4. 視診による皮膚の乾燥度の評価 保湿剤を塗布する看護師と独立した看護師により 保湿剤使用前および保湿剤開始 30 日後の皮膚の乾燥 度合いを 普通 軽度乾燥 中等度乾燥 重度乾燥の 4 段階で評価した 5. 統計学的解析保湿剤使用前 および保湿剤使用後の皮膚水分量の比較は 一元配置分散分析で比較

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皮膚水分量に着目した適切な皮膚保湿剤の選択 Key word: 保湿剤 携帯型皮膚水分計 皮膚トラブル スキンケア 俵田智佳子 伊藤エリ 杵渕恵美子 落合美恵子 Ⅰ. はじめに高齢者看護において スキンケアは患者の全身管理の上で非常に重要である 特にパーキンソン病や認知症など神経変性疾患の進行期には 寝返りなどの自動運動が困難となり 全身の皮膚の状態の悪化は褥瘡のリスクとなる 皮膚のトラブルは その原因や程度は様々であるが その中で皮脂の欠乏や皮膚の菲薄化に起因する皮膚の乾燥は 皮膚の亀裂や表皮剥離など多くの皮膚トラブルの原因となる そのため このような皮膚トラブルの予防には 皮膚の水分量を維持するために保湿剤の塗布が有効であると報告されている 1) 保湿剤については 皮膚の保護を目的とした製剤は多数存在している 種類が豊富であるため その選択に苦慮することが非常に多い 私達が勤務する病院においても 性質の異なる複数の保湿剤を使用しているが その選択については 担当看護師の判断に依存する部分は大きい 一方 保湿剤の使用に明確な指針を有していないことから 実際の選択は試行錯誤の繰り返しである そのため 皮膚状態の客観的な評価とそれに伴う保湿剤の選択指針の作成は 看護の質の向上と看護業務の標準化という点で非常に重要である そこで高齢者の皮膚の多くが乾燥状態であるため 皮膚の水分量が皮膚状態の評価の指標になり得るのではないかと推測した さらに保湿剤使用前と使用後 さらには性質の異なる保湿剤を同一患者に使用することにより 保湿剤の性質を把握し 今後の保湿剤の使用指針の作成を目的として 看護研究を行うこととした Ⅱ. 目的患者の皮膚の乾燥状態を客観的に評価するため 皮膚水分計を用いて皮膚の水分量を計測する その上で 従来より使用している複数の保湿剤の効果を明らかとするため 同一患者で複数の保湿剤を使用し その効果を明らかとし 今後のスキンケアを目的とした保湿剤選択の院内の統一基準を作成する Ⅲ. 研究方法 1. 研究対象皮膚の乾燥が強い 2 名の患者を対象とした 対象患者は A さん :86 歳女性 臨床診断は認知症を伴うパーキンソン病 水分量 1300cc( 経管栄養を含む ) B さん :80 歳男性 水分量 1025cc( 経管栄養を含む ) 臨床診断は多系統萎縮症 2. 保湿剤の選択 Smith&Nephew 社のセキューラ PO およびセキューラ ML を使用した 性質の異なる 2 つの保湿剤の比較のため 同一患者で 右側にセキューラ PO 左側にセキューラ ML の連日塗布を行った 3. 皮膚水分量の測定携帯型皮膚水分計 Mobile Moisture HP10-N( 株式会社インテグラル ) を用い皮膚の水分量を測定した 測定部位は 左右の前腕 手背 下腿 足背の計 8 カ所を測定した 皮膚水分量の測定は 保湿剤使用前の計測を平成 26 年 9 月 27 日 ~11 月 1 日に実施 保湿剤使用後は平成 26 年 12 月 3 日 ~ 平成 27 年 1 月 10 日に計測した 保湿剤使用後は 保湿剤塗布 2 時間後 6 時間後 24 時間後の 3 点で計測を行った 計測は 1 回に 5 回連続で計測し 平均値を計測値として解析に使用した

4. 視診による皮膚の乾燥度の評価 保湿剤を塗布する看護師と独立した看護師により 保湿剤使用前および保湿剤開始 30 日後の皮膚の乾燥 度合いを 普通 軽度乾燥 中等度乾燥 重度乾燥の 4 段階で評価した 5. 統計学的解析保湿剤使用前 および保湿剤使用後の皮膚水分量の比較は 一元配置分散分析で比較し 同解析で統計学的有意差を認めた時は Tukey 法で多重比較をした 統計解析は JMP 9(SAS Ins.) で解析し P<0.05 を統計学的有意とした 6. 倫理的配慮対象者とその家族に本研究の趣旨 方法 個人情報の保護 参加への自由意思について口頭及び文章にて説明し書面にて同意を得た 本研究は 当院倫理委員会での承認を得て 実施した Ⅳ. 結果 1. 視覚による評価保湿剤使用前後の視診による評価を表 1 に示す 保湿剤使用前と比較して 保湿剤使用後は見た目の乾燥の程度は改善しているが セキューラ PO を塗布した方は 改善の度合いが大きかった 表 1 保湿前後の視診による皮膚乾燥度の評価 A さん B さん 皮膚の乾燥 皮膚状態 皮膚の乾燥 皮膚状態 使用前 重度乾燥 白いカサカサ 重度乾燥 白いカサカサ ウロコ状 塗布後右側 ( セキューラ PO) 普通 普通 左側 ( セキューラ ML) 軽度乾燥 軽度乾燥 2. 皮膚水分計による皮膚の水分量の経過セキューラ PO および ML を塗布したことによる接触性皮膚炎などの発症は認めなかった 一方 セキューラ PO を塗布した側で 皮膚にごくわずかであるが 点状の皮下出血を伴う部位が存在した セキューラ PO を塗布した側は 保湿剤使用前と比較して 明らかに皮膚水分量が増加していた 保湿剤使用後は 塗布 2 時間後は皮膚水分計が示す数字はやや低く 塗布 6 時間後に上昇する傾向を認めた また保湿剤塗布 24 時間後にも 皮膚水分量が維持されていた ( 図 1) セキューラ ML を塗布した側も 塗布後に皮膚水分量は上昇していたが その経過はセキューラ PO とは異なり 塗布 2 時間後にはすでに上昇しており 6 時間後にも皮膚水分量は保たれているが 塗布 24 時間後には 塗布 6 時間後より皮膚水分量は低下した しかし 保湿剤使用前より皮膚水分量は保たれていた ( 図 1)

A B 図 1 保湿剤使用前 使用後の皮膚水分量の経過 A は A さん B は B さんの皮膚水分量の経過を示す エラーバーは 平均 標準偏差を示す 各図の右下の P 値は一元配置分散分析 図内上の P 値は Tukey 法の多重比較の結果を示す Ⅴ. 考察私達が使用している性質の異なる保湿剤により その保湿効果や持続時間が異なることが明らかとなった 今回比較した 2 製剤の一般的な特徴は 表 2 に示す通りである セキューラ PO はワセリン含有のため 保湿効果が長時間持続できたものと考える 一方 セキューラ ML はローションタイプであることから ワセリンを含有するセキューラ PO ほどには長時間の効果を認めなかったと考える 表 2 セキューラの性質の差異 Smith&Nephew 社ホームページ (http://www.smith-nephew.com/japan/) より改変 セキューラ PO セキューラ ML 利点 撥水性の高い被膜を形成し 皮膚の水分蒸発を防ぎ 皮膚を保湿する 皮膚の乾燥を防ぎ 潤いを保つローション 伸びが良く塗布しやすい 塗布後にべたつかない 欠点 粘調度が高く 塗布しにくい 塗布後のべたつきがある 皮膚になじみが良いため適量がわかりにくい 一方 セキューラ PO を塗布した群では 一部で皮膚に点状の皮下出血を認めた箇所があった この点については 同製剤はワセリンにより粘性が高く 皮膚に塗布する際に摩擦が生じやすく そのために皮下出

血を生じた可能性が考えられる この点は セキューラ PO を使用する際に注意が必要な点であると考える この事象に対する対策の一つとして ワセリンは温度が高くなると軟らかくなり 保湿剤が低温の時より粘性が低くなることから 使用前に保湿剤をすこし温めた上で使用することにより 皮膚への摩擦を軽減できる可能性がある 今回 明らかとなった点から 2 種類の保湿剤の選択に際して以下の項目が大きな指針になると考える 皮膚に長い保湿時間に重点をおく場合には セキューラ PO の方が ML より有効性が高い 一方 皮膚が脆弱で保湿剤の塗布による圧力をかけることを避けたほうが適切と思われる場合や保湿剤使用後の使用感にこだわる場合には セキューラ ML を選択したほうが良いと考える その際 セキューラ ML は保湿の持続期間がセキューラ PO より短いため セキューラ ML を継続する場合には 連日の塗布が必要になると考える また 今回の看護研究の結果から 新たな課題も明らかとなってきた 本研究は秋から冬と比較的気温および湿度が低い時期に行ったため セキューラ PO の保湿効果の長さが長所として目立つ結果となったが 春から夏と気温と湿度が高い時期に行った場合には 異なる結果になることも予想される ワセリンを含有するセキューラ PO を全身に塗布した場合 夏の高温多湿の時期に使用した時には 患者の発汗による体温調節を妨げる可能性がある 2) またワセリンによるべたべたした感じが 患者に不快感を与える可能性もある 一方で セキューラ PO の長い保湿効果の結果から 連日の塗布が必要でない可能性もあり 保湿剤使用を 1 日おきや 2 日おきなど間隔を開ける選択肢も考えられる さらには 前述のように皮膚が脆弱な場合には 最初はセキューラ ML で保湿を行い 水分量が保てるようになってからセキューラ PO を使用するという選択肢も考えられる そのため 今後は異なる季節でより多くの患者での検証が必要である 高齢者のドライスキンは 直接的に生命や ADL に影響与えるものではないため ケアの優先度が低くなる傾向があるが その皮膚は菲薄化によって軽微な機械的刺激でも表皮剥離などの皮膚障害が起こりやすくなる 3,4) 高齢者の脆弱になった皮膚の皮膚水分量を保持し 皮膚の生理機能を正常に近づけ 維持することで皮膚トラブルの発生率を減少できる その為の予防的スキンケアは皮膚の生理機能の低下した高齢者において重要な看護業務であり 5,6) 長期的に継続することが大切である 保湿剤の特徴や効果を理解し また適した方法で使用し 必要なケアとして取り組むことでより効率よく効果が得られると考える 今後は 今回の看護研究結果を生かして より多くの患者への皮膚水分計による皮膚水分量の評価と 保湿剤の適切な使用を通して予防的スキンケアを実施していきたい Ⅵ. 結論 1. セキューラ PO は 保湿効果が 1 日継続することから保湿効果を期待する場合には有用である 一方セキューラ ML の保湿効果はややセキューラ PO に劣るが 使用感がよく皮膚になじみやすいため 皮膚が脆弱皮膚で摩擦を駆けにくい患者では 使用しやすい 2. 明確な指針作成には至らなかったが 今回得た保湿剤の有効性は明確であり 指針作成のための1つの要素となる Ⅶ. 引用 参考文献 1) 石川環 : スキンケア 褥瘡会誌 13 巻 2 号 p100~108 2011 2) 佐藤明代 : ケアにつなげる創傷ケア用品の上手な使い方,Nursing Today 2006-9,p38 3) 梶井文子 亀井智子 久代和加子 内田恵美子 田中純子 : 尿 便失禁のある要介護高齢者における皮膚保護洗浄剤を用いた予防的臀部スキンケアプロトコルの開発, 聖路加看護大学紀要 No.31 2005.3 4) 黒田豊子 : なぜ予防的スキンケアなのか ; 予防的スキンケアの重要性について, 臨床看護 Vol.39 No.6 2013.5,p806 5) 溝上祐子 : 最新のスキンケア 医学のあゆみ Vol.237 No1 p63~68 2011

6) 小林陽子 : 臨床に役立つ Q&A 2. 高齢者のスキンケア - 皮膚 排泄ケア認定看護師の視点から - Geiatric Medicine.Vol.50 No.7 p855-859 2012