図 1図 1 期間損益 (P/L) (1) 発生費用 (2) 期間費用 期間収益 収益獲得の 財貨 用役の 選択 ための犠牲 費消 (80 個分の費用 ) 因果関係 (100 個製造 ) 発生主義 費用収益対応の原則 当期の収益 ( 成果 ) (80 個販売 ) 実現主義 当期に発生した発生費用 (

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精算表 精算表とは 決算日に 総勘定元帳から各勘定の残高を集計した上で それらに修正すべき処理 ( 決算整理仕訳 ) の内 容を記入し 確定した各勘定の金額を貸借対照表と損益計算書の欄に移していく一覧表です 期末商品棚卸高 20 円 現金 繰越商品 資本金 2

日本基準基礎講座 有形固定資産

財剎諸表 (1).xlsx

平成28年度 第144回 日商簿記検定 1級 会計学 解説

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営業活動によるキャッシュ フロー の区分には 税引前当期純利益 減価償却費などの非資金損益項目 有価証券売却損益などの投資活動や財務活動の区分に含まれる損益項目 営業活動に係る資産 負債の増減 利息および配当金の受取額等が表示されます この中で 小計欄 ( 1) の上と下で性質が異なる取引が表示され

平成30年公認会計士試験

IFRS基礎講座 IAS第21号 外貨換算

目次 第 8 章 商品売買 第 1 節 三分割法 8-2 第 2 節 付随費用 8-4 第 3 節 返品と値引き 8-8 第 4 節 仕入帳と売上帳 8-11 第 5 節 売掛金元帳と買掛金元帳 8-13 第 6 節 人名勘定 8-19 第 7 節 商品有高帳 8-21 第 8 節 分記法 8-33

第 138 回日商簿記 3 級解答解説 第 1 問 実教出版株式会社 仕 訳 借 方 科 目 金 額 貸 方 科 目 金 額 1 売買目的有価証券 1,970,000 未 払 金 1,970,000 2 備品減価償却累計額 70,000 備 品 150,000 現 金 20,000 固定資産売却損

営業報告書

営 業 報 告 書

連結貸借対照表 ( 単位 : 百万円 ) 当連結会計年度 ( 平成 29 年 3 月 31 日 ) 資産の部 流動資産 現金及び預金 7,156 受取手形及び売掛金 11,478 商品及び製品 49,208 仕掛品 590 原材料及び貯蔵品 1,329 繰延税金資産 4,270 その他 8,476

第4期電子公告(東京)

営 業 報 告 書

連結の補足 連結の 3 年目のタイムテーブル B/S 項目 5つ 68,000 20%=13,600 のれん 8,960 土地 10,000 繰延税金負債( 固定 ) 0 利益剰余金期首残高 1+2, ,120 P/L 項目 3 つ 少数株主損益 4 1,000 のれん償却額 5 1,1

計算書類 貸 損 借益 対計 照算 表書 株主資本等変動計算書 個 別 注 記 表 自 : 年 4 月 1 日 至 : 年 3 月 3 1 日 株式会社ウイン インターナショナル

日本基準基礎講座 収益

Microsoft Word 【公表】HP_T-BS・PL-H30年度


第21期(2019年3月期) 決算公告

平成28年度 第143回 日商簿記検定 1級 会計学 解説

スライド 1

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第1章 財務諸表

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貸借対照表 ( 平成 25 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目金額科目金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 14,146,891 流動負債 10,030,277 現金及び預金 2,491,769 買 掛 金 7,290,606 売 掛 金 9,256,869 リ

第10期

12 70, , , , , , , , , , , , , ,0

平成25年度 第134回 日商簿記検定 1級 商業簿記 解説

問題 12 取替法 次の取引の仕訳を示しなさい ⑴ 取替資産である鉄道のレールの一部を新品に取替えた 代金 480,000 円は月末に支払う ⑵ 円で20 個を取替えた 代金は小切手を振出して支払った ⑴ ⑵ 問題 12 問題 13 設備投資

計算書類等

新規文書1


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第 16 回ビジネス会計検定試験より抜粋 ( 平成 27 年 3 月 8 日施行 ) 次の< 資料 1>から< 資料 5>により 問 1 から 問 11 の設問に答えなさい 分析にあたって 連結貸借対照表数値 従業員数 発行済株式数および株価は期末の数値を用いることとし 純資産を自己資本とみなす は

国家公務員共済組合連合会 民間企業仮定貸借対照表 旧令長期経理 平成 26 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 円 ) 科目 金額 ( 資産の部 ) Ⅰ 流動資産 現金 預金 311,585,825 未収金 8,790,209 貸倒引当金 7,091,757 1,698,452 流動資産合計 3

前期に販売した商品を当期に修理する場合 前期末に設定した商品保証引当金を取り崩 す つまり借方に商品保証引当金を 50,000 計上する 差額の 30,000 は商品保証費とする (3) 資本金 資本準備金の問題当座預金に払い込まれた金額は次のように計算される 2,000 株 4,000 = 8,0

第4期 決算報告書

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キャッシュフロー計算書の作成

第 29 期決算公告 平成 26 年 4 月 1 日 平成 27 年 3 月 31 日 計算書類 1 貸借対照表 2 損益計算書 3 個別注記表 中部テレコミュニケーション株式会社

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法人の減価償却制度の改正に関するQ&A

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『学校法人会計の目的と企業会計との違い』

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株 主 各 位                          平成19年6月1日

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第1章 簿記の一巡

貸借対照表 平成 28 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 千円 ) 科 目 金 額 科 目 金 額 資産の部 負債の部 流動資産 (63,628,517) 流動負債 (72,772,267) 現金及び預金 33,016,731 買掛金 379,893 売掛金 426,495 未払金 38,59

リリース

ご説明用資料 2018 年度決算概要 2019 年度業績予想 2019 年 5 月 15 日 Copyright (C) 2019 Toyo Business Engineering Corporation. All rights Reserved. 事業セグメント ソリューション事業 SAPを始め

第 151 回日商簿記 2 級解答解説 第 1 問 実教出版株式会社 解答 仕 訳 借方科目金額貸方科目金額 現 金 8,500,000 車両減価償却累計額 760,000 1 商 品 6,100,000 本 店 17,640,000 車 両 3,800,000 2 その他有価証券 2,000,00

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移行認定の申請書類目次

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連結会計入門 ( 第 6 版 ) 練習問題解答 解説 練習問題 1 解答 解説 (129 頁 ) ( 解説 ) S 社株式の取得に係るP 社の個別上の処理は次のとおりである 第 1 回取得 ( 平成 1 年 3 月 31 日 ) ( 借 )S 社株式 48,000 ( 貸 ) 現預金 48,000



2018 年 8 月 10 日 各 位 上場会社名 エムスリー株式会社 ( コード番号 :2413 東証第一部 ) ( ) 本社所在地 東京都港区赤坂一丁目 11 番 44 号 赤坂インターシティ 代表者 代表取締役 谷村格 問合せ先 取締役 辻高宏

平成26年度 第138回 日商簿記検定 1級 会計学 解説

答 第 1 問 (20 点 ) 仕訳 1 組につき 4 点 仕 訳 借方科目金額貸方科目金額 1 仕 入 130,000 受 取 手 形 当 座 預 金 100,000 30,000 2 買掛金 500,000 売掛金当座預金 100, ,000 3 有価証券 490,000 現金 49

企業会計の利益 法人税法上の所得金額 売上原価販売費一般管理費営業外費用特別損失 売上 営業外収益特別利益 損金の額原価費用損失の額 益金の額 ( 収益の額 ) 当期純利益所得の金額 2 益金の額に算入すべき金額とは何か益金の額に算入すべき金額とは 法人税法の規定や他の法令で 益金の額に算入する 又

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IFRS基礎講座 IAS第12号 法人所得税

貸借対照表 平成 29 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 百万円 ) 資産の部 負債の部 流動資産 13,610 流動負債 5,084 現金 預金 349 買掛金 3,110 売掛金 6,045 短期借入金 60 有価証券 4,700 未払金 498 商品 仕掛品 862 未払費用 254 前

第6期決算公告

第 36 期決算公告 浜松市中区常盤町 静岡エフエム放送株式会社代表取締役社長上野豊 貸借対照表 ( 平成 30 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 資産の部 負債の部 Ⅰ. 流 動 資 産 909,595 Ⅰ. 流 動 負 債 208,875 現金及び預金 508,

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2 事業活動収支計算書 ( 旧消費収支計算書 ) 関係 (1) 従前の 消費収支計算書 の名称が 事業活動収支計算書 に変更され 収支を経常的収支及び臨時的収支に区分して それぞれの収支状況を把握できるようになりました 第 15 条関係 別添資料 p2 9 41~46 82 参照 消費収入 消費支出

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企業結合ステップ2に関連するJICPA実務指針等の改正について⑦・連結税効果実務指針(その2)

 

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科目当年度前年度増減 [ 負債の部 ] 流動負債未払金 3,44,15,654 3,486,316,11-46,3,357 給付金未払金 3,137,757,265 3,192,611,196-54,853,931 年金未払金 287,13, ,91,778 7,228,646 その他未

第 14 期 ( 平成 30 年 3 月期 ) 決算公告 平成 30 年 6 月 21 日 東京都港区白金一丁目 17 番 3 号 NBF プラチナタワー サクサ株式会社 代表取締役社長 磯野文久

第28期貸借対照表


IFRS基礎講座 IFRS第1号 初度適用

第 9 章純資産の会計 問題 43 問題 43 資本剰余金の振替え 借方科目金額貸方科目金額 次の独立した取引の仕訳を示しなさい ⑴ 資本準備金 2,000,000 円とその他資本剰余金 800,000 円を資本金とすることを株主総会で決議し その効力が生じた ⑵ 資本金 500,000 円を資本準

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第11期決算公告

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地方公営企業会計基準の見直しについて(完成)

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キャッシュフローで考えよう! 意思決定の管理会計 解答編 第 1 章 [1. 1] 150,000 枚以下 A,50,000 枚以上 B 2 正しい 14.7 円 3 不利 4 受ける 5 有利 6 正しくない [1. 2] 132,000 個以下 A,32,000 個以上 B 21,600 円正し

第9期決算公告 平成27年6月15日

WWFジャパン 2007年度(平成19年度 第37期)決算報告書

Transcription:

事業経営に関する報告 決算書等でみる減価償却費とは テーマ 決算書等でみる減価償却費とは テーマ 決算書等でみる減価償却費とは 一財 和歌山社会経済研究所 研究員 林 秀 訓 決算申告書等でよく計上されている 減価償却費 という勘定科目ですが 意外と中 決算申告書等でよく計上されている 減価償却費 という勘定科目ですが 意外と中 身について疑問に思う方も多いのではないでしょうか 建物や機械等の設備関連の勘 身について疑問に思う方も多いのではないでしょうか 建物や機械等の設備関連の勘 決算申告書等でよく計上されている 減価償却 を作成する場合に 非現金項目として 加算修正 定科目であることは理解されていても 他の勘定科目と違い年度末に定額法や定率法と 定科目であることは理解されていても 他の勘定科目と違い年度末に定額法や定率法と 費 という勘定科目ですが 意外と中身について するなど特殊な勘定科目といったイメージがある いった特殊な手続きを行う見慣れない勘定科目 またはキャッシュフロー計算書を作成 いった特殊な手続きを行う見慣れない勘定科目 またはキャッシュフロー計算書を作成 疑問に思う方も多いのではないでしょうか 建 と思います そこで 今回はその減価償却費の計 する場合に 非現金項目として 加算修正 するなど特殊な勘定科目といったイメージ する場合に 非現金項目として 加算修正 するなど特殊な勘定科目といったイメージ 物や機械等の設備関連の勘定科目であることは理 上を行う 減価償却 という会計手続きがなぜ必要 があると思います そこで 今回はその減価償却費の計上を行う 減価償却 という会 があると思います そこで 今回はその減価償却費の計上を行う 減価償却 という会 解されていても 他の勘定科目と違い年度末に定 か どうして他の手続きとは違った特徴を持つの 計手続きがなぜ必要か どうして他の手続きとは違った特徴を持つのかを会計的に説明 計手続きがなぜ必要か どうして他の手続きとは違った特徴を持つのかを会計的に説明 額法や定率法といった特殊な手続きを行う見慣れ かを会計的に説明したいと思います 一般的な仕 したいと思います 一般的な仕訳例は以下の通りです したいと思います 一般的な仕訳例は以下の通りです ない勘定科目 またはキャッシュフロー計算書 訳例は以下の通りです 年4月(期首 年4月(期首 年3月末 期末 年3月末 期末 機械設備 100万円を購入 機械設備 100万円を購入 機械 100万 現金 100万 機械 100万 現金 100万 決算整理 決算整理 減価償却費 10万円 減価償却費累計額 10万 減価償却費 10万円 減価償却費累計額 10万 1 減価償却の意 1 減価償却の意 1 減価償却の意義 内容を理解するには まず 期間利益はど 有形固定資産の取得原価を使用できる各会計期間に あらかじめ定められた一定 有形固定資産の取得原価を使用できる各会計期間に あらかじめ定められた一定 有形固定資産の取得原価を使用できる各会 のように算出されるか 減価償却がどういっ の計画に基づいて計画的 規則的に配分するとともに 同額だけ資産価額を減少させ の計画に基づいて計画的 規則的に配分するとともに 同額だけ資産価額を減少させ 計期間に あらかじめ定められた一定の計画に た考え方に基づいているのか を考える必要が ていく会計手続き が会計上の意味ですが これでは全く意味が分かりません ていく会計手続き が会計上の意味ですが これでは全く意味が分かりません あります まず 期間利益がどのように算定さ 基づいて計画的 規則的に配分するとともに 内容を理解するには まず 期間利益はどのように算出されるか 減価償却が 内容を理解するには まず 期間利益はどのように算出されるか 減価償却が 同額だけ資産価額を減少させていく会計手続 れるかを考えた上で 次に減価償却費の基礎と どういった考え方に基づいているのか を考える必要があります まず 期間利益が どういった考え方に基づいているのか を考える必要があります まず 期間利益が なる考え方を調べていきたいと思います き が会計上の意味ですが これでは全く意味 どのように算定されるかを考えた上で 次に減価償却費の基礎となる考え方を調べて どのように算定されるかを考えた上で 次に減価償却費の基礎となる考え方を調べて が分かりません いきたいと思います いきたいと思います 減価償却費の基 る考え 方 減価償却費の基 る考え 方 ①取得原価主義による資産評価 ①取得原価主義による資産評価 収支額基準 収支額基準 ②費用配分の原則 ②費用配分の原則 ③発生主義による費用認識 ③発生主義による費用認識 ④費用収益対応原則 ④費用収益対応原則 なければなりません 損益計算書原則 一 こ 決算申告書に計上されている期間利益は 一 こで 大事なことは一会計期間の期間費用と 決算申告書に計上されている期間利益は 一会計期間に属するすべての収益とこれ 決算申告書に計上されている期間利益は 一会計期間に属するすべての収益とこれ 会計期間に属するすべての収益とこれに対応す は 収益と対応する全ての費用 のことであり に対応する全ての費用とを記載して経常利益を表示し 特別損益項目を調整し当期純 に対応する全ての費用とを記載して経常利益を表示し 特別損益項目を調整し当期純 利益を表示しなければなりません 損益計算書原則 一 ここで 大事なことは一 る全ての費用とを記載して経常利益を表示し 当期に発生した全ての費用 ではありません 利益を表示しなければなりません 損益計算書原則 一 ここで 大事なことは一 会計期間の期間費用とは 収益と対応する全ての費用 のことであり 当期に発生 特別損益項目を調整し当期純利益を表示し 会計期間の期間費用とは 収益と対応する全ての費用 のことであり 当期に発生 した全ての費用 ではありません した全ての費用 ではありません 33 1 1

図 1図 1 期間損益 (P/L) (1) 発生費用 (2) 期間費用 期間収益 収益獲得の 財貨 用役の 選択 ための犠牲 費消 (80 個分の費用 ) 因果関係 (100 個製造 ) 発生主義 費用収益対応の原則 当期の収益 ( 成果 ) (80 個販売 ) 実現主義 当期に発生した発生費用 (100 個製造分 ) のうち 当期の収益 (80 個販売分 ) を獲得するのに必要とした費用 (80 個分 ) を抜き出し 当期の期間費用として計上します そうして 80 個販売した 収益 から 80 個製造するのに要した 費用 を引き算することで 当期利益 を算出します 図 1より 費用と収益の概念はイメージできたと思いますが 次のステップとして具体的に 費用収益をどのタイミングで認識し その費用の金額をどのように測定するのでしょうか? 図 1に (1) 発生費用とありますが現在の会計制度上では 費用の認識は 発生主義 により行い 費用の測定は 収支額基準 により行います この 発生主義による費用認識 と 収支額基準 は減価償却費の基礎となる考え方の軸ですので詳しくお話しします 3. 費用の認識基準である 発生主義 について ⑴ 費用の認識とは何を意味するのか費用の認識とは 費用の期間帰属をいつにするのかを決定する手続きです 例えば取引先から製品製造のための機械設備を購入した場合 購入時に支払代金を支払います しかし この機械の会計上の費用認識は 機械の購入代金を支払った時ではなく 製品を製造するのに機械を稼働し 使用した時点で費用として認識します ⑵ 発生主義について図 1のように費用の認識を行うことを 発生主義による費用認識 といいます つまり発生主義とは 経済的な価値の減少の事実が発生した時点で費用を認識する 考え方です 財や用役の費消という 確定的な事実 に基づいて費用を認識するため 一会計期間の業績を経済的に把握するのに適しています 発生主義により 費用 収益 を認識した場合のイメージは図 2のようになります 図 2 発生主義による計算イメージ 前期 当期 材料購入 測定 材料の消費 製品の生産 ( 現金支出額 ) ( 価値減少 ) ( 価値の増加 ) 機械購入 測定 機械の使用 ( 現金支出額 ) ( 価値減少 ) 経済的事実の発生 費用の認識 収益の認識 * 制度上は収益の認識は実現主義より上図のようにはならない 34

4. 費用の測定基準である 収支額基準 について費用の測定とは 費用の金額を決定する 手続きです 費用の金額は制度上 費用を取得するのに対価として支払った支出額の金額に基づいて算出されます 機械設備を1000 万円で購入すれば その機械設備を1000 万円の価値があると考えるのは自然な考え方であり 収支額基準 とはその当たり前の内容を表しています 5. 費用収益対応の原則について図 1のように当期に発生主義により認識された費用 ( 発生費用 ) のうち 当期の収益獲得の犠牲となったものが選び出され 最終的に損益計算書の費用として認識されますが この選び出す過程を 費用収益対応の原則 といい この原則により選び出され最終的に損益計算書に計上される費用を特に 期間費用 といいます ⑴ 意義費用収益対応原則とは 適正な期間損益計算の観点から一会計期間における収益と費用を成果と犠牲の関係により把握し 両者を合理的に対応させて正味の成果としての適正な期間損益を計算することを要請する原則です ⑵ 役割費用収益対応の原則は 発生主義により認識される発生費用の中から 当期の収益と因果関係を持つものを選び出し 期間費用として認識する役割を果たします これにより 成果と犠牲の関係を重視した適正な期間損益計算が行われます 図 1を参照 当期以前に発生した費用のうち 当期の期間費用とされなかったものは 資産として繰延べられ 次期以降において当該費用の関連収益が認識された時点で 費用収益対応の原則により期間費用とされます ( 製品在庫 仕掛品 繰延資産等 ) ⑶ 費用収益対応の類型 1 個別的対応 ( 直接的対応 ) 商品等の販売事実に基づいて把握される収益と費用の直接的な対応関係 売上高と売上原価に代表される対応関係であり 収益と費用の因果関係や関連性が明確 2 期間的対応 ( 間接的対応 ) 会計期間を媒介として把握される収益と費用の間接的な関係 売上高と販管費 営業外費用に代表される対応関係で 収益と費用の因果関係や関連性は一般に不明確 以上の説明により 一般的な期間損益の計算方法のポイントは 費用の額を 収支額基準 に基づき 発生主義 により認識し 費用収益対応の原則 により当期の収益に対応する費用を選び出し 利益を算定するイメージを掴んでいただけたと思います それでは次のステップとして 本稿のテーマである減価償却費が関連する機械設備や建物といった 費用性資産 の評価額や費用化額をどのように計算し 期間利益を考えるのかという 取得原価主義会計 について考えたいと思います 基本的な考え方は変わりませんが 費用配分の原則 という考え方にも触れて説明したいと思います 資産の 貨幣性資産 現金 および資本の回収過程にあり 将来現金として直接回収されることを予定している資産 ( 例 ) 売掛金 受取手形 貸付金等費用性資産 資本の投下過程にあり 将来費用化されることを通じて貨幣性資産に転嫁することを予定している資産 ( 例 ) 棚卸資産 固定資産等 35

6. 取得原価主義会計について ⑴ 意義取得原価主義とは 費用性資産の評価額及びその費用化額を支出額に基づき決定するものです 取得原価主義会計は 適正な期間損益計算を行う観点から 費用性資産に対して要請される会計処理全体の枠組みを示すものです 言い換えれば 発生主義会計による期間損益計算の構造を 費用性資産に着目して説明するものと理解することができます ⑵ 費用配分の原則について貸借対照表に記載する資産の価額は 原則として当該資産の取得原価を基礎として計上しなければならない 資産の取得原価は 資産の種類に応じた費用配分の原則によって 各事業年度に配分されなければならない 有形固定資産は 当該資産の耐用期間に渡り 定額法 定率法等の一定の減価償却の方法によってその取得原価を各事業年度に配分する ( 貸借対照表原則 / 五 ) と企業会計原則にはあります 1 意義いずれ費用となるべき支出額を 当期と次期以降の期間に配分する手続きを支える根本思考 2 役割 位置づけ費用配分の原則は 取得原価主義に基づく資産評価を前提として 費用性資産の取得原価を当期の費用と次期以降の費用となる貸借対照表価額とに適正に配分することを要請するものです 費用配分の原則に基づく配分とは前述の発生主義に基づいて費用性資産の経済価値の減少を費用として認識する過程を示すものです また同時に 取得原価である支出額を資産の経済価値の減少の認められる会計期間に配分することを通じて 各会計期間の費用額を実質的に測定する過程を示すものとも理解されています 結局 発生主義による費用認識と収支額基準による費用の測定を同時に行うことを意味します 費用配分の原則という概念が特別に明示されるのは 費用性資産の費用額を適正に決定するには 会計処理上何らかのルールが必要とされると考えられるからです 図 33 Ⅰ 期 Ⅱ 期 Ⅲ 期 発生主義による費用の認識 費消 費消 費消 認識 認識 認識費用 取得原価 費用 ( 支出額 ) 費用 測定 測定 測定 費用配分の原則 3 費用配分の原則の適用方法 棚卸資産 費消の事実 ( 製品 Aをいくつ払出したか ) を事後的 個別的に数量で把握することができます そのため 事後に把握した数量に取得単価を乗じることで行われ 棚卸 資産の費用配分は取得原価 ( 単価 ) が配分の単位として用いられます 有形固定資産 費消の事実を事後的 個別的に把握できないことが一般的です 費用配分は減価償却の 36

手続きにより 事前に一定の仮定を設けて計画的 規則的に行い 取得原価を各会計期間に渡って部分的に配分することで行います 4 費用配分の原則と費用収益対応の原則の関係費用配分の原則に基づいて決定された発生費用のうち 当期の収益に対応するものが費用収益対応の原則により選択され最終的な期間費用として決定されます 図 44 機械装置減価償却費売上原価売上高当期の 1 発生費用 2 期間費用個別的対応取得費用 P/L ( 製造費用 ) 原価次期以降製品 1 の費用製品 2 費用配分の原則費用収益対応の原則 期間収益 ( 実現収益 ) 取得原価 本社建物 減価償却費 減価償却費 当期の期間費用期間的対応発生費用費用 P/L 次期以降 1 2 の費用製品 1 5 有形固定資産の費用配分 ( 減価償却費 ) の特徴有形固定資産は 一般に企業の営業活動の中で長期に渡りその全体としての用役をもって収益獲得に貢献するものです そのため 一会計期間における価値の減少を事後的 物量的に把握することが困難です そこで 使用に先立ち 事前に費用配分の割合において一定の仮定を設け 以降はその仮定に基づいて取得原価を計画的 規則的に配分して毎期の費用額を決定する減価償却の手続きが適用されます あくまで 一定の仮定に基づいており 一定時点における有形固定資産の帳簿価額 ( 未償却残高 ) がその地点の資産の経済価値 ( 時価等 ) を正しく示すものではありません 7. まとめ 1 項から6 項で 一般的な期間利益の算定と有形固定資産の費用認識から配分 期間利益の算定の一巡の手続きを説明してきました 結局 期間損益を求めるために 特に有形固定資産を含む費用性資産の場合 1 収支額基準に より配分すべき資産の評価測定を行う 2 発生費用により費用認識を行う 3 費用配分の原則により当期の費用を配分し 4 費用収益対応の原則により収益を獲得するために貢献した費用を選び出すという手続きが基本にあります しかし 有形固定資産の場合は 特徴でもお話しした通り 3の費用配分の原則による当期の費用配分において 事後的 物量的に費用額を把握することができません 従って 一般の商品と違い 製造の都度ではなく 期末にまとめて当期の機械の費用額を仮定計算をもって決めているにすぎません 例えば 1000 万円の機械を使用し製品を10 個製造した場合 その製造過程で何円機械の価値が減ったかは普通わかりません わかるとするならば 20 年間機械を使用し 故障等で買替る時に 1000 万円が20 年で使い切ったので1 年あたり約 50 万円程度の費用額だなあと初めてわかります 費用額を個別具体的に算定できないため 減価償却という特殊な手続きが必要になるわけです 37