和歌山県地域がん登録事業報告書

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1. 集計の対象 (1) 罹患日の期間 2013 年 1 月 1 日から 2013 年 12 月 31 日まで 罹患日の定義 1 届出による登録症例は 当該がんと診断された年月日診断日とは 自施設診断日ないし当該腫瘍初診日自施設診断日とは 自施設で最も診断根拠の高い診療 ( 検査 ) を行った日当該

表 1. 罹患数, 罹患割合 (%), 粗罹患率, 年齢調整罹患率および累積罹患率 ; 部位別, 性別 A. 上皮内がんを除く ; 部位別, 性別 B. 上皮内がんを含む 表 2. 年齢階級別罹患数, 罹患割合 (%); 部位別, 性別 A. 上皮内がんを除く B. 上皮内がんを含む 表 3. 年齢

A 2010 年山梨県がん罹患数 ( 全体 )( 件 ) ( 上皮内がんを除く ) 罹患数 ( 全部位 ) 5,6 6 男性 :3,339 女性 :2,327 * 祖父江班モニタリング集計表から作成 * 集計による主ながんを表示

PowerPoint プレゼンテーション

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平成29年度沖縄県がん登録事業報告 背表紙印字

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平成 2 9 年名古屋市民の平均余命 平成 30 年 12 月 25 日 名古屋市健康福祉局

目 次 1 平成 29 年愛知県生命表について 1 2 主な年齢の平均余命 2 3 寿命中位数等生命表上の生存状況 5 4 死因分析 5 (1) 死因別死亡確率 5 (2) 特定死因を除去した場合の平均余命の延び 7 平成 29 年愛知県生命表 9

Microsoft Word - 【確定版】H27都道府県別生命表作成方法

がん登録実務について

健康寿命

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

子宮頸がん死亡数 国立がん研究センターがん対策情報センターHPより

はじめに 高知県では がんが昭和 59 年から死亡原因の第 1 位となっており 高齢化の進行により今後も増加していくと推測されます このため県では 平成 19 年 3 月に 高知県がん対策推進条例 を制定するとともに 平成 25 年 3 月には 第 2 期高知県がん対策推進計画 を策定し がん対策に

7 対 1 10 対 1 入院基本料の対応について 2(ⅲ) 7 対 1 10 対 1 入院基本料の課題 将来の入院医療ニーズは 人口構造の変化に伴う疾病構成の変化等により より高い医療資源の投入が必要となる医療ニーズは横ばいから減少 中程度の医療資源の投入が必要となる医療ニーズは増加から横ばいにな

第 7 回大阪市人口移動要因調査報告書 平成 27 年 3 月 大阪市都市計画局

2-2 需要予測モデルの全体構造交通需要予測の方法としては,1950 年代より四段階推定法が開発され, 広く実務的に適用されてきた 四段階推定法とは, 以下の4つの手順によって交通需要を予測する方法である 四段階推定法将来人口を出発点に, 1 発生集中交通量 ( 交通が, どこで発生し, どこへ集中

事業評価のためのチェックリスト ( 単位 : %) (2) 平成 27 年度の原発がんに対する早期がん割合を把握しましたか 肺がんでは臨床病期 Ⅰ 期がん割合 乳がんでは臨床病期 Ⅰ 期までのがん割合を指す (2-1)

講演

70-4/表1~表4.pwd

平成29年版高齢社会白書(全体版)

平成17年

京都府がん対策推進条例をここに公布する 平成 23 年 3 月 18 日 京都府知事山田啓二 京都府条例第 7 号 京都府がん対策推進条例 目次 第 1 章 総則 ( 第 1 条 - 第 6 条 ) 第 2 章 がん対策に関する施策 ( 第 7 条 - 第 15 条 ) 第 3 章 がん対策の推進

81 平均寿命 女 単位 : 年 全 国 長野県 島根県 沖縄県 熊本県 新潟県 三重県 岩手県 茨城県 和歌山県 栃木県

0. ポイント低いが, 宮城県では 歳代における出生率の低さが, 京都府では0 歳代の低さが影響しており, その要因が異なる. 次に, 平均出生年齢と合計特殊出生率との関係をみたものが図 である. 概して, 平均出生年齢と合計特殊出生率との間には負の相関関係がみられる. ただし, 各都道府県が直線上

記 1. 適用対象本通知は 製造販売業者等が GPSP 省令第 2 条第 3 項に規定する DB 事業者が提供する同条第 2 項に規定する医療情報データベースを用いて同条第 1 項第 2 号に規定する製造販売後データベース調査を実施し 医薬品の再審査等の申請資料を作成する場合に適用する GPSP 省

付表 登録数 : 施設 部位別 総数 1 総数 口腔咽頭 食道 胃 結腸 直腸 ( 大腸 ) 肝臓 胆嚢胆管 膵臓 喉頭 肺 骨軟部 皮膚 乳房 全体

目次 Ⅰ 高知県地域がん登録事業の概要 歴史 方法... 1 (1) 情報収集方法... 1 (2) 登録対象... 1 (3) 登録 集計 解析 二次保健医療圏別および医療機関別の年別届出数... 2 Ⅱ 結 果 登録精度指標... 4 (1

表紙等

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Microsoft PowerPoint - 2.医療費プロファイル 平成25年度(長野県・・

付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

まえがき 平成 24 年福島県簡易生命表 は 平成 24 年の福島県日本人人口 ( 推計 ) と平成 22~25 年の人口動態統計 ( 確定数 ) を基にして 本県の死亡状況が今後変化しないと仮定したとき 各年齢の者が1 年以内に死亡する確率や平均的にみて今後何年生きられるかという期待値などを 死亡

Microsoft PowerPoint - 【資料3】届出マニュアル改訂について

2 累計 収入階級別 各都市とも 概ね収入額が高いほども高い 特別区は 世帯収入階級別に見ると 他都市に比べてが特に高いとは言えない 階級では 大阪市が最もが高くなっている については 各都市とも世帯収入階級別の傾向は類似しているが 特別区と大阪市が 若干 多摩地域や横浜市よりも高い 東京都特別区

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人口推計 における人口の算出方法 Ⅰ 概要 1 人口推計の範囲人口推計の範囲は, 我が国に常住している * 全人口 ( 外国人を含む ) である ただし, 外国人のうち, 外国政府の外交使節団 領事機関の構成員 ( 随員及び家族を含む ) 及び外国軍隊の軍人 軍属 ( 家族を含む ) は除いている

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平成 25 年 3 月 27 日 国立社会保障 人口問題研究所 ( 厚生労働省所管 ) から 日本の地域別将来推計 人口 ( 平成 25 年 3 月推計 ) が公表されました これに基づく石川県関係分の概要は次のとおりです 目次 1 石川県の将来推計人口 1 2 県内市町 地域の将来推計人口 5 3

自殺予防に関する調査結果報告書

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資料 4 明石市の人口動向のポイント 平成 27 年中の人口の動きと近年の推移 参考資料 1: 人口の動き ( 平成 27 年中の人口動態 ) 参照 ⑴ 総人口 ( 参考資料 1:P.1 P.12~13) 明石市の総人口は平成 27 年 10 月 1 日現在で 293,509 人 POINT 総人口

部位別 施設名 総数 がん診療連携拠点病院院内がん登録 2014 年集計 口腔咽頭 食道胃結腸直腸大腸肝臓 胆嚢胆管 膵臓喉頭肺 埼玉県立がんセンター 3, さいたま赤十字病院 1,456-2

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

統計トピックスNo.92急増するネットショッピングの実態を探る

○がん対策基本法

【資料4】遡り調査について

付表 登録数 : 施設 部位別 総数 1 総数 口腔咽頭 食道 胃 結腸 直腸 ( 大腸 ) 肝臓 胆嚢胆管 膵臓 喉頭 肺 骨軟部 皮膚 乳房

2 院内処方 ( 入院外 投薬 ) 及び院外処方 ( 薬局調剤 ) における薬剤点数薬剤点数階級別件数の構成割合を入院外の投薬 ( 以下 院内処方 という ) 薬局調剤( 以下 院外処方 という ) 別にみると ともに 500 点未満 が最も多く それぞれ 67.0% 59.4% となっている また

第 2 部 : 学術集会記録 - スター - 72

付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

図表 1 個人保険の新規契約 保有契約 ( 万件 % 億円) 新規契約 保有契約 件数 金額 ( 契約高 ) 件数 金額 ( 契約高 ) 前年度比 前年度比 前年度比 前年度比 平成 25 年度 1, , , ,575,

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1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

2013年7月3日

DOTS 実施率に関する補足資料 平成 26 年 12 月 25 日 結核研究所対策支援部作成 平成 23 年 5 月に改正された 結核に関する特定感染症予防指針 に DOTS の実施状況は自治体による違いが大きく実施体制の強化が必要であること 院内 DOTS 及び地域 DOTS の実施において医療

図表 II-39 都市別 世帯主年齢階級別 固定資産税等額 所得税 社会保険料等額 消 費支出額 居住コスト 年間貯蓄額 ( 住宅ローン無し世帯 ) 単位 :% 東京都特別区 (n=68) 30 代以下 (n=100) 40 代

1

厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業)

小児 AYA 世代のがん罹患 国立がん研究センター がん対策情報センター がん統計 総合解析研究部 1

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人口 世帯に関する項目 (1) 人口増加率 0.07% 指標の説明 人口増加率 とは ある期間の始めの時点の人口総数に対する 期間中の人口増加数 ( 自然増減 + 社会増減 ) の割合で 人口の変化量を総合的に表す指標として用いられる 指標の算出根拠 基礎データの資料 人口増加率 = 期間中の人口増

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対象疾患名及び ICD-10 コード等 対象疾患名 ( 診療行為 ) ICD-10 等 1 糖尿病 2 脳血管障害 3 虚血性心疾患 4 動脈閉塞 5 高血圧症 6 高尿酸血症 7 高脂血症 8 肝機能障害 9 高血圧性腎臓障害 10 人工透析 E11~E14 I61 I639 I64 I209 I

子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案要綱

< 解説 > 年がん診療連携拠点病院等院内がん登録 3 年生存率初集 概要多くのがんでは 5 年後の生存状況が一つの治癒の目安としてこれまで用いられてきたため これまで国立がん研究センターでは診断から 5 年後の生存率を報告してきました 平成 30 年 3 月に閣議決定された第 3 が

調査研究ジャーナル Vol. No. 6

平成 27(2015) 年エイズ発生動向 概要 厚生労働省エイズ動向委員会エイズ動向委員会は 3 ヶ月ごとに委員会を開催し 都道府県等からの報告に基づき日本国内の患者発生動向を把握し公表している 本稿では 平成 27(2015) 年 1 年間の発生動向の概要を報告する 2015 年に報告された HI

目次 Ⅰ 高知県地域がん登録事業の概要 歴史 方法... 1 (1) 情報集方法... 1 (2) 登録対象... 1 (3) 登録 集計 解析 二次保健医療圏別および医療機関別の届出数 遡り調査... 3 Ⅱ 結 果 登録精度指

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第 3 節心筋梗塞等の心血管疾患 , % % % %

Microsoft PowerPoint  税-1(平成28年度補てん状況把握)

平成27年版高齢社会白書(全体版)

平成26年 人口動態統計月報年計(概数)の概況 1

Q1.65 歳での健康寿命に 65 を足せば 0 歳での健康寿命になりますか A1. なりません 別途 健康寿命の算定プログラム 等を用いて 0 歳での健康寿命を算定する必要があります 例えば 健康寿命の算定方法の指針 の図 4-3 の男の算定結果を見ると 健康な期間の平均が 65 歳時点では 17

周南市版地域ケア会議 運用マニュアル 1 地域ケア会議の定義 地域ケア会議は 地域包括支援センターまたは市町村が主催し 設置 運営する 行政職員をはじめ 地域の関係者から構成される会議体 と定義されています 地域ケア会議の構成員は 会議の目的に応じ 行政職員 センター職員 介護支援専門員 介護サービ

平成13-15年度厚生労働科学研究費補助金

e-stat の利用方法 e-stat とは 日本の統計ができる政府統計ポータルサイトです 従来 各府省等ごとのホームページに掲載されていた各種統計関係情報 ( 各府省等が登録した統計データ 公表予定 新着情報 調査票項目情報などの各種統計情報 ) を利用することができます 詳細な統計内容につきまし

参考資料1 高等教育の将来構想に関する参考資料2/3

平成22年度

< 住民基本台帳に基づく > 年齢別人口 町丁別人口 人口動態 等 西暦 町田市の人口の推移 ( 各年 1 月 1 日現在 ) 年少人口 0 歳 ~14 歳の人口です 生産年齢人口 15 歳 ~64 歳の人口です 老齢人

【資料1】結核対策について

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医療事故防止対策に関するワーキング・グループにおいて、下記の点につき協議検討する

4 年齢階級別の死因山形県の平成 28 年の死因順位は 20 歳から 34 歳までの各階級において自殺が1 位となっているほか 64 歳までの各階級においても死因順位の上位にあり おおむね全国と同様の傾向が見られます < 表 7> 年齢階級別の死因順位 死亡者数 ( 山形県 ) 年齢階級 総死亡者数

今日の内容 1. がん対策 ( 山梨県がん対策推進条例及び山梨県がん対策推進計画 ) 2. がんデータ ( 死亡者数 罹患率など ) 3. がん検診

シニア層の健康志向に支えられるフィットネスクラブ

図 3. 新規 HIV 感染者報告数の国籍別 性別年次推移 図 4. 新規 AIDS 患者報告数の国籍別 性別年次推移 (2) 感染経路 1 HIV 感染者 2016 年の HIV 感染者報告例の感染経路で 異性間の性的接触による感染が 170 件 (16.8%) 同性間の性的接触による感染が 73

家族の介護負担感や死別後の抑うつ症状 介護について全般的に負担感が大きかった 割合が4 割 患者の死亡後に抑うつ等の高い精神的な負担を抱えるものの割合が2 割弱と 家族の介護負担やその後の精神的な負担が高いことなどが示されました 予備調査の結果から 人生の最終段階における患者や家族の苦痛の緩和が難し

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症候性サーベイランス実施 手順書 インフルエンザ様症候性サーベイランス 編 平成 28 年 5 月 26 日 群馬県感染症対策連絡協議会 ICN 分科会サーベイランスチーム作成

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1.ICD-10(2013 年版 ) のコーディングの確認対象 確認対象医療機関 DPC 対象病院および DPC 準備病院 確認対象期間 平成 28 年 10 月診療分 ~ 平成 30 年 3 月診療分 ( 計 18 か月 ) 確認対象 ICD-10 様式 1 の診断情報の ICD-10 コードを対

EBNと疫学

02 28結果の概要(3健康)(170622)

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Transcription:

和歌山県地域がん登録事業の概要 和歌山県地域がん登録事業については 本県全域のがん罹患の実態を把握する唯一の方法であり 本県のがん対策推進の基礎資料として活用するため 実施主体である和歌山県と登録実務を担っている和歌山県立医科大学附属病院腫瘍センターがん登録室 ( 和歌山県地域がん登録室 ) が連携を図りながら 平成 23 年度から開始されたところである 当該事業の実施方法については 概ね図 Aのとおり 医療機関から提供された届出票により得られるがん患者の情報と 県内各保健所から提供される死亡情報 ( 人口動態統計による死亡小票 ) を地域がん登録室において収集し それぞれ登録 集約 集計 分析作業をすることにより がん罹患の実態把握をするものである 和歌山県 業務委託 和歌山県立医科大学附属病院 ( 地域がん登録室 ) 患者情報 県がん対策推進委員会 データの評価政策提言 業務報告 死亡者情報 照合作業 データの入力 集約 調査 院内がん登録実施医療機関 ( 登録データ 遡り調査票 ) 協力医療機関 ( 届出票 遡り調査票 ) 死亡者情報 保健所人口動態統計 生存確認調査 罹患率 生存率 がんの治療状況の把握 分析 死亡票 市町村 生存確認調査 各種統計表 年報の作成 地域がん登録の効果 地域がん登録の活用 がんの罹患数 率を把握できる 診断時の進行度を把握できる がん患者の受療状況を把握できる がん患者の生存率を把握できる 一次予防 ( 発生予防 ) の評価 たばこ対策等への活用 二次予防 ( 早期発見 ) の評価 がん検診のプロセス評価 がん医療の評価 地域のがん診療水準の評価医療資源の配置の評価 検討 図 A 和歌山県地域がん登録事業フロー図

結果の概要 集計について ( 集計期間 ) 罹患年月日 ( がんと診断した年月日 ) が 平成 23 年 1 月 1 日から平成 23 年 12 月 31 日の 1 年間 ( 集計の対象 ) ICD-O-3( 国際疾病分類腫瘍学第 3 版 ) 分類上の組織コードが性状 2( 上皮内 ) と 3( 悪性 浸潤性 ) に該当する全部位 ただし 脳腫瘍は良性も含む ( 集計方法 ) 地域がん登録では 医療機関から提供されたがん患者の診断情報を登録する一方 人口動態統計によるがん死亡情報を照合することにより 個々の患者の罹患状況と生存状況を把握する 登録した結果 人口動態統計によりがん死亡情報のみが存在し 患者情報が登録されていない場合は 医療機関からの報告漏れとして がんによる死亡診断をした医療機関にがん罹患情報の報告を依頼 ( 遡り調査 ) し 実態把握の精度を高める 遡り調査の結果 報告のあった患者情報も含め 医療機関から報告のあったがん患者数と死亡情報のみで把握しているがん死亡者数の合計を全体のがん罹患数とする 1 罹患の概要平成 23 年 ( 2011 年 ) の和歌山県における罹患数は 男性 4,956 件 女性 3,419 件の合計 8,375 件であり 粗罹患率 ( 人口 10 万対 ) は 男性 1060.9 女性 649.0 年齢調整罹患率 ( 人口 10 万対 ) は 男性 509.7 女性 336.8 であった ただし 下記の 2 届出精度の状況 で説明しているとおり 登録漏れ患者や把握不可能なケースもあるため 真の罹患数を示しているものではないことに留意する必要がある 罹患数 粗罹患率 年齢調整罹患率には上皮内がんを含んでいる

2 届出精度の状況地域がん登録の精度を評価するにあたり DCN と DCO( 用語の定義については下記参照 ) といった指標が用いられるが 今回の集計結果における DCN は 24.4% DCO は 9.1% であった DCO とは 人口動態統計死亡小票のみの情報しか把握されていない割合を意味するため DCO が高くなるほど医療機関からの届出がなく 登録漏れが多いことを示し 全体の罹患数が過小に評価されているということになる 平成 23 年度に地域がん登録事業を開始し 報告書の作成は 3 年目である 今年は県内医療機関の協力の元 遡り調査をおこなったため DCO が国際水準を満たす数値となった 引き続き県内医療機関に対して届出の協力依頼や遡り調査の実施により精度を高めていく必要がある なお 図 B に罹患数の計測方法 (DCN および DCO の関係を含む ) を示す DCN とは 人口動態調査死亡小票により初めて患者情報を把握した割合 DCO とは 人口動態調査死亡小票のみで患者情報を把握した割合 ( 遡り調査実施後 医療機関からの回答 ( 届出 ) がされるに従い DCO は低くなる ) 国際水準として 全部位の DCO は 10% 未満が望ましいとされている 真のがん罹患数 報告 登録報告 登録報告 登録 がん死亡者の把握 ( 人口動態統計死亡小票を県が入手 ) DCN 遡り調査 DCO がん登録で把握されたがん罹患数 報告漏れのがん生存者 DCN: Death Certificate Notifications ( 死亡診断書により初めてがんを把握 ) DCO: Death Certificate Only ( 死亡診断書以外の情報がない ) 図 B 罹患数の計測方法

用語の解説 罹患数 対象とする人口集団から 一定の期間に 新たにがんと診断された数 罹患率 ある集団で新たに診断されたがんの数を その集団のその期間の人口で割った値 通常 1 年単位 で算出され 人口 10 万人のうち何例罹患したか で表現されます 粗罹患率 一定期間の罹患数 ( ある病気と新たに診断された数 ) を単純にその期間の人口で割った罹患率で 年齢調整をしていない罹患率という意味で 粗 という語が付いています また 国立がん研究センターがん対策情報センターが作成した都道府県別人口データを用いた 2011 年における和歌山県の年齢別人口 ( 表 1) と人口構造 ( 図 C) を示す 表 1)2011 年和歌山県年齢別人口 男性 女性 85 以上 11,318 30,608 80-84 17,425 27,346 75-79 24,395 33,327 70-74 28,632 34,337 65-69 31,117 35,521 60-64 43,084 46,452 55-59 32,752 34,714 50-54 29,450 31,673 45-49 28,595 31,892 40-44 31,544 34,025 35-39 32,768 33,494 30-34 25,324 26,209 25-29 22,788 23,338 20-24 20,100 20,157 15-19 23,834 22,478 10-14 24,163 23,253 5-9 20,992 19,982 0-4 18,855 17,964 合計 467,136 526,770 ( 歳 ) 80-84 75-79 70-74 65-69 60-64 55-59 50-54 45-49 40-44 35-39 30-34 25-29 20-24 15-19 10-14 5-9 0-4 男性 50,000 30,000 10,000 10,000 30,000 50,000 ( 人 ) 女性 図 C 2011 年和歌山県年齢別人口構図

年齢調整罹患率 もし人口構成が基準人口と同じだったら実現されたであろう罹患率 がんは高齢になるほど罹患率が高くなりますので 高齢者が多い集団は高齢者が少ない集団よりがんの粗罹患率が高くなります そのため 仮に 2つの集団の粗罹患率に差があっても その差が真の罹患率の差なのか 単に年齢構成の違いによる差なのかの区別がつきません そこで 年齢構成が異なる集団の間で罹患率を比較する場合や 同じ集団で罹患率の年次推移を見る場合に年齢調整罹患率が用いられます 年齢調整罹患率は 集団全体の罹患率を 基準となる集団の年齢構成 ( 基準人口 ) に合わせた形で求められます 基準人口として 国内では通例昭和 60 年 (19 85 年 ) モデル人口 ( 昭和 60 年人口をベースに作られた仮想人口モデル ) が用いられ 国際比較などでは世界人口が用いられます ( 図 D) 年齢調整 図 D 昭和 60 年日本人モデル人口と世界標準人口 罹患率は 基準人口として何を用いるかによって値が変わります 年齢調整罹患率は 比較的人口規模が大きく かつ年齢階級別罹患率のデータが得られる場合に用いられます ( 標準化罹患比参照 ) 年齢調整罹患率 ={[ 基準人口 ( 昭和 60 年モデル人口 ) 観察集団の各年齢 ( 年齢階級 ) の罹患率 基準人口集団のその年齢 ( 年齢階級 ) の人口 ] の各年齢 ( 年齢階級 )} の総和 / 基準人口集団の総人口 ( 通例人口 10 万人当たりで表示 ) 累積罹患率 ある年齢までにある病気と診断されるおおよその確率 ( ただし その病気と診断されるまでは死なないという仮定のもとでの確率 ) 0~64 歳あるいは 0~74 歳累積罹患率がよく用いられ それぞれ 64 歳までに あるいは 74 歳までにその病気と診断される確率の近似値として用いることができます 年齢階級別罹患率に その階級に含まれる年数をかけたものを 特定の年齢まで足し合わせて求めます 0~74 歳累積罹患率 = 0~4 歳年齢階級別罹患率 5 年 (0 1 2 3 4 の 5 歳分が含まれるから )+5~9 歳年齢階級別罹患率 5 年 +...+70~74 歳年齢階級別罹患率 5 年 標準化罹患比 人口構成の違いを除去して罹患率を比較するための指標 ある集団の罹患率が 基準となる集団と比べてどのくらい高いかを示す比と理解することができ ある集団で実際に観察された罹患数が もしその集団の罹患率が基準となる集団の罹患率と同じだった場合に予想される罹患数 ( 期待罹患数 ) の何倍であるか という形で求められます 年齢調整罹患率の算出には年齢階級別罹患率が必要ですが そのようなデータが得られない場合や 人口規模の小さい集団で年齢階級別罹患率の偶然変動が大きい場合の年齢調整の手法として

標準化罹患比が用いられます 日本の都道府県比較の場合 基準となる集団の罹患率として通例全国値が用いられ 標準化罹患比が1より大きい都道府県は全国平均より罹患率が高く 1より小さい場合は全国平均より罹患率が低いことを意味します 標準化罹患比は ある集団で実際に観察された罹患数が もしその集団の罹患率が基準となる集団の罹患率と同じだった場合に予想される罹患数 ( 期待罹患数 ) の何倍であるか という形で求められます 標準化罹患比 (SIR) = 観察集団の実際の罹患数 /( 基準となる集団の年齢階級別罹患率 観察集団の年齢階級別人口 ) の総和 遡り調査 地域がん登録では がんに罹患していたことが死亡票で初めて把握されたがん患者さん (DCN の患者さん ) に対して 死亡診断書作成施設に問い合わせ その患者さんの罹患情報を得る地域がん登録の調査法 より精度の高い罹患情報を得るためには 各地域がん登録が遡り調査を実施することが望まれます DCN 死亡情報で初めて登録室が把握した患者さん ( 死亡情報が登録された時点で届出がない ) のこと Death Certificate Notification (DCN) といい 生前の医療情報を遡り調査することが推奨されています DCN が存在することは 届出が漏れており 生存しているために登録室で把握されていない患者さんが存在することを示唆し DCN が高ければ登録の完全性が低い ( 登録漏れが多い ) ことが推察されます DCO 死亡情報のみで登録された患者さんのこと Death Certificate Only (DCO) といい DCO が低いほど 計測された罹患数の信頼性が高いと評価されます DCO が高い場合は 登録漏れが多いとみなされますが 低いといって登録漏れが少ないことの保証にはなりません その理由は 遡り調査に力を注いだ場合 DCN が高くても DCO を低くすることが可能だからです 国際的な水準では DCO は 10% 以下であることが求められます ID 比 (=IM 比 ) 一定期間におけるがん罹患数の がん死亡数に対する比 Incidence/Mortality Ratio といい 生存率が低い場合 あるいは 届出が不十分な場合に低くなります 一方 生存率が高い場合 あるいは 患者さんの同定過程に問題があり 1 人の患者さんを誤って重複登録している場合に高くなります 現在のがん患者さんの生存率に基づいた場合 全がんで 1.8~1.9 程度が妥当と考えられています 用語の解説については下記から引用独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス がん統計の用語集 (http://ganjoho.jp/professional/statistics/statistics_terminology01.html)