次世代シークエンサーを用いたコンパニオン診断システムの開発における課題と今後の方向性について 独立行政法人医薬品医療機器総合機構体外診断薬審査室柳原玲子
本日の内容 1. 本邦におけるコンパニオン診断システムの規制 2. NGSを用いたコンパニオン診断システム 1 規制上の取扱い 2 評価の考え方と検討課題 3. NGSを用いた遺伝子検査システムに関連した課題 2
PMDA 横断的基準作成等プロジェクトチーム PMDA 内の複数の部署で対応すべき課題について検討し 審査基準等の作成を目指す 審査の考え方の明確化 国際連携の効率化 革新的医薬品 医療機器等の開発促進 横断的基準作成 PT 医薬品審査関連部 安全対策関連部 医療機器審査関連部 R S 推進関連部 etc コンパニン診断薬 WG ICH Q12 対応 WG 小児 WG オーファン医薬品 WG CIN 対応 WG ナノ医薬品 WG 他 3
PMDA 横断的基準作成等プロジェクトチーム PMDA 内の複数の部署で対応すべき課題について検討し 審査基準等の作成を目指す コンパニオン診断薬 WG 審査の考え方の明確化革新的医薬品 医療機器等の 国際連携の効率化開発促進 <メンバー > < 活動目的 > 体外診断薬審査室医薬品の安全性 有効性確保に必要な 医療機器審査部医コンパニオン診断薬又はコンパニオン医安 新医薬品審査部薬療診断システムの開発推進の方策を検討 R 全 安全第二部品機 S コンパニン診断薬 WG 横断的基準作成 PT 対審器推 薬事戦略相談室 < 活動実績 > ICH Q12 対応 WG 査策審進 小児 WG 関関 関連通知発出への協力査関 <オブザーバー >連連 技術的ガイダンス作成部関連 オーファン医薬品 WG 厚生労働省部 産官学ワークショップの開催連部 CIN 対応 WG 医療機器審査管理課 ステークホルダーとの意見交換 etc 部 ナノ医薬品 WG 他など 4
コンパニオン診断薬等 関連通知 時期 H25.7.1 H25.12.26 H26.2.29 H26.3.28 活動状況 コンパニオン診断薬等及び関連する医薬品の承認申請に係る留意事項について ( 薬食審査発 0701 第 10 号 ) コンパニオン診断薬等及び関連する医薬品に関する質疑応答集 (Q&A) について ( 事務連絡 ) コンパニオン診断薬等及び関連する医薬品に関する技術的ガイダンス等について ( 事務連絡 ) コンパニオン診断薬等に該当する体外診断用医薬品の製造販売承認申請に際し留意すべき事項について ( 薬食機発 0219 第 4 号 ) コンパニオン診断薬等に該当する体外診断用医薬品の製造販売承認申請に際し留意すべき事項についての質疑応答集 ( 平成 26 年 3 月 28 日付薬食機発 0328 第 7 号 ) 5
本邦で承認されたコンパニオン診断薬 コンパニオン診断薬医薬品の一般的名称使用目的 BRAF V600 キット ヒストファイン iaepキット 変異検出 ALK ベムラフェニブ アレクチニブ塩酸塩 Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA) 平成 25 年 7 月 1 日薬食審査発 0701 第 10 号通知発出後に申請され 承認された品目 癌組織から抽出したゲノム DNA 中の BRAF 遺伝子変異 (V600E) の検出 ( ベムラフェニブの悪性黒色腫患者への適応を判定するための補助に用いる ) がん組織 細胞中に発現する ALK 融合タンパクの検出 ( アレクチニブ塩酸塩の非小細胞肺癌患者への適応を判定するための補助に用いる ) Vysis ALK Break Apart FISH プローブキット アレクチニブ塩酸塩 がん組織 細胞中の ALK 融合遺伝子の検出 ( アレクチニブ塩酸塩の非小細胞肺癌患者への適応を判定するための補助に用いる ) THxID BRAF キットダブラフェニブメシル酸塩 コバス EGFR 変異検出キット v2.0 トラメチニブジメチルスルホキシド付加物 オシメルチニブメシル酸塩 癌組織から抽出した DNA 中の BRAF 遺伝子変異 (V600E 又は V600K) の検出 ( ダブラフェニブメシル酸塩及びトラメチニブジメチルスルホキシド付加物の悪性黒色腫患者への適応を判定するための補助に用いる 癌組織から抽出したゲノムDNA 中のEGFR 遺伝子変異 (T790M) の検出 ( オシメルチニブメシル酸塩の非小細胞肺癌患者への適応を判定するた6 めの補助に用いる ) ( 平成 28 年 11 月 15 日時点 ) 6
コンパニオン診断薬等の範囲 コンパニオン診断薬等及び関連する医薬品の承認申請に係る留意事項について ( 平成 25 年 7 月 1 日薬食審査発 0701 第 10 号 ) 特定の医薬品の有効性又は安全性の向上等の目的で使用 医薬品の使用に不可欠な体外診断用医薬品又は医療機器 単に疾病の診断等を目的とするものを除く 具体的には 以下の目的で使用されるもの (1) 効果がより期待される患者を特定するため (2) 特定の副作用が発現するおそれの高い患者を特定するため (3) 用法 用量の最適化又は投与中止の判断を適切に実施するため 7
コンパニオン診断システムの評価 < コンパニオン診断システムを使用する目的 > 医薬品を投与した場合に 意図した有効性及び安全性が期待される患者を特定すること したがって コンパニオン診断システムは 正確で信頼性のある結果を与えるものでなくてはならない 分析性能の評価 医薬品の投与対象となる患者を適切に特定するものでなくてはならない 臨床性能の評価 8
コンパニオン診断薬の評価 分析性能の評価 真度 精度 反応特異性 定量範囲又は検出限界等の測定範囲及び直線性 分析的カットオフ値等 臨床性能の評価 原則 コンパニオン診断薬の臨床的意義は医薬品の臨床試験成績に基づき説明すること 後述 9
コンパニオン診断システムの評価 コンパニオン診断システムの臨床的意義 医薬品の投与対象となる患者を適切に特定できるか? コンパニオン診断システムの結果に基づき被験者を組み入れ 実施した医薬品の臨床試験の結果 CDx による結果 + + + + + + + ーーー 医薬品の有効性及び安全性が評価された被験者集団 10
次世代シークエンサー (NGS) を用いたコンパニオン診断システム 11
NGS コンパニオン診断システム 1 DNA シークエンサーを用いた遺伝子検査システムとしての規制上の取扱い 2 コンパニオン診断システムとしての評価 分析性能 臨床性能 既承認 CDx との同等性評価 12
NGS を用いたコンパニオン診断システム : 1 規制上の取扱い 遺伝子検査システムに用いる DNA シークエンサー等を製造販売する際の取扱いについて ( 平成 28 年 4 月 28 日付け薬生機発 0428 第 1 号 薬生監麻発 0428 第 1 号 ) < 本通知の目的 > 疾病の診断 治療又は予防に用いることを目的として製造販売される DNA シークエンサー等の取扱いを示すこと 13
DNA シークエンサー クラス II 以上の医療機器 核酸抽出 テンプレート DNA 調製試薬 解析プログラム クラス III 体外診断用医薬品 前提 特定のシークエンサー及び解析プログラムとの紐付け 疾病の診断等に用いられること + 一次配列解析のためのプログラム ( 塩基配列のアラインメント等 ) シークエンシングサンプル調製用試薬 クラス II 以上の医療機器 参照 判定 データベース DNA シークエンサー診断システム コンビネーション医療機器として承認申請してもよい 14
遺伝子検査システムに用いる DNA シークエンサー等を製造販売する際の取扱いについて ( 平成 28 年 4 月 28 日付け薬生機発 0428 第 1 号 薬生監麻発 0428 第 1 号 ) 研究用シークエンサーの取扱い 疾病の診断等を目的として DNA シークエンサー診断システムを利用する場合 承認された DNA シークエンサーを用いることが望ましい 研究用として販売された DNA シークエンサーを利用して DNA シークエンサー診断システムを構築する場合医療機関等の責任において 当該 DNA シークエンサーを用いた場合の診断システムの性能を確認すること 15
遺伝子検査システムに用いる DNA シークエンサー等を製造販売する際の取扱いについて ( 平成 28 年 4 月 28 日付け薬生機発 0428 第 1 号 薬生監麻発 0428 第 1 号 ) 臨床的意義が未知な検査項目の取扱い 承認の対象とはならない 医師が必要と判断した場合に限り 検査結果を出力することは可臨床的意義及び分析的妥当性は未知である旨 医師に伝わるよう十分配慮が必要 当該検査項目の臨床的意義等に関する表示 添付文書への記載 広告を行うことはできない 16
NGS を用いたコンパニオン診断システム : 2 評価の考え方と検討課題 17
NGS を用いたコンパニオン診断システムの利用が想定されるケース ( 例 ) ケース 1 BRCA1/2 遺伝子変異のように 疾患と関連の疑われる変異部位が複数ある場合 医薬品の投与対象となる変異 ケース 2 肺がんのように 投与する医薬品の決定に際して 複数のバイオマーカーの検査が必要な場合 遺伝子変異 A 遺伝子変異 B 遺伝子変異 C 遺伝子変異 D 医薬品 A 医薬品 B 医薬品 C 医薬品 D 18
NGS を用いたコンパニオン診断システム : 評価の基本的な考え方 医薬品の投与可否を判断するために使用されるという使用目的を踏まえると 従来のコンパニオン診断薬と同様 正確で信頼性のある結果を与えるものでなくてはならない分析性能 医薬品の投与対象となる患者を適切に特定するものでなくてはならない臨床性能 基本的な考え方は従来のコンパニオン診断薬等と同様 ただし 従来のコンパニオン診断薬等と異なる解析法の特性を考慮 19
NGS を用いたコンパニオン診断システム 分析性能の評価 < 基本的な考え方 > 解析システム全体での分析性能を担保する必要がある 基本的に臨床検体を用いた評価が求められる ただし 全ての遺伝子変異等について臨床検体での評価が 困難な場合 具体的評価内容は個別判断 科学的な妥当性が示される場合には 個別事例において以下の評価も受入れ可 人工構築検体を用いた評価 特定の遺伝子変異のセットを対象とした評価 20
NGS を用いたコンパニオン診断システム 臨床性能の評価 < 基本的な考え方 > 医薬品の投与対象となる遺伝子変異等を網羅するよう臨床検体を収集し 評価することが基本 医薬品の適応疾患と関連する膨大な数の変異があり 全ての臨床検体を収集することが困難な場合 〇〇遺伝子変異 以下の評価が重要 遺伝子変異等の分類基準の妥当性 遺伝子変異と疾患の発症機序との関連性 遺伝子変異の分類と薬剤の作用機序の関係 根拠となる科学的知見 医薬品の適用対象 分類基準に基づき投与対象患者を特定するプロセス 21
遺伝子パネルを用いた NGS コンパニオン診断システム : 既承認 CDx との同等性評価 < 同等性評価に係る基本的考え方 > 分析性能及び臨床性能の同等性を示す必要がある 分析性能の同等性については 医薬品の適応症例より採取 保存した臨床検体を用いた評価も可能 < 同等性評価における課題 > 臨床性能の同等性 既承認 CDx 陰性例については 医薬品投与時の試験成績がない 新たな医薬品の臨床試験が必要? 22
同等性評価 : 新たな臨床試験の実施の要否 申請予定のCDx: 既承認のCDxと検体種が同一 遺伝子変異 ( 点変異 欠失等 * ) を検出する * 遺伝子増幅等 臨床的カットオフ値の検討が必要な場合は含まない 既承認の CDx と申請予定の CDx の測定結果の一致率 ( 陽性一致率及び陰性一致率 ) が良好な場合 臨床性能の同等性を担保可能ではないか 23
NGS を用いた遺伝子検査システムに関連した課題 24
今後の検討課題 体外診断システムとしての NGS 遺伝子解析システム 疾病の診断及び医薬品の適応判定以外を目的とした遺伝子パネル上の検査項目の取扱い 臨床的意義の評価及び必要となるエビデンスのレベル 臨床的エビデンスとしての公的 DB の活用可能性 など 25
DB 情報を活用した NGS-based IVD の開発 遺伝子変異と臨床症状に関する知見 臨床検査室の精度管理 ゲノム TF での議論 遺伝子変異と臨床症状に関する知見の収集 評価方法 臨床的エビデンスとしての質の確保 DB データベースの品質管理 臨床ゲノム情報統合 DB 整備事業 要検討 遺伝子変異の臨床的意義 必要となる臨床的エビデンスのレベル 遺伝子変異の臨床的意義の根拠 海外 DB の取扱い NGS-based IVD 26
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PMDA コンパニオン診断薬 WG HP http://www.pmda.go.jp/rs-stdjp/standards-development/crosssectional-project/0013.html ご清聴ありがとうございました 28