2018/1/28 栃木県男性不妊講演会 妊活中のカップルの皆さんへ ~ 男性不妊治療の実際 ~ 本日の内容 筑波学園病院泌尿器科山崎一恭 男性不妊症の原因 一般的な診断 治療の流れ その他 0.7% 停留精巣 0.5% 染色体異常 2.5% ( 勃起障害 射精障害 ) 2.4% その他精路通過障害 1.5% 5.3% 精子形成障害精索静脈瘤 90.8% 23.4% 特発性 63.7% 三浦東邦医学会雑誌 2010 受精胚発生胎児発育出産!! 男性不妊症の初診患者 病歴聴取 ( 本人 妻 ) 精液検査 : 精子濃度 精子運動率 精液量 など 全身診察血液検査 : ホルモン異常の鑑別カウンセリング 行動療法薬物療法 無精子症 TESE 精路再建術 精子形成障害 全身 陰部の診察血液検査 : ホルモン異常の鑑別超音波検査 ( ドップラ -) 精索静脈瘤精索静脈瘤根治術 薬物治療 不妊センター 産婦人科との連携タイミング療法 人工授精 体外受精などの不妊治療の選択 内分泌学的異常ホルモン補充療法 本日の内容 精索静脈瘤 精子 DNA 細胞膜 Esteves, Slide Share 逆流 精巣 温度 活性酸素 精子濃度 精子運動率 逆流を止めることが重要!!
精索静脈瘤根治術 静脈の上流を縛って切 断し 逆流を止める Medical note 高位結紮術 低位結紮術 腹腔鏡手術 顕微鏡手術 5/10mm 3-5cm リンパ管 動脈も切断 合併症 再発一番少ない 腹腔鏡下 精索静脈高位結紮術 精液検査 Medical note 濃度は平均1000万/ml改善 低位結紮術 運動率は平均10 改善 高位結紮術 自然妊娠率 腹腔鏡手術 約2.5-4倍上昇 顕微鏡手術 5/10mm 体外受精/顕微授精 3-5cm リンパ管 動脈も切断 妊娠率約1.5倍上昇 生児獲得率 約2倍上昇 合併症 再発一番少ない 顕微鏡下 精索静脈低位結紮術 1-2時間 一泊二日 特徴 左右同時に 同じ傷で治療 より傷が小さい 顕微鏡手術より再発 合併 症 陰嚢水腫 他臓器損傷な ど やや多い 精液中に精子がいない状態 射精管での閉塞 精管での閉塞 外傷 手術など 鼠径ヘルニア術後 など 精巣上体管での閉塞 閉塞性無精子症 OA 1-2時間 一泊二日 特徴 世界的なゴールデンスタンダ ード 傷が小さく 合併症 再発率 に優れる 左右同時に治療が難しい 傷が2箇所 手術時間 無精子症の治療 基本は精巣から手術で精子を回収 無精子症 精巣 精索静脈瘤根治術 静脈の上流を縛って切 治療効果はどの方法でも同じ 断し 逆流を止める 精巣上体炎後 など 精巣内精子採取術 TESE (Testicular Sperm Extraction) 非閉塞性無精子症 NOA 障害部位 精路 精巣上体 精管 射精管 閉塞による通過障害 精巣 精子形成障害 頻度 無精子症の約20 無精子症の約80 特徴 精巣サイズは正常 血中FSH 黄体刺激ホルモン 正常 精巣サイズは小さい 血中FSHが高い 体外受精 顕微授精
Conventional-TESE (c-tese) 閉塞性無精子症 OA)に対する治療 精巣 精細管 の一部を取ってくる 精子採取率 ほぼ100 Micro-TESE (MD-TESE) Conventional-TESE ごく一部の精細管を採取する 非閉塞性無精子症(NOA)に対する 治療 体外授精/顕微受精5-10回分の 精子が取れる 精巣全体で 精子が作られている部 分をくまなく探す 予想に反して取れない場合 実は非閉塞性だったことがわかる 続けてmicro-TESEを行う 精子採取率 20-40% 同時に精管造影を行うことがある 後々 精路再建術 が可能かどうか 判断 精路再建術 閉塞性無精子症の治療 閉塞部位をバイバスしてつなぎ直す 経尿道的射精管開放術 TUR-ED) 射精管での閉塞 精巣 精管での閉塞 精管-精管吻合術 精巣上体管での閉塞 精管-精巣上体吻合術 経尿道的射精管開放術 TUR-ED) 腰椎 下半身 麻酔あるいは 1時間 一泊二日 方法 1. 精管造影で射精管が閉 塞していることを確認 2. 経尿道的に精阜 射精 管の開口部 を削る 合併症 まれ 精嚢炎/精巣上体炎 自然妊娠も可能 岡田ら 1998 精管-精管吻合術 Vasovasostomy) 精管-精巣上体吻合術 Vasoepididymostomy) 4-5時間 二泊三日 5-7時間 二泊三日 成績 成績 欧米 日本 精子出現率 99.5% 68.9% 欧米 日本 精子出現率 50-85% 41.5% 自然妊娠率 52% 自然妊娠率 21.2% 20.7%
本日の内容 有効性がはっきりしている薬は 男性不妊症の初診患者 病歴聴取 ( 本人 妻 ) 精液検査 : 精子濃度 精子運動率 精液量 など 全身診察血液検査 : ホルモン異常の鑑別カウンセリング 行動療法薬物療法 無精子症 TESE 精路再建術 精子形成障害 全身 陰部の診察血液検査 : ホルモン異常の鑑別超音波検査 ( ドップラ -) 精索静脈瘤精索静脈瘤根治術 薬物治療 内分泌学的異常ホルモン補充療法 不妊センター 産婦人科との連携タイミング療法 人工授精 体外受精などの不妊治療の選択 有効性がはっきりしている薬は 男性不妊症の初診患者 病歴聴取 ( 本人 妻 ) 精液検査 : 精子濃度 精子運動率 精液量 など 大部分を占める特発性精子形成障害 に対して確実に有効な薬物治療は 全身診察血液検査 : ホルモン異常の鑑別カウンセリング 行動療法薬物療法 無精子症 TESE 精路再建術 精子形成障害 まだ見つかっていない 全身 陰部の診察血液検査 : ホルモン異常の鑑別超音波検査 ( ドップラ -) 精索静脈瘤精索静脈瘤根治術 薬物治療 不妊センター 産婦人科との連携タイミング療法 人工授精 体外受精などの不妊治療の選択 内分泌学的異常ホルモン補充療法 逆行性射精に対する薬物治療 原因 : 神経の障害により 射精時に内尿道口が閉鎖しない 前立腺肥大症の薬 (α ブロッカー ) 治療 : 三環系抗うつ薬 : 内尿道口を閉じ 尿道を開く アモキサピン イミプラミン 有効率 50-100% 勃起障害に対する薬物治療 ホスホジエステラーゼ阻害薬 バイアグラ ( シルデナフィル ) レビトラ シアリスいずもれなし ( 自費 ) 有効性高い禁忌 : 心血管障害 特に硝酸薬服用中極端な高血圧 低血圧脳血管障害 腎障害など 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症に対する薬物治療 : ホルモン補充療法 男性ホルモン精子形成 hcg/r-hfsh 療法 ヒト絨毛性ゴナドトロピン (hcg) 遺伝子組み換え型ヒト卵胞刺激ホルモン (r-hfsh) 自己注射公費補助精子形成達成率は 94.4%
原因不明の精子形成障害に対する薬物治療 : 非ホルモン療法 原因不明 はっきりした根拠に基づく投薬ができない 3-6 ヶ月使ってみて 効果がなければ次の薬 一応 薬の有効性は示されている 少人数 信憑性の低い試験の結果なので 有効率など数字は正確でない種類酵素製剤漢方製剤抗酸化剤ビタミン製剤微量元素などなど 本日の内容 禁欲期間について 肥満について 精液量 精子数 : 禁欲が長いと改善する 特に 5 日以上の禁欲で著明 運動率 正常形態率 DNA 断片化率 : 特に 3 日以内の禁欲で著明 禁欲が短いと改善する 人工授精 体外受精 顕微受精の成績 : 禁欲が短い方が良好 肥満は男性の不妊症のリスクであることはよく知られている 肥満男性 (BMI35 以上 ) では 不妊となるリスクが健常人の 1.4-1.5 倍高い Craig et al, Fertil Steril 2017 Hanson et al. J Assist Reprod Genet 2017 タバコについて カップルのどちらか喫煙すると 体外 / 顕微授精の成功率が 40% 低下する カップルのどちらかに 5 年以上の喫煙歴があると 体外 / 顕微授精で妊娠しないリスクが 4 倍になる 3 ヶ月の禁煙で精液検査結果は改善し得る Alvarez, Fertil Steril 2015 アルコールについて アルコールと不妊症との関係についてはあまり研究が進んでいない ある研究では 1 日のアルコール摂取量が 30g( ワイン 3 杯 ) を超えると不妊のリスクがあがる 週に 50g 以上のアルコール摂取で精液検査結果は悪くなる 特に 250g 以上で顕著 Alvarez, Fertil Steril 2015
睡眠について 睡眠と不妊症との関係についてはあまり研究が進んでいない ある研究では 一晩中眠れない男性では精子運動率が低い 眠りに付くのが困難な男性では 精液量が少なく 精子濃度が高い とされている Viganò et al. Basic and Clinical Andrology 2017 まとめ 男性不妊症は 夫婦生活の問題から胎児発育に至る全ての段階に関係している外科的治療は男性不妊症治療の中心であるが 治療が有効な患者を予測するのは難しい男性不妊症に有効な内服治療は限られている日常生活の中で男性不妊に影響する因子は 喫煙 肥満 以外にはまだ良くわかっていない ご清聴ありがとうございました