平成29年度 中学校英語科教育 理論研究

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目次 教員養成 研修外国語 ( 英語 ) コア カリキュラム ダイジェスト版 について p. 1 教員養成 研修外国語 ( 英語 ) コア カリキュラムの位置付けについて p. 1 小学校教員養成課程外国語 ( 英語 ) コア カリキュラム構造図 p. 2 学習項目と到達目標 p. 3 中 高等学校

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イ ディベート ディスカッション Ⅱ 時事英語 エッセイライティング Ⅰ エッセイライティング Ⅱ 必履修科目は 総合英語 Ⅰ 及び ディベート ディスカッション Ⅰ 話すこと 書くこと における発信力の強化や 高校生の卒業後の進路の多 様化などに対応するため より高度で専門的な科目を新設し 計 7

24 京都教育大学教育実践研究紀要 第17号 内容 発達段階に応じてどのように充実を図るかが重要であるとされ CAN-DOの形で指標形式が示されてい る そこでは ヨーロッパ言語共通参照枠 CEFR の日本版であるCEFR-Jを参考に 系統だった指導と学習 評価 筆記テストのみならず スピーチ イン

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Taro-小学校第5学年国語科「ゆる

第 9 章 外国語 第 1 教科目標, 評価の観点及びその趣旨等 1 教科目標外国語を通じて, 言語や文化に対する理解を深め, 積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り, 聞くこと, 話すこと, 読むこと, 書くことなどのコミュニケーション能力の基礎を養う 2 評価の観点及びその趣旨


平成16年度小学校及び中学校教育課程研究協議会報告書

「標準的な研修プログラム《

ている それらを取り入れたルーブリックを生徒に提示することにより 前回の反省点を改善し より具体的な目標を持って今回のパフォーマンスに取り組むことができると考える 同に そのような流れを繰り返すことにより 次回のパフォーマンス評価へとつながっていくものと考えている () 本単元で重点的に育成をめざす

平成23年度全国学力・学習状況調査問題を活用した結果の分析   資料

教科 : 外国語科目 : コミュニケーション英語 Ⅰ 別紙 1 話すこと 学習指導要領ウ聞いたり読んだりしたこと 学んだことや経験したことに基づき 情報や考えなどについて 話し合ったり意見の交換をしたりする 都立工芸高校学力スタンダード 300~600 語程度の教科書の文章の内容を理解した後に 英語

第 1 章総則第 1 教育課程編成の一般方針 1( 前略 ) 学校の教育活動を進めるに当たっては 各学校において 児童に生きる力をはぐくむことを目指し 創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する中で 基礎的 基本的な知識及び技能を確実に習得させ これらを活用して課題を解決するために必要な思考力 判

1 高等学校学習指導要領との整合性 高等学校学習指導要領との整合性 ( 試験名 : 実用英語技能検定 ( 英検 )2 級 ) ⅰ) 試験の目的 出題方針について < 目的 > 英検 2 級は 4 技能における英語運用能力 (CEFR の B1 レベル ) を測定するテストである テスト課題においては

17 石川県 事業計画書

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2021 年度入学者選抜について ~ ひとりひとりの個性と可能性を見つめる入試へ ~ 4 月 4 日 関西学院大学 関西学院の使命は キリスト教主義教育によって Mastery for Service を体現する世界市民 を育み 世に輩出することにあります 世界市民 とは 他者と対話し共感する能力を

41 仲間との学び合い を通した クラス全員が学習に参加できる 授業づくり自分の考えを伝え 友達の考えを聞くことができる子どもの育成 42 ~ペア グループ学習を通して~ 体育における 主体的 対話的で深い学び を実現する授業づくり 43 ~ 子どもたちが意欲をもって取り組める場の設定の工夫 ~ 4

Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ

新学習指導要領の理念と カリキュラム マネジメント 2019( 平成 31) 年 1 月 16 日 文部科学省 3 階講堂 天笠茂 ( 千葉大学特任教授 )

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し, 定期的に評価することで 自己の考え を自覚する場面を意図的に設定している 本教材の学習においては, 様々な情報の中から必要な情報を取り出し, 整理 分析し, それに基づいた自分の考えを表現する活動を通して, 自己の考えの深まりや広がり を実感させることによって, 課題改善につなげたいと考えてい

2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

平成27年度公立小・中学校における教育課程の編成実施状況調査結果について

4 単元の評価規準 コミュニケーションへの関心 意欲 態度 外国語表現の能力 外国語理解の能力 言語や文化についての知識 理解 与えられた話題に対し 聞いたり読んだりした 1 比較構文の用法を理解 て, ペアで協力して積極 こと, 学んだことや経 している 的に自分の意見や考えを 験したことに基づき

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結果からの考察 中学校 高校の英語の授業では音声指導や文法指導などが多く 話す 書く を含めた言語活動がまだ十分に行われていないという課題が明らかになりました 中高生の英語によるコミュニケーション能力の向上のためには 従来の文法中心の指導からの脱却が求められます 英語教員の多くは 英語で表現する機会

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

平成 29 年度 全国学力 学習状況調査結果と対策 1 全国学力調査の結果 ( 校種 検査項目ごとの平均正答率の比較から ) (1) 小学校の結果 会津若松市 国語 A は 全国平均を上回る 国語 B はやや上回る 算数は A B ともに全国平均を上回る 昨年度の国語 A はほぼ同じ 他科目はやや下

平成 28 年度全国学力 学習状況調査の結果伊達市教育委員会〇平成 28 年 4 月 19 日 ( 火 ) に実施した平成 28 年度全国学力 学習状況調査の北海道における参加状況は 下記のとおりである 北海道 伊達市 ( 星の丘小 中学校を除く ) 学校数 児童生徒数 学校数 児童生徒数 小学校

1. 研究主題 学び方を身につけ, 見通しをもって意欲的に学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における算数科授業づくりを通して ~ 2. 主題設定の理由 本校では, 平成 22 年度から平成 24 年度までの3 年間, 生き生きと学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における授業づくり通して~ を研究主題に意欲的

2 各教科の領域別結果および状況 小学校 国語 A 書くこと 伝統的言語文化と国語の特質に関する事項 の2 領域は おおむね満足できると考えられる 話すこと 聞くこと 読むこと の2 領域は 一部課題がある 国語 B 書くこと 読むこと の領域は 一定身についているがさらに伸ばしたい 短答式はおおむ

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自己決定の場を設定する 自己存在感を持たせる 共感的な人間関係を育成する準備活動のどの場面で どの子どもを生かすのか 見通しを持って授業に臨む 導入の場面する 深める場面り返りの場面2 確かな学力の育成 複雑で変化の激しい現代社会に子どもたちが主体的に関わり よりよい社会を創造していくためには 一人

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成績評価を「学習のための評価」に

教授用資料 新しい学習指導要領の方向性小学校英語光村図書 新しい学習指導要領のポイント 東京家政大学教授小泉仁 I. はじめに 2017 年 3 月, 幼稚園 小学校 中学校の新学習指導要領が告示された 小学校では 外国語活動 を3 4 年生で扱い,5 6 年生の英語は 外国語 ( 英語 ) 科 と

課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

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平成 30 年 1 月平成 29 年度全国学力 学習状況調査の結果と改善の方向 青森市立大野小学校 1 調査実施日平成 29 年 4 月 18 日 ( 火 ) 2 実施児童数第 6 学年 92 人 3 平均正答率 (%) 調 査 教 科 本 校 本 県 全 国 全国との差 国語 A( 主として知識

総合的な学習の時間とカリキュラム・マネジメント

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考え 主体的な学び 対話的な学び 問題意識を持つ 多面的 多角的思考 自分自身との関わりで考える 協働 対話 自らを振り返る 学級経営の充実 議論する 主体的に自分との関わりで考え 自分の感じ方 考え方を 明確にする 多様な感じ方 考え方と出会い 交流し 自分の感じ方 考え方を より明確にする 教師

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授業科目名英語科教育基礎論 a (Basics of English Language Education a) 科目番号 授業形態講義単位数 1 単位標準履修年次 2 年次実施学期春 AB 曜時限水曜 2 時限対象学群 学類担当教員 ( 連絡先 ) 斉田智里 ( 非常勤講師 ) オ

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H27 国語

7 本時の指導構想 (1) 本時のねらい本時は, 前時までの活動を受けて, 単元テーマ なぜ働くのだろう について, さらに考えを深めるための自己課題を設定させる () 論理の意識化を図る学習活動 に関わって 考えがいのある課題設定 学習課題を 職業調べの自己課題を設定する と設定する ( 学習課題

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【学習指導要領改訂】 高等学校の新教科・科目構成(案)|旺文社教育情報センター

第 2 章 知 徳 体 のバランスのとれた基礎 基本の徹底 基礎 基本 の定着 教育基本法 学校教育法の改正により, 教育の目標 義務教育の目標が定められるとともに, 学力の重要な三つの要素が規定された 本県では, 基礎 基本 定着状況調査や高等学校学力調査を実施することにより, 児童生徒の学力や学

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2、協同的探究学習について

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(2) 指導の実際 1 話すこと 聞くこと の実践ア協働による教材研究の柱 モデルの提示について対話のためのスキルの定着や対話の深まりを目指し, 教師や代表グループによる対話のモデルを提示し, 気付いたことや発見したことを基に自分たちの対話や話合いの様子を振り返らせ, 学びの充実を図るようにする 共

教育 学びのイノベーション事業 ( 平成 23~25 年度 ) 総務省と連携し 一人一台の情報端末や電子黒板 無線 LAN 等が整備された環境の下で 教科指導や特別支援教育において ICT を効果的に活用して 子供たちが主体的に学習する 新たな学び を創造する実証研究を実施 小学校 (10 校 )

ホームページ掲載資料 平成 30 年度 全国学力 学習状況調査結果 ( 上尾市立小 中学校概要 ) 平成 30 年 4 月 17 日実施 上尾市教育委員会

2 研究の歩みから 本校では平成 4 年度より道徳教育の研究を学校経営の基盤にすえ, 継続的に研究を進めてきた しかし, 児童を取り巻く社会状況の変化や, 規範意識の低下, 生命を尊重する心情を育てる必要 性などから, 自己の生き方を見つめ, 他者との関わりを深めながらたくましく生きる児童を育てる

訂されている 幼稚園 小 中学校学習指導要領改訂の基本的な考え方として 次の 3つがあげられる 1. 子供たちに求められる資質 能力を明確にし それらを社会と共有していくという社会に開かれた教育課程を実現していく 2. 現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で 知識の理解の質を高めていく 3

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英語科学習指導案 京都教育大学附属桃山中学校 指導者 : 津田優子 1. 指導日時平成 30 年 2 月 2 日 ( 金 ) 公開授業 Ⅱ(10:45~11:35) 2. 指導学級 ( 場所 ) 第 2 学年 3 組 ( 男子 20 名女子 17 名計 37 名 ) 3. 場所京都教育大学附属桃山中

資料1 児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ(第1~第3回)における主な意見等

文部科学省作成 新学習指導要領対応 外国語教材’We Can!’(小学校高学年用)説明資料


Ⅲ 目指すべき姿 特別支援教育推進の基本方針を受けて 小中学校 高等学校 特別支援学校などそれぞれの場面で 具体的な取組において目指すべき姿のイメージを示します 1 小中学校普通学級 1 小中学校普通学級の目指すべき姿 支援体制 多様な学びの場 特別支援教室の有効活用 1チームによる支援校内委員会を

福祉科の指導法 単位数履修方法配当年次 4 R 2 年以上 科目コード EC3704 担当教員佐藤暢芳 ( 上 ) 赤塚俊治 ( 下 ) 2017 年 11 月 20 日までに履修登録し,2019 年 3 月までに単位修得してください 2014 年度までの入学者が履修登録可能です 科目の内容 福祉科

り込んで獲得するものではなく 探究の過程を通して 自分自身で取捨 選択し 整理し 既にもっている知識や体験と結び付けながら 構造化され 身に付けていくものである そして こうした過程を経て獲得された知識は 実社会 実生活における様々な課題の解決に活用可能な生きて働く知識 すなわち概念として形成されて

新学習指導要領を具現化した新教材の解説

第4章 道徳

人間関係を深めるとともに, 児童が自己の生き方についての考えを深め, 家庭や地域社会との連携を図りながら, 集団宿泊活動やボランティア活動, 自然体験活動などの豊かな体験を通して児童の内面に根ざした道徳性の育成が図られるよう配慮しなければならない その際, 特に児童が基本的な生活習慣, 社会生活上の

国語 B では 話すこと 聞くこと 領域において 全国及び県平均を上回っているが 他の三つの領域においては 全国及び県平均を下回っている 活用する力を育成する取組のさらなる充実が必要である 設問 1 の目的に応じて 話し合いの観点を整理する力は身についてきている 設問 3 の二つの詩を比べて読み 自

4 研究内容 (1) 習得すべき目標指導計画を作成するには 生徒が身に付けるべき英語力の目標を設定することから始めなければならない ア中学校における英語教育の目標中学校において生徒が身に付けるべき英語力については 学習指導要領に次のように示されている ( 中学校における外国語教育の目標 ) 外国語を

必要性 学習指導要領の改訂により総則において情報モラルを身に付けるよう指導することを明示 背 景 ひぼう インターネット上での誹謗中傷やいじめ, 犯罪や違法 有害情報などの問題が発生している現状 情報社会に積極的に参画する態度を育てることは今後ますます重要 目 情報モラル教育とは 標 情報手段をいか

幼児の実態を捉えると共に 幼児が自分たちで生活をつくり出す保育の在り方を探り 主体的 に生活する子どもを育むための教育課程及び指導計画を作成する 3 研究の計画 <1 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉える 教育課程 指導計画を見直す <2 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉え その要因につ

4 学習の活動 単元 ( 配当時間 ) Lesson 1 ( 15 時間 ) 題材内容単元の目標主な学習内容単元の評価規準評価方法 Get Your Goal with English より多くの相手とコミュニケーションをとる 自己紹介活動を行う コミュニケーションを積極的にとろうとしている スピー

平成 30 年 6 月 8 日 ( 金 ) 第 5 校時 尾道市立日比崎小学校第 4 学年 2 組外国語活動 指導者 HRT 東森 千晶 JTE 片山 奈弥津 単元名 好きな曜日は何かな? ~I like Mondays.~ 本単元で育成する資質 能力 コミュニケーション能力 主体性 本時のポイント

小中学校表紙(新)

工業教育資料347号

調査の概要 1 目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析し 教育施策の成果と課題を検証し その改善を図るとともに そのような取組を通じて 教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する また 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の

①H28公表資料p.1~2

国語 A では, 領域別, 観点別, 問題形式別に見て, どの区分においても全国平均を上回り, 高い正答率でした しかし, 設問別でみると全国および新潟県平均正答率を下回った設問が, 15 問中 1 問, 新潟県の平均正答率を下回った設問は,15 問中 1 問ありました 設問の概要関屋小新潟県全国

Transcription:

2 研究の実際 (1) 新学習指導要領に関わる理論研究ア外国語教育の現状と課題グローバル化が急速に進展する中 外国語によるコミュニケーション能力は これまでのように一部の業種や職種だけでなく 生涯にわたる様々な場面で必要とされることが想定されます そのため その能力の向上は 教育やビジネスなど様々な分野に共通する喫緊の課題とされています 2013 年 12 月には文部科学省から グローバル化に対応した英語教育改革実施計画 が公表され 小 中 高等学校を通じて学びを改善 充実させる 新たな英語教育改革が進められています 外国語科ではこれまでも 外国語を通じて言語や文化に対する理解を深め 積極的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度や 情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりする力を身に付けさせることを目標とし 聞くこと 話すこと 読むこと 書くこと などを総合的に育成する様々な取組が行われてきました このことにより 生徒が 聞くこと 及び 話すこと の活動を行うことに慣れているなど 一定の成果が生まれていますが 生徒の英語力や授業において課題も見られます 学習指導要領解説で指摘されている課題について 表 1のように整理しました 表 1 生徒の英語力や外国語の授業における課題 [ 生徒の英語力における課題 ] 習得した知識や経験を生かし コミュニケーションを行う目的や場面 状況等に応じて自分の考えや気持ちなどを適切に表現する力が身に付いていない [ 外国語の授業における課題 ] 小 中 高等学校間の接続が十分とは言えず 各学校段階における学習内容や指導方法等を発展的に生かすことができていない 授業では 文法 語彙等の知識がどれだけ身に付いたかという点に重点が置かれる傾向がある 外国語によるコミュニケーション能力の育成を意識した取組 特に 話すこと 及び 書くこと などの言語活動が適切に行われていない やり取り や 即興性 を意識した言語活動が十分に行われていない 複数の技能を統合した言語活動が十分に行われていない これらの課題は 英語教育の実態と英語教員の意識について明らかにすることを目的にベネッセ教育総合研究所が実施した 中高の英語指導に関する実態調査 2015 (1) の結果にも見ることができます 授業で行われている学習活動について 音読や教科書本文のリスニングなど音声を中心とした活動 また 文法指導や教科書の内容読解はよく行われているものの ディスカッションやスピーチを行うこと 初見の英文を読むことなど 実際のコミュニケーションの場面を想定し 習得した知識 技能を活用させる言語活動があまり行われていないという実態がうかがえます ( 次頁図 1-1) また 生徒が自分の考えを英語で表現する機会を作る 複数の技能を統合的に用いる活動を行う 4 技能のバランスを考慮して指導する などについて 重要だと認識されているにも関わらず 実際にはなかなか行われていないという現状があるようです ( 次頁図 1- ➁) 理論研究 -1

➀ Q. 授業において, 次のことをどれくらい行いますか ➁ Q. 英語を指導する際 次のことはどれくらい重要だと思いますか また それぞれについてあなた自身はどの程度実行していますか ベネッセ教育総合研究所 中高の英語指導に関する実態調査 2015 ( 平成 28 年 3 月 ) のデータを基に筆者が作成 図 1 英語科の授業における指導の実態 ( 校長 717 名 英語教員 1801 名が回答 ) 理論研究 -2

イ外国語科の目標新学習指導要領では 全ての教科等や教育活動を通じて育成を目指す資質 能力が 知識及び技能 思考力 判断力 表現力等 学びに向かう力 人間性等 の三つの柱に整理されています そして 全ての教科等の目標や内容が 三つの柱に基づいて再整理され 明確に示されています 外国語科においても これまでの教育における課題を踏まえ 外国語科で育てる資質 能力を明らかにするとともに 小 中 高等学校におけるそれぞれの学びをつなぎ 外国語を使って何ができるようになるか を明確にするという観点から 目標の改善 充実が図られています 新学習指導要領に示された 中学校外国語科の目標は次の通りです 外国語によるコミュニケーションにおける見方 考え方を働かせ 外国語による聞くこと 読むこと 話すこと 書くことの言語活動を通して 簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質 能力を次のとおり育成することを目指す 文部科学省 中学校学習指導要領 平成 29 年 3 月第 2 章第 9 節 今回の改訂において 外国語が小学校高学年で教科として扱われ 現行の 外国語活動 が中学年で導入されることから コミュニケーション能力の基礎の育成 は小学校で行われることになります それに伴い中学校では 小学校における学びを生かし コミュニケーションを図る資質 能力の育成 を行うことになります 関心のある事柄や日常的な話題 また 社会的な話題について 英語でコミュニケーションを図ろうとする積極的な態度を持ち 授業で獲得した言語知識や技能を 実際のコミュニケーションを目的として運用できる能力を育てることが求められています コミュニケーションを図る資質 能力 について 資質 能力の三つの柱に基づいて整理したものを それぞれの目標と共に表 2に示しました 知識及び技能が 実際のコミュニケーションにおける思考 判断 表現の繰り返しを通して獲得され それによって学習内容の理解が深まるなど 資質 能力を相互に関係付けながら育成することが大切となります 表 2 コミュニケーションを図る資質 能力は 中学校学習指導要領 ( 平成 29 年 3 月 ) より引用 その他は 外国語ワーキンググループにおける審議の取りまとめ資料 2 ( 平成 28 年 8 月 ) を参考資質 能力の三つの柱コミュニケーションを図る資質 能力 知識及び技能 何を知っているか 何がで きるか 目標 外国語の音声や語彙 表現 文法 言語の働きなどを理解するとともに これらの知識を 聞くこと 読むこと 話すこと 書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる技能を身に付けるようにする 理論研究 -3

知識 外国語の音声や語彙 表現 文法 言語の働きなどの理解 基礎的 基本的な知識を確実に習得すること 既存の知識と関連付けたり組み合わせたりして 学習内容の深い理解と 個別の知識の定着を図ること 社会における様々な場面で活用できる概念としていくこと 技能 聞くこと 読むこと 話すこと 書くことによる実際のコミュニケーションにおける知識の活用 獲得した個別の技能を自分の経験や他の技能と関連付け 変化する状況や課題に応じて主体的に活用できる技能として習熟 熟達していくことなど 思考力 判断力 表現力等知っていること できることをどう使うか 学びに向かう力 人間性等どのように社会 世界と関わり よりよい人生を送るか 目標 コミュニケーションを行う目的や場面 状況などに応じて 日常的な話題や社会的な話題について 外国語で簡単な情報や考えなどを理解したり これらを活用して表現したり伝え合ったりすることができる力を養う 外国語で 情報や考えなどを表現し伝え合う力 コミュニケーションを行う目的 場面 状況等に応じて 幅広い話題について 外国語を聞いたり読んだりして情報や考えなどを的確に理解するコミュニケーション力 コミュニケーションを行う目的 場面 状況等に応じて 幅広い話題について 外国語を話したり書いたりして情報や考えなどを適切に表現するコミュニケーション力 外国語で聞いたり読んだりしたことを活用して 外国語で話したり書いたりして情報や考えなどの概要 詳細 意図を伝え合うコミュニケーション力 考えの形成 整理 目的等に応じて 外国語の情報を選択したり抽出したりする力 知識や得た情報を活用して 自分の意見や考えを外国語で形成 整理 再構築する力 形成 整理 再構築した自分の意見や考えを 実際に外国語で表現する力など 目標 外国語の背景にある文化に対する理解を深め 聞き手 読み手 話し手 書き手に配慮しながら 主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う 理論研究 -4

外国語を通じて 言語やその背景にある文化を尊重しようとする態度 自律的 主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度 他者を尊重し 聞き手 読み手 話し手 書き手に配慮しながら 外国語で聞いたり読んだりしたことを活用して 情報や考えなどを外国語で話したり書いたりして表現しようとする態度 外国語を通じて積極的に人や社会と関わり 自己を表現するとともに他者を理解するなど互いの存在について理解を深め 尊重しようとする態度など コミュニケーションを図る資質 能力 は 小学校から高等学校までの学習において 段階を追って育成されることになります その指標として 国際的な基準である CEFR を参考に 聞くこと 読むこと 話すこと [ やり取り ] 話すこと[ 発表 ] 書くこと の五つの領域別に示された学習到達目標の例が示されました ( 次頁表 3) これらの5つの領域を複数統合した言語活動を通して 各学校段階でコミュニケーションを図る資質 能力を育成し それぞれの学びをつないでいくことになります 中学校卒業時には 生徒に 聞くこと 読むこと 話すこと 及び 書くこと の技能が 総合的に身に付いていることが期待されます この目標の実現に向け 学習する内容や指導なども改善 充実が図られています 主な改善内容とそれらの目的を整理し 次頁表 4に示しました 国際的な基準 :CEFR(Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment 外国語の学習 教授 評価のためのヨーロッパ共通参照枠 ) は 語学シラバスやカリキュラムの手引の作成 学習指導教材の編集 外国語運用能力の評価のために 透明性が高く 包括的な基盤を提供するものとして 20 年以上にわたる研究を経て 2001 年に欧州評議会が複言語主義の理念の下 発表したものである 学習者 教授する者 評価者が共有することによって 外国語の熟達度を同一の基準で判断しながら 学び 教え 評価できるよう 開発されたものである (2) 理論研究 -5

表 3 外国語 等における小 中 高等学校を通じた国の指標形式の目標 ( イメージ ) たたき台 (3) 文部科学省 外国語ワーキンググループにおける審議の取りまとめ 平成 28 年 8 月 表 4 学習内容及び学習指導の改善内容と目的 改善内容 授業は英語で行うことを基本とする 取り扱う語数は 小学校で学習する 600 700 語に加え 1600~1800 語程度とする また 感嘆文のうち基本的なもの や 現在完了進行形 など数項目の文構造や文法事項を追加する 小中の接続を重視し 学びの連続性を意識する 話すこと について [ やり取り ] と [ 発表 ] の二つの領域に分ける 即興 で話す力を育成する 改善の目的 生徒が英語に触れる機会を充実させるとともに 授業を実際のコミュニケーションの場面となるようにする オーセンティックな言語活動において 五つの領域別の目標を達成するために 使用する表現をより適切で豊かなものにする 小学校における学習内容や指導方法等を発展的に生かし 生徒の学びを広げ 深める 複数の話者が相互に話す[ やり取り ] と 一人の話者が連続して話す [ 発表 ] では 話すこと の特性に違いがあることを踏まえ それぞれの領域について 言語の使用場面や言語の働きを適切に取り上げ 語 文法事項などの言語材料を効果的に関連付けた言語活動を行う 生徒が実際のコミュニケーションの場面で より円滑に自分の気持ちや考えを伝えたり 情報を伝えたりすることができる力を育成する 理論研究 -6

ウ外国語科における 見方 考え方 新学習指導要領では 全ての教科等を通じて 見方 考え方 を働かせた深い学びを実現させることが求められています 見方 考え方 とは どのような視点で物事を捉え どのような考え方で思考していくのか という その教科等ならではの物事を捉える視点や考え方です 各教科等において身に付けた知識及び技能を活用したり 思考力 判断力 表現力等や学びに向かう力 人間性等を発揮したりすることを通して鍛えられていくもので その過程を重視し 学習を充実させていくことが求められています 外国語によるコミュニケーションにおける 見方 考え方 は以下のように示されています (4) 外国語で表現し伝え合うため 外国語やその背景にある文化を 社会や世界 他者との関わりに着目して捉え コミュニケーションを行う目的や場面 状況等に応じて 情報を整理しながら考えなどを形成し 再構築すること 文部科学省 中学校学習指導要領解説外国語編 平成 29 年 7 月第 2 章第 1 節 言語は人との関わりの中で用いられるため 他者を尊重する気持ちを持ち 聞き手 読み手 話し手 書き手に配慮しながらコミュニケーションを図ることが求められます 外国語を用いた実際のコミュニケーションの場面では 社会や世界との関わりの中で物事を捉えたり 外国語やその背景にある文化を理解したりしながら 様々なバックグラウンドを持った人たちとコミュニケーションを図っていくことが重要となります そこで授業においても 生徒が相手意識を持ち 目的や場面 状況等に応じて思考 判断することを通して 適切な言語材料の活用や 様々な情報の精査 整理などを行いながら 自分の気持ちや考えを構築したり 伝え合ったりすることができる言語活動を実現することが必要です そうすることで 見方 考え方 が確かで豊かなものになり 学ぶ意味の理解が図られます そして 自分の生活や人生と社会をつなぐ学びが実現され 学校で学ぶ内容が生きて働く力として育まれることになります 理論研究 -7

エ外国語科における学習過程学習指導要領解説外国語編では 英語科における資質 能力を偏りなく育成していくために 図 2に示す学習過程において 学んだことの意味付けを行ったり 既有の知識や経験と 新たに得られた知識を言語活動で活用したりすることで 思考力 判断力 表現力等 を高めていくことが大切だとされています そして 考えが広がったり深まったりすることを 生徒自身が実感し 自分の学びや成長を自覚して自信を持つことができるような手立てを仕組むことが求められます また 1から4の学習過程を繰り返し経ながら 指導の改善 充実を図る必要があります 1 設定されたコミュニケーションの目的や場面 状況等を理解する 2 目的に応じて情報や意見などを発信するまでの方向性を決定し コミュニケーションの見通しを立てる 3 目的達成のため 具体的なコミュニケーションを行う 4 言語面 内容面で自ら学習のまとめと振り返りを行う 文部科学省 中学校学習指導要領解説外国語編 平成 29 年 7 月第 2 章第 1 節 (5) 図 2 外国語教育における学習過程 オ 主体的 対話的で深い学び の実現を図る授業改善変化の激しいこれからの時代を生きる子供たちが 様々な課題に積極的に向き合い 生涯にわたって能動的に学び続け たくましく生き抜いていくことができる資質 能力を育むために 学校教育において 学習の質を高める授業改善の取組を活性化していくことが求められています その授業改善の視点として 主体的 対話的で深い学び の実現が示されています 主体的な学び 対話的な学び 深い学び の実現を目指す授業改善の視点は 表 5のように整理されています (6) 表 5 主体的 対話的で深い学び の実現を目指す授業改善の視点学ぶことに興味や関心を持ち 自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら 見主体的な学び通しを持って粘り強く取り組み 自らの学習活動を振り返って次につなげる 主体的な学び ができているか 子供同士の協働 教職員や地域の人との対話 先哲の考え方を手掛かりに考えるこ対話的な学びと等を通じ 自らの考えを広げ深める 対話的な学び が実現できているか 習得 活用 探究の学びの過程の中で 各教科等の特質に応じた 見方 考え方 深い学びを働かせて思考 判断 表現し 学習内容の深い理解につながる 深い学び ができているか 中央教育審議会 幼稚園 小学校 中学校 高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について ( 答申 ) 平成 28 年 12 月第 1 部第 7 章 2 理論研究 -8

これらの実現を図ることにより 図 3 のイメージで示されているとおり 通常行われている学習 活動の質を向上させ 生徒の学びが 将来に生きるより確かなものになることを目指していくこと になります 中央教育審議会 幼稚園 小学校 中学校 高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について ( 答申 ) 平成 28 年 12 月補足資料 p.12 より抜粋図 3 資質 能力の育成と主体的 対話的で深い学び ( アクティブ ラーニング の視点) の関係 ( イメージ ) (7) 理論研究 -9

主体的 対話的で深い学び の実現を図る外国語の授業づくりについて 幼稚園 小学校 中学校 高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について ( 答申 ) 及び学習指導要領解説外国語編に示されている主なものを 本研究委員会では以下のように整理しました 外国語教育においては 質の高い学びに向けて 学びの過程を 相互に関連を図りつつ 改善 充実を図ることが必要である そのような過程で外国語によるコミュニケーションを 通じて 自分の思いや考えが深まったり更新されたりすることを児童生徒が認識し 自信を 持つことができるような学習活動を設けることが重要である (8) 文部科学省 幼稚園 小学校 中学校 高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について ( 答申 ) 平成 28 年 12 月第 2 部第 2 章 12 授業の方法や技術の改善のみを意図するものではなく 各教科等において通常行われている学習 活動の質を向上させることを主眼とするものである 主体的 対話的で深い学びは 必ずしも 1 単位時間の授業の中で全てが実現されるものではな く 単元など内容や時間のまとまりの中で授業改善を進めることが求められる 授業改善の視点例 主体的に学習に取り組めるよう学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりして自身 の学びや変容を自覚できる場面をどこに設定するか 対話によって自分の考えなどを広げたり深めたりする場面をどこに設定するか 学びの深まりをつくりだすために 生徒が考える場面と教師が教える場面をどのように組み立 てるか 生徒や学校の実態に応じ 多様な学習活動を組み合わせて授業を組み立てていくことが重要であ る 単元のまとまりを見通した学習を行うに当たり 基礎となる知識及び技能の習得に課題が見られ る場合には それを身に付けるために 生徒の主体性を引き出すなどの工夫を重ね 確実な習得 を図ることが必要である 引用文献 (1) ベネッセ教育総合研究所 中高の英語指導に関する実態調査 2015 平成 28 年 3 月 http://berd.benesse.jp/up_images/research/03_eigo_shido.pdf (2)(4)(5) 文部科学省 中学校学習指導要領解説外国語編 平成 29 年 7 月第 1 章 2 第 2 章第 1 節 第 2 章第 1 節 (3) 文部科学省 外国語ワーキンググループにおける審議の取りまとめ 平成 28 年 8 月 (6)(7)(8) 中央教育審議会 幼稚園 小学校 中学校 高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について ( 答申 ) 平成 28 年 12 月第 1 部第 7 章 2 補足資料 p.12 第 2 部第 2 章 12 理論研究 -10