Case 2 多孔性心房中隔欠損症に対して紐切断をしてデバイス閉鎖を試みた一例 橋本剛 ( 東邦大学医療センター大橋病院 ) 原英彦 井出志穂 葉山裕真 牧野健治 高亀則博 福井遼 武中宏樹 飯島雷輔 諸井雅男 中村正人 症例は60 歳代女性 2 次孔欠損型 ASD 肺高血圧症を認めた 経食道心エコ

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概要 214 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症 215 ファロー四徴症 216 両大血管右室起始症 1. 概要ファロー四徴症類縁疾患とは ファロー四徴症に類似の血行動態をとる疾患群であり ファロー四徴症 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖 両大血管右室起始症が含まれる 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症は ファ

直接還流するように血行動態を修正する手術 ) を施行する ただ 順調なフォンタン循環であっても通常の慢性うっ血性心不全状態であるため いつかは破綻していくこととなる フォンタン型手術は根治的手術ではない また フォンタン型手術適応外となった群には 効果的な薬物治療はなく ACE 阻害薬 利尿薬の効果

Microsoft Word (発出版)適正使用通知案(冷凍アブレーション)

カテーテルアブレーション治療のご説明

心房細動1章[ ].indd


恒久型ペースメーカー椊え込み術

188-189

TAVIを受ける 患者さんへ

CCU で扱っている疾患としては 心筋梗塞を含む冠動脈疾患 重症心不全 致死性不整脈 大動脈疾患 肺血栓塞栓症 劇症型心筋炎など あらゆる循環器救急疾患に 24 時間対応できる体制を整えており 内訳としては ( 図 2) に示すように心筋梗塞を含む冠動脈疾患 急性大動脈解離を含む血管疾患 心不全など

更生相談・判定依頼のガイド

2005年 vol.17-2/1     目次・広告

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佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

心臓血管外科カリキュラム Ⅰ. 目的と特徴心臓血管外科は心臓 大血管及び末梢血管など循環器系疾患の外科的治療を行う診療科です 循環器は全身の酸素 栄養供給に欠くべからざるシステムであり 生体の恒常性維持において 非常に重要な役割をはたしています その異常は生命にとって致命的な状態となり 様々な疾患

帝京大学 CVS セミナー スライドの説明 感染性心内膜炎は 心臓の弁膜の感染症である その結果 菌塊が血中を流れ敗血症を引き起こす危険性と 弁膜が破壊され急性の弁膜症による心不全を発症する危険性がある 治療には 内科治療として抗生物質の投与と薬物による心不全コントロールがあり 外科治療として 菌を

A B V1 Ⅱ Ⅲ 45 V1 Ⅱ V3 Ⅲ V3 avr V4 avr avl avl V4 V5 V5 V6 V6 図 1 体表面12誘導心電図 A 発作時 心拍数220bpm 右軸偏位のregularなwide QRS頻拍を認めた B 非発作時 ベラパミル投与後 洞調律に服した 心拍数112


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症例報告 心室細動で搬送された巨大右房の一例 北里大学循環器内科学小板橋俊美 猪又孝元 細田篤志 前川恵美 成毛崇 和泉徹 症例は 43 歳男性 平成 20 年 2 月 21 日 突然の意識消失 心室細動 心肺停止で他院の救急救命センターに搬送された 心肺蘇生にて回復し 状態安定後 ICD 植え込み

背景 急性大動脈解離は致死的な疾患である. 上行大動脈に解離を伴っている急性大動脈解離 Stanford A 型は発症後の致死率が高く, それ故診断後に緊急手術を施行することが一般的であり, 方針として確立されている. 一方上行大動脈に解離を伴わない急性大動脈解離 Stanford B 型の治療方法

心臓 ol.42 SUPPL メインテートÑ ワソランÑ タンボコールÑ 21 メインテートÑ アーチストÑ ヘルベッサーÑ メインテートÑ ワソランÑ ベプリコールÑ サンリズムÑ シベノールÑ プロノンÑ ピメノールÑ 2001年 2009年 1st session 心房中隔起源P

報道機関各位 2017 年 9 月 26 日 東北大学大学院医学系研究科 慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する新規治療 - バルーン肺動脈形成術は効果的で安全な治療法である - 研究のポイント 注 国の指定難病である慢性血栓塞栓性肺高血圧症 (CTEPH) 1 は 肺の動脈に血栓が生じて血管が狭くなる

ストラクチャークラブ ジャパン COI 開示 発表者名 : 高木祐介 演題発表に関連し, 開示すべき COI 関係にある 企業などはありません.

P01-16

日小循誌 a ヱ 碁 ぱ 墨 aj9一 てヰ 二 いた バ RA 竃 二慧 嚢 一藻口 一一 一 一 b 峯 R ご 嚢 壷 図1 入院時胸部レソトゲソ写真 心胸郭比48 軽 度肺血流量増加が認められる 謬 繋毅 矯 一亙 羅麟蕪馨灘灘籔 1 II III avr

症例報告 冠動脈バイパス術後に Platypnea-Orthodeoxia Syndrome を生じた 1 例 Platypnea-Orthodeoxia Syndrome Associated with Late Hemopericardium after Coronary Bypass Surg

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「             」  説明および同意書

大学教職員の心臓検診の現状 * 和井内由充子 大学保健管理センターの主要業務のひとつに 健康診断とそれに基づく健康管理がある 突然 死にもつながる心疾患の早期発見と管理は重要 である 大学生の心疾患管理に関しては以前報 告 1-6) した 大学のもうひとつの主要構成員で ある教職員の管理の現状を今回

受給者番号 ( ) 患者氏名 ( ) 告示番号 72 慢性心疾患 ( ) 年度小児慢性特定疾病医療意 書 新規申請用 経過 ( 申請時 ) 直近の状況を記載 2/2 薬物療法 強心薬 :[ なし あり ] 利尿薬 :[ なし あり ] 抗不整脈薬 :[ なし あり ] 抗血小板薬 :[ なし あり

診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

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第 3 節心筋梗塞等の心血管疾患 , % % % %

心電図検査 設問 歳 女性 右胸心の 12 誘導心電図を図 1 に示す 正しいものはどれか a. I 誘導で P 波 QRS 波 T 波は陰性である b. avr 誘導で T 波は陽性である c. 胸部誘導 V1~V6 のすべてで R/S>1 である d. 広範囲な前壁中隔心筋梗塞を疑う

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盗血症候群について ~鎖骨下動脈狭窄症,閉塞症~

心電図33-3

種の評価基準により分類示の包括侵襲性指行為の看護師が行う医行為の範囲に関する基本的な考え方 ( たたき台 ) 指示のレベル : 指示の包括性 (1) 実施する医行為の内容 実施時期について多少の判断は伴うが 指示内容と医行為が1 対 1で対応するもの 指示内容 実施時期ともに個別具体的であるもの 例

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症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

スライド 1

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 台東 不整脈セミナー

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パスを活用した臨床指標による慢性心不全診療イノベーション よしだ ひろゆき 福井赤十字病院クリニカルパス部会長循環器科吉田博之 緒言本邦における心不全患者数の正確なデータは存在しないが 100 万人以上と推定されている 心不全はあらゆる心疾患の終末像であり 治療の進步に伴い患者は高齢化し 高齢化社会

背景心房細動 (AF) では その持続及び病態の進行により 心房筋の電気的 構造的リモデリングと総称される心房筋の不応期の短縮 伝導時間の延長及び心房筋の脱落 線維化などの変化が生じることが知られており それを反映した電気生理学的 解剖学的諸指標によるカテーテル アブレーション後の再発予測が報告され

東京心エコーズ研究会

心臓弁膜症とはどんな病気 心臓にある弁の異常による病気の総称です 心臓には4つの部屋があり 各部屋の間には血液が 一方向に流れるよう片開きの扉の働きをする弁 逆流防止弁 があります 弁膜の異常は狭窄と逆 流 閉鎖不全 の2つがあります 狭窄は扉の開きが悪くなり 心臓の次の部屋や動脈に血液が送 り出さ

循環器 Cardiology 年月日時限担当者担当科講義主題 平成 23 年 6 月 6 日 ( 月 ) 2 限目 (10:40 12:10) 平成 23 年 6 月 17 日 ( 金 ) 2 限目 (10:40 12:10) 平成 23 年 6 月 20 日 ( 月 ) 2 限目 (10:40 1

研究協力施設における検討例 病理解剖症例 80 代男性 東京逓信病院症例 1 検討の概要ルギローシスとして矛盾しない ( 図 1) 臨床診断 慢性壊死性肺アスペルギルス症 臨床経過概要 30 年前より糖尿病で当院通院 12 年前に狭心症で CABG 施行 2 年前にも肺炎で入院したが 1 年前に慢性

心臓血管外科 取得可能専門医 認定医及び到達目標など 専門医 認定医 名称 取得年数最短通常 基本となるもの 外科専門医 5 年目 5 年 ~7 年 心臓血管外科専門医 7 年目 7 年 ~10 年 取得可能なもの 循環器専門医 6 年目 6 年 ~10 年 移植認定医 6 年目 6 年 ~10 年

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心臓カテーテル検査についての説明文

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

障害程度等級表 心臓機能障害 1 級 心臓の機能の障害により 自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの 2 級 - 3 級 心臓の機能の障害により 家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの 4 級 心臓の機能の障害により 社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

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「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

27 年度調査結果 ( 入院部門 ) 表 1 入院されている診療科についてお教えください 度数パーセント有効パーセント累積パーセント 有効 内科 循環器内科 神経内科 緩和ケア内科

がん登録実務について

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3 病型別 初発再発別登録状況病型別の登録状況では 脳梗塞の診断が最も多く 2,524 件 (65.3%) 次いで脳内出血 868 件 (22.5%) くも膜下出血 275 件 (7.1%) であった 初発再発別の登録状況では 初発の診断が 2,476 件 (64.0%) 再発が 854 件 (22

死亡率(人口10 万対1950 '55 '60 '65 '70 '75 '80 '85 '90 ' 心血管系疾患 ( 動脈硬化による ) とがんが死亡の大 部分を占める 脳血管疾患 悪性新生物 結核 心疾患 )肺炎 50 不慮の事故自殺 0 肝疾患昭和

3. 本事業の詳細 3.1. 運営形態手術 治療に関する情報の登録は, 本事業に参加する施設の診療科でおこなわれます. 登録されたデータは一般社団法人 National Clinical Database ( 以下,NCD) 図 1 参照 がとりまとめます.NCD は下記の学会 専門医制度と連携して

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AT Termination

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光テクノロジー応用の最先端心臓カテーテル治療とは 日本発の医工連携が増えることを期待 2015/11/9 近年 医学と工学が連携した医工連携が盛んに行われています 今回は カテーテルへの光テクノロジーの応用の基礎研究を2つ紹介します 1つは 光反射バルーンカテーテルを用いた非侵襲的組織欠損修復 に関

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1)表紙14年v0

Ⅰ-A ICD 頻回作動した Brugada 症候群に対して Quinidine で VF 抑制に著効した一例 京都大学医学部附属病院循環器内科 八幡光彦 早野護 加藤義紘 土井孝浩 静田聡 症例は 36 歳男性 父親が 34 歳で睡眠中に突然死されている患者で, 夜間から早朝にかけて の睡眠中の下


自動車運送事業者における 心臓疾患大血管疾患 対策ガイドライン 概要版 本ガイドラインのポイント 実践 業者が実施スクリーニング検査事医療機関が実施事業者が実施知識 健康起因事故の原因となる心臓疾患 大血管疾患 疾患の原因と予防 ( 参考 ) 関係法令について 心臓疾患 大血管疾患の早期発見と発症予

医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会の進め方(案)

3 病型別 初発再発別登録状況病型別の登録状況では 脳梗塞合計が最も多く 3,200 件 ( 66.7%) 次いで脳内出血 1,035 件 (21.6%) くも膜下出血 317 件 ( 6.6%) であった 初発再発別の登録状況では 初発の診断が 3,360 件 (70.1%) 再発が 1,100

50% であり (iii) 明らかな心臓弁膜症や収縮性心膜炎を認めない (ESC 2012 ガイドライン ) とする HFrEF は (i)framingham 診断基準を満たす心不全症状や検査所見があり (ii) は EF<50% とした 対象は亀田総合病院に 年までに初回発症

課題名

エコー検査を始める前に

10050 WS2-3 ワークショップ P-129 一般演題ポスター症例 ( 感染症 ) P-050 一般演題ポスター症例 ( 合併症 )9 11 月 28 日 ( 土 ) 18:40~19:10 6 分ポスター会場 2F 桜 P-251 一般演題ポスター療

d 運動負荷心電図でSTの低下が0.1mV 以上の所見があるもの ( イ ) 臨床所見で部分的心臓浮腫があり かつ 家庭内での普通の日常生活活動若しくは社会での極めて温和な日常生活活動には支障がないが それ以上の活動は著しく制限されるもの又は頻回に頻脈発作を繰り返し 日常生活若しくは社会生活に妨げと

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1. 期外収縮 正常なリズムより早いタイミングで心収縮が起きる場合を期外収縮と呼び期外収縮の発生場所によって 心房性期外収縮と心室性期外収縮があります 期外収縮は最も発生頻度の高い不整脈で わずかな期外収縮は多くの健康な人でも発生します また 年齢とともに発生頻度が高くなり 小学生でもみられる事もあ

埼玉医科大学電子シラバス

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330 先天性気管狭窄症 / 先天性声門下狭窄症 概要 1. 概要気道は上気道 ( 鼻咽頭腔から喉頭 ) と下気道 ( 気管 気管支 ) に大別される 指定難病の対象となるものは声門下腔や気管に先天的な狭窄や閉塞症状を来す疾患で その中でも先天性気管狭窄症や先天性声門下狭窄症が代表的な疾病である 多

2009年8月17日

れぞれ長径 1 cm 弱の裂隙 (tear) が認められ その裂隙間において偽腔を形成する大動脈解離 ( スタンフォード B 型 ) を認めた 左鎖骨下動脈起始部から胸部大動脈にかけて血腫が著明であったが 破裂所見は肺内 縦隔内 腹腔内いずれにも認められなかった また偽腔内の血腫には器質化を認めなか

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エントリーが発生 真腔と偽腔に解離 図 2 急性大動脈解離 ( 動脈の壁が急にはがれる ) Stanford Classification Type A Type B 図 3 スタンフォード分類 (A 型,B 型 ) (Kouchoukos et al:n Engl J Med 1997) 液が血管


名称未設定

Japan Transcatheter Valve Therapies 2018 パネルディスカッション 1 二尖弁に対する TAVI: 適応と工夫 PD1-1) Sapien3 による二尖弁 TAVI 田中誠 1 林田健太郎 1 長谷啓 1 吉島信宏 1 荒井隆秀 1 鶴田ひかる 1 板橋裕史 1

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医療機器に関わる保険適用決定区分案

ここが知りたい かかりつけ医のための心不全の診かた

助成研究演題 - 平成 23 年度国内共同研究 (39 歳以下 ) 重症心不全の集学的治療確立のための QOL 研究 東京大学医学系研究科重症心不全治療開発講座客員研究員 ( 助成時 : 東京大学医学部附属病院循環器内科日本学術振興会特別研究員 PD) 加藤尚子 私は 重症心不全の集学的治療確立のた

Transcription:

抄録集 第 1 部治療できませんでした どうすればよかったのでしょう? Case 1 FSO 36mm が LA roof に接触し defer した 1 例 三浦光太郎 ( 慶應義塾大学医学部循環器内科 ) 金澤英明 鶴田ひかる 板橋裕史 荒井隆秀 川上崇史 湯浅慎介 林田健太郎 福田恵一 症例は 79 歳女性 前医で術前精査の胸部 X 線で心拡大と心電図で心房粗動を認めた 経胸壁心エコーで ASD を認め まずは心房粗動に対するアブレーション治療を試みたが治療不成功で終了し ASD 治療目的に当院紹介となった 当院の経食道心エコーでは右心系拡張を伴う large ASD であり 3D 解析では 32.7mm 23.2mm の欠損孔を認めた 局所麻酔を使用し ICE ガイド下で治療開始した FSO 36mm を留置試みたところ ICE で左房 disk が LA roof に接触し device が台形状に変形していため erosion risk が高いと判断し最終的に defer した Aortic, Superior rim 欠損を伴う large ASD であり サイズ選択に難渋した症例のため今回報告させていただく

Case 2 多孔性心房中隔欠損症に対して紐切断をしてデバイス閉鎖を試みた一例 橋本剛 ( 東邦大学医療センター大橋病院 ) 原英彦 井出志穂 葉山裕真 牧野健治 高亀則博 福井遼 武中宏樹 飯島雷輔 諸井雅男 中村正人 症例は60 歳代女性 2 次孔欠損型 ASD 肺高血圧症を認めた 経食道心エコー図検査施行したところ多孔性の ASD を認め 二つの欠損孔の間には細い紐状構造物があった 経皮的 ASD 閉鎖術施行したがデバイス留置による周囲構造への干渉があり中止となった 患者の強い希望により再度経皮的 ASD 閉鎖術を施行した 今度は紐状構造物をワイヤーで切断し 二つの孔をつなげたうえでデバイス閉鎖を試みた 貴重な症例を経験したので報告する

第 2 部デバイスの種類 サイズって悩みますよね? Case 3 胸郭異常により右左短絡を呈した心房中隔欠損症で mitral valve への干渉により OFFⅡ のサイズダウンを要した一例 福井重文 ( 国立循環器病研究センター心臓血管内科部門 小児循環器科 ) 浅野遼太郎 長谷川拓也 西井達也 小永井奈緒 石井俊輔 平川今日子 藤本一途 北野正 尚 上田仁 辻明宏 大郷剛 安田聡 39 歳女性 口唇チアノーゼと体勢変換に伴う低酸素血症 ( 立位 SpO2 79%, 臥位 SpO2 94%) を認め 在宅酸素療法 (HOT) を要していた 外見上 扁平胸郭と側湾症を呈し 胸部レントゲン側面像ではそれらにより狭小化した胸郭で心臓が前後方向に圧迫され 立位で顕著であった TEE では 長径 15mm 程度の三日月状の ASD を認め 下大静脈 (IVC) 縁から Eustachian 弁が目立ち ASD を介して有意な右左短絡を認めた MDCT では 胸骨と椎体の圧迫により中隔が偏位し ASD が IVC 方向に開存し IVC 血流が ASD を介して左房側に流入していた Stop-flow でのサイジングが 19-20mm であり malalignment のある症例のため 大きめの 24mmOFFII を留置したが LA disc による mitral valve への干渉があり 21mm にサイズダウンした 結果 右左短絡は消失し 症状は改善し HOT から離脱出来た サイズダウンが必要であったかどうか議論したい

Case 4 ASD パッチ閉鎖後 leak に対して経カテーテル閉鎖術を施行した一例 福田信之 ( 富山大学循環器センター ) 上野博志 症例は 80 歳女性 33 歳時に二次孔型 ASD の手術的適応と診断され 開胸によるパッチ閉鎖術を施行された 2007 年徐脈頻脈症候群と診断され ペースメーカ植込み術を施行された際に ASD 術後の leak を指摘されたが 再手術を拒否され経過観察となった 2016 年頃から軽労作で息切れを自覚するようになり 当科紹介入院となった Qp/Qs 2.31 PVR 2.3woods 単位であり ASD 閉鎖術適応と診断されたが 再開胸は拒否されカテーテルによる閉鎖術を希望された 孔は 7.6 22.6mm と楕円形態であり rim は全周性に 5mm 以上を有したが IVC 側は 5.5mm で floppy rim であった balloon sizing 径は 16 21.6mm であった パッチ leak に対する ASD カテーテル閉鎖の報告は少なく デバイス選択などの治療 strategy に関して検討していきたい

Case 5 Sizing balloon にて stop flow を得られなかった ASD に対し Figulla36 ミリを留置した 1 例 中澤学 ( 東海大学 ) 村上力 堀之内仁美 大野洋平 伊苅裕二 5 年前にASDを指摘されていたが medical followとなっていた81 歳女性 6か月前に初回心不全にて入院となり カテーテル閉鎖術目的に紹介となった TEEにて 心房中隔欠損孔の最大径は 26.9mm Ao rimは3.6mm IVC rimは9.2mmであったがfloppyな所見であった 術中のsizing balloon を用いた測定を試みたが balloon occlusionを最大に行ってもivc rim 側のflowが認められ stop flowが得られなかった このためにAmplatzer 38mmの留置を試みたが 左房側のdiskの収まりが悪いこともあり Figulla 36mmに変更し留置に成功した 術中 sizing balloon 透視術中 sizing balloon TEE 術後 CT

第 3 部今年も PFO! Special Lecture Device 閉鎖を意識した PFO 解剖の基礎知識 原英彦 ( 東邦大学医療センター大橋病院 ) Case 6 奇異性脳塞栓合併の卵円孔開存の一例 伊吹圭二郎 ( 昭和大学病院小児循環器成人先天性心疾患センター ) 藤井隆成 長岡孝太 山口英貴 清水武 籏義仁 樽井俊 宮原義典 石野幸三 富田英 66 歳男性 4 回の脳梗塞の既往あり 前医で卵円孔開存を指摘され 奇異性脳塞栓の診断で 卵円孔閉鎖を勧められて当院に紹介となった 経食道超音波検査では Flap 状で Tunnel type に近い形態の卵円孔開存 (Tunnel 長は 7~11mm) で 大動脈側は <5mm だが土手状の rim を認めた Valsalva 手技下でコントラストエコーによる右左シャントが確認された 24mm のサイジングバルーンを用いたバルーンサイジングで 径 11.5mm であり 11mm の Amplatzer septal occluder で閉鎖を行った 閉鎖の適応 デバイスの選択などに関してご意見を伺いたい

第 4 部ちょっと変わった症例ですが! Case 7 三心房心の大きな欠損孔に対して閉鎖し得た一例 水谷一輝 ( 大阪市立大学病院 ) 症例は 69 歳の女性 ASD chronic Af による心不全コントロールが困難で ASD 閉鎖目的に当院へ紹介となった 経食道心エコーにおいて大動脈側かつ上方に位置する 25*20mm の二次孔欠損を認め また右房内に隔壁を認め三心房心と診断された 欠損孔の辺縁は Aortic rim から Superior rim にかけて広範囲に欠損を認めた 本症例に対して経カテーテル的閉鎖術を施行し得たので 文献的考察と共に報告する

Case 8 外科術後に残存する Eustachian valve を有する下位静脈洞型心房中隔欠損症に対する経皮的 カテーテル治療 : その治療戦略と注意点 今井逸雄 ( 兵庫県立尼崎総合医療センター ) 豊田俊彬 2 塩見紘樹 2 齋藤成達 2 木村剛 (2: 京都大学医学部附属病院循環器内科 ) 2 症例 : 症例は 63 歳女性 19 歳時に ASD の外科手術を行っているが詳細は不明 慢性の心房細動を有し TIA の既往もある 1 年前より労作時の呼吸苦が出現し心拡大もあり精査加療目的に当院に紹介 UCG 上は 32mm の ASD を認め (Figure1 A) 経皮的治療が可能と考えた しかし 術中に再度確認したところ当初 ASD と考えられた部位は IVC と eustachian valve の構造物で本来の ASD は図の場所であった (Figure 1 B) 静脈洞型 下位欠損の ASD と考えられ把持力の強い Amplatzer device を留置することとした 36mm device が over size であり 32mm device に変更し良好な位置に留置できた 術後の CT ではあたかも IVC と LA の間に留置されたような形態であったが (Figure 2) 特に留置形態も問題なく終了となっている 外科手術後の残存 ASD で静脈洞型の下位欠損症例に対するカテーテル治療の成功例であり文献的考察も含めて報告する

Figure 1 Figure 2

Case 9 Amplatzer Septal Occluder devise に心房中隔穿刺を施行し 肺静脈隔離術を施行した一例 中川晃志 ( 岡山大学 ) 森本芳正 赤木禎治 高谷陽一 佃早央莉 宮本真和 川田哲史 渡邊敦之 西井伸洋 中村一 文 森田宏 伊藤浩 症例は 30 代男性 10 年頃前より動悸発作を自覚し 近医を受診 心房中隔欠損症 (ASD) と発作性心房粗細動 (PAF/AFL) を認めた そのため 8 年前に PAF/AFL に対して 両側肺静脈隔離術 (PVI) と三尖弁下大静脈峡部の線状焼灼を施行した PAF/AFL の再発は認められず 半年後に Amplatzer による ASD カテーテル閉鎖術を施行した 経過は安定していたが 2 年前頃より PAF が再発し頻度が増加したため PAF に対するカテーテルアブレーション目的で今回入院となった 左房へのカテーテル配置が必要であったが ASD デバイス辺縁の穿刺は困難であった そのため Brockenbrough needle にてデバイス自体を穿刺し 穿刺孔を拡張することにより 左房にロングシースを配置することが可能となった EPS では 左上下肺静脈 右上肺静脈の再伝導を認め PVI を施行した Isoproterenol 投与下でも AF は誘発されず 手技を終了とした 術後 AF の再発無く経過している Atrial Septal Occluder device に直接心房中隔穿刺をして PVI を施行した報告は多くなく 興味深い 1 例と考え報告する