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銀和株式会社在宅ケア事業

2 社会保障 2.1 社会保障 2.2 医療保険 2.3 年金保険 2.4 介護保険 2.5 労災保険 2.6 雇用保険 介護保険は社会保険を構成する 1 つです 介護保険制度の仕組みや給付について説明していきます 介護保険制度 介護保険制度は 高齢者の介護を社会全体で支えるための制度

介護休業制度の利用拡大に向けて

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三世代で暮らしている人の地域 親子関係 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部研究開発室的場康子 < 減り続ける > 戦後 高度経済成長を迎えた我が国においては 産業構造の変化により都市化 工業化が進む中で 多くの人が地方から都市に移動し核家族化が進んだ 低成長経済に移行した後

Microsoft PowerPoint - (参考資料1)介護保険サービスに関する消費税の取扱い等について

調査の概要 少子高齢化が進む中 わが国経済の持続的発展のために今 国をあげて女性の活躍推進の取組が行なわれています このまま女性正社員の継続就業が進むと 今後 男性同様 女性も長年勤めた会社で定年を迎える人が増えることが見込まれます 現状では 60 代前半の離職者のうち 定年 を理由として離職する男

「学び直し」のための教育訓練給付制度の活用状況|第一生命経済研究所|的場康子

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福祉用具貸与 介護予防福祉用具貸与 心身機能が低下した高齢者に 日常生活の自立を助ける用具をレンタルします 自 宅 に 住 ん で 自 宅 で 受 け る サ ー ビ ス ( 生活環境を整える ) 貸与品目 福祉用具購入費の支給 住宅改修費の支給 手すり スロープ 歩行器 歩行補助杖 車いす ( 付

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調査実施の背景 わが国では今 女性活躍を推進し 誰もが仕事に対する意欲と能力を高めつつワークライフバランスのとれた働き方を実現するため 長時間労働を是正し 労働時間の上限規制や年次有給休暇の取得促進策など労働時間制度の改革が行なわれています 年次有給休暇の取得率 ( 付与日数に占める取得日数の割合

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介護保険 住宅改修費の支給 住宅改修費の支給 とは 在宅の要介護 要支援者の方のお住まいに手すりを取り付けたり 床を滑りにくい材料に変更するといった小規模な改修をしたときに 改修費用の 9 割分 ~7 割分が支給される介護保険の制度です 支給方法 名古屋市では 住宅改修費の支給を以下の 2 つの方法

第1回「離婚したくなる亭主の仕事」調査

スライド 1

調査実施の背景 目的 超高齢社会である我が国では 65 歳以上の高齢者の総人口に占める割合は 24.1% 1 で 3,000 万人を超過 2 しました また 要介護 ' 要支援 ( 認定者数も増加し 直近の実績では 万人となっています 今後 益々介護を必要とされる方が増えることも予想され

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別紙2

01 公的年金の受給状況

Microsoft Word - リリース doc

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アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国に居住する 20 歳から 59 歳の会社員の男女 2. サンプル数 700 名 3. サンプル抽出方法第一生命経済研究所生活調査モニター 4. 調査方法質問紙郵送調査法 5. 実施時期 2007 年 2 月 6. 有効回収数 ( 率 ) 601 名

特別養護老人ホーム 優雅 社会福祉法人 桜寿会 ( 特別養護老人ホーム優雅 ) 福島県南会津郡南会津町田島字北下原 111 番 TEL: FAX: ( 郡山オフィス ) 福島県郡山市菜根一丁目 22 番 10 号 T

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高齢者の家庭における生活環境整備することを目的として住宅改修をした場合、助成金を受けることができます

介護老人保健施設シンフォニー稲佐の森 Ⅱ < 介護予防短期入所療養介護利用料金一覧表 > 介護予防短期入所療養介護 ( 日額 ) 要介護度要支援 1 要支援 2 サービスに係る負担金 円 776 円 介護職員処遇改善加算 2 26 円 32 円 サーヒ ス提供体制強化加算 (Ⅰ) 3 1

2. 調査結果 1. 回答者属性について ( 全体 )(n=690) (1) 回答者の性別 (n=690) 回答数 713 のうち 調査に協力すると回答した回答者数は 690 名 これを性別にみると となった 回答者の性別比率 (2) 回答者の年齢層 (n=6

第2章 調査結果の概要 3 食生活

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介護保険の住宅改修とは 介護を必要とする方が 住み慣れた自宅で持てる能力に応じ自立した生活ができるようにする ために 介護保険のサービスとして住宅の小規模改修を支援するものです 住宅改修の要件 対象者 介護保険の要介護認定で 要支援 1 2 要介護 1~5と認定された人です 認定結果待ちの間に改修を

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事前申請から支給決定までの流れ ケアマネージャーに相談 2 ケアマネージャー ( 要支援の方は地域包括支援センター ) に相談をして改修内容を決めます 住宅改修が必要な理由書 を書いてもらいます 住宅の所有者が本人でない場合は 所有者の承諾が必要です ( 所有者が家族の場合は不要 ) 3 工事見積依

問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

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老高発 0713 第 1 号 平成 30 年 7 月 13 日 各都道府県介護保険主管部 ( 局 ) 長殿 厚生労働省老健局高齢者支援課長 ( 公印省略 ) 居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について の一部改正について 今般 居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について (

 

平成13年4月20日

サービスガイド(カラー表紙,目次)2018.8月

ニッセイインターネットアンケート ~ 夏のボーナス について ~ 2019 年 6 月 2 8 日日本生命保険相互会社 日本生命保険相互会社 ( 社長 : 清水博 ) は ずっともっとサービス のサンクスマイルメニューのひとつ として ホームページ (

長期失業者の求職活動と就業意識

PDF化【公表】290606報告書(横計入)

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ポイント

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調査実施の背景 2015 年 4 月から子ども 子育て支援新制度 以下 新制度 が施行され 保育事業の拡大が図られます そのため保育人材の確保が重要な課題となっており 保育士確保のための取組が強化されています しかし保育士のみでは必要量を満たせないことから 子育て分野で働くことに関心のある地域住民に

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高齢者サービスのしおり

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Microsoft Word - 調査結果

Microsoft PowerPoint - 05短時間の身体介護 調査結果概要((5)短時間の身体介護)0320

調査概要 調査対象 : 東京都 愛知県 大阪府 福岡県の GF シニアデータベース 有効回答件数 :992 件 標本抽出法 :GF RTD( ランダム テレフォンナンバー ダイアリング ) 方式 調査方法 : アウトバウンド IVR による電話調査 調査時期 : 平成 23 年 8 月 4 日 (

平成 21 年 11 月 26 日 照会先 社会 援護局障害保健福祉部障害福祉課企画法令係 ( 担当 内線 ) 課長補佐伊藤経人 (3090) 企画法令係吉井彰規 (3148) ( 代表電話 ) 03(5253)1111 ( 直通電話 ) 03(3595)2528 障害者自立支援法の施行前後における

第 2 章高齢者を取り巻く現状 1 人口の推移 ( 文章は更新予定 ) 本市の総人口は 今後 ほぼ横ばいで推移する見込みです 高齢者数は 増加基調で推移し 2025 年には 41,621 人 高齢化率は 22.0% となる見込みです 特に 平成 27 年以降は 後期高齢者数が大幅に増加する見通しです

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満足度調査 単純集計結果

調査実施の背景 近年 ライフスタイルの多様化が著しく進んでいます 生涯未婚率が上昇し 単身世帯 一人親世帯も増加するなど 世帯構成が大きく変化しました また 25 歳から 39 歳の就業率が上昇し 共働き世帯も増加しました においては 管理職の積極的な登用が推進される一方で非正規社員の占める割合は高

目次 1. 介護保険制度における住宅改修費支給制度について 2 2. 手続きの流れ 3 3. 支給対象要件 5 4. 支給限度基準額 6 5. 支払方法 7 6. 住宅改修費支給制度の対象となる改修の内容 8 7. 現地確認について 12 1

14 日本 ( 社人研推計 ) 日本 ( 国連推計 ) 韓国中国イタリアドイツ英国フランススウェーデン 米国 図 1. 1 主要国の高齢化率の推移と将来推計 ( 国立社会保障 人口問題研究所 資料による ) 高齢者を支える

質問 1 11 月 30 日は厚生労働省が制定した 年金の日 だとご存じですか? あなたは 毎年届く ねんきん定期便 を確認していますか? ( 回答者数 :10,442 名 ) 知っている と回答した方は 8.3% 約 9 割は 知らない と回答 毎年の ねんきん定期便 を確認している方は約 7 割

20 金融資産目標残高 今後の金融商品の保有希望 元本割れを起こす可能性があるが 収益性の高いと見込まれる金融商品の保有 日常的な支払い ( 買い物代金等 ) の主な資金決済手段 日常的な支払い ( 買い物代金等 ) の主な資金決済手段 ( 続き )

調査の実施背景 戦後 日本の平均寿命は飛躍的に延び 平成 年 7 月に厚生労働省が発表した 平成 年簡易生命表 によると 65 歳の平均余命は 男性は 8.86 歳 女性は.89 歳となっています 約 0 年あるセカンドライフをより有意義に 楽しく暮らすためには人生設計や事前の準備が必要なのではない

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栃木県高齢者居住安定確保計画 ( 二期計画 ) 概要版 1 計画の目的と背景 高齢化が急速に進行する中 平成 24 年 3 月に県土整備部と保健福祉部が連携のもと高齢者の居住の安定確保に関する法律に基づく 栃木県高齢者居住安定確保計画 ( 以下 現計画 という ) を策定し 高齢者が安心して快適に暮

税・社会保障等を通じた受益と負担について

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まちの新しい介護保険について 1. 制度のしくみについて 東温市 ( 保険者 ) 制度を運営し 介護サービスを整備します 要介護認定を行います 保険料を徴収し 保険証を交付します 東温市地域包括支援センター ( 東温市社会福祉協議会内 ) ~ 高齢者への総合的な支援 ( 包括的支援事業 )~ 介護予

○○○の課題と検討

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   田辺市老人福祉法第28条の規定に基づく負担金徴収規則

介護保険制度改正の全体図 2 総合事業のあり方の検討における基本的な考え方本市における総合事業のあり方を検討するに当たりましては 現在 予防給付として介護保険サービスを受けている対象者の状況や 本市におけるボランティア NPO 等の社会資源の状況などを踏まえるとともに 以下の事項に留意しながら検討を

王子高齢者あんしんセンター ( 高齢福祉課高齢相談係 ) 名称住所電話番号 王子本町 区役所第一庁舎 1 階 十条台高齢者あんしんセンター中十条 障害者福祉センター 3 階 王子光照苑高齢者あんしんセンター王子

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表 6.1 横浜市民の横浜ベイスターズに対する関心 (2011 年 ) % 特に何もしていない スポーツニュースで見る テレビで観戦する 新聞で結果を確認する 野球場に観戦に行く インターネットで結果を確認する 4.

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参考 男女の能力発揮とライフプランに対する意識に関する調査 について 1. 調査の目的これから結婚 子育てといったライフ イベントを経験する層及び現在経験している層として 若年 ~ 中年層を対象に それまでの就業状況や就業経験などが能力発揮やライフプランに関する意識に与える影響を把握するとともに 家

くらしのおてつだいH30 本文.indd

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先方へ最終稿提出0428.indd

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調査実施の背景 2015 年 1 月からの相続税における基礎控除の引き下げを前に 孫等への教育資金一括贈与の非課税制度に対する社会的反響が続いています 一般社団法人信託協会のとりまとめによれば この制度に基づく教育資金贈与信託の受託契約件数は取り扱い開始以降増加を続け 2014 年 9 月現在で 8

居宅介護支援事業者向け説明会

1. 職場愛着度 現在働いている勤務先にどの程度愛着を感じているかについて とても愛着がある を 10 点 どちらでもない を 5 点 まったく愛着がない を 0 点とすると 何点くらいになるか尋ねた 回答の分布は 5 点 ( どちらでもない ) と回答した人が 26.9% で最も多かった 次いで

- 調査結果の概要 - 1. 改正高年齢者雇用安定法への対応について a. 定年を迎えた人材の雇用確保措置として 再雇用制度 導入企業は9 割超 定年を迎えた人材の雇用確保措置としては 再雇用制度 と回答した企業が90.3% となっています それに対し 勤務延長制度 と回答した企業は2.0% となっ

緊急に措置すべき事項

男女共同参画に関する意識調査

平成 28 年 2 月以降に認定更新等により要支援認定を受けた方が介護予防訪問介護 介護予防通所介護を利用される場合 これまでの予防給付サービスから総合事業のサービスに変わります 要支援者の認定有効期間は現在最長 12か月ですので 大川市は平成 28 年 2 月から1 年かけて移行します 更新の場合

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アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国の中学 3 年生までの子どもをもつ父親 母親およびその子どものうち小学 4 年生 ~ 中学 3 年生までの子 該当子が複数いる場合は最年長子のみ 2. サンプル数父親 母親 1,078 組子ども 567 名 3. 有効回収数 ( 率 ) 父親 927

地域における終末期ケアの意向と実態に関する調査研究(Ⅱ)報告書

質問 1 敬老の日 のプレゼントについて (1) 贈る側への質問 敬老の日 にプレゼントを贈りますか? ( 回答数 :11,202 名 ) 敬老の日にプレゼント贈る予定の方は 83.7% となり 今年度実施した父の日に関するアンケート結果を約 25% 上回る結果となった 敬老の日 父の日 贈らない

Transcription:

2011.12.14 働きながら親の介護をしている人の負担感 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部研究開発室的場康子 介護保険制度は 高齢者の介護を家族のみが負担するのではなく 社会全体で支えるために2000 年に創設された その後 10 年余りが過ぎたが 介護の担い手としての家族の負担はあまり軽減されていないようである さらに 今後ますます要介護者が増えることが見込まれており 介護問題は多くの人が直面する可能性の高いものとなる 本稿では 正社員として働きながら 親の介護経験がある人を対象に2011 年 9 月 ~ 10 月に実施したアンケート調査結果から その経済的 身体的 精神的な負担についての実態を紹介し 今後 誰もが直面する可能性の高い介護問題を乗り切るための課題について考える < 介護経験後の意識の変化 > 親の介護をする前と比べて 介護経験後は 日常の生活や意識面においてどのような変化があったのだろうか これについてたずねた結果をみると 全体では 地域の介護サービスのことを知るようになった (86.2%) 自分の自由な時間が減った (82.1%) 自分が介護が必要になったときのことも考えるようになった (81.9%) が上位 3 位であり 8 割以上の回答割合となっている ( 図表 1) 親の介護に直面した人の多くは 地域に目を向けるようになり また自分自身の介護のことにも思いをめぐらせるようになったということだ また 第 4 位は 精神的に疲れるようになった (79.4%) 第 5 位は 身体的に疲れるようになった (71.2%) である 身体的疲れ よりも 精神的疲れ を訴える人の方が多いという回答結果は 介護の精神面での負担の大きさを表しており その軽減のための支援の必要性を示していると思われる ところで 一口に介護経験者といっても 自分が主な担い手である人もいれば 自分以外の誰か 例えば 配偶者や自分の親 ( 要介護者からみて配偶者 ) が主な介護の担い手である人もいる 介護に対する意識や負担感はそのかかわりの程度によって異なると思われる そこで 介護の担い手別に回答割合をみると 自分が主な介護の担い手である人は そうでない人よりも 睡眠時間が減った 身体的に疲れるようになった 仕事の時間が減った 自分の自由な時間が減った などの項目の割合が高い 1

働きながら介護をしている人は 自分の自由時間や睡眠時間 さらに仕事の時間を割いて介護に当たっており 身体的な疲労を強く意識していることがわかる 図表 1 介護の前後における意識の変化 ( 全体 介護の担い手別 ) 地仕近事所のづ時き間あがいた減がった(%) 100 90.0 92.4 86.2 83.5 自分が主な担い手 (n=170) 84.7 88.3 82.1 81.9 81.3 84.7 自分以外が主な担い手 (n=417) 77.9 79.4 80 75.8 71.2 65.7 62.9 67.0 62.2 60.6 61.2 60 55.6 53.2 51.3 44.9 49.4 51.2 40 39.5 38.7 35.5 33.6 27.6 26.5 26.1 20 0 きのことも考えるようになっ職場の同僚等とのコミュニ家族や親族の絆が強くなった家計が厳しくなった精神的に疲れるようになった自分が介護が必要になったと自分の自由な時間が減った身体的に疲れるようになった睡眠時間が減った域の介護サービスのことをケーションが減った知るようになった(n=587) 増えた全体 注 : 調査は 全国の 20~69 歳までの正社員として働いている人で 現在あるいは過去に 自分もしくは配偶者の親の介護をしている ( したことがある )953 人を対象に 2011 年 9 月 ~10 月にかけて インターネット調査により実施した 本図表 ( 以下同様 ) では 調査対象のうち 介護保険制度の利用者 587 人を対象に分析をした結果の数値を使用している 注 : 本図表の数値は そう思う と どちらかといえばそう思う の合計値である 資料 : 第一生命経済研究所 親の介護に関するアンケート調査 2011 年 9~10 月実施 以下同様 < 介護のためのリフォーム> 以上のような介護の身体的 精神的の負担感の他に 経済的な負担も大きい 次に 介護の経済的負担についてみてみよう まず 介護のためのリフォームがある 介護保険制度利用者で 施設入所以外の在宅介護をしている人 (501 人 ) について 介護のためのリフォームの実施状況をみると リフォームを実施したという人は 70.7% 実施していないという人は29.3% であった ( 図表省略 ) 多くの人が介護のためのリフォームを実施しているようである リフォームを実施した人 (354 人 ) を対象に 介護保険による給付を含め 介護のためのリフォームに要した費用をたずねたところ 平均金額は約 97 万円であった ( 図表省略 ) ただし 費用の分布をみると 20 万円まで が56.5% で半数以上を占めており 20 万円を超える額から50 万円まで が18.1% 50 万円を超える額 が25.4% と 2

3 なっている 半数以上の人は 20 万までであるが 約 4 人に 1 人である 50 万円を超える額 と回答した人が平均金額を引上げているとみられる 介護のためのリフォームを実施したという人に その内容をたずねた結果が図表 2 である 第 1 位は 1 廊下やトイレなどに手すりを設置した (79.7%) 第 2 位は 2 住宅内の床の段差をなくすためにスロープを設置した (28.2%) という結果である これらを含め 1 から 5 までは介護保険が適用される 図表 2 介護のためのリフォームの内容 < 複数回答 > 79.7 28.2 21.8 18.9 12.4 23.7 20.1 13.0 11.0 6.8 7.3 0 10 20 30 40 50 60 70 80 1廊下やトイレなどに手すりを設置した2住宅内の床の段差をなくすためにスロープを設置した3畳からフローリング等への変更 階段や通路の滑り止め等 床や通路の材質を変更した4和式便器を洋式便器に取り替えた5扉を引き戸などに取り替えた6浴槽を入りやすいものに取り替えた7火災 ガス漏れ 漏電などの自動警報 通報装置を取り付けた8台所のコンロを安全で使いやすいものにした9緊急通報装置を取り付けた10廊下などの幅を車椅子でも通れるように広くした11その他(%) (n=354) 注 : 要介護者が施設入所をしている人以外で 介護のためのリフォームを実施した人が対象 リフォームの工事内容が一定の条件を満たしていれば 1 つの家屋につき支給限度基準額の 20 万円までは費用の 1 割負担 ( 自己負担額 2 万円 ) でリフォームを行うことができる さらに 要介護度が 3 段階以上重くなったとき または転居した場合は再度 この制度を利用することができる 支給方法は原則 償還払い であり 利用者がいったん費用の全額を支払い あとから申請すると 9 割分が利用者に給付される 前述のリフォーム費用の平均金額は 介護保険からの支給を受ける前の金額であり 利用者が一旦償還払いで支払った全額である

< 要介護度別にみた介護にかかる1か月の費用 > 次は 介護にかかる1か月の費用についてである 介護保険制度利用者の介護保険サービスにかかる1か月の費用 ( 以下 介護保険サービス費用 ) の平均金額は4 万 2,854 円であった ( 図表省略 ) この金額は 介護保険制度における居宅介護サービスや施設介護サービスの利用料の他 利用する時間帯や地域性 緊急性などによる加算 支給限度額を超えた場合の自己負担などを含むものである これを要介護度別にみたものが図表 3である 図表 3 介護にかかる 1 か月の費用 ( 要介護度別 ) 合計 ( 円 ) 要支援 1 (n=34) 要支援 2 (n=54) 要介護 1 (n=82) 要介護 2 (n=100) 要介護 3 (n=90) 要介護 4 (n=120) 要介護 5 (n=89) 56,643 63,633 43,727 68,374 69,349 73,416 103,113 介護保険サービス費用 ( 円 ) 23,005 35,583 27,516 43,564 47,754 44,450 65,045 それ以外の費用 ( 円 ) 移動のための交通費 8,626 4,911 2,380 3,026 2,439 4,463 3,478 配食サービス費用 7,669 3,222 2,088 4,865 1,963 2,775 3,615 おむつ代 3,386 2,744 1,913 3,092 3,589 4,732 6,521 医療費 7,929 8,187 6,239 7,861 9,570 11,071 17,416 家事代行など介護保険に含まれないサービス利用料 6,029 8,986 3,592 5,965 4,033 5,925 7,039 介護保険サービス費用をみると 要介護度が高いほど金額も高い傾向がある 介護にかかる1か月の費用には 介護保険サービス費用の他に それ以外の費用もある 実質的に 多くの人は介護にかかる費用として これらを合算した費用を負担している 本調査では 介護保険サービス費用以外の費用のうち 移動のための交通費 配食サービス費用 おむつ代 医療費 家事代行など介護保険に含まれないサービス利用料 について1か月にかかるおよその金額を回答してもらった その結果も図表 3に示している 移動のための交通費 や 配食サービス費用 家事代行など介護保険に含まれないサービス利用料 は要介護度との関連性は低いようであるが おむつ代 や 医療費 は要介護度が高くなるにつれて費用が高くなる傾向がある 介護保険サービス費用も要介護度が高いほど費用も高くなることから これらを合わせた金額でみても 要介護度が高いほど費用が高いということが実態のようである < 要介護者の居住形態別にみた介護にかかる1か月の費用 > 他方 介護にかかる費用を要介護者の居住形態別にみたものが図表 4である 要介護者が在宅の場合よりも 施設に入所している場合の方が費用が高い 4

施設入所者の方が費用が高いのは 図表 4に示したように介護保険サービス費用が高いためであるが そのことは 施設入所者の方が要介護度が高いという実態とも関係している 図表 5をみると 在宅の人は どの要介護度の人もほぼ15% 前後に分布しているが ( 要支援は1と2の合計 ) 施設入所者は 要介護 4 以上の人が約 6 割を占めている このように本調査結果からも 要介護度の程度が 費用負担の重さと密接に関わっていることが確認できる 図表 4 介護にかかる 1 か月の費用 ( 要介護者の居住形態別 ) 在宅 (n=501) 施設入所 (n=86) 合計 ( 円 ) 介護保険サービス費用 ( 円 ) それ以外の費用 ( 円 ) 67,290 105,120 38,178 70,096 移動のための交通費 3,899 2,751 配食サービス費用 2,698 7,241 おむつ代 3,631 5,094 医療費 13,394 13,013 家事代行など介護保険に含まれないサービス利用料 5,490 6,925 図表 5 要介護度の分布 ( 要介護者の居住形態別 ) 0% 20% 40% 60% 80% 100% 全体 (n=569) 6.0 9.5 14.4 17.6 15.8 21.1 15.6 在宅 (n=486) 6.8 10.5 16.0 18.3 15.6 20.0 12.8 1.2 施設入所 (n=83) 3.6 4.8 13.3 16.9 27.7 32.5 要支援 1 要支援 2 要介護 1 要介護 2 要介護 3 要介護 4 要介護 5 注 : 数値は 要介護度について わからない の回答を除いた数値である < 介護にかかる費用をまかなっている資金 > これまで介護にかかる費用をみてきたが こうした費用を介護保険制度利用者はどのような資金でまかなっているのであろうか この点をたずねた結果 要介護者 ( もしくはその配偶者 ) の公的年金 が83.5% で第 1 位 次いで 回答者自身 ( もしくはその配偶者 ) の就労による収入 が36.3% となっている ( 図表 6) 5

図表 6 介護費用をまかなっている資金 < 複数回答 > (%) 0 20 40 60 80 100 要介護者 ( もしくはその配偶者 ) の公的年金 83.5 あなた ( もしくはその配偶者 ) の就労による収入 36.3 要介護者 ( もしくはその配偶者 ) の預貯金 有価証券など 25.4 親族の資金 10.9 あなた ( もしくはその配偶者 ) の預貯金 有価証券など 9.0 要介護者 ( もしくはその配偶者 ) の就労による収入 7.8 要介護者が加入している民間の介護保険 7.8 あなた ( もしくはその配偶者 ) の公的年金 要介護者 ( もしくはその配偶者 ) の不動産などの売却資金 その他 3.4 1.7 1.0 (n=587) 介護にかかる費用は要介護者自身の公的年金でまかなっているという人が多いものの 回答者自身の就労による収入でまかなっているという人も約 4 割である 就労し続けることで 親の介護費用を捻出する必要があるという人も少なくないことがわかる < 仕事と介護との両立支援の拡充が課題 > 以上 正社員として働きながら 親の介護経験がある人を対象に実施したアンケート調査から 介護の精神的 身体的 経済的負担をたずねた結果をみてきた 自分が主な介護の担い手である人は 自分以外が主な介護の担い手である人よりも 自分の自由時間や睡眠時間 仕事の時間が減ったことや 身体的 精神的負担を訴えている人が多く 働きながら主な担い手となって介護をすることの大変さが浮き彫りになった また 介護の経済的負担も大きく その費用を要介護者の公的年金でまかなっている人が8 割以上を占めているものの 自分の就労による収入でまかなっているという人も少なくない 介護の経済的負担を考えると 働いていることが必要であろうが 働きながらの介護は精神的 身体的に大きな負担であるという人が多いことが示された 6

今後 高齢化の進展とともに要介護者がますます増え 就労の有無 性別を問わず多くの人が介護に直面する可能性が高いことが見込まれる このような中 働きながら介護をする人の負担の軽減を図り 介護と仕事との両立のための支援策を社会全体で考えることが必要と思われる ( まとばやすこ主任研究員 ) 7