1. 地震情報発生日時 :2018 年 6 月 18 日午前 7 時 58 分震源地 : 大阪府北部 ( 北緯 34.8 度 東経 度 ) 震源深さ: 約 13km 地震の規模 ( マグニチュード ):6.1 震度 6 弱の地域 :* 印は気象庁以外の震度観測点についての情報 大阪府震度

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平成 30 年 6 月 18 日 07 時 58 分頃の大阪府北部の地震 震度分布図 各地域の震度分布 : 震央 各観測点の震度分布図 ( 震央近傍を拡大 )

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地震の概要 検知時刻 : 1 月 3 日 18 時分 10 発生時刻 : 1 月 3 日 18 時 10 分 マグニチュード: 5.1( 暫定値 ; 速報値 5.0から更新 ) 場所および深さ: 熊本県熊本地方 深さ10km( 暫定値 ) 発震機構 : 南北方向に張力軸を持つ横ずれ断層型 ( 速報

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2 被害量と対策効果 < 死者 負傷者 > 過去の地震を考慮した最大クラス あらゆる可能性を考慮した最大クラス 対策前 対策後 対策前 対策後 死者数約 1,400 人約 100 人約 6,700 人約 1,500 人 重傷者数約 600 人約 400 人約 3,000 人約 1,400 人 軽傷者

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した 気象庁は その報告を受け 今後は余震確率の公表方法を改めることとしたという 2. 被害状況 被害要因等の分析 (1) 調査方針本委員会は 以下の調査方針で 被害調査と要因分析を行っている 1 極めて大きな地震動が作用し 多数かつ甚大な建築物被害が生じた益城町及びその周辺地域に着目して検討を進め

いても示すこととした 極めて大きな地震動が作用し 多数かつ甚大な建築物被害が生じた益城町及びその周辺地域に着目して被害調査と分析等の検討を進めることとした 規模の大きな鉄骨造や鉄筋コンクリート造 鉄骨鉄筋コンクリート造( 以下 鉄筋コンクリート造等 という ) の建築物については 熊本市内などの地域

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目次 第 Ⅰ 編本編 第 1 章調査の目的 Ⅰ-1 第 2 章検討体制 Ⅰ-2 第 3 章自然 社会状況 Ⅰ-3 第 4 章想定地震 津波の選定条件等 Ⅰ-26 第 5 章被害想定の実施概要 Ⅰ-37 第 6 章被害想定結果の概要 Ⅰ-48 第 7 章防災 減災効果の評価 Ⅰ-151 第 8 章留意

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平成 30 年 6 月 18 日大阪府北部の地震での免震建物の地震後調査 ( 速報 ) ( 高槻市 茨木市 枚方市地域 ) 大阪大学 宮本裕司 ( 教授 ) 川辺秀憲 ( 准教授 ) 中野尊治 ( 助教 ) 佐藤綾香 (M1 生 ) 建築都市耐震研究所 田村和夫 ( 代表 元千葉工大教授 )

1. 地震情報発生日時 :2018 年 6 月 18 日午前 7 時 58 分震源地 : 大阪府北部 ( 北緯 34.8 度 東経 135.6 度 ) 震源深さ: 約 13km 地震の規模 ( マグニチュード ):6.1 震度 6 弱の地域 :* 印は気象庁以外の震度観測点についての情報 大阪府震度 6 弱大阪北区茶屋町 * 高槻市立第 2 中学校 * 枚方市大垣内 * 茨木市東中条町 * 箕面市粟生外院 * 2. 調査内容日時 :6 月 22 日金曜日調査者 : 大阪大学宮本裕司 ( 教授 ) 川辺秀憲( 准教授 ) 中野尊治( 助教 ) 佐藤綾香(M1 生 ) 建築都市耐震研究所田村和夫 ( 代表 元千葉工大教授 ) 3. 調査建物 震度 6 弱を計測した高槻市 茨木市 枚方市に建つ免震建物 6 か所 11 棟 4. 調査結果 2018 年 6 月 18 日午前 7 時 58 分に発生した大阪府北部を震源とする地震 ( 震源深さ : 約 13km マグニチュード:6.1) で 大阪府内の高槻市 茨木市 枚方市 箕面市 大阪北区で震度 6 弱を計測した 高槻市 茨木市 枚方市は淀川水系の流域に位置し 大阪 京都の衛星都市として発展した地域である 高槻市の K-NET 高槻 (OSK002) の観測点で地表での波形が観測されている 最大は NS 方向で 521Gal EW 方向で 794Gal UD 方向で 238Gal である 過去の強震動記録と比較して 図 1 と図 2 に EW 方向の波形および応答スペクトル ( 減衰 5%) と擬似速度応答スペクトル ( 減衰 5%) を示す 地震動の卓越周期は約 0.3 秒の短周期領域であり 周期 3 秒付近での擬似速度応答スペクトルの振幅は極めて稀な地震の概ね 1/4 程度である 震度 6 弱の地域で確認できている免震建物は約 60 棟で 用途別には 住宅 33 棟 事務所または店舗ビル 15 棟 病院 4 棟 消防署 2 棟 電算センタ-2 棟 物流倉庫 2 棟 研究所 1 棟 公会堂 1 棟である 今回の調査は 震央に近い高槻市 茨木市 枚方市を中心に行った この地域では家屋の半壊が 6 棟 一部損壊が 5500 棟以上 ( 大阪府調べ ) と被害が集中した 高槻市 茨木市 枚方市には 25 棟の免震建物が確認でき 1

ている このうちの 6 カ所 11 棟について外観と聞き取りによる調査と 4 棟は建物内部の調査も行った 建物の用途は 消防施設 2 棟 大型医療施設 1 棟 集合住宅 6 棟 事務所ビル 1 棟 物流倉庫 1 棟である 調査結果を一覧にして表 1に示す 調査した免震建物は 外観 内部とも目立った損傷はほとんどなく 免震建物と外構との境界で免震層が動いた痕跡 ( 玄関入口部のエキスパンションのずれ等 ) が認められた程度である また空調設備の取り付け部で天井ボードに軽微な損傷や 床上の事務機器の移動などがあったが 設備機器や書棚 家具の転倒や机上のパソコン等の電子機器の落下もなかったとのことである ライフライン系は 医療施設でエレベータの停止や断水があったが 2 時間後に復旧し 救急医療を続けたとのことである 残りの建物ではライフラインが地震後も健全であり 建物機能を維持して継続使用できたとのことである 居住者の話しでは 下からの突き上げによる揺れを強く感じたが 横揺れについてはほとんど感じなかったこと 机や棚からの落下や家具等の転倒もなかったとのことである 近隣の非免震の集合住宅では 家具や書棚 食器棚の転倒があり 室内が散乱したとのことである 免震層の罫書きを確認できた建物は 3 棟である 写真 1 に罫書き記録の一例を示す 罫書きで記録された免震層の変位は 両振幅で最大 11 cm程度 片振幅で最大 8 cm程度であった 図 3 に KiK-NET 高槻での波形から計算した減衰 10% と 20% の変位応答スペクトルを示すが 罫書きで記録された振幅とほぼ対応する 変位振幅は最大変位の方向は 3 棟それぞれで異なっていた 今回の活断層による地震は M6.1 程度であったため 非免震の耐震建物においても主要な耐震要素に大きな被害がなかった しかし 事務所や生産施設では非構造部材や設備機器が損傷して建物機能を維持できず 操業を一時停止することに追い込まれた企業も多くあった また 集合住宅では室内の家具や家電製品の転倒 落下による散乱 またライフラインの遮断によって地震後に生活を継続できなくなった建物もあった 一方 免震建物においては 上下動の揺れを強く感じたものの 地震動の特性から横揺れに対して免震効果を大いに発揮した 消防施設で対応して頂いた署員の方からは 地震後も変わらず建物機能を継続でき 防災拠点として震災対応に当たることができたということを聞くことができた また 集合住宅に住む居住者からは 免震建物であったことで揺れに対する恐怖を感じることもなく 地震後のニュースで地震の大きさや近隣の被害状況を知ることができたという話を聞き 改めて免震建物の効果を確認することができた 大阪地域では 南海トラフ巨大地震や上町断層帯地震に対する備えが叫ばれている中で今回の地震が発生した 地震後の調査によって 免震建物は所期の性能を十分に発揮し 建物の安全性確保と機能維持および居住者への安心感を提供した しかし 2

発生が懸念される南海トラフ巨大地震や都市直下地震では 広域でかなりの棟数の免震建物 制振建物が大きな揺れを経験することとなる 免震 制振技術をより信頼性の高い 高品質な構造システムに高度化するためにも 今回の地震での稼働状況を精査して 早急に将来に備える必要がある 最後に 本調査に協力していただいた皆さまに御礼致します また 防災科学技術 研究所 K-NET 高槻 KiK-net 益城および気象庁の神戸海洋気象台の観測記録を, 使用 させていただきました 記して謝意を表します 3

応答スペクトル 擬似速度応答スペクトル (cm/s) 794 (a) 2018 年 6 月 18 日 _K-NET 高槻 EW 925 (b) 2016 年 4 月 14 日 _ 熊本地震 _KiK-net 益城 EW 1157 (c) 2016 年 4 月 16 日 _ 熊本地震 _KiK-net 益城 EW 818 (d) 1995 年 1 月 17 日 _ 兵庫県南部地震 _JMA 神戸 NS 図 1 過去の被害地震との時刻歴波形の比較 2018 年 6 月 18 日 _K-NET 高槻 EW 2016 年 4 月 14 日 _ 熊本地震 _KiK-net 益城 EW 2016 年 4 月 16 日 _ 熊本地震 _KiK-net 益城 EW 1995 年 1 月 17 日 _ 兵庫県南部地震 _JMA 神戸 NS 4000 400 3000 300 2000 200 1000 100 0 0 0 1 2 3 0 1 周期 (s) 周期 (s) 2 3 (a) 応答スペクトル ( 減衰 5%) (b) 擬似速度応答スペクトル ( 減衰 5%) 図 2 過去の被害地震との応答スペクトルおよび擬似速度応答スペクトルの比較 4

表 1 免震建物調査結果の一覧 免震建物 A( 高槻市 ) B( 枚方市 ) C( 枚方市 ) D( 茨木市 ) E( 高槻市 ) F( 茨木市 ) 用途 消防施設 Ⅰ 消防施設 Ⅱ 医療施設 事務所ビル 物流倉庫 集合住宅 構造 RC RC RC S 一部 SRC 柱 RC 梁 S RC 階数 6 5 13 地下 1 7 5 9 14 (6 棟 ) 建物状況 インフラ状況 近隣状況 居住者 管理者の話 罫書き その他 建物被害なし 天井エアコン周りの天井ボードに軽微な破損 玄関入口部エキスパンションで目違いがあり 免震建物入口と外構の間で 5mm 程度のずれ ライフライン (EV 水道 ガス 電気 ) 建物機能とも維持 非免震車庫棟の外装材に軽微な破損 周辺建物に目立った被害はなし 上下方向に数回の衝撃あり 水平方向の揺れは大きくなかった EV が緊急停止したが 閉じ込めは発生せず 屋内の消火器が転倒 室内の本やパソコンの移動 落下はほぼゼロ 両振幅で東西方向約 5.3cm 南北方向約 7cm の振幅 敷地内の震度計で震度 5 強を計測 建物被害なし 鋼材ダンパーの残留変形は認められない ライフライン (EV 水道 ガス 電気 ) 建物機能とも維持 古い木造 2 階建てアパートの壁に亀裂や 周辺家屋の屋根瓦の破損やずれ テナントビルの窓ガラスの破損 初めに下から突き上げる動き その後東西に何往復か揺れた 20cm くらい変位したように体感 机上のものは落下せず 荷物が数個ラックから落下したのみ 1 階入口前の免震建物と通路のジョイント部に詰まっていたゴミが出ていたのを確認南西方向に一つのループで 両振幅で約 11cm 片振幅で約 7cm の振幅 建物外観 内部とも目立った被害なし 免震部と非免震部のエキスパンションに僅かのずれ EV がすべて停止したが 2 ~3 時間後に復旧 地下 2 階から地上 4 階まで断水し 2 時間後に復旧 断水のため放射線治療の機器が一時停止同左 あまり揺れておらず ふわふわとした感じがした 5 建物被害なし 建物外周エキスパンションのせり上りによる目違い 免震層下げ振りにより 東方向に約 5mm の残留ずれ ダウンライトが落下 天井ボードに軽微な破損 冷凍機( 屋上 ) の防音パネルの外れ 建物機能を維持 ライフラインの機能維持 周辺建物に目立った被害なし 木造家屋の瓦屋根が破損していた 上下方向の衝撃があったが 水平方向の揺れは小さかった 片振幅で北西方向約 8cm 南東方向約 2cm の振幅 外観から建物被害は確認されず 建物外周エキスパンション部の損傷なし 翌日より営業再開 ( 当日は従業員が出勤できず休業状態 ) ライフラインの機能維持 周辺建物に大きな被害なし ただし ブルーシートを屋根にかけている家屋あり 道路面に山谷あり 倉庫内の物品が 2,3 落下した程度で 目立った被害なし 外観から建物被害は確認されず 建物外周部のグレーチング周辺で損傷 ( コンクリートの欠け 床タイルの浮き上がり ) ライフラインの機能維持 上下方向の衝撃はあったが 家具の転倒や備品の落下はなかった 近隣の同規模の集合住宅 ( 非免震 ) は 外観上は目立った被害はなかったが 室内では背丈ほどの仏壇の転倒 食器棚の転倒 階段室のひび割れ多数

変位応答スペクトル (cm) 写真 1 罫書き記録の例 10 8 6 4 2 高槻 NS_h=0.1 高槻 NS_h=0.2 高槻 EW_h=0.1 高槻 EW_h=0.2 0 0 1 2 3 4 5 周期 (s) 図 3 K-NET 高槻の変位応答スペクトル ( 減衰 10% 20%) 6