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調査実施の背景 わが国では今 女性活躍を推進し 誰もが仕事に対する意欲と能力を高めつつワークライフバランスのとれた働き方を実現するため 長時間労働を是正し 労働時間の上限規制や年次有給休暇の取得促進策など労働時間制度の改革が行なわれています 年次有給休暇の取得率 ( 付与日数に占める取得日数の割合

調査の概要 少子高齢化が進む中 わが国経済の持続的発展のために今 国をあげて女性の活躍推進の取組が行なわれています このまま女性正社員の継続就業が進むと 今後 男性同様 女性も長年勤めた会社で定年を迎える人が増えることが見込まれます 現状では 60 代前半の離職者のうち 定年 を理由として離職する男

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調査の実施背景 介護保険制度が 2000 年に創設されてから 10 年余りが過ぎました 同制度は 家族介護をあてにせずに在宅介護ができる支援体制を整えることを目的として発足されたものですが 実際には 介護の担い手としての家族の負担 ( 経済的 身体的 精神的負担 ) は小さくありません 今後 ますま

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調査実施の背景 近年 ライフスタイルの多様化が著しく進んでいます 生涯未婚率が上昇し 単身世帯 一人親世帯も増加するなど 世帯構成が大きく変化しました また 25 歳から 39 歳の就業率が上昇し 共働き世帯も増加しました においては 管理職の積極的な登用が推進される一方で非正規社員の占める割合は高

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このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

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2. 調査結果 1. 回答者属性について ( 全体 )(n=690) (1) 回答者の性別 (n=690) 回答数 713 のうち 調査に協力すると回答した回答者数は 690 名 これを性別にみると となった 回答者の性別比率 (2) 回答者の年齢層 (n=6

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( ウ ) 年齢別 年齢が高くなるほど 十分に反映されている まあまあ反映されている の割合が高くなる傾向があり 2 0 歳代 では 十分に反映されている まあまあ反映されている の合計が17.3% ですが 70 歳以上 では40.6% となっています

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問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

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結婚しない理由は 結婚したいが相手がいない 経済的に十分な生活ができるか不安なため 未婚のに結婚しない理由について聞いたところ 結婚したいが相手がいない (39.7%) で最も高く 経済的に十分な生活ができるか不安なため (2.4%) 自分ひとりの時間が取れなくなるため (22.%) うまく付き合え

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質問 1 11 月 30 日は厚生労働省が制定した 年金の日 だとご存じですか? あなたは 毎年届く ねんきん定期便 を確認していますか? ( 回答者数 :10,442 名 ) 知っている と回答した方は 8.3% 約 9 割は 知らない と回答 毎年の ねんきん定期便 を確認している方は約 7 割

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目 次 Ⅰ 調査の概要 1 Ⅱ 調査対象者の属性 2 Ⅲ 調査結果 4 1 男女平等について 4 2 男女の役割意識について 7 3 男女の地域 社会参画について 8 4 DVやセクハラについて 10 5 ワークライフバランス ( 仕事と生活の調和 ) について 12 6 市が力を入れるべき取り組み

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2 継続雇用 の状況 (1) 定年制 の採用状況 定年制を採用している と回答している企業は 95.9% である 主要事業内容別では 飲食店 宿泊業 (75.8%) で 正社員数別では 29 人以下 (86.0%) 高年齢者比率別では 71% 以上 ( 85.6%) で定年制の採用率がやや低い また

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第 1 章調査の実施概要 1. 調査の目的 子ども 子育て支援事業計画策定に向けて 仕事と家庭の両立支援 に関し 民間事業者に対する意識啓発を含め 具体的施策の検討に資することを目的に 市内の事業所を対象とするアンケート調査を実施しました 2. 調査の方法 千歳商工会議所の協力を得て 4 月 21

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NOTES1 これからの家族介護を考える 働きながら介護を担う家族介護者に対する支援の必要性 研究開発室的場康子 - 要旨 - 1 当研究所が実施したアンケート調査によれば 自分が主な担い手として 自 分の親を介護している女性は43.5% であるが 男性は20.6% であった 2 実際には女性の方が自分が主な担い手である割合が高いが 男性でも自分の親の介護は自分の役割であると46.4% が認識している 他方 女性は家族で協力して担うべきと考えている人が半数以上である 3 今後 単身世帯の増加など家族形態の変化や女性の就業率の上昇により 女性のみに介護を頼ることには限界がある したがって 就労の有無にかかわらず家族が協力して介護を行うことが必要であり これを社会的に支援する仕組みづくりが急務である 1. はじめに (1) 問題意識高齢化の進展に伴い 要介護者が増えることが見込まれており 介護問題は多くの人が直面する可能性の高いものとなる 最近では 単身世帯の増加など家族形態の変化や女性の就業率の上昇により 介護のあり方も多様化の様相を示している これまで介護は女性の役割とされていたが 近年 男性も妻や親の介護を担うようになっている 例えば 夫婦とも雇用者世帯 ( 非農林業 ) が 2000 年の 942 万世帯 ( 総務省 平成 12 年 2 月労働力調査特別調査 ) から 2010 年には 1,012 万世帯 ( 総務省 労働力調査 2010 年 ) に増加している ( 図表省略 ) こうした雇用者の共働き世帯の増加は 女性のみに介護負担をかけることの限界を示している 実際 厚生労働省 国民生活基礎調査 により要介護者と同居している主な介護者の性別比率をみると 2001 年は女性 76.4% 男性 23.6% であったが 2010 年には女性 69.4% 男性 30.6% と 男性の占める割合が増加している ( 図表省略 ) また 要介護者からみた同居の主な介護者との続柄の構成割合をみると 主な介護者が男性では 子 の割合 ( 自分の親 を介護する人の割合) が増加傾向である ( 図 16

表 1) 女性の場合では 2001 年には 子の配偶者 の割合 ( 義理の親 を介護する人の割合 ) が最も高かったが 2010 年までにこの割合が減少し 代わりに 配偶者 や 子 の割合 ( 夫 や 自分の親 を介護する人の割合) が増えている これらの既存調査から これまでの家族介護は 嫁による介護 が主流であったが 夫婦間介護 や 実子による介護 の割合が増え また 働きながら介護をする人も多くなるという傾向がうかがえる 図表 1 要介護者からみた同居の主な介護者との続柄の構成割合の推移 ( 主な介護者の性別 ) 男性 女性 2001 年 49.0 45.3 3.0 2.7 2001 年 32.5 22.7 40.6 4.1 2004 年 49.6 46.0 2.1 2.3 2004 年 33.3 22.6 40.2 3.9 2007 年 47.3 47.3 1.6 3.8 2007 年 39.5 23.0 32.5 5.0 2010 年 45.2 50.8 2.9 1.1 2010 年 37.8 24.6 33.6 3.9 配偶者子子の配偶者その他の親族 配偶者子子の配偶者その他の親族 資料 : 厚生労働省 国民生活基礎調査 各年版 こうした背景から本稿では 正社員として働きながら介護をしている ( したことがある ) 人を対象としたアンケート調査結果をもとに 特に男性の 親の介護 に注目し 家族介護の課題を考える 具体的にはまず 介護の主な担い手 と 介護の仕方をめぐっての悩みなど から男性の介護へのかかわりの実態をみる 次に 介護の役割意識 や 望ましい介護のあり方 について 自分の親 と 配偶者の親 を介護する場合の意識をみる これらを通して いわゆる 実子による介護 の増加などによる男性介護者も想定した家族介護支援のあり方を考えたい (2) アンケート調査の概要 1) アンケート調査概要と分析対象者アンケート調査は株式会社クロス マーケティングに委託して インターネット調査により 2011 年 9~10 月に実施した 調査対象は 株式会社クロス マーケティングのモニターから 全国の 20 歳から 69 歳までの正社員として働いている人のうち 現在あるいは過去に 自分もしくは配偶者の親の介護をしている ( したことがある ) 人を抽出した 953 人である このうち本稿では 自分の親 と 配偶者の親 の介護に対する意識をみるため 配偶者がいる 601 人に絞って分析の対象とする 2) 分析対象者の属性 a) 年齢構成 17

分析対象者の年齢構成は 40 歳代と50 歳代が多く全体の7 割以上を占めている ( 図表 2) 平均年齢は全体で49.9 歳 ( 男性 50.7 歳 女性 48.0 歳 ) である 図表 2 分析対象者の年齢構成 ( 全体 性別 ) 全体 男性 女性 全体 20 歳代 30 歳代 40 歳代 50 歳代 60 歳以上 平均 ( 人 ) ( 人 ) ( 人 ) 601 425 176 12 4 8 58 37 21 181 121 60 279 206 73 71 57 14 (%) (%) (%) 100.0 100.0 100.0 2.0 0.9 4.5 9.7 8.7 11.9 30.1 28.5 34.1 46.4 48.5 41.5 11.8 13.4 8.0 49.9 歳 50.7 歳 48.0 歳 b) 本人及び配偶者の職業回答者本人について職業別にみると 全体では 会社勤務 が 77.7% 公務員 教職員 団体職員 が 15.5% 専門職 その他 が 6.8% となっている ( 図表省略 ) なお 本調査の対象は正社員のみであるので 回答者本人についてはパート アルバイトや専業主婦などの無職は存在しない 性別にみると 男女とも 会社勤務 が約 8 割を占めており 大差がない 一方 回答者本人の配偶者の職業については男女で大きく異なる 回答者が男性の場合 その配偶者は 無職 ( 専業主婦を含む ) が 42.6% パート アルバイト が 33.4% を占めている 回答者が女性の場合は その配偶者は 会社勤務 が 71.6% を占めている 本調査の対象は正社員のみであるが 男性回答者の場合 その配偶者は専業主婦や 働いていてもパートなどが多いのに対して 女性回答者の場合は夫婦とも会社勤務が多い 2. 男性の介護へのかかわりの実態 (1) 自分が主な担い手である割合本調査の対象はすべて介護経験者であるが 自分 が主な担い手である人とそうでない人では介護が生活に与える負荷の程度が異なると思われる そこで 介護の主な担い手をたずねたところ 自分 が主な担い手として介護にかかわった人の割合は全体の 24.5% であった ( 図表 3) ただし性別や介護の対象によって回答傾向が異なる 自分 が主な担い手である( あった ) 人の割合は 男性全体では 16.9% であるが 自分の親を介護している ( した ) 男性に限ると 20.6% である 他方 女性は自分の親を介護している人も 夫の親を介護している人も 自分 が主な担い手であるという回答割合が4 割以上であり 女性の方が男性よりも 自分 18

が主な担い手である割合が高い ただし サンプル数が少ないので参考として示すが 夫の親を介護している人の 17.6% は 配偶者 ( 夫 ) が主な担い手と回答している 女性の回答からも 自分の親を主な担い手となって介護している男性が一定程度いることが示されている 図表 3 親の介護の主な担い手 ( 全体 性別 介護の対象別 ) 24.5 27.1 27.1 10.5 10.8 男性 全体 (n=425) 16.9 35.6 25.4 12.2 9.9 自分の親 (n=345) 20.6 29.3 27.0 12.5 10.7 配偶者 ( 妻 ) の親 (n=80) 1.3 62.5 18.8 11.3 6.3 女性 全体 (n=176) 42.6 6.8 31.3 6.3 13.1 自分の親 (n=108) 43.5 0.0 34.3 7.4 14.8 配偶者 ( 夫 ) の親 (n=68) 41.2 17.6 26.5 4.4 10.3 自分配偶者要介護者の配偶者ホームヘルパーや介護職員その他 (2) 介護の仕方をめぐっての悩み次に 介護の仕方をめぐっての悩みの有無を男女別にみる 自分だけが介護を押し付けられていると思うことがある( あった ) にあてはまると回答した割合 ( あてはまる と どちらかといえばあてはまる の合計 以下同様 ) は男性 (33.6%) よりも女性 (46.0%) の方が高い ( 図表 4) 実際 自分 が介護の主な担い手である人は 押し付けられている にあてはまるとした割合が高い傾向がある ( 図表省略 ) 女性に 自分 が主な担い手である人が多いことから 押し付けられている と思っている人の割合も高いことがうかがえる 続いて介護の役割分担についてみると 家族または親族の中で誰が主に介護をするのか悩んでいる ( 悩んだ ) にあてはまる割合は男性 39.1% 女性 38.0% と男女同じ位である 実際には女性が主な担い手の割合が高いものの 男性の中でも誰が主な介護者であるべきか悩んでいる人が女性と同じくらいの割合でいるということだ どこで( 要介護者の家 介護者の家 親族の家 施設など ) 介護をするのか悩んでいる ( 悩んだ ) にあてはまる割合は男性 51.3% 女性 44.3% 家族または親族の中で介護費用を誰が負担するのか悩んでいる ( 悩んだ ) にあてはまる割合は男性 35.5% 女性 31.2% であり いずれも男性の方が高い 介護の場所や費用負担について 男性の方が 悩んでいる 割合が高い 19

以上 介護へのかかわりの実態や意識についてみてきたが 実際には女性の方が自分が主な担い手として介護を担っている割合が高い しかし どのように介護をするか を悩み 考えている人は男性も女性と同様におり 主な担い手 ではなくても 介護に全く関与していないということではないようだ 図表 4 介護の分担についての悩み ( 全体 性別 ) 自分だけが介護を押し付けられていると思うことがある ( あった ) 家族または親族の中で誰が主に介護をするのか悩んでいる ( 悩んだ ) 8.3 29.0 41.3 21.5 7.2 31.6 44.3 17.0 6.1 27.5 42.4 24.0 6.6 32.5 45.2 15.8 13.6 32.4 38.6 15.3 8.5 29.5 42.0 19.9 どこで介護をするのか悩んでいる ( 悩んだ ) 家族または親族の中で介護費用を誰が負担するのか悩んでいる ( 悩んだ ) 10.5 38.8 33.9 16.8 6.3 28.0 40.6 25.1 10.6 40.7 33.6 15.1 5.4 30.1 42.6 21.9 10.2 34.1 34.7 21.0 8.5 22.7 35.8 33.0 あてはまるどちらかといえばあてはまるどちらかといえばあてはまらないあてはまらない 3. 自分の親 と 配偶者の親 の介護に対する意識 (1) 親の介護は誰の役割か図表 1でみたように 主な介護者は男女ともに 子 である割合が増えている 自分の親 を介護する いわゆる 実子による介護 の増加である その背景には 単身者や共働き世帯の増加など家族形態の変化の他 既婚者でも 家 意識の変化により 女性たちが 嫁 という立場を脱却し 夫の親を介護するかどうか選択することができるようになってきた ( 春日 2010) ということもあげられる ここでは 介護の選択 の際に影響を及ぼすと思われる 介護の役割意識 について 自分の親 と 配偶者の親 の場合の違いをみる 全体では 自分の親の介護について 子である自分の役割である ( 以下 自分の 20

役割 ) と回答した割合が46.4% であり 家族や親族で協力して担うべきである ( 以下 家族で協力 ) とほぼ同率である ( 図表 5) 他方 配偶者の親の介護については 家族で協力 が59.1% を占め 自分の役割 は20.1% である ちなみに配偶者の親の介護に関しては 配偶者に任せる という項目も加えたが その割合は 10.6% と 自分の役割 よりも低い 性別にみると 男性は 自分の役割 と思っている割合が自分の親では48.9% であり約半数を占めているが 配偶者の親では21.4% である 女性は 自分の役割 と思っている割合は自分の親では40.3% 配偶者の親では17.0% である 男女ともに配偶者の親よりも自分の親の介護の方が 自分の役割 と回答している割合が高い 特に男性の方が 自分の親の介護は自分の役割と自覚している人が多いことがわかる 一方女性は 自分の親の介護を 家族で協力 して行うと答えた割合は約 5 割 配偶者 ( 夫 ) の親の介護の場合は 家族で協力 が6 割以上を占めている 本調査の対象が 働いている女性 ということもあるが 介護は 家族で協力 して行うものと 女性の多くが思っていることがわかる 次に 自分の親 と 配偶者の親 の場合における 介護の望ましいあり方 についての意識をみる 自分の親の場合 図表 5 自分の親及び配偶者の親の介護は誰の役割か ( 全体 性別 ) 46.4 46.3 7.3 子である自分の役割である 48.9 43.8 7.3 家族や親族で協力して担うべきである 40.3 52.3 7.4 家族や親族の中で時間のある人が主に担うべきである 配偶者の親の場合 自分の役割である 20.1 10.6 59.1 10.1 配偶者に任せる 21.4 12.2 56.2 10.1 家族や親族で協力して担うべきである 17.0 6.8 65.9 10.2 家族や親族の中で時間のある人が主に担うべきである (2) どのような介護が望ましいか 自分の親 と 配偶者の親 それぞれについて 現実の介護方法にかかわらず 意識として 介護の望ましいあり方 をたずねた結果が図表 6である 21

自分の親 の場合 全体では50.1% が 介護保険サービスを利用して在宅介護を行う ( 以下 在宅介護 ) と回答しており 介護が必要になったら介護保険施設に入所してもらう ( 以下 施設入所 ) や 介護が必要になる前に有料老人ホームや介護サービスつきの住宅などに住み替えてもらう を上回っている 一方 配偶者の親 の場合は 全体では 施設入所 が44.1% で 在宅介護 の 40.3% を上回っている 性別でみても同じような傾向であるが 配偶者の親 を介護する場合の女性の回答は 半数近くが 施設入所 を希望していることが特徴的である 自分の親は在宅介護 配偶者の親は施設入所を望む割合がそれぞれ高く 介護の対象によって望む介護のあり方が異なっている お互いの親の介護をどのように行うのか 夫婦間で十分に話し合うことの重要性がうかがえる 図表 6 自分の親及び配偶者の親の望ましい介護のあり方 ( 全体 性別 ) 自分の親の場合 50.1 36.6 11.1 2.2 51.3 35.3 11.8 1.6 47.2 39.8 9.7 3.4 配偶者の親の場合 40.3 44.1 13.0 2.7 42.1 42.4 14.1 1.4 35.8 48.3 10.2 5.7 介護保険サービスを利用して在宅介護を行う介護が必要になったら介護保険施設に入所してもらう介護が必要になる前に有料老人ホームや介護サービスつきの住宅などに住み替えてもらうその他 4. まとめ (1) 女性による介護から家族協力による介護へ以上のアンケート調査結果から 正社員として働いている 女性であっても 介護の主な担い手となっている割合は男性よりも高いが 男性も全く関与していないわけではないことが示された 意識面においては女性よりも男性の方が 自分の親のみならず配偶者の親の介護に対しても 自分の役割 と認識している割合が高く 家族への義務や責任として親の介護をとらえている人が多いようだ 22

他方 女性 特に本調査の対象が働いている女性ということもあるが 自分の親の介護でさえも家族で協力して介護を乗り切りたいと思っている人が過半数であった 共働き世帯が増えていることもあり これからの家族介護のあり方として 女性のみに介護を頼るのではなく 夫である男性を含め家族で協力して介護を担い これを社会的に支える仕組みが必要であることが本調査からも示された (2) 家族介護者に対する支援強化の必要性現行では 家族の介護負担を軽減し 介護の社会化 を実現するために 介護保険制度によって各種介護サービスが提供されている しかし実際には介護サービスを利用しながら家族が主な担い手として介護を行っている場合が多い 家族介護を前提として 介護の社会化 を進めるのであれば 要介護者への介護サービスの充実のみならず 家族介護者を支援するという視点も必要である 介護者が多様化し 生計中心者が多い男性も介護を担うことが余儀なくされる中で 介護者が就業している場合でも 介護者自身の生活の質を保障しながら 介護ができるような仕組みづくりが急務である そのためにはまず 働きながらでも在宅介護ができるよう 介護保険制度における在宅サービスの強化が望まれる 例えば 今年 4 月に創設された24 時間対応の定期巡回 随時対応サービスの普及である 在宅でも介護施設並みのサービスが受けられるため 家族の介護負担が軽減されるとして期待されている また 就業している介護者にとっては 職場における仕事と介護との両立支援の充実も重要である 介護休業制度などの両立支援制度の整備のみならず 制度を利用しやすいような職場環境づくりが求められる ( 的場 2012) 育児が夫婦の共同作業であれば 親の介護も同様である 上記のような社会的支援の充実とともに 個人レベルにおいて親の介護をどのように行うのか 家族で協力して介護を行うことができるよう十分に話し合い 介護に備えることも必要と思われる ( 研究開発室上席主任研究員 ) 参考文献 春日キスヨ,2010, 変わる家族と介護 講談社. 財団法人 21 世紀職業財団,2011, 介護を行う労働者の両立支援策に係る調査研究報告書. 津止正敏 斎藤真緒,2007, 男性介護者白書- 家族介護者支援への提言 かもがわ出版. 的場康子,2012, 介護と仕事との両立の条件 Life Design Report (Spring 2012.4):4-15. 23