にいわれることであるが 農業経営に必要な農機具 装置 労働力 生産管理

91 / GNI.-*,**, + + +,*. +,*..+ +, ,*-+ 0,*,3 2, /+./1.+, 10. /02 -/ ,- *,*.,**/ + +/, 3** ,

<4D F736F F D AA95D8914F82CC B8AC7979D8E B8B5A8CA4816A817989FC92F994C5817A2E646F63>

第1回 オリエンテーション

DAY )

<4D F736F F D2093F797708B8D95E28AAE97768D6A B95B6816A2E646F6378>

ハビリセンター 受精卵センター バイオマスセンター等の諸施設があり 人的組織としては和牛ヘルパー組合 和牛婦人部などがある 設立以来の主要な活動を挙げると 次のようになる 特長として 1 当初から行政が深く関わり 市役所のリーダーシップで行われてきた 2 農協を含め 全畜種を網羅し 地域全体をまとめ

untitled

埼玉県調査研究成績報告書 ( 家畜保健衛生業績発表集録 ) 第 57 報 ( 平成 27 年度 ) 9 牛白血病ウイルス感染が生産性に及ぼす影響 中央家畜保健衛生所 畠中優唯 Ⅰ はじめに牛白血病は散発性と地方病性 ( 成牛型 ) の2つに分類される 牛白血病ウイルス (BLV) 感染を原因とする地


4 農林業 経営耕地面積割合 ( 農家数 ) ( 平成 27 年 ) 畑 63.4% (171 戸 ) 田 11.3% (53 戸 ) 樹園地 25.3% (102 戸 )

対象収入 所得税法上の農業所得として申告されているものの例 自ら生産した農産物の販売収入全体を対象 ( 所得ではない ) 加工品は原則として販売収入に含めない ( ただし 所得税法上の農業所得として申告されているものは含める このため 精米などの加工品であっても 農業者が自ら生産した農産物を加工して

南太平洋におけるマグロ類とマカジキの体長と体重の関係について


農林水産省畜産再興プラン実現推進本部酪農生産基盤強化部会 酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針 - 地域の知恵の結集による畜産再興プラン - 人 牛 飼料の視点での基盤強化 酪農生産基盤の強化 のポイント 生クリーム 平成 27 年 4 月

安全な畜産物の生産と生産性の向上適正な飼養管理家畜の健康の維持 家畜のアニマルウェルフェア (Animal Welfare) とは 国際獣疫事務局 (OIE) のアニマルウェルフェアに関する勧告の序論では アニマルウェルフェアとは 動物が生活及び死亡する環境と関連する動物の身体的及び心理的状態をいう

Ⅱ. 用語の操作的定義 Ⅲ. 対象と方法 1. 対象 WAM NET 2. 調査期間 : 3. 調査方法 4. 調査内容 5. 分析方法 FisherMann-Whitney U Kruskal-Wallis SPSS. for Windows 6. 倫理的配慮 Vol. No.

<4D F736F F D F093458F6F82B582BD8D9596D198618EED8E938B8D82CC94EC88E78CF889CA2E646F63>

Taro-19増田

Consideration of Cycle in Efficiency of Minority Game T. Harada and T. Murata (Kansai University) Abstract In this study, we observe cycle in efficien

(3) 事業内容 男性は 2 年に一度程度しか帰郷することができず 村に残した妻と子どもは男性の帰りを待っている このような状況のなか 住民は出稼ぎ労働に頼ることなく 子どもたちを進学させ 医療費や食費の不安が少ない生活を送りたいと願っている その為 シンジャイ県では 農家収入を向上させることで貧困

untitled

Microsoft PowerPoint - 08economics4_2.ppt

名称未設定-2

MergedFile

Transcription:

黒毛和種繁殖農家における経営的指視点からの母牛繁殖および子牛育成成績の検討 森本正隆 1) 森田茂 2) 1) 北海道酪農畜産協会 札幌市 060-0004 2) 農食環境学群 酪農学園大学 江別市 069-8501 The economy balance of the breeding farm of Japanese Black cattle from the aspects of the reproduction performance and the growth result of calves Morimoto, Masataka 1) and Shigeru Morita 2) 1) Hokkaido Dairy and Animal Industry Association, Sapporo, Hokkaido, 060-0004, Japan 2) College of Agriculture, Food and Environment Sciences, Rakuno Gakuen University, Ebetsu, Hokkaido, 069-8501, Japan キーワード : 黒毛和種牛, 繁殖成績, 育成成績, 経済性 Key words:japanese Black cattle,reproduction performance,growth of calves, economy balance 要約 北海道における黒毛和種繁殖経営において飼養頭数が増加している. 肉用牛繁殖経営では規模拡大に伴い子牛 1 頭当たりの飼養管理時間が減少する. こうした頭数規模の拡大による1 頭当たり労働時間の短縮や複合経営における作目間の労働競合から, 牛群の観察にかかる1 頭当たりの時間も減少していると考えた. 北海道における黒毛和種の分娩間隔は 425 日で 目標とする 380 日 (12.5 か月 ) と大きな開きがあり, 全国平均の 413 日 (2014 年度 ) と比較して 12 日長くなっていた. 分娩間隔延長による経済損失は,12.5 か月と比較し 14 か月では繁殖牛 1 頭当たり 57 千円の損失となった. 分娩間隔を目標の 12.5 か月に短縮するためには 75% 以上の発情発見率を目指す必要がある これまで1 日 2 回の定時観察が推奨されているが,75% 以上の発情発見率を達成するためには観察回数を増やし観察時間を確保する必要があると考えた. ただし 管理者の観察による発情発見には限界があり それを補うシステムの導入が必要である 子牛の販売価格差は, 発育が悪くなるほど ( 日齢体重が小さくなるほど ) 大きくなった. また, 病傷被害では呼吸器病が 51% を占めており, 予防対策による販売価格の向上は子牛 1 頭当たり約 59 千円と推定された. 分娩時の事故や呼吸器病などの疾病被害は牛群の観察を強化することで減少させることができるので, 観察時間確保およびそれを補うシステム導入が必要である. 1

1. はじめに肉用牛の飼養管理は, 頭数増加や飼育技術の進歩により変化する. たとえば, 農家当たりの飼養頭数増加は, 作業者数や 1 人当たりの作業時間に変化がなければ,1 頭当たりの作業時間を短縮させる. こうした状況は, 作業者数の増加や, 機械化による省力化を進めることで, 補うことが行われてきた. 最近では, 機械による肉体労働的省力化ではなく, 情報通信技術 (ICT) を用いて, 作業者を増加させることなく, 牛群観察や飼養管理上の判断を省力化 的確化したうえで, さらに生産性を向上させるという動きが活発になっている ( 谷原, 2017). 黒毛和種繁殖経営においては, 子牛を確実に生ませること, 事故無く育成し販売することは, 収益に直結する重要な課題である. すなわち繁殖雌牛の育成管理を向上させ, 発情発見率や受胎率を高めることにより初産月齢や分娩間隔を短縮したり, 出生した子牛の生存率を高めることが, 肉牛繁殖農家経営の成否を決める指標となる. 第 9 次北海道家畜改良増殖計画 (2016) では, 平成 37 年度の繁殖能力に関する目標値を, 初産月齢 24.0 か月, 分娩間隔 12.5 か月に設定されている. 改良計画は, 農家経営の安定や生産基盤強化を目的としているものの, 現実の肉牛農家に当てはめ, 北海道における現状と比較したり, 目標値との乖離が経営的損失に及ぼす影響や, 目標値に近づけるための技術的対応については議論していない. さらに, 出生した子牛の死廃事故発生については, 農家経営と直接関係するため, 北海道農業技術体系 ( 北海道農政部,2013) では 3 か月齢未満の死廃率を 3% 未満とすることを目標としている. あわせて, 子牛の疾病による発育停滞も肉牛経営と関連するが, これらについての明確な目標はなく, 死廃率改善も含め, 農家経営への寄与も明らかにされていない. こうした目標値を明らかすれば, 農場管理者の飼養管理技術の向上意欲を高めることにつながる. そこで本報告では, 繁殖雌牛の分娩間隔短縮と諸経費との関係や 子牛の疾病防止や発育向上と市場価格との関係を検討し, 黒毛和種繁殖農家における飼養管理改善による経済効果について試算した. 2. 北海道における黒毛和種繁殖農家の現状近年, 北海道における肉用牛の飼養規模は拡大している.2005 年における繁殖雌牛 50 頭以上の飼養農家戸数のシェアは 9.1% で頭数シェアでは 45.5% であったが,2015 年には戸数で 23.2%, 頭数で 58.5% を占めるようになった ( 表 1). 肉用牛繁殖経営では規模拡大に伴い, 子牛 1 頭当たりの飼養管理時間が減少した ( 表 2). また, 北海道酪農畜産協会の調査では, 分娩間隔がほぼ目標値 (12.5 か月 ) の農家事例であっても, 肉牛専業, 肉牛と耕種の複合経営 ( 以下複合経営 ) を問わず成牛頭数の多い農家ほど成牛 1 頭当たりの 飼養管理労働時間が短かった ( 表 3). 耕地主体複合経営では 肉牛専業農家に比べ飼養頭数の小さな農家が多かった ( 表 3). しかし こうした経営体では 複合作目との労働競合があり, 農繁期においては飼養管理時間の確保が難しい経営もあった. 2

たとえば 北海道酪農畜産協会の調査対象農家 (2016) のうち 耕作主体経営 1 戸 ( 作物構成は繁殖牛 33 頭 小麦 6.7ha 小豆 1.9ha 手亡 3.5ha てんさい 4.2ha かぼちゃ 0.2ha たまねぎ 0.5ha にんにく 0.3ha および牧草 3.0ha) について, 飼養管理労働時間の調査結果と北海道農業生産技術体系 ( 北海道農政部,2013) によって算出した作物栽 培労働時間を合わせた旬別労働時間を図 1 に示した. この農家は, 牧草を含む畑地面積が 20ha 程度であったが 旬別労働時間が 150 時間以上となる時期があった. このように耕地主体経営では肉用牛以外の作物との労働競合が起こる時期があることが示された. 3

表 4 には北海道における過去 10 年間の肉牛農家の複合経営比率および経営規模推移を示した. 2006 年に 74% であった複合農家の比率は 2015 年では 64% と減少しているものの, 一定の割合を 占めていた. さらに 1 戸当たりの飼養頭数は拡大 しており, 特に繁殖経営では 2006 年の 28 頭から 2015 年の 40 頭へと増加した. すなわち, 規模拡大に伴い1 頭当たりの労働時間は短縮し, それにより1 頭当たりの牛群観察時間は短くなると言える. また, 複合経営にあっては労働時間が大幅に増加する時期において, 十分な観察時間を確保することが難しい場合があると考えた. こうした状況下にあっても 黒毛和種繁殖経営においては 子牛を確実に生ませること, 事故無く育成し販売することは, 収益に直結する重要な課題である. 北海道における黒毛和種の分娩間隔は, 平成 27 年度において 13.9 か月 ( 北海度酪農畜産協会,2016), これより推定される経産牛の子牛生産率 (1 年に生まれる子牛の繁殖雌牛に対する割合 ) は 86.3% で, 第 9 次北海道家畜増殖計画における分娩間隔の目標値 12.5 か月 ( 子牛生産率 96%) とは大きな開きがある. また, 疾病による子牛の損耗は, 死廃事故で 5.8%, 傷病被害率では 37.8% となっている ( 北海道農業共済組合連合会, 2016). こうした課題を改善するには 繁殖成績を向上するには発情を確実に見つけ適期に授精を行う必要がある. また, 疾病による損害を減らすためにはワクチンなどの予防対策や疾病の早期発見による治療が重要である. 3. 繁殖性と発情観察 1) 黒毛和種の繁殖実態北海道における黒毛和種の分娩間隔は 425 日 (14.0 か月 ) 程度で推移し, 初産分娩月齢は約 28 か月齢であった ( 北海道和牛振興協議会 北海道酪農畜産協会,2016). これらの数値には, 北海道家畜改良増殖目標 (2016 年 3 月 ) の分娩間隔 12.5 か月, 初産分娩月齢 24 か月齢と大きな開きがあった ( 表 5).2014 年の全国平均では分娩間隔 413 日, 初産分娩月齢 26 か月齢であり, 北海道は全国と比較しても分娩間隔, 初産分娩月齢ともにやや長かった. 4

2) 分娩間隔の延長による経済損失分娩間隔の延長による経済損失は, 子牛の販売価格や飼料価格など試算時の経済状況により大きく変化する. 表 6には, 更新した牛の全てが分娩し 経産牛の全てが表中の分娩間隔で分娩するものとして 繁殖牛 100 頭規模の牛群における分娩間隔ごとの損失額を分娩間隔の目標値 (12.5 か月 ) である場合と比較して示した. 算出方法は 以下のとおりである. 1 子牛生産頭数 =100 頭 子牛生産率子牛生産率 = 初産牛割合 ( 更新率 )+ 経産牛割合 (1- 更新率 ) 12 か月 分娩間隔 2 子牛販売頭数 = 子牛生産頭数 - 更新頭数 (100 頭 更新率 ) 3 遺失販売額 = 分娩間隔 12.5 か月の場合の販売額との差額 4 経費減少額 ( 販売子牛減少に伴う経費減少分 ) = 販売子牛にかかる飼料費およびその他の育成にかかる経費 5 実質損失額 = 遺失販売額 - 経費減少額また 算出基礎の数値は 以下のとおりとした. 6 子牛価格は, 雌 641 千円 / 頭, 去勢 726 千円 (H27 年全国平均, 農畜産振興機構調べ ) とした. 7 経産牛の更新率は,16.4%( 北海道農業生産技術体系第 4 版, 北海道農政部,2013) とした. 8 飼料費は, 子牛 1 頭当たり 77,646 円とした. ただし 飼料給与料は北海道農業生産技術体系第 4 版, 購入飼料の単価は酪農畜産協会の調査事例の購入飼料単価, 自給飼料生産費は, 平成 26 年度畜産物生産費 ( 農林水産省,2016) によった. 9その他の育成にかかる経費は,22,328 円とした. ただし, 平成 26 年度畜産物生産費 ( 農林水産省,2016) における子牛生産費の敷料費, 光熱水費, 諸材料費, 獣医医薬品費, 賃料料金, 生産管理費, 雇用労賃の合計の 1/3 を子牛育成分とした. 公課諸負担, 繁殖牛償却費, 建物費, 自動車費, 農機具費は 子牛生産頭数が減っても減少しない経費として計算に入れなかった. この例では, 現状の分娩間隔 14 か月と目標の分娩間隔 12.5 か月には, 実質損失額で 5,750 千円の差があった. 北海道における繁殖規模で最も多い階層は 20 頭 ~49 頭で, この階層 ( 平均頭数 35 頭 ) で計算すると分娩間隔を目標値である 12.5 か月にすれば1 戸当たり 2,000 千円程度の所得が増加すると結論した. このように 分娩間隔の短縮が所得の拡大に極めて重要であることが示された. 3) 黒毛和種経営での発情発見率生産現場でどの程度の発情の見逃しがあるかを推定するために, 家畜改良事業団が十勝管内 24 農協, 岡山県 3 農協で収集し分析したデータ ( 相原 光夫ら 2013) を用い, 黒毛和種経営の発情発見率を推定した. 発情発見率は, 発情を見つけたときには必ず授精を行うものと仮定して, 以下の計算式で求めた. 5

発情発見率 = 授精回数 /( 初回受精から受胎するまでの発情回数 ) 100 = 授精回数 /(( 空胎日数 - 初回授精日数 )/21 日 +1) 100 家畜改良事業団の平均データでは, 分娩後初回授精日数 73 日, 空胎日数 94 日, 授精回数 1.6 回となっており, 発情発見率は 77% と推定した. 妊娠期間を 291 日とすれば 分娩間隔は 385 日となった. しかし, 全道の分娩間隔は 423 日で, この場合の空胎日数は 132 日であり, 分娩後初回授精日数を 73 日, 授精回数を 1.6 回として発情発見率を計算すると 42% 授精回数をやや多い 2 回と仮定して計算した場合でも 53% となった. これらのことから, 現状における発情発見率は 77% よりかなり低いものと推察された. この家畜改良事業団の調査事例を基に, 受胎までの受精回数を 1.5 回, 初回授精日数を 73 日として発情発見率ごとの空胎日数について前式を変形して求め, その時の分娩間隔を推定すると, 表 7 のようになった. このように授精回数 1.5 回という条件で, 目標とする分娩間隔 380 日 ( 12.5 か月 ) を達成するには 75% 以上の発情発見率が必要で あった. すなわち 分娩間隔を短縮するには 75% 以上の発情発見率を目指す必要があり, それを実現するためには 牛群の発情観察が重要なポイントになると言える. 4) 発情発見率と牛群観察表 8 には, 発情観察と発情発見率の関係を示した研究結果 (Pennington,2013) を示した. この結果から 75% 以上の発情発見率を得るには 1 回 60 分以上 4 回以上の観察が必要となる. 現実的に こうした観察を管理者が実行することは不可能である. すなわち 75% 以上の発情発見率を得るには 管理者の観察を補完するシステムの導入が必要となる. 北海道立畜産試験場の成績 ( 表 9) では朝夕 2 回の発情行動観察によってスタンディング発情の発見率が 68%, スタンディングおよびマウンティングを合わせた発見率では 92% であった. しかし, マウンティング発情単独の発見では排卵を伴う発情は 26% しかなかった ( 表 10). すなわち 受胎可能な排卵を伴う発情を発見するためにはマウン ティングの発見では不十分で, 確実にスタンディング発情を見つける必要があるが,1 日 2 回の観察では 75% を超える発情発見率を達成することは難しいと判断された. これまで朝夕 2 回の発情観察を確実に行うことで発情発見率を高めることが推奨されてきた. しかし, 目標とする分娩間隔 (12.5 か月 ) を達成し, 6

子牛生産率を高めるためには, 観察時間および観察回数を増やす必要があると考えられた. 大きな規模の経営や複合経営では観察時間に制約があり, それを補う方法としてこれまでテールペイントな どの補助具や歩数計による発情発見技術が用いら れてきた. また, より確実性が高く省力型のシス テムの検討も始まっている. 牛の発情発見については歩数計などを活用したシステムが開発され, すでに生産現場に導入されている. 疾病発見では非接触型の体温測定技術も開発されており, 発情の発見技術と組み合わせて, 農家の観察時間の減少を補う技術として生産現場への導入が検討されなければならない. 4. 子牛の育成成績と経済性 1) 子牛疾病の実態平成 27 年度北海道家畜事業統計 ( 北海道農業共済組合連合会,2016) によれば, 北海道における肉専用種子牛 (5か月齢未満) の死廃率は 5.8%, 獣医師の治療を要した傷病被害率は 37.8% であった ( 表 11). 北海道農業技術体系第 4 版 ( 北海道農政部,2013) ではほ乳子牛 (3 か月齢未満 ) のへい死危険率 ( 死廃率 ) は 3% を目標としており, およそ 2 倍の死廃率であった. 子牛の死廃要因を詳しく見ると, 死廃のうち新生子異常が半数を超える 55% を占めていた ( 図 2). 新生子異常は出生時に死亡した子牛で, そのうち獣医師が病名を特定できないもの ( 新生子死 ) が約 80% を占めていた. 新生子死の中には, 分娩発見の遅れや不適正な分娩介助など農家側の対応で防ぐことができる死廃事故が相当数含まれていると考えられている. こうしたことから, 子牛の死廃事故, 特に分娩時の死廃事故を防ぐためには, 分娩前の飼養管理及び分娩の監視が重要なポイントとなり, 北海道農業共済組合連合会では分娩監視の強化, 分娩時の子牛に対する適切な処置を呼びかけており, 分娩時期の正確な予測や異常分娩の正しい判断が必要と言える. また, 北海道において平成 27 年度に肉専用種子牛が獣医師の治療を受けた病名では, 呼吸器病が 51% を占めていた ( 図 3). 呼吸器病の原因は IBR, RS,PI3,BVD などのウイルス, マンヘミア, マイコプラズマなど多種多様で, 診療衛生費が増加するだけでなく, 予後が芳しくないため発育不良となる場合が多く, 牛の産業界で最も経済的損失の大きな疾病とされている. 呼吸器病の損失防止には, ワクチン接種, 飼養環境 ( 換気等 ) 改善, ストレスの緩和などのほか, 早期発見 ( 咳, 発熱 ) による迅速な治療が必要である. 7

2) 子牛の発育と販売価格平成 27 年ホクレン子牛市場の販売データを表 12 に示した. 子牛の販売価格は, 血統構成や発育, 栄養状態, 瑕疵などによって左右され, 特に血統と発育は販売価格に対する影響が大きい. このデータから y は販売価格 ( 円 ),x は日齢体重 ( kg / 日 ) とした以下の二次回帰式が得られた. 雌牛 :y= 583,456x 2 +1,508,587x 358,133 (R 2 =0.371) 去勢牛 : y= 691,961x 2 + 1,908,911x 611,984 (R 2 =0.427) この結果から, 日齢体重 1.0 と 1.1 の販売価格の 差は雌で 28,333 円, 去勢で 45,579 円であるのに対し, 日齢体重 0.6 と 0.7 の販売価格の差は雌で 75,009 円, 去勢で 100,936 円と, 子牛の販売価格差は, 日齢体重が小さくなるほど すなわち発育が悪くなるほど 大きくなった. これに呼吸器病などによる影響が認められれば さらに価格差は広がると考えられた. このことから, 飼養管理改善による発育向上による収益性向上より呼吸器病等の疾病による発育停滞の方がより大きな損失が生じることになり, 損失防止のためには疾病予防や早期発見による早期治療が重要になると考えられた. 8

3) 損耗防止による経済効果 ( 試算 ) 次に, 観察強化によって減少させることが可能と考えられる新生子異常による死亡と呼吸器病減少による経済効果を統計データや試験成績などから推定した. (1) 新生子異常の死亡減少による経済効果現状における所得損失を以下のように試算した. 子牛価格 : 平成 27 年南北海道および十勝市場去勢雌平均価格子牛生産率 : 分娩間隔 426 日における生産率子牛育成経費 : 飼料費は北海道農業生産技術体系の子牛給与量および調査事例の飼料価格から算出, その他の経費は平成 26 年度畜畜産物生産費の子牛生産費における敷料費, 光熱水費, 諸材料費, 獣医医薬品費, 賃料料金, 生産管理費, 雇用労賃合計の 1/3 を計上した. ただし, 公課諸負担, 繁殖牛償却費, 建物費, 自動車費, 農機具費は子牛生産頭数が減っても減少しない経費として計算に入れなかった. 以上から, 繁殖牛 1 頭当たりで計算すると以下の通りとなった. 吉永ら (2012) は 呼吸器病多発牛群において母牛の栄養管理対策により, 対策前に比べ牛群の日増体重が 0.86kg/ 日から 0.95kg/ 日へ向上したと述べている. これを上記, 販売価格と日齢体重の二次回帰式にそれぞれ当てはめると, 約 59 千円 / 頭の販売価格向上となる. 5. まとめ以上のように, 肉用繁殖経営では繁殖成績や子牛の育成成績が経営収支に直結する. 具体的には, 分娩間隔を目標の 12.5 か月に短縮すれば,1 戸当たり 2,000 千円程度の所得が向上すると試算された. 分娩間隔の短縮には,75% 以上の発情発見率が必要と考えられるが, これを達成するための牛群観察時間の確保は, 管理者の観察のみでは困難であると結論した. また, 平均的な農家で新生子異常が 50% 減少すれば, 経産牛 1 頭当たり 8,170 円の所得向上になり, あわせて日増体重の改善により, 子牛 1 頭当たり約 59 千円の販売価格向上が可能となると試算した. これらの成績向上のためには 発情発見や疾病の早期発見など日常管理における管理者の観察強化とともに, 管理者の観察を補完するシステムの導入が必要であると考えた. 遺失販売子牛頭数 0.0276 頭 = 子牛生産率 0.86 被害率 0.0584 新生子異常割合 0.55 遺失販売額 19,098 円 = 子牛価格 691,957 円 遺失子牛頭数 0.0276 頭経費減少額 2,759 円 = 子牛育成経費 99,974 円 遺失子牛頭数 0.0276 頭 ( 死亡した子牛の育成費 ) 所得損失 16,339 円 = 遺失販売額 - 経費減少額すなわち, 平均的な新生子異常発生率の繁殖農家において, 新生子異常が 50% 減少すれば, 経産牛 1 頭当たり 8,170 円所得が増加し, 繁殖牛 50 頭規模の農家では約 40 万円の所得増加という結果となった. (2) 呼吸器病減少による経済効果の推定 引用文献谷原礼諭 (2017) 畜産農家を支援する繁殖管理システムの開発 畜産技術, 4 月号, 29-32. 相原光夫 (2013) 肉用牛の繁殖成績について LIAJ ニュース,140 号,1-6 Pennington, JA (2013) Heart Detection in Dairy Cattle Agriculture and Natural Resources University of Arkansas Cooperative Extension Service,FSA4004 北海道立畜産試験場 (2007) 黒毛和種雌牛の繁殖性低下要因と対策 平成 18 年度北海道農業試験会議 ( 成績会議 ) 北海道農業共済組合連合会 (2016) H24 事業統計 _09 被害率 H27 年度北海道家畜事業統計 CD 9

北海道農業共済組合連合会 (2016) 事業統計 _04 死廃事故主要病名別 H27 年度北海道家畜事業統計 CD 北海道農業共済組合連合会 (2016) 事業統計 _08 病傷事故病類別 H27 年度北海道家畜事業統計 CD 北海道農政部 (2013) 肉用牛 農業生産技術体系第 4 版 北海道農政部 (2013) 畑作 野菜 農業生産技術体系第 4 版 北海道酪農畜産協会 (2016) 黒毛和種繁殖経営調査結果 ( 平成 26 年実績 ) 北海道和牛振興協議会説明資料. 北海道和牛振興協議会 北海道酪農畜産協会 (2016) 北海道黒毛和種年度集計( 平成 27 年度実績 ). 森本正隆 (2015) 生産性と経営 肉用牛の科学 養賢堂 ( 肉用牛研究会刊行 ),14-19 農林水産省 (2005 2015) 肉用牛 畜産統計調査 農林水産省ホームページ農林水産省 (2016) 子牛生産費 平成 26 年度畜産物生産費 農林水産省ホームページ農林水産省 (2016) 乳牛生産費 牧草 ( 飼料作物 ) の費用価 - 北海道 平成 26 年度畜産物生産費 農林水産省ホームページ佐野公洋 (2012) 発情を見落としていませんか 胆振の台地 胆振農業共済組合, 第 37 号,6-7 吉永まり, 野村祐資 (2012) 子牛の栄養 環境からみた BRDC( 牛の呼吸器病症候群 ) 家畜感染症学会誌,1 巻 3 号,123-129. Abstract The number of cows has been increasing in beef-breeding farms in Hokkaido. The daily management time and observation time for cows and calves were decreased according with the increasing number of cows in breeding farms, and according to conflicts with the busy farming season in complex management farms. The average calving interval of the Japanese Black cow was 425 days in Hokkaido. This was longer than the target value (380 days) and the average in Japan (413 days). The increment of the cost according extending the calving interval 1.5 month longer was 57 thousand yen. To shorten the calving interval to 12.5 months (target value), the heat detection rate (HDR) had to be over 75%. It was difficult to achieve the 75% HDR with the cattle-group observations twice a day. There were temporal limitations to observe the cattle-group by farmers, so the introduction of some sensors and systems of heat detection was needed to increase the HDR. The increment of the cost of calves death at calving was 16 thousand yen per cow. The difference of the market price of a calf by their body weight was larger in lighter-weight calves than that in heavier-weight calves. It was concluded that "early detection and treatment" for cows at calving and for calves is needed to better the economy balance of beef breeding farms. 10