太平洋セメント 大船渡工場 写真 3 大船渡市内への津波来襲 写真 5 工場内出荷バースの損傷 写真 4 工場内建屋の損傷に被災し, 最終工程であるセメントミル系や自家発電設備も全て津波により冠水しました 高台に位置している5 号キルン系統は被害を免れたものの, 工場全設備の約 70% 相当が壊滅的

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太平洋セメント 上磯工場 館市の西隣に位置し,2006( 平成 18) 年 2 月に上磯町と大野町の平成の大合併により誕生し,2016 年 2 月で10 周年を迎えます 今年は, 来る3 月 26 日に新たな北海道の陸の玄関となる北海道新幹線 新函館北斗駅 が市内に開業することもあり, 各種イベント

企業経営動向調査0908

太平洋セメント 大分工場 写真 4 大型船対応可能な出荷バース 写真 6 住居表示にも セメント町 が 写真 7 日豊オノダ の皆さん 一工場の周辺は セメント町 と名づけられ, 日本 国内では旧小野田セメント発祥の地である山口県の 山陽小野田市と二個所のみで, 非常に珍しい地名と 写真 5 第二工

様式第二号の二(第八条の四の四関係)


災害廃棄物の処理の推進に関する関係閣僚会合 < 設置の背景 > 発災後 1 年を迎えるに当たり 総理のイニシアティブにより災害廃棄物の処理を加速するため設けられたもの < これまでの成果 > 第 1 回 ( 平成 24 年 3 月 13 日 ) 再生した災害廃棄物の大胆な活用 民間企業の協力拡大の要

数値目標 事業開始前 ( 現時点 ) 平成 28 年度 (1 年目 ) 平成 29 年度 (2 年目 ) 平成 30 年度 (3 年目 ) 港湾取扱貨物量 556 万トン 4 万トン 0 万トン 20 万トン 観光入込客数 2,899.4 万人回 -9.5 万人回 1.9 万人回 1.9 万人回 7

事業計画 ( 岩手県久慈市 ) 1. 海岸対策 1 海岸の状況市内の地区海岸数被災した地区海岸数応急対策を実施した地区海岸数本復旧を実施する地区海岸数 7 地区海岸 6 地区海岸 2 地区海岸 6 地区海岸 2 堤防高 9 月 26 日及び10 月 20 日に堤防高を公表 久慈湾 :T.P. 8.0


<ハード対策の実態 > また ハード対策についてみると 防災設備として必要性が高いとされている非常用電源 電話不通時の代替通信機能 燃料備蓄が整備されている 道の駅 は 宮城など3 県内 57 駅のうち それぞれ45.6%(26 駅 ) 22.8%(13 駅 ) 17.5%(10 駅 ) といずれも

産業廃棄物の処理に係る管理体制に関する事項 ( 管理体制図 ) ゼロエミッション推進体制 ( 第 2 面 ) 滋賀水口工場長 定期会議事務局会議 1 回 /W 担当者会議 1 回 /M 推進報告会 1 回 /2M 推進責任者 : 工務安全環境部長 実行責任者 : 安全環境課長 事務局 中間膜製造部機

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ごみ焼却施設の用地設定

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事業計画 ( 岩手県山田町 ) 1. 海岸対策 1 海岸の状況町内の地区海岸数被災した地区海岸数応急対策を実施した地区海岸数本復旧を実施する地区海岸数 8 地区海岸 8 地区海岸 3 地区海岸 8 地区海岸 2 堤防高 9 月 26 日及び10 月 20 日に堤防高を公表 重茂海岸 :T.P. 14

Microsoft Word - 様式2-8 産廃処理計画

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(Page 2)

福井県建設リサイクルガイドライン 第 1. 目的資源の有効な利用の確保および建設副産物の適正な処理を図るためには 建設資材の開発 製造から土木構造物や建築物等の設計 建設資材の選択 分別解体等を含む建設工事の施工 建設廃棄物の廃棄等に至る各段階において 建設副産物の排出の抑制 建設資材の再使用および

大阪湾広域臨海環境整備センターは、昭和57年3月に設立されて以来、30年余りにわたって、全国で唯一の府県域を超えた広域的な廃棄物の適正な最終処分を海面埋立てにより行う「フェニックス事業」を地方公共団体及び港湾管理者と一体となって推進してきたところであり

別添 表 1 供給力確保に向けた緊急設置電源 ( その 1) 設置場所 定格出力 2 発電開始 2 運転開始 公表日 3 姉崎火力発電所 約 0.6 万 kw (0.14 万 kw 4 台 ) 平成 23 年 4 月 24 日平成 23 年 4 月 27 日 平成 23 年 4 月 15 日 袖ケ浦

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平成 29 年 7 月 地域別木質チップ市場価格 ( 平成 29 年 4 月時点 ) 北東北 -2.7~ ~1.7 南東北 -0.8~ ~ ~1.0 変動なし 北関東 1.0~ ~ ~1.8 変化なし 中関東 6.5~ ~2.8

災害廃棄物の種類

目 次 1 計画策定の意義 1 2 基本的方向 2 3 計画期間 2 4 対象品目 各年度における容器包装廃棄物の排出量の見込み 4 6 容器包装廃棄物の排出の抑制の促進するための方策に 関する事項 5 7 分別収集をするものとした容器包装廃棄物の種類及び当該容器 包装廃棄物の収集に係る

様式第二号の八 ( 第八条の四の五関係 ) ( 第 1 面 ) 産業廃棄物処理計画書 令和元年 5 月 30 日 松山市長殿 提出者 住所 広島市中区中町 8 番 6 号 氏名 株式会社フジタ 広島支店 執行役員支店長安東則好 ( 法人にあっては 名称及び代表者の氏名 ) 電話番号

(3) 設備復旧対策事例 ~ 基地局及びエントランス回線通信事業者各社で取り組んだ主な基地局あるいはネットワーク設備復旧対策としては 光ファイバー 衛星回線 無線 ( マイクロ ) 回線の活用による伝送路の復旧や 山頂などへの大ゾーン方式 ( 複数の基地局によるサービスエリアを1つの大きなゾーンとし

教務厚生常任委員会行政視察報告書 1. 視察期間 平成 26 年 10 月 14 日 ( 火 ) から 10 月 16 日 ( 木 ) まで 2. 視察事項 ( 視察地 ) 及び選定理由 (1) 幼保一体化施設 コロポックルの森 について ( 北海道登別市 ) 登別市では 新たに建設する市立保育所を

る. これらの廃棄物は混合状態となっていることが多いため, 選別後にそれぞれの性状に合った処理を実施する必要がある. 環境省 4) により, 放射性物質濃度による処分 ( 保管 ) 方法が表 -1のように示されている. 可燃物の焼却処理後に発生する焼却灰, 下水汚泥の焼却灰, 浄水汚泥の焼却灰は,

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1. 調査目的 東日本大震災の影響に関するアンケート調査結果 3 月 11 日に発生した東日本大震災により 東北経済連合会会員企業も大きな影響を受けまし た 会員企業の被災状況を把握し 今後の経済活動の展望 および支援活動に資するためアンケ ート調査を行ないました 2. 調査期間平成 23 年 7

目次 1. 奈良市域の温室効果ガス排出量 温室効果ガス排出量の推移 年度 2010 年度の温室効果ガス排出状況 部門別温室効果ガス排出状況 温室効果ガス排出量の増減要因 産業部門 民生家庭部門

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- 1 - 東日本大震災に対処するための土地改良法の特例に関する法律(趣旨)第一条この法律は 東日本大震災に対処するため 国又は都道府県が行う土地改良事業等について 土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)の特例を定めるものとする (定義)第二条この法律において 除塩 とは 平成二十三年三月十一日

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ツールへのデータ入力前にすべきこと 一般廃棄物処理に係るフロー図を作成 < 収集 : 直営 > < 直接搬入 > 粗大ごみ **t <A 破砕施設 : 直営 > <D 最終処分場 > 粗大ごみ **t 粗大ごみ **t 粗大ごみ **t 燃やすごみ **t アルミ缶 **t スチール缶 **t びん

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Q1 1

質問1

別添 4 レファレンスアプローチと部門別アプローチの比較とエネルギー収支 A4.2. CO 2 排出量の差異について 1990~2012 年度における CO 2 排出量の差異の変動幅は -1.92%(2002 年度 )~1.96%(2008 年度 ) となっている なお エネルギーとして利用された廃

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PDF変換用(報告書)帯広市新エネルギービジョ

Ⅰ Ⅱ 平成 27 年 岩手県の東日本大震災津波からの復興に関する意識調査 結果 ( 速報 ) 目的 復興計画に基づいて県が行う施策 事業の実施状況や進捗に関し 県民がどの程度重要だと感じ どの程度復旧 復興を実感しているか等を毎年継続的に把握することにより 計画の実効性を高め 長期にわたる復興に向

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産業廃棄物処理計画実施状況報告書

本研究で対象とした宮城県で発生した災害廃棄物量は 約 16.7 百万トンと推計され 環境省の公表値 17.6 百万トンよりも小さい値となった また 仮置場の位置は便宜上 各市町村役場の所在地と仮定したうえで評 価に供した 岩手県 宮城県 福島県 4.5 百万 ton 4.0 百万 ton 16.7

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中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会(第49回)

2. 県別の生産能力や売上の回復状況 3 県の全体では 生産能力が 8 割以上回復した業者は 4 売上が 8 割以上回復した業者は 2 生産能力が 8 割以上回復した業者は 岩手県では 5 宮城県 4 福島県 2 一方 売上が 8 割以上回復した業者は 岩手県では 4 宮城県 3 福島県 生産能力の


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参考資料2 プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況 2016年

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災害廃棄物の発生原単位について ( 第一報 ) 震災対応ネットワーク ( 廃棄物 し尿等分野 ) 取り纏め : 国立環境研究所 家屋の全壊に伴って排出される災害廃棄物 ( 解体廃棄物 ) の発生原単位について既存の文献をレビューした 基本的には被災自治体が公開した発生原単位は現地調

1.1 阪神 淡路大震災環境省は 阪神 淡路大震災 ( 平成 7 年 1 月 17 日発生 ) の際に兵庫県及び神戸市の協力を得て 大気中の石綿濃度のモニタリング調査を実施した 当時の被災地における一般環境大気中 (17 地点 ) の石綿濃度の調査結果を表 R2.1 に 解体工事現場の敷地境界付近に

様式第二号の九 ( 第八条の四の六関係 ) ( 第 1 面 ) 産業廃棄物処理計画実施状況報告書 平成 30 年 5 月 18 日 広島県知事 様 提出者 住所 氏名 広島県三原市須波 1 丁目 23-8 藤井建設 代表取締役藤井啓文 ( 法人にあっては, 名称及び代表者の氏名 ) 電話番号 (08

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(2) 地震発生時の状況地震発生時の運転状況ですが 現在 20 清掃工場で40 炉が稼動していますが 地震発生当日は32 炉が稼動しており 8 炉は定期補修や中間点検のため停止していました 地震後は設備的な故障で停止したのが2 炉ありまして 32 炉稼動していたうち2 炉が停止したというのが地震発生

概要:プラスチック製容器包装再商品化手法およびエネルギーリカバリーの環境負荷評価(LCA)

スライド 1

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東日本大震災に係る災害等廃棄物処理事業の実地調査について


様式第二号の九 ( 第八条の四の六関係 ) ( 第 1 面 ) 産業廃棄物処理計画実施状況報告書 平成 30 年 6 月 14 日 広島県知事 様 提出者 住所 氏名 広島県府中市本山町 佐々田土建株式会社 代表取締役三島俊美 電話番号 廃棄物の処理及び清掃

東北地方太平洋沖地震への 気象庁の対応について ( 報告 ) 気象業務の評価に関する懇談会 平成 23 年 5 月 31 日 気象庁 1

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2 被害量と対策効果 < 死者 負傷者 > 過去の地震を考慮した最大クラス あらゆる可能性を考慮した最大クラス 対策前 対策後 対策前 対策後 死者数約 1,400 人約 100 人約 6,700 人約 1,500 人 重傷者数約 600 人約 400 人約 3,000 人約 1,400 人 軽傷者

条例施行規則様式第 26 号 ( 第 46 条関係 ) ( 第 1 面 ) 産業廃棄物処理計画書 平成 30 年 6 月日 長野県知事 様 提出者 住 所 東御市下之城畔 ( 法人にあっては 主たる事業所の所在地 ) 氏 名 川西保健衛生施設組合長花岡利夫 ( 法人にあっては 名称及び代

様式2-9産廃処理実績

1 経過及び趣旨平成 20 年 3 月に策定された 湘南東ブロックごみ処理広域化実施計画 の基本方針として リサイクル推進型 +バイオガス利用 ( 残渣焼却 ) 最終処分場負荷軽減型 のごみ処理システムの構築があり バイオガス化施設導入の調査 検討を進めてきました バイオガス化施設導入の検証にあたっ

NO. 2 事業名 埋蔵文化財発掘調査事業 ( 鹿島区 ) 事業番号 A-4-2 事業実施主体 南相馬市 交付期間 H24-H26 総交付対象事業費 55,014( 千円 ) 復興事業 ( 防災集団移転 ) に伴い市内に所在する遺跡について 発掘調査事業を実施する 鹿島区内遺跡数 9 遺跡 対象面積

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130309弘前大学シンポジウム0305.pptx

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資料4 国土交通省資料

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< 要約 > < 質問 1> あなたにとって最も備えが必要だと思う災害は何ですか? トップは圧倒的に 地震 約 8 割の方が 最も備えが必要な災害 と回答 北海道 東北では 大雪 雪崩 中国 四国 九州は 台風 大雨 洪水 を警戒 < 質問 2> ご家庭の防災対策は 100 点満点で採点すると何点で

1 2 3 CONTENTS

平成 24 年 11 月 6 日 大熊町住民意向調査調査結果 ( 速報版 ) 復興庁福島県大熊町 調査の概要 1. 調査対象 : 全世帯主 ( 分散避難している場合は それぞれの代表者 ) 5,378 世帯 2. 調査時期 : 平成 24 年 9 月 7 日 ( 金 )~9 月 24 日 ( 月 )

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平成 26 年 6 月 自由民主党東日本大震災復興加速化本部長 大島理森 様 要望書 三陸沿岸都市会議 八戸市 久慈市 宮古市 釜石市大船渡市 陸前高田市 気仙沼市


電気料金新旧単価一覧表 ( 平成 25 年 9 月 1 日実施 ) 平素は 弊社事業に対し格別のご高配を賜り 厚く御礼申し上げます また 日頃から節電にご協力いただいておりますことについて 重ねて御礼申し上げます さて 弊社は東日本大震災や新潟 福島豪雨による甚大な設備被害 原子力発電の停止による火

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平成 28 年熊本地震における対応 平成 28 年熊本地震 ( 前震 :4/14 本震 :4/16) において 電力 ガス等の分野で供給支障等の被害が発生 関係事業者が広域的な資機材 人員の融通を実施するなど 迅速な復旧に努めた結果 当初の想定よりも 早期の復旧が実現 また 復旧見通しを早い段階で提

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常磐町内会説明会 会議要旨

Transcription:

26 大船渡 IWATE OFUNATO 太平洋セメント 大船渡工場 震災からの復活, 更なる貢献をめざして大船渡工場は岩手県大船渡市にあり, 大船渡湾の最奥部に位置しています ( 写真 1) 1937( 昭和 12) 年に東北セメント としてセメント製造を開始し, 合併等を経て1988( 平成 10) 年に現在の太平洋セメント 大船渡工場となり, 来年には操業 80 周年を迎えます 天然の良港を活かして船舶による原燃料の受入れやセメント出荷を行い, 東北管内へのセメント供給はもとより, 関東圏へも出荷しています 2011( 平成 23) 年の東日本大震災では, 大船渡湾に位置する当工場は壊滅的な被害を受けましたが, 行政, 地域の方々などの多大な支援により復活し, 現在に至っています 震災から5 年, 復興への更なる貢献と工場の発展を目指して, 日夜操業に取り組んでいるところです 震災被害と復旧 図 1 大船渡工場の位置関係 2011( 平成 23) 年 3 月 11 日に発生したM9.0 の地震では, 約 10mの巨大津波に襲われました ( 写真 2 5) 当工場にはセメント製造の主工程である焼成キルン ( 焼成炉 ) が1 号 (3,200t/ 日 ) および5 号 (5,200t/ 日 ) と2 系統あり,1 号キルン系統は完全 写真 1 工場全景写真 2 震災時の工場 ( 水蒸気爆発 )

太平洋セメント 大船渡工場 写真 3 大船渡市内への津波来襲 写真 5 工場内出荷バースの損傷 写真 4 工場内建屋の損傷に被災し, 最終工程であるセメントミル系や自家発電設備も全て津波により冠水しました 高台に位置している5 号キルン系統は被害を免れたものの, 工場全設備の約 70% 相当が壊滅的なダメージを受けました 幸いにも当日出勤していた従業員, 協力会社員は定期的な避難訓練が活かされ人的被害は皆無であり, 工場周辺道路を避難していた一般市民も合わせた約 100 名が,5 号キルンの操作室で一夜を明かしました 一方, 大船渡市内も甚大な被害を受け, あちこちにがれきの山ができ, まずはこの災害廃棄物をいかに処理していくかが優先課題でした これについては, 大船渡市と協議を重ね, 被害が軽微であった5 号キルン (φ5.8m 100mL) で災害廃棄物の焼却を進めていくことになりました 写真 6 災害廃棄物処理 除塩設備また, 大船渡市をはじめとした東北沿岸地区の震災復興には, セメントの供給が早晩, 必要となることから,4 月 1 日には徳植社長 ( 当時 ) が来場し, 工場の復旧宣言を行いました 従業員の中には, 甚大な被害状況に対して工場存続の危機感を持った者も多くいましたが, この復旧宣言が大きな励みになり, 協力会社やその他多くの方々の支援もあって, 工場一丸となってがれきの片づけ, 設備復旧に日夜, 邁進していくことができました 災害廃棄物処理からセメント製造再開に向けてテスト焼却を経て6 月 22 日に災害廃棄物焼却がスタートしました セメント焼成では, これまでも原料や燃料代替として廃棄物を使用していました

写真 7 海上輸送の廃棄物広域受入れ が, 災害廃棄物の焼却は初めての試みであり, 前処理や焼却条件などに苦慮しながら,3か月間, 安定焼却に取り組みました また, 災害廃棄物のセメント資源化に向けては海水を被っているため, いかに塩分を除去するかが課題でした 不燃性, 可燃性に分けて水洗にて塩分除去を行う除塩設備を設置し ( 写真 6), 製造工程や品質に及ぼす影響を抑えました 焼却では焼却残さが発生し埋立処分となっていましたが, セメント資源化へ移行することで全て製品化が可能となりました 原料工程や最終工程の製品ライン, 被災したキルンの復旧も進み,11 月 4 日からは5 号キルンで, 2012( 平成 24) 年 6 月 28 日からは1 号キルンでのセメント生産の再開が可能になりました 災害廃棄物は,2014( 平成 26) 年 3 月までに岩手県沿岸地区の宮古市, 山田町, 大槌町, 大船渡市, 陸前高田市の3 市 2 町から海上輸送も含めて969 千 tもの受入量となり, これは岩手県内で発生した災害廃棄物総数量の約 20% に相当し, 早期復興の一助となりました ( 写真 7) 更なる資源循環型社会を目指して災害廃棄物処理の終了後, 住宅の高台移転のための土地造成など復興関連事業によって発生する土壌や伐根材を周辺自治体から受入れて, セメント資源化処理を行っています 2015( 平成 27) 年度には 写真 8 BOFc( 廃油系混合廃棄物 ) 処理施設写真 9 廃プラ破砕処理設備復興関連廃棄物として伐根等木くず45 千 t, 建設汚泥 がれき類 36 千 tを受入れ, その他廃棄物の石炭灰 184 千 t, 廃プラスチック45 千 tなどと合わせてセメント1t 当たり261kgの廃棄物 副産物を処理しました このように復興事業から発生する廃棄物を処理しながら, 復興資材であるセメントを供給するという両面から復興を支えて,2013( 平成 25) 年度にはセメント1t 当たり最大 472kgの災害廃棄物等の処理を行いました しかしながら, 復興事業関連廃棄物の受入れ量は今後数年で復興事業の進行, 完成に伴い減少することが見込まれています そこで, 資源循環型社会へのより大きな貢献を目指し, 震災後に経験した大量の災害廃棄物を処理した工場設備と

太平洋セメント 大船渡工場 写真 10 不燃系廃棄物処理設備 写真 11 袰下山鉱山開発予定地技術を活かし, また大船渡湾という天然の良港を活用することで, 東北地区に限らず関東圏はもとより, さらに広域からの廃棄物収集, 処理の拡大を進めているところです ( 写真 8 10) 今回の経験を活かし, 今後各地で自然災害などが発生した場合の広域輸送を含めた早期復旧への支援スキームが構築されていくものと考えています 悲惨な自然災害はないに越したことはありませんが, 日常からどう対処すべきか備えておくことも我々の使命だと考えています 石灰石鉱山と電力事情セメントの主原料である石灰石は, 龍振鉱業 大船渡鉱山から出鉱され, ベルトコンベアで貨車積込基地まで輸送された後, 工場まで約 12kmを鉄道輸 写真 12 地域の皆様との環境懇談会送されます 現鉱区の石灰石鉱量が下限に近づいているため, さらに県内陸部に位置する袰下 ( ほろし ) 山の鉱山開発に着手しました ( 写真 11) これにより, 今後約 100 年分の石灰石原料が確保できることになります 電力については, 震災前は石炭火力発電 (2.3 万 KW) および廃熱発電 (1.8 万 kw) が稼働していましたが, 震災津波による火力発電所の損傷が大きかったことから復旧を断念しており, 現在は廃熱発電以外の電力は購入電力に頼っている状況です このことがセメント製造コストを増加させる要因となっているため, 自家発電設備復活も含めてさまざまな電力費低減策を検討しているところです 地域とともに歩む工場の安定操業を継続的に行うには, 地域住民や地元自治体との相互理解と協力が欠かせないと考えています セメント工場をより理解していただくため, 地域との懇談会や工場見学会を開催して, 工場操業状況や環境情報を説明する場を設けたり, 地元高校生をインターンシップに迎えるなどを行っています ( 写真 12,13) 同時に, 地域住民の方々から環境モニタリング情報を定期的にいただくことで, 地域からの目線で見た工場を意識しながら, セメント工場のイメージ向上に努めています

写真 14 大船渡湾全景と湾奧に位置する大船渡工場 写真 13 地元高校生を迎えてのインターンシップまた, 廃棄物処理の拡大などさまざまな事業を展開することで地元の雇用につなげ, 人口減少に歯止めを掛ける一助になればと考えています さらなる復興のスピードアップを大船渡市をはじめ, 沿岸各地では嵩上げや防潮堤建設などの復興工事が着々と進んでいますが, 町に震災前のなりわいが戻るまでは, まだ時間を要する ものと思われます 不便な生活を強いられている方の心情を考えると, 復興のさらなる速度アップを願わずにはいられません 我々は引き続き, 復興資材であるセメントの供給責任を果たすとともに, あらゆる復興事業に対して全力をあげて協力していくつもりです 当工場の再開にご尽力, ご支援いただきました皆様に改めて感謝申し上げます [ 太平洋セメント 大船渡工場 ]