平成 24 年 12 月 20 日 緊急研修会文学館 この冬の感染性胃腸炎の発生状況について ~ 疫学調査結果を踏まえた感染防止策 ~ 中北保健所衛生課 藤巻勤
食中毒とは? 食中毒とは 飲食物を介して付着 増殖した病原微生物や有害な物質によって起こる急性の胃腸炎症状を主とする健康障害をいいます
全国の食中毒事件数 (H14~23) 食中毒事件件数 件 700 600 500 400 300 200 100 ノロウィルスカンピロバクターサルモネラ菌属腸炎ビブリオ病原性大腸菌黄色ブドウ球菌ウエルシュ菌セレウス菌腸管出血性大腸菌 0 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 年
全国の食中毒患者数 (H14~23) 食中毒患者数 30,000 ノロウィルス 人 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 カンピロバクターサルモネラ菌属ウエルシュ菌黄色ブドウ球菌腸炎ビブリオセレウス菌腸管出血性大腸菌病原性大腸菌 0 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 年
ノロウイルスの感染経路 食中毒 食中毒 人 人 2 次感染
全国の感染性胃腸炎の発生状況
本県の感染性胃腸炎の発生状況
ノロウイルス豆知識 1 1. 感染力が強い 10~100 個 でも発症 2. 人間の体の中でしか増殖できず 患者 の糞便や吐物の中に大量に存在 3. 消毒薬に強い ( アルコール 逆性石鹸は効果弱 ) 4. 長期間 感染力を保持
ノロウイルス豆知識 2 ノロウイルスに感染しても 症状がなく ウイルスを糞便から排出する人がいる 症状が消えても1 週間程度 長い時には1ヶ月間ウイルスの排出が続くことがある 家族 職場で下痢をしている人がいると 自分自身も感染している可能性があるので 手洗いには特に注意を
患者の糞便や吐物の中には どの程度 ノロウイルスがいるのか 100 個以下で発症 発症中の患者の糞便には ノロウイルスが 1g 中 1 億個以上 また 乳幼児では 100 億個以上いる 発症中の患者の吐物 1g 中 1000 万個ノロウイルスが存在することがある 危険 目に見えない微量の糞便や吐物中の ウイルス量は非常に多く 多数の人を発症させることができる
ノロウイルスの分類 1 GⅠ ~ 14 GⅡ 1 ~ 17
事件数 患者数 ノロウイルス食中毒の最近の動向 シーズン :9 月 ~ 翌年 8 月 1,000 900 800 GⅡ/4 30,852 35,000 30,000 700 25,000 600 500 400 300 200 100 9,753 10,809 10,781 11,055 270 262 286 279 513 15,835 10,885 365 274 13,436 399 6,490 242 20,000 15,000 10,000 5,000 0 02-03 03-04 04-05 05-06 06-07 07-08 08-09 09-10 10-11 0 事件数 患者数
ノロウイルス食中毒の最近の動向 かき に関連しない事例は調理従事者がノロウイルスに感染し 調理従事者が食品を二次汚染させたケースが大半 かきに関連しない事例は 12 月にピーク かきに関連している事例は 1 月にピーク
今シーズンのノロウイルス 2009 年 9 月に以降に検出されたノロウイルスの遺伝子の塩基配列を分析 近年の主流遺伝子型である GⅡ/4 に属している オーストラリアで 2012 年 3 月に検出されたあたらしい GⅡ/4 変異株に極めて近い 2012 年 5 月に北海道で検出され 9 月以降全国各地で検出されている
ノロウイルス対策のポイント 吐物処理を確実に実施する! 下痢の処理も吐物と同じくらい厳重に! 症状の無い人もウイルスを持っていると思って! 施設内で起きている状況をすべての職員 関係者が共有する!
ノロウイルス対策のポイント 直接食品に触らないときにも 手洗いと使い捨て手袋を使用すること! 給食の委託業者も施設職員と同じ! 調理従事者専用のトイレ 更衣室を!
これまでの方法 85 以上で 1 分間以上の加熱 次亜塩素酸ナトリウムによる消毒
ノロウイルスの不活化条件 おう吐物や糞便等の高濃度のノロウイルス汚染の除去には 汚染物を可能な限り物理的に除去して 5000ppm の次亜塩素酸ナトリウムか SD S 水酸化ナトリウム アルコールの配合物が推奨される
1 食材由来の細菌 ウイルスをやっつける 中心部が 85 で 1 分以上になるよう 加熱すること! 二枚貝 ( カキ アサリ シジミ等 ) はノロウイルスを蓄積していることがあるので ウイルスを確実に失活する必要があります 資料提供 : 札幌市
2 調理器具等からの汚染防止 熱湯 (85 以上 ) で 1 分以上加熱! 調理器具 シンクはしっかり洗浄!
3 調理従事者からの 食品汚染防止 手洗いが肝心! 逆性石けん アルコールの 消毒効果では 不十分! 資料提供 : 京都府
3 ー 1 従事者自身が感染しない 生ものには要注意! 資料提供 : 京都府
3 ー 2 従事者自身が感染しない 外出 トイレの後はしっかり手洗い! 資料提供 : 長野県 京都府
自分自身の健康管理が 重要です!! 健康診断 検便 毎日の体調チェック
汚れが残りやすい
爪は短く切る時計 指輪などははずす
流水でよく洗う
薬用石けんを十分に泡立て 手のひらを洗う
手の甲はのばすように洗う
指の間は両手を組むように洗う
親指は反対の手でねじるように洗う
手のひらに指先を立てて手のしわなどを洗う
爪ブラシで爪の間を洗う
手首もしっかり洗う
タオルの共用は避け個人用のタオルを使用 ペーパータオルが望ましい
蛇口もしっかり洗い流し拭き取る
~ 嘔吐処理の実際と消毒のポイント ~ 内容 1. 平常時の準備 ~ 嘔吐処理セット 2. 消毒薬の作り方 3. 嘔吐処理の方法 ( 実技 ) 4. 疫学調査結果からの注意点 5. まとめ 中北保健所 37
1. 平常時からの準備 ~ 嘔吐処理セット マスク (1) 使い捨て撥水性エプロン (1) 使い捨て手袋 (2) ペーパータオル又は新聞紙 ゴミ袋 (3) 足カバー準備を!! 足カバー又はゴミ袋小 2 次亜塩素酸ナトリウム 水入り 2L ペットボトル 水入り 500mL ペットボトル 38
施設内表示の準備 感染性胃腸炎 ( ノロウイルス等 ) の流行に注意!! 冬期には感染性胃腸炎の患者数がピークを迎えます 一人一人が注意して感染を予防しましょう 感染予防のために 例 1 手洗いを励行する アルコール消毒は当たり前でシンプルですが 感染症予防にはこれが一番大事! 効かないぜ!! 2 嘔吐 下痢等があった場合や 見か けた場合は 職員にお知らせくださ い もしも汚してしまっても 後処理はご自分でしないこと! 次亜塩素酸ナトリウム ( ハイター等 ) の希釈液でなければ消毒できません 中北保健福祉事務所
嘔吐処理セットについて (1) 所属にひとつではなく 各フロアー セクションに準備しましょう (2) 配置場所を職員間で共有しておきましょう (3) 嘔吐の第 1 対応が カギになります 職員全員で対応できるよう 施設内でシミュレーションしましょう * 職員の入れ替わる季節に注意! (4) 施設内掲示も重要! 来所者が嘔吐を勝手に処理すると危険です 40
2 消毒薬について ~ ウイルスを死滅させるには 次亜塩素酸ナトリウム 85 度 1 分以上の加熱 アル コール 消毒 41
消毒液 : 次亜塩素酸ナトリウム溶液作り方 すぐに消毒液を作れるよう あらかじめ水をいれておきましょう!! 水 2L に対してキャップ約 8 杯の市販の次亜塩素酸ナトリウム溶液です 厚生労働省で ノロウイルスの消毒液として示されているのは 42
3. 嘔吐処理の方法 (1) 1. 役割分担が必要です ~ 応援要請を!! 1 嘔吐者を対応する人 ( マスク 使い捨てエプロン 足カバー 手袋等装着 ) ビニールシート ( またはゴミ袋大を開いたもの ) 上で着替えさせる 使用したシートは汚れた部分を内側にして折り込み 適切な汚物処理 に使っているゴミ袋 A に捨て 素早く汚染区域外へ出る 2 周囲の人を非感染区域に避難させる人 * 日頃から 嘔吐者が出たら 近寄らない 避難する 職員を呼ぶ体制づくり 3 嘔吐処理をする人 ( マスク 使い捨てエプロン 足カバー 手袋装着 ) 43
がっこうのみんなへ 山梨県中北保健所 もしも ともだちが はいちゃったら? そのこはわるくないよね みんなでたすけあわなきゃ もしも ともだちがはいちゃったら まわりのこがせんせいをよんでこよう! もしも ともだちがはいちゃったら さわってはだめ! せんせいがかたづけてくれるのをまとう はいたものは そのまわりにひろくとぶんだよ ほら こーんなにはいたものって とぶんだ みんなの健康を守るちいきくん もちろん いつもてあらいがたいせつ! よかった ~! みんなのおかげではやくよくなったね!!
吐物処理 ( 手順 ) 提供資料 45
吐物処理 ( 手順 ) 吐物処理 ( 手順 ) 46
8 疫学調査結果を通じて (1) 足カバーの装着足カバーを装着していなかったため 足に付着したウイルスを伝搬してしまった事例があります 嘔吐物が飛び散る範囲は広範囲です 足カバーを使用しましょう (2) 嘔吐処理セットの配置と職員の共有配置していたが 施設に1つしかなく また実際に嘔吐があった際 どこにあるかわからず 対応がスピーディーにできなかった事例があります 配置先を増やし 職員間で場所を共有しましょう (3) 嘔吐処理の第 1 発見時の対応がカギ処理者が 次亜塩素酸ナトリウム液で処理せず 感染が広がった事例があります 第 1 処理が 感染拡大に大きく影響します 嘔吐物をみたら ノロウイルスを疑って 最初から次亜塩素酸ナトリウムで消毒しましょう (4) 対応者等の健康観察 嘔吐処理者 嘔吐者対応者 周囲にいた人の健康観察を2 日間を行いましょう また 嘔吐処理者や対応者は 食事介助や配膳 おやつ配りなどの対応はさけることが望ましいです 47
8 疫学調査結果を通じて (5) 健康観察の強化と 情報の共有消化器症状の有無等 健康観察を強化しましょう 健康観察の情報を定時に一元化 平常時と比較し 症状の方が多い場合は 施設内で対策を立てましょう 児童生徒 入所者 職員の健康観察はもとより 来所者やボランティアなどの健康チェックも行いましょう (6) おやつ配膳の対応に注意しましょう 食事介助 配膳は 手洗いや エプロンや手袋をして対応しているにもかかわらず おやつの際 手洗いや手袋が使われていないことが見受けられます ウイルスに汚染された手で 配った袋菓子やジュース スプーンなども危険です (7) 嘔吐処理に比べ 下痢 軟便の対応がおろそかになりがちです 下痢 軟便の対応について ケアの前後での手洗い トイレなどの消毒を行いましょう (8) 消毒施設内の頻回さわる場所 ( ドアノブ 手すりなど ) は 消毒しましょう 嘔吐者が発症した場合は 消毒を強化しましょう 薬液浸漬マットは 感染防止に効果がないとされています 使用しないよう 48
参考 平成 2 3 年 6 月 1 7 日付け 厚生労働省医政局指導課長通知 医療機関等における院内感染対策について 近年の知見によると 粘着マット及び薬液浸漬マットについては 感染防止効果が認められないことから 原則として 院内感染防止の目的としては これらを使用しないこと 嘔吐物が飛び散る範囲 ( 東京都調査 ) 床から 1m の高さで吐くとカーペットは最大半径 1.8m( 毛足の長さに左右 ) フローリング 最大半径 2.3m 広い範囲と靴底に注意! 厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/ 040204-1.html 49