全粒オーツ麦の恵み 2015 年 9 月 No.123 世界 3 大穀物である とうもろこし 小麦 米 は皆さんの食生活にとても馴染みがあり どんな形か どういう風に食べるか いろいろなメニューやイメージが浮かぶかと思います では オーツ麦 はどうでしょうか? オーツ麦は和名で燕麦 ( えんばく ) とも言われる穀物で 挽き割りにしてオートミールとして食される他 弊社製品 厳選素材フルーツグラノラ や あったかグラノラ ( 秋冬限定商品 ) をはじめとしたグラノラの主原料でもあります 今回は グラノラの主原料であるオーツ麦に焦点をあて 食物繊維の専門家である青江誠一郎先生から オーツ麦の特長や機能を解説していただきました 3 大穀物に比べて少し認知度の低いオーツ麦ですが 今回の記事では オーツ麦の持つ大きな可能性を感じていただけるかと思います また 栄養 健康情報では 6 月にパリで行われた国際食物繊維学会の様子をレポートします 2 年に 1 回行われ 今回で第 6 回目となるこの国際学会では 食物繊維ひとすじ 100 年 のケロッグがメインスポンサーをつとめ オールブラン製品の朝食を提供しながらのブレックファストシンポジウムなどを通して 活発な討論がなされました 日本ケロッグ栄養アドバイザー博士 ( 理学 ) 管理栄養士田中恭子 特集記事 全粒穀物におけるオーツ麦の優位性 大妻女子大学家政学部食物学科教授青江誠一郎 栄養 健康情報 国際食物繊維学会 2015 レポート Kellogg s は日本ケロッグ合同会社が 1992 年より発行している 栄養 健康情報誌です 2010 年 4 月より 季刊で発行 国内 海外の最新の話題を取り上げ その分野の専門家の方々にご執筆頂いております 本誌内部の引用 転載は自由でございますが Kellogg s ( ケロッグアップデイト ) より転載の旨を御書き添えいただければ誠に幸甚に存じます 日本ケロッグ合同会社 日本ケロッグ WEB サイト :http://www.kelloggs.jp Kellogg s WEB サイト :https://www.kelloggsnutrition.com/ja_jp/home.html <Kellogg s に関するお問い合わせ先 > Kellogg s 事務局 ( ブルーカレント ジャパン株式会社 ) TEL: 03-6204-4141 E-mail: Kellogg-info@bluecurrentgroup.com 1
全粒穀物におけるオーツ麦の優位性 大妻女子大学家政学部青江誠一郎 Seiichiro Aoe オーツ麦の優位性について オーツ麦の摂取は 血清コレステロール濃度の正常化というこれまでの価値を超えて さらに糖尿病 血圧調節 体重管理 胃腸の健康といった機能に優位性が期待されている さらに 新たな疫学研究により オーツ麦の摂取が ガンを含めた慢性疾患に対して有効であるという報告もされている オーツ麦と今話題の腸内細菌 - Key Points - オーツ麦摂取による腸内細菌叢の変化は 心血管系の健康 免疫機能 糖尿病 肥満に影響を与える さらに 短鎖脂肪酸の産生は 満腹感の持続にも影響する さらなる研究により 全粒穀物におけるオーツ麦の優位性が明らかになることが期待される はじめに近年になって全粒穀物の食物繊維に大きな関心が集まっている 穀物の全粒粉とふすまを用いた試験のシステマテックレビューによれば 2 型糖尿病 肥満 冠状動脈疾患のリスク低減に関して 穏やかな効果があると結論づけられた 1) 食物繊維は 水溶性と不溶性 発酵性と非発酵性などの性質により生理機能が異なるが 近年では レジスタントスターチと呼ばれる消化酵素では消化されにくいデンプンや様々な重合度の難消化性オリゴ糖も食物繊維の定義に含めるため 栄養生理作用を論ずるには性質や組成の詳細が求められる 日本人の食物繊維摂取量は戦後直後には現在推奨されている目標量をほぼ摂取していたが その後 とくに高度経済成長期における食生活の変化に伴って大幅に低下した 食物繊維摂取量低下の原因は穀物からの摂取の減少によるところが大きい 2) すなわち 穀物摂取量の低下 精白度の向上 雑穀類消費の低下などが原因となっている 著者らは 穀物の中で水溶性食物繊維が多く含まれる麦類に着目して研究を行ってきた 特に オーツ麦は他の穀物に比べて β-グルカンを主体とする 水溶性食物繊維を多く含む点に特徴がある オーツ麦は 世界で一般的に消費されている穀物で 低カロリー飲料 医療食 パン クッキー オートミール グラノラなどで利用されている オーツ麦は 欧米では コレステロール低下作用をもつ食品として 既に多くの研究がなされている また その生理効果の主体は水溶性食物繊維の一種であるβ-グルカンであると推定されている 1997 年にはオーツ麦に関して 心疾患のリスク低減のヘルスクレームが米国食品医薬品局 (FDA) により許可されている 3) 次いで ヨーロッパ カナダでもヘルスクレームが可能となった オーツ麦についてオーツ麦は 多くの特徴的な成分 健康価値を有し 品種も多いため様々な条件で栽培が可能であり 全粒穀物摂取を推奨する栄養政策とも合致する 特徴的な成分は 食物繊維 特にβ-グルカン 脂質成分 たんぱく質成分 ポリフェノールの一種のアベナンスラミドを含んでいる オーツ麦の特徴は 他の穀物に比べて食物繊維量が多いことにある 4) 特に オーツ麦 β-グルカンの物理化学的性質は 2
オーツ麦の血糖値やコレステロール濃度に重要な影 大麦β-グルカンはアラビノキシラン アラビノースと 響を与える キシロース も多く含んでいる 6) 現在の知見で β-グルカンとは グルコース ブドウ糖 が多数結 は オーツ麦中のβ-グルカンの分子量と溶解性 合した多糖類の総称で 食物繊維の一種である が血糖値やコレステロール値の調節に影響して β-グルカンは 穀類 キノコ 酵母など自然界に広く いると考えられている 分布しているが 構造がそれぞれ異なる オーツ麦β-グルカンは グルコースがβ-(1 4)結 合とβ-(1 3)結合した直鎖構造の多糖類である 図1 約90%がβ-(1 4)結合の三糖 四 糖単位がβ-(1 3)結合している オーツ麦β-グル カンの三糖 四糖比は2:1と特徴的であり 大麦 図2 オーツ麦の断面模式図 β-グルカン 3:1 小麦β-グルカン(4:1)とは 異なっている5) この構造的な違いが 物性の変化 オーツ麦水溶性食物繊維 大麦水溶性食物繊維 をもたらし 機能性にも影響を与える 小麦水溶性食物繊維 図1 β グルカンの基本構造模式図 オーツ麦β-グルカンの分子量も重要であり 溶解 性 粘性 ゲル形成能に影響を及ぼす たとえば 図3 水溶性食物繊維中のβ グルカン アラビノキシランの比率 オーツ麦βーグルカンの有効量について 飽和脂肪酸やコレステロール量が少ない食事に 高分子β-グルカンはゲル形成能を持たないが 加 おいて オーツ麦β-グルカンを1日3g以上摂取す 工処理中にある条件下で低分子化するとゲル形成 ると 冠状動脈疾患のリスクを下げるという臨床 能を持つようになる オーツ麦β-グルカンは非常に高 試験結果が多くある7,8) 欧州連合では排便促進 分子 分子量数百万 で存在すると報告されて 効果についても オーツ麦β-グルカンを1日3g以 いるが パン製造 マフィンやクッキー製造 エクスト 上で有効としている 日本人を対象とした試験がな ルーダー加工などにより1/10 1/100程度に低分 かったため 著者らは総コレステロール値が200以上 子化する5) 260mg/dl未満かつLDL コレステロール値が120 また オーツ麦β-グルカンはサブアリューロン層と呼 以上180mg/dl未満の被験者にオーツ麦粥60g ばれる胚乳部とアリューロン層の境界域に多く含まれ β-グルカン2.1g を摂取してもらう試験を行った る 図2 したがって オートブランと呼ばれるふす 9) プラセボ食は オーツ麦の代わりに白米を用い まにはβ-グルカンが濃縮されることになる5) また 図 食物繊維量を同一にするためにセルロースを配合し 3に示したようにオーツ麦由来の水溶性食物繊維は た また 食感ならびに外観を区別できなくするため β-グルカンの比率 グルコース が高いのに対し 3
血清総コレステロール (mg/dl) に少量の加工でんぷん およびカラメル色素を配 合して調製し 二重盲検試験とした 試験期間 中における血清総コレステロール値の平均値の推 移を図 4 に示す 血清総コレステロール値は オー ツ麦群がプラセボ群に比べて摂取期間を通じて有 意に低いことが認められた 本結果より オーツ麦 として 1 日あたり 60g β- グルカンとして 2.1g の摂 取は境界域及び軽度高コレステロール血症の日 本人成人において効果が期待できる量であること を報告した この数値は 欧米での有効量と大き く異なる値ではない 日本人においても 1 日 2~ 3g のオーツ麦 β- グルカンの摂取で血清コレステ ロール濃度の低下効果が期待できる量と考えら れる 240 230 220 210 全粒穀物を超えたオーツ麦の優位性 p<0.05 摂取前 4 週目 8 週目 12 週目 図 14 血清総コレステロール値の変化 * プラセボ群と比べて摂取期間中有意差あり (p<0.05) エラーバーは95% 信頼区間を表す ---- プラセボ群 - - - オーツ群 近年のオーツ麦の科学 技術 育種 加工の発 展により新たな優位性が見いだされてきた オーツ 麦の摂取は 血清コレステロール濃度の正常化と いうこれまでの価値を超えて さらに糖尿病 血圧 調節 体重管理 胃腸の健康といった機能に優位 性が期待されている 4) さらに 新たな疫学研究に より オーツ麦の摂取が ガンを含めた慢性疾患に 対して有効であるという報告も出た 4) さらには β- グルカンの物性が満腹感の持続に寄与すると いう実験的研究もなされるようになった ここ十年の間に腸内細菌叢と疾病との関係が大きく取り上げられた オーツ麦およびその成分 ( レジスタントスターチ β ーグルカン リグニン 脂質成分 ) を含めた全粒穀物は腸内細菌叢を変化させ 細胞内シグナル伝達を介して健康効果を発揮する可能性が示唆されており 新たな機能性が期待される オーツ麦に含まれるアベナンスラミドは近位および遠位結腸の発酵産物である短鎖脂肪酸の産生を促進することが報告されている 10) オーツ麦摂取による腸内細菌叢の変化は 心血管系の健康 免疫機能 糖尿病 肥満に影響を与える さらに 短鎖脂肪酸の産生は 満腹感の持続にも影響する さらなる研究により 全粒穀物におけるオーツ麦の優位性が明らかになることが期待される 一方 多くの介入研究があるにも関わらず 冠状動脈疾患や糖尿病のリスクに関する疫学研究がない オーツ麦摂取とガンのリスク低下に弱い関係があるという限定的な疫学研究がある 終わりにオーツ麦は 世界で消費される一般的な穀物である 食品形態も様々でグラノラをはじめとしたシリアル (ready to eat cereal) オートミール パン クッキーなどバラエティに富むのも特徴である 世界的に健康維持のために全粒穀物を摂取することが推奨されるが オーツ麦は その中でも 冠状動脈疾患のリスク低減 腸の健康 ある種のガンの予防に有益であるというエビデンスが集まりつつあるという点で優位性の高い全粒穀物と言えよう さらに 即時効果として満腹感や血糖応答への影響に関しても新たな可能性が示されている 日本においても全粒穀物におけるオーツ麦摂取の意義を再認識すべきであろう 4
< 参考文献 > 1) Cho SS, Qi L, Fahey GC Jr, et al: Consumption of cereal fiber, mixtures of whole grains and bran, and whole grains and risk reduction in type 2 diabetes, obesity, and cardiovascular disease. Am J Clin Nutr 2013; 98, 594-619. 2) 池上幸江 : 日本人の食物繊維摂取量の変遷. 日本食物繊維研究会誌 1997; 1, 3-12. 3) Food and Drug Administration: Food Labeling: Health Claims; Oats and Coronary Heart Disease. Federal Register 1997; 62, 3584-3600. 4) Clemens R and van Klinken B J-W : Oats, more than just a whole grain: an introduction. Br J Nutr 2014; 112, S1-S3. 5) Wang Q and Ellis PR: Oat β-glucan: physico-chemical characteristics in relation to its bloodglucose and cholesterol-lowering properties. Br J Nutr 2014; 112, S4-S13. 6) Oda T, Aoe S, Sanada H, et al: Effects of soluble and insoluble fiber preparations isolated from oats, barley, and wheat on liver cholesterol accumulation in cholesterol-fed rats. J Nutr Sci Vitaminol1993; 39, 73-79. 7) Food and Drug Administration: Code of Federal Regulations, title212, Section101 2012; 81. 8) Thies F, Masson LF, Boffetta P, et al: Oats and CVD risk markers: a systematic literature review. Br J Nutr 2014; 112, S19-S74. 9) 青江誠一郎, 藤田孝, 木下さと子他 : オートミール粥の摂取が境界域および軽度高コレステロール血症者の血清コレステロール値に及ぼす影響. 栄養学雑誌 2006; 64, 77-86. 10) Clemens R and van Klinken B J-W : The future of oats in the food and health continuum. Br J Nutr 2014; 112, S75-S79. Profile 青江誠一郎 ( あおえせいいちろう ) 大妻女子大学家政学部食物学科教授 一般社団法人日本食物繊維学会常務理事 大妻女子大学家政学部食物学科教授 農学博士 千葉大学大学院自然科学研究科博士課程修了 一般社団法人日本食物繊維学会常任理事 雪印乳業株式会社技術研究所を経て平成 15 年度より大妻女子大学家政学部助教授に就任 平成 19 年度より現職 大麦の食物繊維とメタボリックシンドローム予防に関する論文にて 平成 22 年度日本食物繊維学会の学会賞を受賞 5
栄養 健康情報 国際食物繊維学会 2015 が開催 2015 年 6 月 1 日 ~3 日 フランス パリにおいて 第 6 回国際食物繊維学会 2015が開催されました この国際学会は2 年に1 回開催され 食品技術や製品開発 栄養など幅広い分野で 食物繊維について議論が交わされる 食物繊維に関わる最も大きなイベントの一つです 当学会においてケロッグはKellogg s All-Branとしてメインスポンサー ( ダイアモンドスポンサー ) を務めました 今回はこの学会の様子を報告します ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 学会概要 3 日間で 257 名が参加 プログラムは5つのセッションから構成 1 消費者 規制に関する考え方 ( 食物繊維に対する関心 ヘルスクレームについて等 ) 2 消費者の健康 ( 腸内細菌とその機能 食物繊維と代謝疾患等 ) 3 食品中の食物繊維ならびに新規素材 4 食物繊維の分類と分析方法 5 食物繊維摂取量の増加: 課題とメリット Kellogg s All-Bran Breakfast シンポジウムには 130 名が参加しました (p.7 写真 1) オールブランの研究として ケロッグから5 題のポスター発表と 3 題のプレゼンテーションを行いました (p.8 写真 2) オールブランスタンドでは オールブランスナック674 個とオールブランシリアル54 箱が食されました (p.8 写真 3) 6
Kellogg s All-Bran Breakfast シンポジウム ~ 発表内容 ~ ウェルカム & イントロダクション by Catriona Campbell(Nutritionist, Kellogg s Europe) 穀物の繊維の健康効果 by Kathryn O Sullivan 博士 (Public Health Nutritionist) ヨーロッパにおける食物繊維摂取量の増加 by Angie Jefferson(Dietitian) 朝食シリアルメーカーとしての役割とは by Toine Hulshof 博士 (Director of Nutrition Science, Kellogg s Europe) 写真 1. Kellogg s All-Bran Breakfast シンポジウム会場の様子 口頭発表 ポスター発表のタイトル 発表者 ~ 発表内容 ~ < 口頭発表 > 食物繊維の摂取量増加による便秘比率の減少の医療費削減について by K O Sullivan 他 様々な種類の食物繊維と排便量 頻度 腸内通過時間などに対する影響 by Clare Lawton 他 過体重女性に対する12 週間の食物繊維摂取推奨介入は よりよい健康観やボディイメージを持つことができ 単なる健康的な食事の推奨よりも 体重や食習慣が改善する by J. de Vries 他 <ポスター発表 > 腸管機能における穀物からの食物繊維の効果について: 介入研究におけるシステマティックレビュー by J. de Vries, T. Hulshof, A. Birkett 妊娠期の腸機能に関する問題の予防 改善における不溶性食物繊維の役割 by Angie Jefferson 消化器官の健康問題には経済的かつ非薬物的解決が必要 by Emma Priestley 年代別の研究動向: 小麦ブランとその排便量に対する効果について by Joseph Moss, University of Leeds 7
月経周期にともなう腸管機能や消化器官に生じる諸症状に対する食物繊維の効果 by Dye, L., Schnell R., Garner, F., Struthers L., Myrissa K., Croden F., Camidge D., Gusnanto A., Walton J., Hoyland A., & Lawton, C. 写真2. ポスター発表 プレゼンテーション風景 All-Branスタンド 発表内容 All-Branスタンドでは 参加者らによる食物繊維に関する議論も活発に行われたほか この食物繊維のたくさん入ったバー オールブランスナック は美味しい 自分の国でも買えるのかしら と いった質問や オールブランの朝食はとっても楽しめたし こんなに種類があるなんて知らなかった といった声も あったようです 写真3 ディスカッションスタンド 左 と 製品展示 試食 右 DIAMONDスポンサーをつとめた Kellogg s All-Bran 会場では Breakfast Times という資料も配布されました 8