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す ウイルスの中で検出頻度の高いものはライノウイルス コロナウイルスが多く これに続くのが RS ウイルス インフルエンザウイルス パラインフルエンザウイルス アデノウイルスです また これらのウイルスには季節的流行の特徴があり ライノウイルスは春と秋 RS ウイルス コロナウイルス インフルエンザ

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2.7.3(5 群 ) 呼吸器感染症臨床的有効性グレースビット 錠 細粒 表 (5 群 )-3 疾患別陰性化率 疾患名 陰性化被験者数 / 陰性化率 (%) (95%CI)(%) a) 肺炎 全体 91/ (89.0, 98.6) 細菌性肺炎 73/ (86

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に 真菌の菌体成分を検出する血清診断法が利用されます 血清 βグルカン検査は 真菌の細胞壁の構成成分である 1,3-β-D-グルカンを検出する検査です ( 図 1) カンジダ属やアスペルギルス属 ニューモシスチスの細胞壁にはβグルカンが豊富に含まれており 血液検査でそれらの真菌症をスクリーニングする

日本内科学会雑誌第98巻第12号

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改訂の理由及び調査の結果直近 3 年度の国内副作用症例の集積状況 転帰死亡症例 国内症例が集積したことから専門委員の意見も踏まえた調査の結果 改訂することが適切と判断した 低カルニチン血症関連症例 16 例 死亡 0 例

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入した場合には 経気道的な散布巣として臓側胸膜から 2-3mm 離れた内側に小葉中心性粒状影や tree-in-bud といわれる小葉中心性病変を呈しますが この所見をみた場合には呼吸器感染症を強く疑います 汎小葉性病変は 小葉間隔壁に囲まれた ほぼ 1, 2cm 四方の小葉内が細胞浸潤や滲出物ある

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抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

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緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

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環境汚染等から呼吸器病患者を守る会 EPAREC 障 骨粗鬆症 糖尿病, 前立腺肥大などの合併症をお持ちの方も多く これらを踏まえながら 多角的に治療方針 使用薬剤を決めていきます (3) 管理目標 : 喘息における発作 COPD における急性増悪をともに予防する事が管理目標となります 禁煙を徹底し

学会名 : 日本免疫不全症研究会 アンケート 1 1. アンケート 2 に回答する疾患名 (1) X 連鎖無 γ グロブリン血症 (2) 慢性肉芽腫症 2. 移行期医療に取り組むしくみあり :1 年に1 回の幹事会で 毎年 discussion している また 地区ごとの地方会で 内科の先生方にいか

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審査結果 平成 26 年 1 月 6 日 [ 販 売 名 ] ダラシン S 注射液 300mg 同注射液 600mg [ 一 般 名 ] クリンダマイシンリン酸エステル [ 申請者名 ] ファイザー株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 25 年 8 月 21 日 [ 審査結果 ] 平成 25 年 7

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

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汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

割合が10% 前後となっています 新生児期以降は 4-5ヶ月頃から頻度が増加します ( 図 1) 原因菌に関しては 本邦ではインフルエンザ菌が原因となる頻度がもっとも高く 50% 以上を占めています 次いで肺炎球菌が20~30% と多く インフルエンザ菌と肺炎球菌で 原因菌の80% 近くを占めていま

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330 先天性気管狭窄症 / 先天性声門下狭窄症 概要 1. 概要気道は上気道 ( 鼻咽頭腔から喉頭 ) と下気道 ( 気管 気管支 ) に大別される 指定難病の対象となるものは声門下腔や気管に先天的な狭窄や閉塞症状を来す疾患で その中でも先天性気管狭窄症や先天性声門下狭窄症が代表的な疾病である 多

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「             」  説明および同意書

2017 年 9 月 画像診断部 中央放射線科 造影剤投与マニュアル ver 2.0 本マニュアルは ESUR 造影剤ガイドライン version 9.0(ESUR: 欧州泌尿生殖器放射線学会 ) などを参照し 前マニュアルを改訂して作成した ( 前マニュアル作成 2014 年 3 月 今回の改訂

よる感染症は これまでは多くの有効な抗菌薬がありましたが ESBL 産生菌による場合はカルバペネム系薬でないと治療困難という状況になっています CLSI 標準法さて このような薬剤耐性菌を患者検体から検出するには 微生物検査という臨床検査が不可欠です 微生物検査は 患者検体から感染症の原因となる起炎

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1. 医薬品リスク管理計画を策定の上 適切に実施すること 2. 国内での治験症例が極めて限られていることから 製造販売後 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は 全 症例を対象に使用成績調査を実施することにより 本剤使用患者の背景情報を把握するとともに 本剤の安全性及び有効性に関するデータを

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CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

長引く咳の原因として多い病気と特徴的な症状 咳の出かたや, 咳以外の症状 もしかしたら? 夜間 早朝, 冷たい空気やタバコの煙を吸い込んだり, 雨天, 運動, 飲酒, 緊張したときに咳が出やすい. 咳が出て苦しいときに, 呼吸とともに ゼイゼイ ヒューヒュー という音 ( 喘鳴 ) がする. ぜんそ

患者 ID: 氏名 : ピロリ菌外来説明文書 1. ピロリ菌はいつ誰によって発見されたのでしょうかピロリ菌はオーストラリアのウォレンとマーシャルによって 1983 年ヒトの胃の中から発見されました その後 ピロリ菌がヒトの胃に与える様々な影響が解明

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330 先天性気管狭窄症 概要 1. 概要気道は上気道 ( 鼻咽頭腔から声門 ) と狭義の気道 ( 声門下腔 気管 気管支 ) に大別される 呼吸障害を来し外科的治療の対象となるものは主に狭窄や閉塞症状を来す疾患で その中でも気管狭窄症が代表的であり 多くが緊急の診断 処置 治療を要する 外科治療を

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アトピー性皮膚炎の治療目標 アトピー性皮膚炎の治療では 以下のような状態になることを目指します 1 症状がない状態 あるいはあっても日常生活に支障がなく 薬物療法もあまり必要としない状態 2 軽い症状はあっても 急に悪化することはなく 悪化してもそれが続かない状態 2 3

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肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

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2016 年 6 月 15 日放送 副鼻腔炎と下気道疾患 東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科教授鴻信義副鼻腔炎と下気道疾患との関係副鼻腔炎と下気道の疾患とは 非常に密接な関係があります これは 上気道と下気道が組織的に非常に類似していることによります どちらも組織は多列円柱上皮 そしてその構造は繊毛細胞 腺細胞 基底膜で構成されています 血管や神経の分布も類似しており どちらもアレルギーを起こす抗原は共通しています ウィルス感染性の上気道炎は下気道炎の起因となります 上気道炎 ( 特に鼻 副鼻腔炎 ) が起こるときに 鼻閉となることで 口呼吸によって下気道にさらに多くの抗原が流入します また 上気道の防御機能が低下すること あるいは鼻 副鼻腔炎であれば 後鼻漏により 炎症細胞や炎症性のメディエーターが直接下気道に入ることもあれば 炎症細胞や炎症性メディエーターが全身を介して下気道の炎症を惹起することもあります 例えば 慢性閉塞性肺疾患 (COPD) も 上気道の感染の影響を受けると言われています ライノウィルスの感染で増悪し また 例えば COPD の患者さんの 1/3 は CT を撮ると慢性副鼻腔炎があると言われています 副鼻腔炎と気管支喘息の合併も 上気道と下気道が密接に関連していることを物語っています 副鼻腔炎が喘息を合併する割合は 10% から 報告によっては約半数と言われています また 逆に 気管支喘息症例の慢性副鼻腔炎合併率は 70-80% に上るとま

で言われています このような 副鼻腔炎と喘息の合併のことを 同一の気道で起こるので One airway one disease と呼ばれ久しくなっています それぐらいに 上気道と下気道の関連が密接であることが 広く認識されています また 副鼻腔炎に下気道の慢性炎症を合併する疾患としては 副鼻腔気管支症候群 (Sinobronchial syndrome) があります 本疾患は 慢性副鼻腔炎と非特異的な慢性の気管支炎 気管支拡張症 あるいはびまん性汎細気管支炎といったものを合併した状態であり 粘膜の中では好中球優位の炎症像を特徴とします このように 上気道と下気道の疾患には 非常に大きな関連があり 副鼻腔炎の治療が適切でないと 下気道の炎症がどんどん広がる危険があり また 副鼻腔炎の治療を適切に行うことは 下気道の疾患のマネジメントとしても非常に大きな位置を占めると考えます 副鼻腔炎の定義本日は 副鼻腔炎の病態 そして治療について これから簡単にまとめたいと思います まず 副鼻腔ですが 左右四つ つまり 上顎洞 篩骨洞 前頭洞 そして蝶形骨洞という空洞が左右にあって 八つの副鼻腔が鼻腔を囲んでいます 目と非常に薄い壁 これを眼窩紙様板 紙のような板と言いますが 1 mmもないような厚さの骨で仕切られているため 副鼻腔の病態は容易に目に影響を与えることもあります このような副鼻腔に起こる炎症 つまり副鼻腔炎の定義として 3 カ月以上 鼻閉 鼻漏 後鼻漏 咳嗽といった呼吸器症状が持続するものを慢性副鼻腔炎とします 逆に 発症後 1 カ月以内に症状が消失するものは 急性の副鼻腔炎と定義します

副鼻腔炎の成因は ウィルス性の上気道炎などにより まず副鼻腔自然口周囲の粘膜がはれることにより 副鼻腔と鼻腔との換気排泄が遮断されます それに伴い 副鼻腔内の免疫機能が低下し 線毛機能も低下し 排泄がおくれ 結果として副鼻腔内に いろいろな炎症性の産物が貯留してきます この状態が副鼻腔炎です 例えば 感冒罹患後の患者の 40% 弱には 副鼻腔炎があるというデータもあります さて 慢性の副鼻腔炎には 二つのタイプがあります 好中球浸潤 黄色ブドウ球菌 肺炎球菌 そしてインフルエンザ桿菌の感染を特徴とした非好酸球性副鼻腔炎が一つ もう一つは 好酸球性の炎症を主とした好酸球性の副鼻腔炎があります 好酸球性副鼻腔炎は 鼻のポリープを また嗅覚障害を特徴とする難治性の病態で 昨年より難治疾患として認められています また 非好酸球性副鼻腔炎 ( 好中球性副鼻腔炎と同じことですが ) が いわゆる昔から言う蓄膿症ということになります 副鼻腔炎に対する治療方針副鼻腔炎に対する治療の方針は 鼻洗浄 処置 自然口開大処置 吸入といった局所の処置が基本です そして 薬物療法としては 急性副鼻腔炎 慢性副鼻腔炎を問わず 抗菌薬の投与が中心です そこに 消炎酵素薬 気道粘液調整薬 溶解薬といったものを使います また ステロイドの点鼻は 鼻の炎症をやわらげることから 副鼻腔炎の治療に対しても用いられています このような保存療法で効果のない場合に 手術が選択されます

局所処置の中心である鼻洗浄 これは現在 広く認識され 薬局に行っても生理食塩水を用いた鼻うがいというのが売られていると思いますが 生理食塩水 できれば温生食を用いて 鼻を 1-2 回 / 日 生理食塩水で洗浄することは 副鼻腔の特に感染性の疾患であれば 細菌を外に排泄することにより 治癒を早くすることが期待されます ただし 鼻洗浄はあまり多くやり過ぎる また強くやり過ぎると 中耳炎が惹起されるリスクがあり また 軽快してきているにもかかわらず 余計に洗浄を続けると かえって上咽頭の常在菌叢が流れるというリスクがあります ですので 鼻洗浄もできれば 医師の診断と指導のもとで行ったほうがいいと考えています さて 抗菌薬の投与は 副鼻腔炎治療の柱です もともと副鼻腔炎は ウィルス性の上気道炎が惹起するものですから ウィルス性の感染が先行し そして細菌感染が主体になってくると 急性の副鼻腔炎 急性の好中球性 すなわち非好酸球性副鼻腔炎という形になります ウィルス性の上気道炎であれば 本来は抗菌薬の投与は必要ありません 1 週間弱で自然に軽快することを期待して待てばよいのですが ウィルス感染が生じると 粘膜上皮の防御機能が低下し 本来 常在菌叢で守られているものが 常在菌の構築が乱れ 細菌が増殖し ウィルス生着の至的環境となることがリスクとして考えられます 非常に重症な副鼻腔炎 上気道炎が起きた場合 また 例えば新生児 子ども 高齢者 特に寝たきりの方 あるいは心血管疾患 腎不全 肝不全 糖尿病といった compromised host の場合には ウィルス感染であっても 初期の段階より抗菌薬を用い 速やかに常在菌を再構築することが必要と最近は考えられています

さて その観点から 抗菌薬投与を行うときに 急性副鼻腔炎であれば まず軽症であればアモキシジリンとセフジトレン あるいはセフカペンの常用量投与が基本です 耐性菌が疑われる場合には アモキシジリンの高用量 あるいはキノロンを使います 中等症以上であれば アモキシジリンの高用量投与 あるいはキノロンの常用量 耐性菌が疑われる場合には キノロンを高用量で使います 一方 慢性副鼻腔炎に対する抗菌薬治療の柱は 14 員環のマクロライドです ただし 半量で長期使います つまり 抗菌効果を期待するというよりは マクロライドの特徴である抗炎症作用 あるいは免疫調整作用 粘液過剰分泌抑制作用に期待した抗炎症薬としての投与です しかし 慢性の副鼻腔炎であっても 急性増悪を起こしたときには 急性副鼻腔炎に準じ アモキシジリン セフジトレンあるいはキノロンといったものを適宜使用します このような抗菌薬投与で大抵の病態は治るのですが それでも改善が見られない場合には手術 すなわち内視鏡下の鼻腔経由の手術療法を選択します 内視鏡手術により 病巣を清掃することによって 非常に大きな改善を期待することができます 逆に 副鼻腔炎の治療が適切でない場合に起こり得るリスクとしては 副

鼻腔炎が下気道に影響することは今までお話ししたとおりですが そのほかにも 眼窩内に入って眼窩内膿瘍をつくる あるいは頭蓋内に入って脳膿瘍があり この場合は例えば失明や意識障害など 非常に重篤な状態になる危険があります このため 副鼻腔炎を見たときには 自然治癒ももちろん期待できますが 1 カ月 2 カ月 あるいは 3 カ月たってもなかなか治らないような遷延的な場合には できるだけ速やかに耳鼻咽喉科の専門医の受診を勧めていただくのが治療のポイントだと考えます