1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

Similar documents
関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

( 様式甲 5) 氏 名 渡辺綾子 ( ふりがな ) ( わたなべあやこ ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲 第 号 学位審査年月日 平成 27 年 7 月 8 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 学位論文題名 Fibrates protect again

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

( 様式乙 8) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 米田博 藤原眞也 副査副査 教授教授 黒岩敏彦千原精志郎 副査 教授 佐浦隆一 主論文題名 Anhedonia in Japanese patients with Parkinson s disease ( 日本人パー

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

Wnt3 positively and negatively regu Title differentiation of human periodonta Author(s) 吉澤, 佑世 Journal, (): - URL Rig

子として同定され 前立腺癌をはじめとした癌細胞や不死化細胞で著しい発現低下が認められ 癌抑制遺伝子として発見された Dkk-3 は前立腺癌以外にも膵臓癌 乳癌 子宮内膜癌 大腸癌 脳腫瘍 子宮頸癌など様々な癌で発現が低下し 癌抑制遺伝子としてアポトーシス促進的に働くと考えられている 先行研究では ヒ

Microsoft Word - FHA_13FD0159_Y.doc

博士の学位論文審査結果の要旨

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 神谷綾子 論文審査担当者 主査北川昌伸副査田中真二 石川俊平 論文題目 Prognostic value of tropomyosin-related kinases A, B, and C in gastric cancer ( 論文内容の要旨 ) < 要旨

平成 28 年 12 月 12 日 癌の転移の一種である胃癌腹膜播種 ( ふくまくはしゅ ) に特異的な新しい標的分子 synaptotagmin 8 の発見 ~ 革新的な分子標的治療薬とそのコンパニオン診断薬開発へ ~ 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 消化器外科学の小寺泰

<4D F736F F D F4390B38CE3816A90528DB88C8B89CA2E646F63>

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

( 様式甲 5) 氏 名 忌部 尚 ( ふりがな ) ( いんべひさし ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲第 号 学位審査年月日 平成 29 年 1 月 11 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 Benifuuki green tea, containin

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

U50068.indd

ASC は 8 週齢 ICR メスマウスの皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理後 遠心分離で得たペレットとして単離し BMSC は同じマウスの大腿骨からフラッシュアウトにより獲得した 10%FBS 1% 抗生剤を含む DMEM にて それぞれ培養を行った FACS Passage 2 (P2) の ASC

PowerPoint プレゼンテーション

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

酵素消化低分子化フコイダン抽出物の抗ガン作用増強法の開発

日本標準商品分類番号 カリジノゲナーゼの血管新生抑制作用 カリジノゲナーゼは強力な血管拡張物質であるキニンを遊離することにより 高血圧や末梢循環障害の治療に広く用いられてきた 最近では 糖尿病モデルラットにおいて増加する眼内液中 VEGF 濃度を低下させることにより 血管透過性を抑制す

骨形成における LIPUS と HSP の関係性が明らかとなった さらに BMP シグナリングが阻害されたような症例にも効果的な LIPUS を用いた骨治癒法の提案に繋がる可能性が示唆された < 方法 > 10%FBS と 抗生剤を添加した α-mem 培地を作製し 新生児マウス頭蓋骨採取骨芽細胞を

博第265号

-119-

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

上原記念生命科学財団研究報告集, 31 (2017)


脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 野上彩子 論文審査担当者 主査神奈木真理 副査北川昌伸 東田修二 論文題目 FLT3-ITD confers resistance to the PI3K/Akt pathway inhibitors by protecting the mtor/4ebp1/m

U50068.indd

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

う報告26)がみられるが Barrett 食道癌における FAK する必要がある 本研究における我々の目的は 1 の発 現 とそ の機能 に ついて の 報 告は み ら れ な い FAK の Barrett 食道癌における役割を検討すること Barrett 食道は胃食道逆流症により正常扁平上皮が

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

能性を示した < 方法 > M-CSF RANKL VEGF-C Ds-Red それぞれの全長 cdnaを レトロウイルスを用いてHeLa 細胞に遺伝子導入した これによりM-CSFとDs-Redを発現するHeLa 細胞 (HeLa-M) RANKLと Ds-Redを発現するHeLa 細胞 (HeL

主論文 Role of zoledronic acid in oncolytic virotherapy : Promotion of antitumor effect and prevention of bone destruction ( 腫瘍融解アデノウイルス療法におけるゾレドロン酸の役割 :

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

2. ポイント EGFR 陽性肺腺癌の患者さんにおいて EGFR 阻害剤治療中に T790M 耐性変異による増悪がみられた際にはオシメルチニブ ( タグリッソ ) を使用することが推奨されており 今後も多くの患者さんがオシメルチニブによる治療を受けることが想定されます オシメルチニブによる治療中に約

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

博士学位論文 内容の要旨及び論文審査結果の要旨 第 11 号 2015 年 3 月 武蔵野大学大学院

Untitled

cover

Microsoft PowerPoint - 2_(廣瀬宗孝).ppt


学位論文内容の要旨 Abstract Background This study was aimed to evaluate the expression of T-LAK cell originated protein kinase (TOPK) in the cultured glioma ce

博士学位申請論文内容の要旨

長期/島本1

スライド 1

ス化した さらに 正常から上皮性異形成 上皮性異形成から浸潤癌への変化に伴い有意に発現が変化する 15 遺伝子を同定し 報告した [Int J Cancer. 132(3) (2013)] 本研究では 上記データベースから 特に異形成から浸潤癌への移行で重要な役割を果たす可能性がある

上原記念生命科学財団研究報告集, 30 (2016)

<4D F736F F D DC58F4994C A5F88E38A D91AE F838A838A815B835895B68F FC189BB8AED93E089C82D918189CD A2E646F63>

Mincle は死細胞由来の内因性リガンドを認識し 炎症応答を誘導することが報告されているが 非感染性炎症における Mincle の意義は全く不明である 最近 肥満の脂肪組織で生じる線維化により 脂肪組織の脂肪蓄積量が制限され 肝臓などの非脂肪組織に脂肪が沈着し ( 異所性脂肪蓄積 ) 全身のインス

平成 28 年 2 月 1 日 膠芽腫に対する新たな治療法の開発 ポドプラニンに対するキメラ遺伝子改変 T 細胞受容体 T 細胞療法 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 脳神経外科学の夏目敦至 ( なつめあつし ) 准教授 及び東北大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 下瀬川徹

ルグリセロールと脂肪酸に分解され吸収される それらは腸上皮細胞に吸収されたのちに再び中性脂肪へと生合成されカイロミクロンとなる DGAT1 は腸管で脂質の再合成 吸収に関与していることから DGAT1 KO マウスで認められているフェノタイプが腸 DGAT1 欠如に由来していることが考えられる 実際

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小島光暁 論文審査担当者 主査森尾友宏 副査槇田浩史 清水重臣 論文題目 Novel role of group VIB Ca 2+ -independent phospholipase A 2γ in leukocyte-endothelial cell in

Microsoft Word - _博士後期_②和文要旨.doc

1 分子標的治療薬概論 分子生物学の進歩により, がんの特性が徐々に明らかになるにつれ, がん薬物療法における新しい抗悪性腫瘍薬の開発戦略は大きく変わってきている. 本邦においても 2001 年に CD20 に対する抗体であるリツキシマブが B 細胞リンパ腫の治療薬として認可されて以来, 様々な分子

EBウイルス関連胃癌の分子生物学的・病理学的検討

するものであり 分子標的治療薬の 標的 とする分子です 表 : 日本で承認されている分子標的治療薬 薬剤名 ( 商品の名称 ) 一般名 ( 国際的に用いられる名称 ) 分類 主な標的分子 対象となるがん イレッサ ゲフィニチブ 低分子 EGFR 非小細胞肺がん タルセバ エルロチニブ 低分子 EGF

転移を認めた 転移率は 13~80% であった 立細胞株をヌードマウス皮下で ~1l 増殖させ, その組

研究成果報告書

学位論文の要約

周期的に活性化する 色素幹細胞は毛包幹細胞と同様にバルジ サブバルジ領域に局在し 周期的に活性化して分化した色素細胞を毛母に供給し それにより毛が着色する しかし ゲノムストレスが加わるとこのシステムは破たんする 我々の研究室では 加齢に伴い色素幹細胞が枯渇すると白髪を発症すること また 5Gy の

15 氏 名 し志 だ田 よう陽 すけ介 学位の種類学位記番号学位授与の日付学位授与の要件 博士 ( 医学 ) 甲第 632 号平成 26 年 3 月 5 日学位規則第 4 条第 1 項 ( 腫瘍外科学 ) 学位論文題目 Clinicopathological features of serrate

ABSTRACT

の基軸となるのは 4 種の eif2αキナーゼ (HRI, PKR, または ) の活性化, eif2αのリン酸化及び転写因子 の発現誘導である ( 図 1). によってアミノ酸代謝やタンパク質の折りたたみ, レドックス代謝等に関わるストレス関連遺伝子の転写が促進され, それらの働きによって細胞はス

インプラント周囲炎を惹起してから 1 ヶ月毎に 4 ヶ月間 放射線学的周囲骨レベル probing depth clinical attachment level modified gingival index を測定した 実験 2: インプラント周囲炎の進行状況の評価結紮線によってインプラント周囲

センシンレンのエタノール抽出液による白血病細胞株での抗腫瘍効果の検討

リーなどアブラナ科野菜の摂取と癌発症率は逆相関し さらに癌病巣の拡大をも抑制する という報告がみられる ブロッコリー発芽早期のスプラウトから抽出されたスルフォラフ ァン (sulforaphane, 1-isothiocyanato-4-methylsulfinylbutane) は強力な抗酸化作用

<4D F736F F D20322E CA48B8690AC89CA5B90B688E38CA E525D>

Untitled

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1


厚生科学研究費補助金

(Microsoft Word - \203v\203\214\203X\203\212\203\212\201[\203X doc)

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

研究成果報告書

血漿エクソソーム由来microRNAを用いたグリオブラストーマ診断バイオマーカーの探索 [全文の要約]

Powered by TCPDF ( Title ハイリスクHPV 型のタンパクを標的とした新たな分子標的治療に関する基礎的検討 Sub Title Study of a new therapy targeting proteins of high-risk HPV Au

考えられている 一部の痒疹反応は, 長時間持続する蕁麻疹様の反応から始まり, 持続性の丘疹や結節を形成するに至る マウスでは IgE 存在下に抗原を投与すると, 即時型アレルギー反応, 遅発型アレルギー反応に引き続いて, 好塩基球依存性の第 3 相反応 (IgE-CAI: IgE-dependent

脂肪滴周囲蛋白Perilipin 1の機能解析 [全文の要約]

博士の学位論文審査結果の要旨

ABCB5/Abcb5発現細胞の薬剤耐性機構に関する研究(審査報告)

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

<4D F736F F D DC58F4994C5817A C A838A815B83588CB48D F4390B3979A97F082C882B5816A2E646F6378>

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

博士学位論文審査報告書

Transcription:

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 朝日通雄 恒遠啓示 副査副査 瀧内比呂也谷川允彦 副査 勝岡洋治 主論文題名 Topotecan as a molecular targeting agent which blocks the Akt and VEGF cascade in platinum-resistant ovarian cancers ( 白金製剤耐性卵巣癌における Akt/VEGF をターゲットとした分子標的薬としてのトポテカンの機能解析 ) 研究目的 学位論文内容の要旨 卵巣癌での死亡率は増加傾向にあり 約半数の症例が進行癌で発見される シスプラチンやカルボプラチンなどの白金製剤の登場により卵巣癌に対する治療成績は向上したが 再発症例では白金製剤耐性となり長期生存率は依然不良である 以前より申請者らは白金製剤耐性には生存シグナルである Akt 経路が重要な分子であること Akt の活性を阻害することでシスプラチンのヒト卵巣癌細胞の感受性をあげることを明らかにしてきたが 現在に至っても臨床で使える分子標的薬は登場していない 一方 臨床試験において トポイソメラーゼ I 阻害薬であるトポテカンは白金製剤耐性卵巣癌に有効であることが示され 再発卵巣癌に使用されているが そのメカニズムは明らかでない 今回トポテカンがシスプラチン耐性にかかわる分子を標的としているか否かについて検討した 材料及び方法 シスプラチン耐性のヒト卵巣癌細胞株 Caov-3 とシスプラチン感受性のヒト卵巣 癌細胞株 A2780 を用いて以下の実験を行った - 1 -

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチン単剤 トポテカン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加における Akt のリン酸化を リン酸化 Akt 抗体を用いた Western blotting で比較検討した 3. Caov-3 細胞株において Akt の下流の生存シグナルへの影響について Poly ADP ribose polymerase (PARP) 抗体を用いて Western blotting で検討した 4. Caov-3 細胞株においてシスプラチン単剤添加で活性化した Akt が下流の mtor や 低酸素誘導因子 Hypoxia Inducible Factor (HIF)-1αの活性化及び 血管内皮細胞増殖因子 Vascular Endothelial Growth Factor (VEGF) の発現に与える影響について検討した リン酸化 mtor 抗体で mtor のリン酸化を また核内蛋白と細胞質内蛋白を分離後 HIF-1αの核内移行をそれぞれ Western Blotting で検討した また HIF-1αが VEGF のプロモーター領域 hypoxia-responsive element(hre) に結合しているか否かを ChIP assay を用い検討した さらに VEGF の発現を real time-pcr を用いて検討した 5. Caov-3 細胞株において 4. と同様の検討をシスプラチンとトポテカンの併用添加でもおこない比較検討した 6. 6 週齢のヌードマウス (BALB/c Slc-nu/nu) の腹腔内に Caov-3 細胞株 5 10 6 個を接種し 腹膜播種モデルを作製 接種後 2 週間目より PBS 投与群 シスプラチン単剤 (5mg/kg) 投与群とトポテカン単剤 (12.5mg/kg) 投与群とシスプラチンとトポテカンの併用投与群の 4 群に分け 1 週間毎に薬剤を腹腔内投与し比較検討した 結果 1. Caov-3 細胞株はシスプラチン単剤添加による増殖抑制は認めず シスプラチンに耐性があることを確認した シスプラチンとトポテカンの併用添加後は濃度依存性に細胞増殖が抑制された - 2 -

2. シスプラチン単剤添加でみられた Akt のリン酸化は シスプラチンとトポテカンの併用添加により有意に抑制された 3. シスプラチン単剤添加は PARP の分解を誘導しなかったが シスプラチンとトポテカン併用添加により有意に PARP の分解を誘導した これらの結果からシスプラチンとトポテカンの併用添加によりアポトーシスを誘導することが判明した 4. シスプラチン単剤添加では mtor のリン酸化が有意に増加し HIF-1αが核内移行することが明らかになった さらに HIF-1αが VEGF プロモーター領域に結合していると推定された また VEGF の発現は有意に増加することが明らかになった 5. シスプラチンとトポテカンの併用添加は シスプラチン単剤添加したものと比較して mtor のリン酸化は有意に抑制され HIF-1αの核内移行も抑制された HIF-1αが VEGF プロモーター領域に結合しないと推定された また VEGF の発現も有意に減少することが明らかとなった 6. ヌードマウスの Caov-3 細胞株腹膜播種モデルにおいてシスプラチンとトポテカン併用投与群は 対象群と比較し腹腔内の播種病巣の大きさや腹囲を有意に減少させ 腹水中の VEGF の発現も有意に抑制させた 結論 本研究でシスプラチン耐性である Caov-3 細胞株において トポテカンが Akt/VEGF をブロックする分子標的薬として働き シスプラチンの耐性を解除することにより抗腫瘍効果を発揮することが明らかとなった - 3 -

( 様式甲 6) 審査結果の要旨および担当者 報告番号甲第号氏名恒遠啓示 主査 朝日通雄 論文審査担当者 副査副査 瀧内比呂也谷川允彦 副査 勝岡洋治 主論文題名 Topotecan as a molecular targeting agent which blocks the Akt and VEGF cascade in platinum-resistant ovarian cancers ( 白金製剤耐性卵巣癌における Akt/VEGF をターゲットとした分子標的薬としてのトポテカンの機能解析 ) 論文審査結果の要旨卵巣癌の再発症例では白金製剤耐性となり長期生存率は依然不良である トポイソメラーゼ I 阻害薬であるトポテカンは白金製剤耐性卵巣癌に有効であることが示され 再発卵巣癌に使用されているが そのメカニズムは明らかでない 本研究は トポテカンがシスプラチン耐性卵巣癌に対する耐性にかかわる生存シグナルである Akt 経路の分子を標的としているか否かを検討したものである 申請者は 白金製剤耐性卵巣癌において白金製剤により Akt が活性化され アポトーシスを阻害することにより白金製剤に耐性となり Akt 経路をブロックすると白金製剤に対する耐性が解除され 抗腫瘍効果を発揮するメカニズムに注目し トポテカンによる Akt 経路への影響を検討した シスプラチン耐性ヒト卵巣癌細胞株 Caov-3 を用い シスプラチン単剤添加では Akt は活性化し シスプラチンとトポテカンの併用添加では Akt は活性化されないことを確認した そしてシスプラチン単剤添加により mtor のリン酸化が誘導され HIF-1αが核内移行すること HIF-1αが VEGF のプロモーター領域に結合す - 4 -

ることが推定され さらに VEGF 発現が増加していることを確認した それに対しシスプラチンとトポテカンの併用添加は mtor 活性化を有意に減少させ HIF-1α の核内移行を抑制すること VEGF プロモーター領域に結合しないこと VEGF の発現も有意に減少することを明らかにした また ヌードマウスの Caov-3 細胞株腹膜播種モデルを用い シスプラチンとトポテカン併用投与群が 対象群と比較し腹腔内の播種病巣の大きさや腹囲 そして腹水中の VEGF 発現を有意に減少させることを明らかにした 申請者は本研究で シスプラチン耐性卵巣癌株である Caov-3 細胞において トポテカンが Akt/VEGF をブロックする分子標的薬として働き シスプラチンの耐性を解除することにより抗腫瘍効果を発揮することを明らかとし 再発卵巣癌で使用されているトポテカンの有効性のメカニズムを解明し得た 以上により 本論文は本学大学院学則第 11 条に定めるところの博士 ( 医学 ) の学位を授与するに値するものと認める ( 主論文公表誌 ) Cancer Biology & Therapy 10(11): 1137-1146, 2010-5 -