Microsoft PowerPoint - 資料6-1_高橋委員(公開用修正).pptx

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資料 1-1 ゲノム編集技術を用いた遺伝子治療 製品等のリスク評価や品質評価の考え方 第 29 回科学委員会

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本日の話題 1. 遺伝子治療 1 総論 ( 現状と課題 ) 2 日本の動向 ( 現状と課題 ) 2. ゲノム編集 1 総論 ( 現状と課題 ) 2 日本の動向 ( 現状と課題 ) 2

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報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

Alt-R CRISPR-Cas9 System sgrna( シングルガイドRNA) はこれまで その長さのために一度に合成することが出来ませんでした Alt-R CRISPR-Cas9 Systemは sgrnaを元来のcrrna( シーアールRNA) とtracrRNA( トレイサー RNA)

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

[PDF] ゲノム編集ツール Edit-R CRISPR-Cas9

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CRISPR/Cas9 Genome Engineering 独自の NickaseNinja All-in-One ベクターで CRISPR/Cas9 技術を用いたゲノム編集をさらに簡単に! ゲノム編集 (Genome Editing) とは CRISPR/Cas システムや Transcript

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を行った 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 ips 細胞はこれまでのところレトロウイルスを用いた場合しか樹立できていない また 4 因子を導入した線維芽細胞の中で ips 細

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

DVDを見た後で、次の問いに答えてください

本成果は 以下の研究助成金によって得られました JSPS 科研費 ( 井上由紀子 ) JSPS 科研費 , 16H06528( 井上高良 ) 精神 神経疾患研究開発費 24-12, 26-9, 27-

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STAP現象の検証の実施について

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

記載例 : ウイルス マウス ( 感染実験 ) ( 注 )Web システム上で承認された実験計画の変更申請については 様式 A 中央の これまでの変更 申請を選択し 承認番号を入力すると過去の申請内容が反映されます さきに内容を呼び出してから入力を始めてください 加齢医学研究所 分野東北太郎教授 組

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く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

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「ゲノムインプリント消去には能動的脱メチル化が必要である」【石野史敏教授】

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解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

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研究最前線 HAL QCD Collaboration ダイオメガから始まる新粒子を予言する時代 Qantm Chromodynamics QCD 1970 QCD Keiko Mrano QCD QCD QCD 3 2

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の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

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研究から医療へ より医療への実利用が近いもの ゲノム医療研究推進ワーキンググループ報告書 (AMED) 臨床ゲノム情報統合データベース公募 対象疾患の考え方の方向性 第 1 グループ ( 主に を目指す ) 医療への実利用が近い疾患 領域の着実な推進 単一遺伝子疾患 希少疾患 難病 ( 生殖細胞系列

核内受容体遺伝子の分子生物学

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

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研究成果報告書

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第 1 回遺伝子治療等臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会 平成 29 年 4 月 12 日 ( 水 ) 資料 6-1 ゲノム編集技術の概要と問題点 筑波大学生命科学動物資源センター筑波大学医学医療系解剖学発生学研究室 WPI-IIIS 筑波大学国際睡眠医科学研究機構筑波大学生命領域学際研究 (TARA) センター 高橋智

ゲノム編集技術の概要と問題点 ゲノム編集とは? なぜゲノム編集は遺伝子改変に有効? 3つの人工制限酵素 (ZFN, TALEN, CRISPR/Cas9) CRISPPR/Cas9の応用使用例 ゲノム編集の問題点

ゲノム編集技術の概要と問題点 ゲノム編集とは? なぜゲノム編集は遺伝子改変に有効? 3つの人工制限酵素 (ZFN, TALEN, CRISPR/Cas9) CRISPPR/Cas9の応用使用例 ゲノム編集の問題点

ゲノム編集とは? 制限酵素 : DNA を切断する機能をもつタンパク質 ゲノム編集 : 任意のゲノム DNA 配列を特異的に切断する人工制限酵素を使用することで ゲノム上の特定の場所に変異を誘導する技術 約 27 億塩基対 ( マウス )

人工制限酵素への要求 約 27 億塩基対 ( マウス ) 特異性 : 27 億塩基対あるゲノム DNA( マウス ) のうち 1 箇所だけを切断する 切断活性 : 生きている細胞のなかで ゲノム DNA を切断する

ゲノム編集技術の概要と問題点 ゲノム編集とは? なぜゲノム編集は遺伝子改変に有効? 3つの人工制限酵素 (ZFN, TALEN, CRISPR/Cas9) CRISPPR/Cas9の応用使用例 ゲノム編集の問題点

3 つの人工制限酵素 1. Zinc Finger Nuclease (ZFN) 2. Transcription activator-like effector Nuclease (TALEN) 3. Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat (CRISPR)

ジンクフィンガーヌクレアーゼ Zinc Finger Nuclease (ZFN) zinc finger motif ホモ二量体で DNA を切断 sigma

Transcription activator-like effector (TALE) 植物病原菌キサントモナス属細菌 植物 DNA 植物 DNA TALE 植物細胞 TALE TALE がゲノムに結合することにより植物細胞 ( 宿主 ) の遺伝子発現制御が変わる 植物細胞

ターレン TALEN の構造

CRISPR/Cas9 システム clustered regularly interspaced short palindromic repeats (CRISPR) CRISPR associated protein 9 (Cas9) 細菌 古細菌の免疫システム- 外来性のDNAを破壊する現九州大学教授の石野良純ファージDNA プラスミドDNA ( 環状 DNA) 先生が1987 年に報告 外来 DNA の導入 細菌のゲノム DNA 細菌 Streptococcus pyogenes

CRISPR/Cas9 システム clustered regularly interspaced short palindromic 以下の3つの構成要素からなる repeats (CRISPR) RNA-タンパク質複合体 CRISPR associated protein 9 (Cas9) CRISPR/Cas9を形成細菌 古細菌の免疫システム- 外来性の1. DNA CRISPR を破壊する RNA (crrna) 2. trans-activating crrna (tracrrna) ファージDNA 3. Cas9タンパク質 プラスミド DNA ( 環状 DNA) crrna 外来 DNA 由来 Cas9 direct repeat 細菌 Streptococcus pyogenes tracrrna(repeat 部位に結合 ) 発現 発現 外来 DNA 由来 転写 direct repeats 外来 DNA 由来 成熟

CRISPR/Cas9 システムの応用開発 以下の3つの構成要素からなるRNA-タンパク質複合体 CRISPR/Cas9を形成 1. CRISPR RNA (crrna) grna 2. trans-activating crrna (trancrrna) 3. Cas9タンパク質 Science. 2012 Aug 17;337(6096):816-21. Jennifer A. Doudna Emmanuelle Charpentier Fuse (by artificial) crrna + tracrrna=guide RNA (grna)

grna による DNA 認識部位の指定 grna による DNA 認識部位とゲノム切断箇所の指定 この認識部位を実験室内で自由に変更 Target 配列 ゲノム上の任意の箇所を特異的に 切断することができる

ゲノム編集技術の概要と問題点 ゲノム編集とは? なぜゲノム編集は遺伝子改変に有効? 3つの人工制限酵素 (ZFN, TALEN, CRISPR/Cas9) CRISPPR/Cas9の応用使用例 ゲノム編集の問題点

これまでの遺伝子改変動物作製

ゲノム編集による遺伝子改変動物作製 人工制限酵素を受精卵に導入するだけで 遺伝子欠損動物 (KO) が作製できる Tg 動物 KO 動物 ( 遺伝子ターゲティング ) KO 動物 ( ゲノム編集 ) 作出目的人工外来遺伝子の導入内在性遺伝子の改変内在性遺伝子の改変 ゲノム上の変異部位 ランダム特異的特異的 作出方法 受精卵への DNA のインジェクション 遺伝子ターゲティング (ES 細胞での相同組換え キメラ動物作製 生殖系列への移行 ) 受精卵への DNA のインジェクション 作業 時間簡便 半年煩雑 1 年以上簡便 半年 動物種 多種マウス ラット ブタ サル ( 受精卵が体外培養可能 ) 限定的マウス ( ラット ) ( 生殖系列移行可能な ES 細胞 ) 多種マウス ラット ブタ サル

CRISPR/Cas9 によるアルビノ C57BL/6J マウスの作製 (Mizuno S. and Sugiyama F. et al. Mammalian Genome. 2014)

DNAに結合するが切断しないCas9 dead Cas9 D10A H840A Nature Biotechnology 32, 347 355 (2014) doi:10.1038/nbt.2842

ゲノムDNAを変異させずに遺伝子の発現を制御する 抑制化 活性化 Cell. 2013 Jul 18;154(2):442-51. dcas9に転写活性化因子や転写抑制因子を結合させることで ゲノムDNAを変異せずに 目的の遺伝子の発現を制御できる

ゲノム編集の遺伝子治療への応用 HIV感染治療のため HIVウイルスがT細胞への感染に使用 するCCR5受容体をゲノム編集で欠損させたT細胞を移入し 治療効果が確認された N. Engl. J. Med. 2014 ゲノム編集によりPD-1を欠損させ 腫瘍治療治験を行なっ たことが報告されている News in Nature. 2016) ゲノム編集により造血幹細胞の遺伝子を欠損させて 遺伝 性の貧血の治療を行うことが計画されている 現在実施 計画されているゲノム編集による治療は 全て 体細胞が対象である 遺伝子の書換えによる治療は まだ実施されていない

ゲノム編集のまとめ 人工制限酵素 ZFN, TALEN, CRISPR/Cas9 を細胞に導入す ることで 任意のゲノムDNAを特異的に変異させることが出 来る 人工制限酵素により2重鎖切断されたゲノムDNAは 非相 同末端再結合 NHEJ か相同組換え修復 HDR により修復 される 非相同末端再結合 NHEJ によるゲノム修復では 予測不 能な変異が生じる 相同組換え修復 HDR では 任意の変異を誘導することが できる 切断活性が無い人工制限酵素でゲノムDNAに変異を導入 せずに遺伝子の発現を制御することができる

ゲノム編集技術の概要と問題点 ゲノム編集とは? なぜゲノム編集は遺伝子改変に有効? 3つの人工制限酵素 (ZFN, TALEN, CRISPR/Cas9) CRISPPR/Cas9の応用使用例 ゲノム編集の問題点

ゲノム編集の問題点 任意のゲノムDNA部位を特異的に変異させることが出来る が 目的としないゲノムDNA部位に変異が入る可能性があ る オフターゲット 全ての細胞で目的の変異が導入されない場合がある モザ イク タンパク質単独 もしくはタンパク質とRNAだけでゲノムDNA を変異できる DNAを使わなくても変異できるので これまでの遺伝子 治療等臨床指針では対応できない 切断活性がない人工制限酵素を使った場合は ゲノムDNA 配列に変異を入れずに 遺伝子の発現を変えることができ る DNA配列の変化の有無だけでは規定できない可能性 がある