資料 1-5 行動科学を活用した家庭部門における省エネルギー対策に資する実証実験 家族 : 電子チラシサービスによる 家族世帯向け省エネ情報配信実証 結果報告 ( 速報 ) 2018 年 1 月 29 日 株式会社住環境計画研究所 JYUKANKYO RESEARCH INSTITUTE INC.
目次 1. 調査概要 2. モニターの概要 3. 省エネ効果の検証 3-1. 省エネ行動実施率と省 CO2 効果 ( サンプル全体 ) 3-2. 省エネ行動実施率の比較 ( 属性別分析 ) 3-3. 費用対効果の試算 4. 省エネ効果向上策の考察 5. 家族向け実証の考察 5-1. 家族のまとめ 5-2. 家族調査の限界と今後の展望参考資料 電子チラシShufoo! について アンケート調査結果 : 基本属性 アンケート調査結果 : 実施阻害要因 アンケート調査結果 : チラシ認知度 関心度 アンケート調査結果 : 省エネ情報取得先 介入群 Aと対照群 Bの閲覧率 PV 率の比較 1
1. 調査概要 2
1-1. 作業仮説 家族世帯に対して 省エネルギー行動を促すナッジを活用した情報発信方策の検討を目的として 以下の作業仮説を設定し 検証を実施した 作業仮説 子育て世帯に親和性の高いサービスを通じて 行動科学を活用した情報を配信することにより 既存の情報配信と比較して省エネ行動の実施率が向上し 結果的に家庭の省エネにつながる 検証方法 主婦層が多く利用する電子チラシサービス (Shufoo!) を通じて行動科学を活用した情報発信を行うグループ ( 介入群 A) と 行動科学を活用しない情報を配信するグループ ( 対照群 B) の省エネ情報配信後における省エネ行動の実施率の差を比較することで効果検証を行う 3
1-2. 実証実験の概要 実験手法 : RCT( ランダム化比較対照試験 ) 配信地域の市区町村をランダムに介入群と対照群に割り付け 電子チラシを配信し 両群の省エネ行動実施率を比較するランダム化比較試験 (RCT) を採用した Step1 ランダム割り付け ユーザー数や属性が同等になるよう 市区町村を介入群 A と対照群 B にランダム割り付け 電子チラシ (Shufoo!) 省エネ 行動科学 500 名 Step4 効果検証 チラシ A と B における省エネ行動の実施率を比較 約 225 万名 介入群 A Step2 実証実験の実施 2017/11/21~12/13 30 代 ~40 代の子育て女性 Step3 アンケートの実施 2017/12/18~2018/1/5 約 450 万名 行動科学に基づいたチラシ A と 通常のチラシ B を配信 電子チラシ (Shufoo!) 対象チラシを閲覧したモニターに対しアンケートを実施 差 の比較 省エネ Shufoo! ユーザー (1 都 1 府 5 県 ) 約 225 万名 対照群 B 500 名 30 代 ~40 代の子育て女性 4
1-3. 電子チラシ配信概要介入群対照 入浴 LED 照明 冷蔵庫 (3 種類 ) 介入群 対照群 (2 種類 ) の電子チラシを作成 11/21~12/13の期間に Shufoo! 利用ピーク時間帯である朝 晩 2 回ずつ合計 7 回配信した < 入浴編 > <LED 照明編 > < 冷蔵庫編 > お風呂は家族で続けて入る LED 照明の購入 冷蔵庫の設定温度調整 節水シャワーヘッド購入群 5
1-4. 介入群 A の情報配信例 (LED 照明編 ) 損失を強調する表現 ( 損失回避性 ) 機会費用を目立たせる表現 (Opportunity Cost Salience) 比較のための情報の提示 ( マッピング ) 社会規範などを活用したチラシ 3 種類を作成した 損失回避性 Opportunity Cost Salience マッピング 社会規範 6
1-4. 対照群 B の情報配信例 (LED 照明編 ) 東京都作成の省エネ普及啓発広報物を活用したチラシ 3 種類を作成した 7
2. モニターの概要 8
2. モニターの概要 実証用に配信した電子チラシ閲覧者で かつ 30 代 ~40 代の子育て女性を対象にアンケート調査を実施した 対象者 : 下記 1~3 の条件に一致した Shufoo! 会員 条件 1: 実証用に配信したいずれかの電子チラシを閲覧した条件 2:1 都 1 府 5 県 * に居住している条件 3:30 代 ~40 代の子育て女性である * 東京都 神奈川県 千葉県 埼玉県 愛知県 大阪府 兵庫県 目標回収数 :1,000( 介入群 500 対照群 500) 回収実績 :1,024( 介入群 543 対照群 481) 9
3. 省エネ効果の検証 10
3-1. 省エネ行動実施率と省 CO 2 効果 ( サンプル全体 ) 省エネ行動実施や省エネ製品購入状況では わずかな群間差がみられるが いずれも統計的に有意な差はみられていない 属性別分析によっては介入の有効性が示唆されたが ( 後述 ) サンプル全体には多様な属性が含まれるため群間差がみられなかったと考えられる 省エネ行動実施及び省エネ製品購入状況の比較 57% 54% 65% 67% 59% 57% 介入群 (n=543) 対照群 (n=481) 2.5% 差 冷蔵庫の温度調整 36% 35% 1.8% 差 2.2% 差 0.6% 差 お風呂は家族で続けて入る LED 電球節水シャワーヘッド 項目 CO 2 削減原単位 (kg-co 2 / 世帯 年 ) 実施率の差 ( 介入群 - 対照群 ) 省 CO 2 効果 ( 介入群 - 対照群 ) 冷蔵庫の温度調整 55.4 2.5% 1.4 お風呂は家族で続けて入る 68.5-1.8% -1.2 LED 電球 111.1 2.2% 2.4 節水シャワーヘッド 90.5 0.6% 0.5 合計 (kg-co 2 / 世帯 年 ) 3.1 省エネ行動の実施状況 当該機器を保有していない あるいは普段使っていない回答を除外して集計 省エネ製品の購入状況 11
3-2. 省エネ行動実施率の比較 ( 属性別分析 ) 冷蔵庫 共働き かつ子供 2 人以上を対象とした場合 介入群の実施率は対照群に比べ約 12.4% ポイント高く 統計的にも有意な差がみられた (T=2.17, p =0.030) 本行動の実施阻害要因として 面倒 手間 が最も多く挙げられていた 共働きで子供 2 人以上の世帯は多忙であることから 対策が簡単であることを強調したメッセージが有効に寄与した可能性がある 冷蔵庫 ( 共働きかつ子供 2 人以上 ) 60% 冷蔵庫の温度調整 64% 61% * 12.4% ポイント 49% 介入群 (n=169) 対照群 (n=140) 介入群 (n=164) 対照群 (n=140) 片働き 当該機器を保有していない あるいは普段使っていない回答を除外して集計 : p <.10, *: p <.05, **: p <.01, ***: p <.001 共働き 12
3-3. 費用対効果の試算 本事業においては 介入群 A と対照群 B で CO2 削減効果 ( 分母 ) には差があるが 電子チラシのデザイン 配信費用 ( 分子 ) には追加費用がないため 施策の費用対効果は算出しない < 参考試算 > 実施費用 ( 介入群 A と対照群 B 共通 ) チラシ作成 配信費 ( デザイン費 + 東京都配信 ) *1 =126.4 万円 CO2 削減効果 ( 対照群 B に対する介入群 A の追加分 ) ( 東京都 Shufoo! ユーザ数 :90 万人 *2 ) ( チラシ閲覧率の差 :0.26 % ポイント *3 ) ( 世帯当たり CO 2 削減量 :3.1kg-CO2/ 年 *3 ) ( 継続期間 :1 年 *4 ) =7,360 kg-co2/ 年 ( 想定根拠 ) *1 チラシ作成 配信費 : 凸版印刷によるチラシ 3 種類のデザイン費用 および Shufoo! により電子チラシを東京都全域に配信する費用 *2 Shufoo! モニター情報より (2017 年 11 月時点 ) *3 本実証結果より想定 *4 省エネ行動継続期間を 1 年間と想定 13
4. 省エネ効果向上策の考察 14
4. 省エネ効果向上策の考察 分析結果から得られた向上策の考察 全体では有意差が確認できなかったが 属性別分析では介入の有効性が示唆された 世帯属性に応じて配信する情報をカスタマイズすることにより チラシによる省エネ行動の実施率をより向上させることにつながる可能性がある 各行動の実施阻害要因にフレーミングしたメッセージでは 介入効果が高くなる傾向 推奨する省エネ行動の阻害要因に応じてメッセージのフレーミングを変えることで チラシによる省エネ行動の実施率をより向上させることにつながる可能性がある 電子チラシは個人をターゲットにメッセージを送ることに優れているが 家族など他者を巻き込むことが必要な行動については別の媒体を用いることも検討することが必要である 15
5. 家族向け実証の考察 16
5-1. 家族のまとめと今後の展望 実証結果より 一部の属性においてナッジを用いたチラシの効果が確認され より個人の属性に基づいた情報提供が重要であることが示唆された 作業仮説の検証 30 代 40 代子育て女性全体でみると 給湯 照明 冷蔵庫のいずれにおいてもナッジ要素を用いたチラシによる省エネ行動の実施率の向上効果は確認できなかった 詳細分析の結果 冷蔵庫 : 共働き かつ子供 2 人以上を対象とした場合 介入群における実施率が対照群を約 12% 上回った この差は統計的にも有意であり ナッジを用いた介入の効果が部分的に確認された 17
5-2. 家族調査の限界と今後の展望 本実証結果については以下の点に留意する必要がある 実証結果における注意事項 本実証は Shufoo! ユーザーを用いた実証結果であるため 都の世帯に全体に一般化して適用できない可能性がある 本実証は 冬季期間に限定した実証であるため 本実証の成果を他の期間における省エネ効果として適用できない点に注意が必要である 本実証では行動科学の理論を適用することにより ( 一部の世帯属性に限定されるが ) 家族世帯において省エネ行動を促進できる可能性が示唆された 今後は 1 情報を配信しない対照群を用いた実証 2 属性に応じた情報配信の効果検証といったアプローチを取ることにより本実証のさらなる効果向上を狙うことができると考えられる 18
参考資料 19
( 参考 ) 電子チラシ Shufoo! について Shufoo! は 凸版印刷が運営する電子チラシサービスであり 月間アクティブユーザー数は 860 万名 月間 PV( ページビュー ) 数は 3 億 PV であり 日本最大級の規模を誇っている Shufoo! では 日本全国 3500 企業 ( 約 10 万店舗 ) のチラシ ( 買い物情報 ) を 毎日配信するサービスを有し 30 代 ~40 代の主婦層が中心ユーザーである 20
( 参考 ) アンケート調査結果 : 基本属性 1 地域別回収状況 東京都関東 ( 東京都以外 ) 関西 他 回答者の年齢 30 代 40 代 介入群 (n=543) 14% 31% 55% 介入群 (n=543) 48% 52% 対照群 (n=481) 11% 54% 35% 対照群 (n=481) 52% 48% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 家族人数 3 人 4 人 5 人 6 人以上 子供の数 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 6 人 介入群 (n=543) 36% 47% 14% 1% 介入群 (n=543) 6% 34% 44% 15% 1% 対照群 (n=481) 40% 46% 11% 2% 対照群 (n=481) 3% 38% 45% 11% 2% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 21
( 参考 ) アンケート調査結果 : 基本属性 2 就業状況 片働き共働きどちらも働いていない 世帯年収 250 万円未満 250-500 万円未満 750-1000 万円未満 1000 万以上答えたくない 介入群 (n=543) 52% 45% 3% 介入群 (n=543) 3% 24% 40% 4% 29% 対照群 (n=481) 54% 44% 2% 対照群 (n=481) 2% 22% 38% 4% 34% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 建て方 戸建集合他 住宅の所有状況 賃貸持家 分譲他 介入群 (n=543) 57% 43% 0% 介入群 (n=543) 29% 70% 0% 対照群 (n=481) 56% 43% 1% 対照群 (n=481) 31% 68% 1% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 22
( 参考 ) アンケート調査結果 : 実施阻害要因 冷蔵庫の設定温度を調整する 効果が不明家庭の事情面倒 手間 やり方が不明省エネに無関心その他 お風呂は追い焚きをやめて間隔をあけずに連続で入る 効果が不明家庭の事情面倒 手間 やり方が不明省エネに無関心その他 介入群 (n=233) 16% 18% 43% 14% 2% 7% 介入群 (n=182) 2% 73% 12% 2% 10% 対照群 (n=216) 16% 16% 43% 10% 4% 11% 対照群 (n=155) 1% 79% 7% 1% 10% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 0% 20% 40% 60% 80% 100% LED 電球に買い替える 効果不明購入価格が高い面倒 手間 選び方が不明省エネに無関心その他 節水シャワーヘッドに買い替える 効果不明購入価格が高い面倒 手間 選び方が不明省エネに無関心その他 介入群 (n=93) 4% 32% 24% 2% 2% 35% 介入群 (n=190) 13% 9% 27% 11% 4% 36% 対照群 (n=70) 7% 39% 13% 6% 4% 31% 対照群 (n=158) 15% 15% 24% 10% 2% 35% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 省エネ行動を実施していない あるいは 省エネ製品を購入していない回答者のみを対象に集計 0% 20% 40% 60% 80% 100% 23
( 参考 ) アンケート調査結果 : チラシ認知度 関心度 入浴と家電のチラシ認知度は介入群が対照群に比べて高い傾向が確認できる 他方でチラシ認知ユーザーにおける省エネ行動の意向については対照群の方が高い これは介入群チラシが経済性にフレーミングしていたのに対し 対照群は省エネにフレーミングしていたことが影響した可能性が考えられる 認知有関心有行動意向有閲覧記憶無 介入群 (n=120) 20% 8% 7% 65% 入浴 対照群 (n=105) 6% 5% 15% 74% 介入群 (n=93) 9% 8% 10% 73% 照明 対照群 (n=70) 9% 3% 19% 69% 介入群 (n=233) 13% 6% 9% 72% 家電 対照群 (n=216) 6% 4% 8% 82% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 24
( 参考 ) アンケート調査結果 : 省エネ情報取得先 省エネ情報の取得先としては テレビが最も高く 次いでインターネットが高かった 上記 2 種の取得先は 他の選択肢と比較して 3 倍以上高いため 家族世帯 (30 代 ~40 代子育女性 ) に対してはこれらのメディア 媒体を活用し 情報配信することが有効であると考えられる SNS インターネットテレビラジオ雑誌新聞自治体の広報友人 知人職場その他特に得ていない 70 10 10 66 34 32 14 22 80 10 6 4 2 86 69 206 68 78 100 306 214 355 介入群 (n=543) 対照群 (n=481) 0 100 200 300 400 ( 人 ) 25
( 参考 ) 介入群 A と対照群 B の閲覧率 PV 率の比較 介入群 A のチラシは 対照群 B に比べて閲覧率 PV 率のいずれも 0.3% ポイント高く 統計的にも有意な差が見られた (p<.01) 10% 8% 8.4% 閲覧率 PV 率 ** 8.0% ** 6% 5.2% 4.9% 4% 2% 0% 介入群 A (n=2,240,905) ( 注 ) 閲覧率 : 配信対象ユーザー数に対する3 種類のチラシを閲覧した延べユーザー数の割合 PV 率 : 配信対象ユーザー数に対する3 種類のチラシを閲覧した延べPV 数の割合 : p <.10, *: p <.05, **: p <.01, ***: p <.001 対照群 B (n=2,236,773) 26