従って IFRSにおいては これらの減価償却計算の構成要素について どこまで どのように厳密に見積りを行うかについて下記の 減価償却とIFRS についての説明で述べるような論点が生じます なお 無形固定資産の償却については 日本基準では一般に税法に準拠して定額法によることが多いですが IFRSにおい

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ならないとされている (IFRS 第 15 号第 8 項 ) 4. 顧客との契約の一部が IFRS 第 15 号の範囲に含まれ 一部が他の基準の範囲に含まれる場合については 取引価格の測定に関する要求事項を設けている (IFRS 第 15 号第 7 項 ) ( 意見募集文書に寄せられた意見 ) 5.

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Transcription:

Q 有形固定資産 無形資産の減価償却方法について 日本基準と IFRS で考え方の違いはありますか A 減価償却方法について日本基準と IFRS に基本的な考え方の違いはありませんが 実務上の運用に差異が生じるものと考えられます 日本基準においても IFRS においても 資産の取得価額から残存価額を控除し 耐用年数にわたり一 定の償却を行うという基本的な考え方に違いはありません (IFRSにおける再評価モデルを除く) しかし 実務上の運用については以下のような差異が生じます すなわち 日本基準においては有形固定資産の減価償却について具体的 包括的な会計基準は存在せず 企業会計原則及び同注解に減価償却方法についての明文の規定があるのみとなります そのため 実務的には 税法規定に準拠して償却方法 耐用年数 残存価額を決定している場合が多いと思われます そしてこの税法に準じた会計処理は 監査 保証実務委員会報告第 81 号 減価償却に関する当面の監査上の取扱い において 企業の状況に照らし 耐用年数又は残存価額に不合理と認められる事情のない限り 当面 監査上妥当なものとして取り扱うことができる とされ実務上の容認がなされています これに対して IFRSでは 償却方法 耐用年数 残存価額を下表の規定に従い適切に見積り 減価償却を行うことが求められています 認められる償却方法 日本基準 IFRS 備考 定額法 定率法 生産高比例法が定額法 定率法 級数法 生産高例示されている (IAS16.62 比例法 ( 企業会計原則注解注 20) IAS38.98) 残存価額特段の定めはない ( 注 ) 耐用年数 特段の定めはないが 経済的耐用年数であることが多い ( 注 ) 資産の耐用年数が到来し 耐用年数の終了時点で予想される当該資産の状態であったとした場合に 企業が当該資産を処分することにより現時点で得るであろう金額 ( 処分費用の見積り額は控除 )(IAS16.6 IAS38.8) (a) 資産が企業によって利用可能であると予想される期間 (b) 企業が当該資産から得られると予想される生産高又はこれに類似する単位 (IAS16.6 IAS38.8) 基準上は IFRS においても定率法の採用が可能である しかし 現状の実務ではほとんど採用がないものと思われる 日本基準 : 経済的耐用年数 IFRS: 企業によって利用可能な年数これにより 下記 減価償却と IFRS で述べる差異が生じる可能性がある 償却単位特段の定めはない ( 注 ) 残存価額 耐用年数 減価償却方法の見直し 特段の定めはない ( 会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準 上で見直しが示唆されている ) 重要性のある各構成部分については 個別に減価償却しなければならない (IAS16.43) 少なくとも各事業年度末に見直す必要がある 注 減価償却に関する当面の監査上の取り扱い にはこれらについて定義に類するものが存在する

従って IFRSにおいては これらの減価償却計算の構成要素について どこまで どのように厳密に見積りを行うかについて下記の 減価償却とIFRS についての説明で述べるような論点が生じます なお 無形固定資産の償却については 日本基準では一般に税法に準拠して定額法によることが多いですが IFRSにおいては 定率法も認められる余地があるという点で差異が生じます このように日本基準では 著しく不合理でない場合には税法に一律に準拠することができるのに対し IFRSでは 経済的実体を反映する見積りを行うために 経営者が自主的に判断し決定する必要があるという点で実務上の運用が異なります

Q 国際財務報告基準財団 (IFRS Foundation) から 2010 年 11 月に公表された教育文書 減価償却と IFRS は どのような内容ですか A 減価償却と IFRS は IAS 第 16 号 有形固定資産 の原則のいくつかを確認することにより 固定資産に関する論点の判断を行うためのフレームワークを提供するものとされています この教育文書は IAS 第 16 号の原則のうち 以下の 4 つ論点についての説明を行っています この 記述内容は Wayne Upton 氏 (IASB 国際活動担当ディレクター ) の私見であり IASBの公式見解ではありませんが IAS 第 16 号のガイダンスに従う上で重要となる判断についての理解を深め 疑問を解消することを目的として作成されています 1 重要性のある各構成部分の識別 IFRSでは ある有形固定資産項目の取得原価の総額に対して重要性のある各構成部分については 個別に減価償却しなければならない (IAS16.43) としています そのため 重要性のある構成部分の識別が論点となります この点について 建物の躯体と空調設備やエレベーター等の附属設備の耐用年数の違いに基づく構成部分の識別が例示されています 2 残存価額の明示的な見積り IFRSでは 資産の残存価額を 資産の耐用年数が到来し 耐用年数の終了時点で予想される当該資産の状態であったとした場合に 企業が当該資産を処分することにより現時点で得るであろう金額 ( 処分費用の見積り額を控除後 )(IAS16.6) と定義し 少なくとも毎期末に見直さなければならないこととしています そのため 必ずすべての資産について毎期 詳細に見直しを行う必要があるのかどうかが論点となります この点についてUpton 氏は 資産には 残存価額が大きく変動するものとそうでないものが存在するため 経営者は資産の性質に応じて当該変動をモニタリングするかどうかの方針を決定する必要があるとしています 3 耐用年数の明示的な見積り IFRSでは 資産の耐用年数を (a) 資産が企業によって利用可能であると予想される期間 (b) 企業が当該資産から得られると予想される生産高又はこれに類似する単位 (IAS16.6) のいずれかと定義しています この点について 利用可能であると予想される期間 は 経済的耐用年数とは異なる場合があることについて説明がされています 例えば ある企業に経済的耐用年数が10 年の車両を3 年で取り替える慣行がある場合 その企業にとって車両の耐用年数は3 年となり 残存価額は10 年間の保有を前提とした金額よりも高くなると説明しています

4 IFRSはさまざまな減価償却方法を認めている IFRSでは 減価償却方法について 使用される減価償却方法は 資産の将来の経済的便益が企業によって消費されると予測されるパターンを反映するものでなければならない (IAS16.60) としています そのため どのような点をもって 経済的便益の消費のパターンを反映しているといえるのかが論点となります この点については 耐用年数の判断について求められる4つの判断指標 ( 使用量 物理的自然減耗 技術的 物理的陳腐化 使用に関する法的な制約 (IAS16.56)) が参考になりうることが説明されています また Upton 氏の意見として 必ずしも定額法が他の方法よりも優先されるわけではないことや 減価償却方法の選択と文書化は経営者と監査法人の判断に委ねられる問題であることが述べられています

Q 2012 年 12 月公表の公開草案 減価償却及び償却の許容される方法の明確化 は どのような内容ですか A IAS 第 16 号 有形固定資産 及び IAS 第 38 号 無形資産 において定められている減価償却及び償却の方法を明確化する公開草案であり 以下の 2 点が明確化されています 1 つ目の改善提案は 消費 のパターンに応じた償却のみが認められることの明確化です 現行の 両基準においては さまざまな償却方法を採用することが可能であるとされています しかし このさまざまな償却方法には 収益を基礎とした方法は含まれないことを明確化することが提案されています すなわち 償却方法は資産の将来の経済的便益が 消費 されるパターンに応じて決定されるべきであり 資産が 生み出す 経済的便益のパターンに応じて決定することは許されないことが明確化されています 2つ目の改善提案は 定率法の採用における追加的な指針を提供するためのものです すなわち 1 つ目の改善提案においては 収益を基礎とした方法は認められないとしていますが ある資産によって生産された製品及びサービスの将来の販売単価が減少すること ( 資産が 生み出す 経済的便益が低下すること ) は 当該資産の将来の経済的便益が陳腐化を原因として減少することを示す場合があるため このような場合においては定率法の採用に関連する可能性があることを明確化しています