ViewPoint 営 よくある贈与税に関する Q&A 直系尊属から贈与を受けた場合の特例制度との関連 坂本和則部東京室花野稔部大阪室 高齢世代から若年世代への早期財産移転を通じ 経済の活性化など図ることを目的に 相続時精算課税制度 住宅取得等資金の贈与税の非課税特例 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税特例 結婚 子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税特例 など 直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税に関する特例が近時 創設されてきました 今回はこれらの特例制度との関連で 当社に寄せられるを例示し Q&A 形式で解説します 1. 直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の特例制度の概要 Q. 相続税のことも考え 所有している金融資産などを子や孫に移していきたいと考えています このような場合 贈与税の特例制度の要件などはどうなっていますか A 直系尊属( 父母 祖父母など ) から子 孫などへの贈与に関しては 次ページの表のような 非課税特例 や 相続時精算課税制度 があります 表では 主な制度の要件などを示していますが 詳細は国税庁のホームページなどを参照してください ( このほかにも 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の 相続時精算課税の特例 ( 贈与者が60 歳未満の場合 適用期限は平成 33 年 12 月 31 日 ) があります ここでは省略します ) 国税庁タックスアンサー http://www.nta.go.jp/taxanswer/index2.htm 1
住宅取得等資金贈与の非課税特例 教育資金一括贈与の非課税特例 結婚 子育て資金贈与の非課税特例 相続時精算課税制度 贈与者 贈与年の 1 月 1 日現在で 60 歳以上の父母または祖父母 受贈者 贈与者の直系卑属 ( 子 孫 ひ孫等 ) で贈与の年の 1 月 1 日現在 20 歳以上 受贈年の合計所得金額が 2,000 万円以下 贈与者の 30 歳未満の直系卑属 ( 子 孫 ひ孫等 ) 贈与者の 20 歳以上 50 歳未満の直系卑属 ( 子 孫 ひ孫等 ) 贈与者の推定相続人 ( 代襲相続人を含む ) である直系卑属および贈与者の孫のうち 贈与年の 1 月 1 日現在で 20 歳以上であるもの 資金使途など 自宅の新築または取得 自宅の増改築など これらとともにするまたは新築に先行してする敷地用土地などの取得 ( 新築等の期限および居住開始期限について一定の要件あり ) 受贈者の教育資金 (1 学校などに直接支払われる入学金 授業料 施設設備費や学用品費など 2 学校以外に直接支払われる学習塾費や習い事のための費用など ) 受贈者の 1 結婚費用 ( 挙式費用 披露宴費用 家賃 敷金等の新居費用など ) 2 妊娠 出産および育児費用 ( 不妊治療費 分娩費用 子の幼稚園 保育所などの保育料など ) ( 贈与を受ける財産の種類 金額 贈与回数に制限なし ) 非課税限度額など [ 非課税限度額 ] ( 注 ) 適用期間 ( 契約締結 資金拠出などの期間 ) 平成 27 年 1 月 1 日 平成 33 年 12 月 31 日 [ 非課税限度額 ] 受贈者 1 人あたり 1,500 万円 ( 学校以外に支払われるものは 500 万円以内 ) 平成 25 年 4 月 1 日 平成 31 年 3 月 31 日 [ 非課税限度額 ] ( 受贈者 1 人あたり 1,000 万円 ( 結婚に際して支払われるものは 300 万円以内 ) 平成 27 年 4 月 1 日 平成 31 年 3 月 31 日 [ 特別控除額 ] 2,500 万円 ( 適用期間定めなし ) 注 : 下表以外の場合住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅 平成 27 年 12 月 31 日 1,500 万円 1,000 万円 平成 28 年 1 月 1 日 平成 32 年 3 月 31 日 1,200 万円 700 万円 平成 32 年 4 月 1 日 平成 33 年 3 月 31 日 1,000 万円 500 万円 平成 33 年 4 月 1 日 平成 33 年 12 月 31 日 800 万円 300 万円 住宅用の家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率が 10% である場合 住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅 平成 31 年 4 月 1 日 平成 32 年 3 月 31 日 3,000 万円 2,500 万円 平成 32 年 4 月 1 日 平成 33 年 3 月 31 日 1,500 万円 1,000 万円 平成 33 年 4 月 1 日 平成 33 年 12 月 31 日 1,200 万円 700 万円 2
2. 住宅取得等資金の範囲 Q. 住宅取得等資金の贈与税の特例において 住宅用家屋の新築等の対価や 住宅用家屋の増改築費用としての 住宅取得等資金 の範囲について 例えば建築業者以外の建築士に支払った家屋の設計料 また 登録免許税や不動産取得税などの税金は含めることができますか A 住宅取得等資金の贈与税の特例における住宅用家屋の新築または取得( 以下 新築等 といい 住宅用家屋の新築等とともにするその敷地の用に供されている土地等の取得および住宅用家屋の新築に先行してするその敷地の用に供されることとなる土地等の取得を含む ) の対価とは 新築の場合は住宅用家屋の新築工事の請負代金の額 取得の場合には住宅用家屋の売買代金の額とされ また 住宅用家屋の増改築等 ( 住宅用家屋の増改築等とともにするその敷地の用に供されることとなる土地等の取得を含む ) の費用とは 住宅用家屋の増改築等に係る工事の請負代金の額とされています 設計料について 家屋の建築業者以外の建築士に支払う設計料は 住宅用家屋の新築工事または増改築等に係る工事の請負代金の額に含まれないと解されますが 家屋の新築等または増改築等をするために直接必要なもので 建物本体価格を構成するものですから 新築等の対価または増改築等の費用に充てられたものとみて差し支えないとされています 一方 登記費用や不動産取得税などは 住宅用家屋の取得に要した費用ですが 新築等の対価または増改築等の費用に充てられたものとはいえません そのため これらの費用は 住宅取得等資金 には含まれません 3. 相続時精算課税と暦年贈与 Q. 父から相続時精算課税を利用して 2,500 万円の贈与を受け 母から暦年贈与として 100 万円の贈 与を受けました 翌年 さらに父から 100 万円 母からも 80 万円の贈与を受けた場合 父から 贈与された 100 万円および母から贈与された 80 万円は どのように課税されますか A 相続時精算課税は受贈者が各々 贈与者である( 祖 ) 父 ( 祖 ) 母ごとに選択できる制度です 相続時精算課税をいったん選択すると 当該贈与者からの贈与についてはすべて相続時精算課税が適用され 暦年課税に係る贈与税の基礎控除の適用を受けることはできなくなります すなわち 相続時精算課税選択届出書 を提出した年分以降 当該贈与者からの贈与により取得した財産については その金額の多寡にかかわらず すべて相続時精算課税の適用を受けるものとして贈与税の申告をしなければなりません このケースでは 父親からの贈与については すでに相続時精算課税を選択していますので 翌年贈与を受けた100 万円についても相続時精算課税による贈与税の申告と贈与税の納付 ( 特別控除額の2,500 万円の枠をすでに利用していますので 贈与税額は100 万円 20%=20 万円 ) が必要 3
となります 母親から贈与を受けた80 万円については 通常の贈与 ( 暦年贈与 ) で 基礎控除額 (110 万円 ) の範囲内なので申告の必要はありません 4. 相続時精算課税による孫への相続税額の加算 Q. 私は 現在 75 歳ですが 昨年 20 歳になった孫 Aを養子にする予定です (Aの親である私の子 B は存命 ) 養子にしたAについて 相続時精算課税を利用して贈与することはできますか また 私が死亡した場合にAが納付することとなる相続税について いわゆる相続税額の2 割加算の取り扱いはどのようになりますか A 相続時精算課税の適用対象者とされる受贈者は 贈与者の推定相続人( 代襲相続人を含む ) である直系卑属および贈与者の孫のうち 贈与年の1 月 1 日現在で20 歳以上であるもの です 養子であるAは 贈与者の推定相続人として相続時精算課税の適用対象者となります また 仮に 養子にしない場合でも 上記のとおり 贈与者の孫として適用対象者となります 相続税額の2 割加算の規定上 Aは 被相続人の直系卑属でその被相続人の養子となっている者 ( いわゆる孫養子等 ) で子の代襲相続人でないもの に該当し 2 割加算の適用がないとされる一親等の血族から除かれることになるので 結果として 2 割加算の対象とされます なお このケースの前提と異なり 仮に子 Bが贈与者の死亡前に死亡し または相続権を失ったため AがBに代襲し相続人となっている場合は 相続税額の加算の規定は適用されません 相続税額の2 割加算の規定 相続や遺贈で財産を取得した人が以下の [1][2] 以外の場合は その相続人の相続税相当額にその 20% を加算する規定 ([1][2] は2 割加算の適用なし ) [1] 被相続人の1 親等の血族 ( 父母または子および養子 子の代襲相続人などを含みますが 被相続人の直系卑属でその被相続人の養子となっている者 ( いわゆる孫養子等 ) で子の代襲相続人でないものは除く ) [2] 配偶者 5. 非居住者への贈与と相続時精算課税 Q. 私は15 年前からアメリカに居住しています 日本の居住者である父から 父所有の日本国内の土地を贈与したいとの話がありますが 私がこの贈与を受けた場合 日本の贈与税の対象となりますか また 対象となるのであれば 相続時精算課税の利用は可能ですか A 贈与者と受贈者の日本国内の住所の有無など および受贈財産の国内 国外の区分に応じた贈与税の納税義務は下表のとおりで 贈与される財産が日本国内の土地である場合は 住所等にかかわらず国内財産として贈与税の課税の対象となります ( 注 ) また 受贈者が国外に居住している 4
場合であっても 相続時精算課税の要件を満たしているときは 相続時精算課税の適用を受けることができます 注 : 日本国内に住所がない者が贈与税の申告をする必要がある場合には 納税管理人および納税地を定めて ( 納税管理人届出書を提出 ) その所轄税務署長に申告し納税します 課税対象となる財産の範囲 被相続人贈与者 国内に住所あり 一時居住被相続人一時居住贈与者 10 年以内に住所あり 相続人受遺者受贈者 国内に住所あり 一時居住者 10 年以内に国内に住所あり 日本国籍あり 国内 国外財産ともに課税 国内に住所なし 10 年以内に国内に住所なし 日本国籍なし 相続時精算制度により財産を取得した個人 国内に住所なし 非居住被相続人被居住贈与者 10 年以内に住所なし 一時居住被相続人などの詳細は 国税庁タックスアンサーなどで確認してください 内容は 2018 年 3 月 26 日時点の情報に基づいて作成されたものです 本情報は 法律 会計 税務などの一般的な説明です 個別具体的な法律上 会計上 税務上等の判断や対策などについては専門家 ( 弁護士 公認会計士 税理士など ) にごください また 本情報の全部または一部を無断で複写 複製 ( コピー ) することは著作権法上での例外を除き 禁じられています みずほ総合研究所部東京室 03-3591-7077 / 大阪室 06-6226-1701 https://www.mizuho-ri.co.jp/service/membership/advice/ 5