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普及技術 6 トルコギキョウ10 月出しとカンパニュラ3 月出しの無加温電照輪作体系 3 利活用の留意点 1) 赤色 LEDランプは, 株式会社鍋精製 (DPDL-R-9W, 波長 620-630nm) を用い, 地表面から光源先端までの距離は1.5m,2m 間隔で設置している (PPFD:0.6~1.4μmol m -2 s -1 ) 2) トルコギキョウの赤色光終夜照射に対する開花抑制及び切り花品質向上効果には, 早晩性が同一とされるシリーズ内でも品種間差があるので注意する 3) カンパニュラは,1 年草タイプの チャンピオン シリーズを用いた結果である 同一定植日における開花期は, スカイブルー が他の品種よりも早いので注意する( 表 3) また, 他の 1 年草タイプの品種については未検討である 4) 小トンネルは, 厚さ0.05mmの農 POで側面を高さ90~100cm 程度に固定張りし, トンネル上部のみを開閉させている ( 図 2) 5) カンパニュラは0 程度の低温に遭遇しても生育に支障がないが, ハウス内最低気温が零下 5 を下回る場合には, 三重被覆でも凍害の恐れがある 6) 本試験の耕種概要は, 以下のとおりである a トルコギキョウ播種 年 4 月 20 日 ( 一部 5 月 2 日 ), 年 4 月 26 日育苗播種後 10 暗黒下で5 週間種子冷蔵処理後, 普通育苗定植 年 7 月 11 日, 年 7 月 10 日条間 10cm, 株間 10cmの中 2 条抜き4 条植え, 白黒ダブルマルチ被覆施肥基肥は無施用, 追肥はN500ppmの液肥を3 回施用電照 年は定植日から8 月 22 日まで, 年は定植日から8 月 24 日まで調製第 1 及び第 2 小花のみを残し, 頂花及び第 3 以降の小花は切除 b カンパニュラ ( ~29 年 ) 試験区 10 月下旬定植 11 月上旬定植 11 月中旬定植播種 9 月 16 日 9 月 23 日 10 月 3 日定植 10 月 28 日 11 月 8 日 11 月 17 日条間 15cm, 株間 15cmの中 1 条抜き4 条植え, 無摘心, 黒マルチ被覆施肥無施用 ( トルコギキョウ後作の残肥のみ ) 電照定植日から収穫時まで ( 問い合わせ先 : 宮城県農業 園芸総合研究所園芸栽培部電話 022-383-8132) 15

宮城県 普及に移す技術 第 93 号 ( 年度 ) 4 背景となった主要な試験研究 1) 研究課題名及び研究期間 a 食料生産地域再生のための先端技術展開事業 周年安定生産を可能とする花き栽培技術の実証研究 ( 平成 25~29 年 ) b 宮城から提案する新規園芸品目の生産技術の開発 ( 平成 27~29 年 ) 2) 参考データ 表 1 赤色光の終夜照射がトルコギキョウ 10 月出し栽培における開花に及ぼす影響 ( ~29 年 ) 品種名早晩性試験年試験区 セレモニーライトピンク コレゾライトピンク ロジーナ (3 型 ) ブルー (ver.2) コレゾローサ クレアダブルピンク パレオゴールド ボンマリン ミンクイエロー 晩生 始期 ( 月日 ) 盛期 ( 月日 ) 開花時期 終期 ( 月日 ) 電照 9 月 23 日 9 月 25 日 9 月 28 日 11 無電照 9 月 12 日 9 月 14 日 9 月 17 日 電照 10 月 4 日 10 月 9 日 10 月 16 日 12 無電照 9 月 25 日 9 月 27 日 10 月 4 日 電照 9 月 26 日 9 月 30 日 10 月 2 日 8 無電照 9 月 20 日 9 月 22 日 9 月 24 日 電照 10 月 9 日 10 月 16 日 10 月 25 日 10 無電照 9 月 25 日 10 月 6 日 10 月 11 日 電照 9 月 25 日 9 月 29 日 10 月 1 日 8 無電照 9 月 16 日 9 月 21 日 9 月 25 日 電照 10 月 4 日 10 月 11 日 10 月 23 日 7 無電照 9 月 27 日 10 月 4 日 10 月 9 日 電照 9 月 23 日 9 月 26 日 9 月 29 日 7 無電照 9 月 17 日 9 月 19 日 9 月 24 日 電照 10 月 4 日 10 月 9 日 10 月 13 日 7 無電照 9 月 29 日 10 月 2 日 10 月 6 日 電照 9 月 26 日 9 月 28 日 10 月 2 日 4 無電照 9 月 21 日 9 月 24 日 9 月 24 日 電照 10 月 6 日 10 月 9 日 10 月 16 日 7 無電照 9 月 25 日 10 月 2 日 10 月 9 日 電照 9 月 25 日 9 月 26 日 9 月 30 日 4 無電照 9 月 17 日 9 月 22 日 9 月 27 日 電照 10 月 4 日 10 月 11 日 10 月 16 日 7 無電照 10 月 2 日 10 月 4 日 10 月 日 電照 9 月 16 日 9 月 19 日 9 月 22 日 5 無電照 9 月 12 日 9 月 14 日 9 月 17 日 電照 9 月 25 日 9 月 27 日 10 月 4 日 5 無電照 9 月 19 日 9 月 22 日 9 月 27 日 電照 9 月 24 日 9 月 30 日 10 月 2 日 4 無電照 9 月 23 日 9 月 26 日 9 月 26 日 電照 10 月 9 日 10 月 13 日 10 月 16 日 4 無電照 10 月 4 日 10 月 9 日 10 月 11 日 z: 開花時期の始期, 盛期, 終期は, 全体の 10%,50%,90% が開花した日, 開花日差は開花盛期の差 (n=20) z 開花日差 ( 日 ) 16

普及技術 6 トルコギキョウ 10 月出しとカンパニュラ 3 月出しの無加温電照輪作体系 表 2 赤色光の終夜照射がトルコギキョウ10 月出し栽培における切り花品質に及ぼす影響 ( ~29 年 ) 切り花 切り花 抽だい 有効 長 長差 節数 花蕾数 切り花重 茎径茎長品種名早晩性試験年試験区 (mm) (cm) (cm) (cm) ( 節 ) ( 個 ) (g) 電照 85 13 5.1 10.7 55 6.4 62.7 セレモニー無電照 72 4.9 8.3 41 6.3 51.2 ライトピンク電照 73 14 4.7 10.5 44 5.2 45.8 無電照 59 4.5 7.5 33 4.4 33.5 電照 94 11 6.3 11.7 63 6.8 89.1 コレゾ無電照 83 6.1 9.7 53 6.3 76.4 ライトピンク電照 86 11 6.5 11.4 55 6.2 76.4 無電照 75 5.8 8.7 39 5.1 61.6 電照 78 16 5.6 9.5 45 6.1 73.4 ロジーナ (3 型 ) 無電照 62 4.8 6.7 31 4.2 46.3 晩生ブルー (ver.2) 電照 84 9 5.7 9.9 53 5.5 69.0 無電照 75 5.5 7.9 43 4.6 59.1 電照 88 10 6.1 11.6 59 6.4 76.0 コレゾ無電照 79 5.7 9.8 49 6.0 64.1 ローサ電照 82 11 5.8 11.0 50 6.1 68.3 無電照 71 5.5 9.0 39 4.9 52.5 電照 84 9 6.0 10.0 56 5.2 71.4 クレア無電照 75 5.7 8.5 46 5.4 59.7 ダブルピンク電照 74 12 5.8 9.2 43 4.8 60.9 無電照 63 5.2 7.1 33 4.2 43.9 電照 83 4 5.0 8.4 51 4.8 53.8 パレオ無電照 79 5.1 7.5 47 4.5 52.7 ゴールド電照 78 12 4.9 8.5 45 4.5 53.4 無電照 66 4.3 6.6 33 3.6 38.3 電照 78 5 5.5 9.9 47 4.9 51.2 無電照 73 5.4 8.5 40 5.1 46.3 ボンマリン電照 73 11 5.9 9.7 41 5.2 53.2 無電照 62 4.7 7.8 33 4.4 34.2 電照 94 9 5.5 8.6 59 6.1 69.8 ミンク無電照 85 5.3 7.7 53 5.3 59.4 イエロー電照 82 6 5.0 8.5 50 5.4 56.1 無電照 76 4.7 7.2 41 4.8 50.7 :t 検定により,5% 水準で有意差あり (n=20) 図 2 三重被覆 ( 小トンネル )( 年 ) 17

宮城県 普及に移す技術 第 93 号 ( 年度 ) 表 3 定植時期及び多重被覆がカンパニュラの開花及び切り花品質に及ぼす影響 ( ~29 年 ) 試験区 z 開花時期 切り花品質 春彼岸品種名切り花長茎径葉数有効 x y 定植時期被覆始期盛期終期開花株率 (cm) (mm) ( 枚 ) 花蕾数 (%) ( 個 ) 10 月下旬 三重 2 月 10 日 2 月 15 日 2 月 日 0.0 74 6.5 14 15 57.5 二重 2 月 15 日 2 月 27 日 3 月 15 日 11.1 67 6.6 15 70.7 チャンピオン三重 3 月 1 日 3 月 4 日 3 月 8 日 0.0 74 6.0 12 15 53.4 11 月上旬スカイブルー二重 3 月 12 日 3 月 20 日 3 月 23 日 57.8 70 7.4 17 22 97.0 11 月中旬 10 月下旬 三重三重 3 月 11 日 2 月 17 日 3 月 17 日 2 月 20 日 3 月 19 日 2 月 26 日 95.6 2.2 67 76 6.8 6.1 14 14 43.8 57.0 二重二重 3 月 21 日 2 月 26 日 3 月 23 日 3 月 11 日 4 月 6 日 3 月 24 日 8.9 36.4 71 70 7.3 6.7 16 22 26 83.0 93.0 チャンピオン三重 3 月 7 日 3 月 11 日 3 月 17 日 58.1 65 5.9 17 15 48.3 11 月上旬ピンク二重 3 月 16 日 3 月 24 日 4 月 1 日 33.3 73 7.2 19 23 100.4 11 月中旬 10 月下旬 三重三重 3 月 16 日 2 月 14 日 3 月 19 日 2 月 日 3 月 28 日 2 月 21 日 62.2 0.0 72 73 6.0 6.6 19 17 17 12 59.9 45.5 二重二重 3 月 26 日 2 月 日 4 月 7 日 3 月 日 4 月 15 日 3 月 29 日 0.0 37.8 76 53 6.8 6.5 20 20 13 81.8 52.7 チャンピオン三重 3 月 2 日 3 月 8 日 3 月 14 日 24.4 68 5.7 20 16 42.0 11 月上旬ホワイト二重 3 月 17 日 3 月 25 日 3 月 31 日 20.0 61 7.7 20 17 63.6 11 月中旬 三重 3 月 12 日 3 月 24 日 3 月 29 日 37.8 67 6.6 22 17 47.5 二重 3 月 26 日 4 月 6 日 4 月 10 日 0.0 68 8.0 24 19 66.0 三重 2 月 日 2 月 20 日 2 月 27 日 0.0 67 6.4 12 12 44.4 10 月下旬チャンピオン二重 2 月 22 日 3 月 17 日 3 月 31 日 13.3 62 6.6 12 15 60.6 パープル三重 3 月 14 日 3 月 21 日 3 月 26 日 44.4 65 6.3 15 14 49.4 11 月中旬二重 3 月 25 日 4 月 3 日 4 月 10 日 0.0 68 7.3 16 21 69.5 z: 始期, 盛期, 終期は, 試験株の 10%,50%,90% が開花した日 y: 試験株のうち,3 月 11~20 日に開花した個体の割合 x: 長さ 2cm 以上の花蕾の合計数 w: 下位葉を 15cm 除いた切り花の重量 w 切り花重 (g) 表 4 赤色 LED ランプ電照導入によるトルコギキョウ 10 月出し 10a 当たりの経営収支試算 ( ~29 年 ) 項 目 金 額 備 考 粗収益 トルコギキョウ 2,352,240 121 19,440 本 ( 市場出荷 8 割 )( 単価は平成 23~27 年の仙台市場 10 月販売単価のうち中庸 3 年の平均 ) (10 月出し ) 486,000 100 4,860 本 ( 直売 2 割 ) 計 2,838,240 24,300 本 項 目 金額 ( 税込 ) 備 考 経営費 種苗費 97,200 種子代 肥料費 22,892 農業薬剤費 17,788 光熱動力費 21,746 うち夜間電照用電気代 9,031 円 ( 昼 6 時間 + 夜 10 時間,9W 100 個 44 日 ) その他の諸材料費 173,526 うち赤色 LEDランプ代 32,400 円 (5 年償却 )(@3,000 100 個 0.5 作 1/5) 租税公課及び諸負担 67,048 建物及び施設費 209,900 農機具費 227,021 共済保険料 14,760 出荷販売経費 731,266 計 1,583,147 農業所得 1,255,093 所得率 44% 得られた労働時間 599 成果 100 本当たり経費 6,515 1 時間当労働報酬 2,095 効率的かつ安定的な農業経営の基本的指標 ( 平成 27 年宮城県農業振興課 ) のうちトルコギキョウ (8 月出し ) を参考に試算 単位 : 円

普及技術 6 トルコギキョウ 10 月出しとカンパニュラ 3 月出しの無加温電照輪作体系 表 5 赤色 LEDランプ電照導入によるカンパニュラ 3 月出し10a 当たりの経営収支試算 ( ~29 年 ) 単位 : 円 項 目 金額 備 考 粗収益 カンパニュラ 907,200 60 15,120 本 ( 市場出荷 7 割 )( 単価はトルコギキョウの半額 ) (3 月出し ) 648,000 100 6,480 本 ( 直売 3 割 ) 計 1,555,200 21,600 本 項 目 金額 ( 税込 ) 備 考 経営費 種苗費 106,920 種子代 肥料費 3,364 堆肥, 育苗用液肥 農業薬剤費 29,292 定植時殺虫剤 ( 粒剤 ) 光熱動力費 21,251 うち夜間電照用電気代 2,426 円 ( 夜 2 時間,9W 100 個 120 日 ) その他の諸材料費 6,295 うち赤色 LEDランプ代 32,400 円 (5 年償却 )(@3,000 100 個 0.5 作 1/5), 小トンネル代 42,055 円 租税公課及び諸負担 67,048 建物及び施設費 209,900 農機具費 227,021 共済保険料 14,760 出荷販売経費 345,714 計 1,211,566 農業所得 343,634 所得率 22% 労働時間得られた労働時間 486 播種 ~ 定植はトルコギキョウの値, 定植後 ~ 収穫前はストックの値, 収穫調製はストックの値 ( 定植本数で案分 ) を使用し, 成果 100 本当たり経費 5,609 芽かき作業 (60 時間 ) 及び小トンネル開閉時間 (36 時間 ) を加算 1 時間当労働報酬 707 効率的かつ安定的な農業経営の基本的指標 ( 平成 27 年宮城県農業振興課 ) のうちストック ( 冬出し ) を参考に試算 3) 発表論文等 a 関連する普及に移す技術 a) トルコギキョウ抑制栽培における赤色 LEDランプの実用性 ( 第 90 号普及情報 ) b その他 a) 山口義昭 津田花愛 佐々木厚 (2017), トルコギキョウ抑制栽培における赤色光照射が開花に及ぼす影響, 東北農業研究第 70 号,p99-100 b) 山口義昭 佐々木厚 津田花愛 (20), トルコギキョウ抑制栽培における赤色光照射の開花抑制及び品質向上効果, 年度東北農業研究成果情報 4) 共同研究機関 福島県農業総合センター, 国立研究開発法人農業 食品産業技術総合研究機構野菜花き研究部門 19