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4-1 育児関連 休業期間を有給にするか 無給にするかは 就業規則等の定めに従います また 雇用保険に加入している労働者には 国から給付金が支給されます (P106 参照 ) 産前産後休業期間中及び育児休業期間中は 労働者 使用者とも申請により社会保険料が免除になります 育児休業の対象者 ( 第 5

H29.10・育児休業や介護休業をすることができる有期契約労働者について

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申出が遅れた場合は 会社は育児 介護休業法に基づき 休業開始日の指定ができる 第 2 条 ( 介護休業 ) 1 要介護状態にある対象家族を介護する従業員 ( 日雇従業員を除く ) 及び法定要件を全て満たした有期契約従業員は 申出により 介護を必要とする家族 1 人につき のべ 93 日間までの範囲で

規定例 ( 育児 介護休業制度 ) 株式会社 と 労働組合は 育児 介護休業制度に関し 次 のとおり協定する ( 対象者 ) 育児休業の対象者は 生後満 歳に達しない子を養育するすべての従業員とする 2 介護休業の対象者は 介護を必要とする家族を持つすべての従業員とする 介護の対象となる家族の範囲は

育児のための両立支援制度 制度の概要 ( イメージ ) 出生 1 歳 1 歳 6か月 3 歳就学 パパ ママ育休プラス 1 歳 6 か月延長 ( 子の年齢 ) ⑴ 育児休業 Ⅰ Ⅱ 努力義務 ⑵ 短時間勤務制度 ⑶ 所定外労働の免除 努力義務 努力義務 ⑷ 子の看護休暇 ⑸ 法定時間外労働の制限 ⑹

Microsoft PowerPoint - 2の(別紙2)雇用形態に関わらない公正な待遇の確保【佐賀局版】

( イ ) 従業員の配偶者であって育児休業の対象となる子の親であり 1 歳 6か月以降育児に当たる予定であった者が死亡 負傷 疾病等の事情により子を養育することが困難になった場合 6 育児休業をすることを希望する従業員は 原則として 育児休業を開始しようとする日の1か月前 (4 及び5に基づく1 歳

目 次 第 1 条 目的及び内容 1 第 2 条 育児休業 2 第 3 条 パパ ママ育休プラス 2 第 4 条 1 歳 6 か月までの育児休業 2 第 5 条 育児休業の申出の手続等 3 第 6 条 パパ休暇の特例 3 第 7 条 介護休業 3 第 8 条 介護休業の申出の手続等 4 第 9 条

短時間 有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針 について ( 同一労働同一賃金ガイドライン ) 厚生労働省雇用環境 均等局有期 短時間労働課職業安定局需給調整事業課

Microsoft Word - H29 結果概要

必要とする家族 1 人につき のべ 93 日間までの範囲内で 3 回を上限として介護休業をすることができる ただし 有期契約従業員にあっては 申出時点において 次のいずれにも該当する者に限り 介護休業をすることができる 一入社 1 年以上であること二介護休業開始予定日から 93 日を経過する日から

4 子育てしやすいようにするための制度の導入 仕事内容への配慮子育て中の社員のため以下のような配慮がありますか? 短時間勤務ができる フレックスタイムによる勤務ができる 勤務時間等 始業 終業時刻の繰上げ 繰下げによる勤務ができる 残業などの所定外労働を制限することができる 育児サービスを受けるため

ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)  レベル診断チェックシート

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Microsoft Word - 改訂 H28 H27施行状況記者発表(リード文)

育児休業制度の概要

第 1 章育児休業 第 1 条 ( 対象者 ) 生後 1 年未満 ( 第 5 条による育児休業の場合は 1 歳 6 ヶ月 ) の子と同居し養育する従業員であって 休業後も引き続き勤務する意思のある者は 育児のための休業をすることができる ただし 日々雇用者 期間雇用者 ( 申出時点において雇用期間が

ただし 日雇従業員 期間契約従業員 ( 法に定める一定の範囲の期間契約従業員を除く ) 労使協定で除外された次のいずれかに該当する従業員についてはこの限りではない (2) 週の所定労働日数が2 日以下の従業員 (3) 申出の日から93 日以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員 2 要介護状態に

深夜勤務の制限 5 妊産婦の時間外 休日 妊娠中の女性が 母体または胎児の健康保持のため 深夜勤務や時間外勤務等の制限を所属長に請求できます 病院助手専攻医臨床研修医 6 妊娠中の休息 妊娠中の女性は 勤務時間規程に規定する 職務に専念する義務の免除 を利用して 母体または胎児の健康保持のため 勤務

ただし 平成 22 年 6 月 30 日時点で 常時 100 人以下の労働者を雇用する事業主については 公布日から3 年後に当たる平成 24 年 6 月 30 日 ( 予定 ) までの間 < 短時間勤務制度の義務化 >< 所定外労働の免除の義務化 >< 介護休暇 >について 改正規定の適用が猶予され

あおもり働き方改革推進企業認証制度 Q&A 平成 29 年 12 月 14 日 Vol.1 目次 1 あおもり働き方改革推進企業認証制度全般関係 Q1 県外に本社がある場合はどのように申請できるのか P1 2 あおもり働き方改革宣言企業関係 Q2 次世代法に基づく一般事業主行動計画とはどういうものか

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東北大学における出産・育児支援制度

育児 介護休業規程 第 1 章 目的 第 1 条 ( 目的 ) 本規程は社員の育児 介護休業 育児 介護のための時間外労働および深夜業の制限並びに育児 介護短 時間勤務等に関する取り扱いについて定めるものである 第 2 章 育児休業制度 第 2 条 ( 育児休業の対象者 ) 1. 育児のために休業す

題名

別紙 1 妊娠 出産 育児休業 介護休業等に関するハラスメントとなり得る具体的言動例 1. 制度等の利用への嫌がらせ型 教職員が産休や育児業 介護休業等の制度の利用を請求したり 制度を利用したことに関して 上 司が解雇等の不利益な取扱いを示唆したり 上司 同僚が 繰り返し又は継続的に嫌がらせ等を行い

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Microsoft Word 第二弾【公開版】改正育介法Q&A

(Microsoft PowerPoint - PT\212w\211\357\203|\203X\203^\201[\(\221\346\202Q\225\361\201j)

社内様式 2 育児 介護 休業取扱通知書 平成年月日 会社名 あなたから平成年月日に 育児 介護 休業の 申出 期間変更の申出 申出の撤回 がありました 育児 介護休業等に関する規則 ( 第 3 条 第 4 条 第 5 条 第 7 条 第 8 条及び第 9 条 ) に基づき その取扱いを下のとおり通

(3) 始業 終業時刻が労働者に委ねられることの明確化裁量労働制において 使用者が具体的な指示をしない時間配分の決定に始業及び終業の時刻の決定が含まれることを明確化する (4) 専門業務型裁量労働制の対象労働者への事前通知の法定化専門業務型裁量労働制の導入に当たり 事前に 対象労働者に対して 1 専

育児休業申出書式例

第 11 条育児休業を終了して復帰する教職員の年次有給休暇については 理事長が別に定める ( 育児短時間勤務 ) 第 12 条小学校就学の始期に達するまでの子と同居し 当該子を養育する教職員が申し出た場合には 当該子がその始期に達するまで 当該教職員の所定勤務時間を 6 時間とすること ( 以下 育

改正労働基準法


就業規則への記載はもうお済みですか

【全文】就業規則(今井保育園H29.1.1)

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目 次 Ⅰ 子育てのサポート 1 妊娠前 妊娠中のサポート 1 生理休暇 2 不妊治療の受診 3 妊娠障害 ( つわり ) 休暇 4 健康診査及び保健指導に係る休暇 5 危険有害業務の就業制限 6 深夜勤務及び時間外勤務の制限 7 通勤緩和措置 8 職員の休息等 2 出産前後のサポート 1 産前 産

育児休業及び育児短時間勤務に関する規則

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平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

社内様式 2 育児 介護 休業取扱通知書 あなたが平成年月日にされた 育児 介護 休業の申出について 育児 介護休業等に関する規則 第 3 条 第 7 条 に基づき その取扱いを下のとおり通知します ( ただし 期間の変更の申出があった場合には下の事項の若干の変更があり得ます ) 1 休業の期間等

こんなときどうする どうなる? ケース1 妊娠中 母性健康管理の措置により 健康診査を受けるため 申し出により勤務時間中に以下の範囲で通院が認められます ( 法定 ) ( 下記参照 ) 妊娠 23 週まで 4 週間に1 回 妊娠 24 週から35 週まで 2 週間に1 回 妊娠 36 週から出産まで

制度名 No. 1 ( 働 1) フレックスタイム制度 対象者: 営業職の正社員 労働時間の清算期間: 毎月 1 日から末日までの1か月 1 日の所定労働時間は 8 時間 清算期間内の総労働時間: 1 日あたり8 時間として 清算期間中の労働日数を乗じて得られた時間数 ただし 清算期間内を平均し1

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育児・介護休業規程

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改正要綱 第 1 国家公務員の育児休業等に関する法律に関する事項 育児休業等に係る職員が養育する子の範囲の拡大 1 職員が民法の規定による特別養子縁組の成立に係る監護を現に行う者 児童福祉法の規定により里親である職員に委託されている児童であって当該職員が養子縁組によって養親となることを希望しているも

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独立行政法人総合病院国保旭中央病院職員の育児

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支給開始日以前に カ月の標準報酬月額がある場合 06 年 月 日まで 06 年 4 月 日以降 休んだ日の標準報酬月額 0 日 / 支給開始日以前の継続した カ月間の各月の標準報酬月額の平均額 0 日 / ( 例 ) 支給開始日以前の継続した カ月間に 標準報酬月額が 6 万円の月が カ月 0 万円

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改正育児・介護休業法等について

2019 年 3 月 経営 Q&A 回答者 Be Ambitious 社会保険労務士法人代表社員飯野正明 働き方改革のポイントと助成金の活用 ~ 働き方改革における助成金の活用 ~ Question 相談者: 製造業 A 社代表取締役 I 氏 当社における人事上の課題は 人手不足 です 最近は 予定

平成 27 年改正の概要 ( サマリー ) 一般労働者派遣事業 ( 許可制 ) 特定労働者派遣事業 ( 届出制 ) 26 業務 期間制限なし 26 業務以外 原則 1 年 意見聴取により最長 3 年まで 規定なし 規定なし 1. 許可制への統一 2. 派遣契約の期間制限について すべての労働者派遣事

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に該当する者に支給されるものに限る ) 移転費及び 3の求職活動支援費の支給対象とすることとされた ( 第 56 条の3 第 1 項第 2 号及び同条第 2 項関係 ) 3 高年齢被保険者 ( 教育訓練を開始した日が高年齢被保険者でなくなった日から1 年以内にある者を含む ) について 教育訓練給付

第1章  目的

2. 改正の趣旨 背景税制面では 配偶者のパート収入が103 万円を超えても世帯の手取りが逆転しないよう控除額を段階的に減少させる 配偶者特別控除 の導入により 103 万円の壁 は解消されている 他方 企業の配偶者手当の支給基準の援用や心理的な壁として 103 万円の壁 が作用し パート収入を10

妊娠したら妊娠したら 妊娠 出産に関する制度妊娠中はおなかの赤ちゃんのことや健康のこと 出産のことや産後の育児のことなど さまざまな不安を感じることも少なくありません 心配なことはお気軽にご相談ください 楽しいマタニティライフと健やかな赤ちゃんの誕生を応援しています 妊婦一般健康診査妊娠すると から

国立大学法人京都大学教員就業特例規則及び教職員休職規程

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2016年 弾丸メールセミナー № 36回 雇用保険法 育児休業給付金

4 父親も育児参画しよう! 父親となる職員に, 配偶者出産休暇や男性の育児参加休暇を取得するよう働き掛けましたか 対象の職員全てに働き掛けは行われている 回答数 76 0 全人数割合 (%) 対象者なし 293 配偶者出産休暇 (3 日 ) 数値目標 31 年度までに配偶者出

例 3 男性医師 1 歳 配偶者産前休暇産後休暇復帰 復帰 今までは 配偶者がを取得している場合 を取得できませんでしたが 取得できるようになりました 職員は 当該子が 3 歳に達する日まで 病院助手等は 当該子が 1 歳 6か月に達する日までを取得することができます 職場復帰後の特に大変な時期に協

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育児 介護休業法の 改正について 平成 28 年 10 月 12 日 厚生労働省雇用均等 児童家庭局 職業家庭両立課

( 育児休業の期間 ) 第 5 条育児休業の期間は 原則として 子が 1 歳に達するまでを限度として育児休業申出書 ( 様式 1) に記載された期間とする 2 前項にかかわらず 会社は 育児休業 介護休業等育児または家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 ( 以下 育児 介護休業法 という ) の定

目 次 第 1 章目的 第 1 条 目的 第 2 章育児休業制度 第 2 条 育児休業の対象者 第 3 条 育児休業の申出の手続等 第 4 条 育児休業の申出の撤回等 第 5 条 育児休業の回数 第 6 条 育児休業の期間等 第 3 章介護休業 第 7 条 介護休業の対象者 第 8 条 介護休業の申

育児・介護休業等に関する規程

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妊娠 出産に関する制度 妊産婦である女性職員 妊娠中の女性職員及び産後 1 年を経過しない女性職員を言います 妊娠がわかったら 勤務免除 妊娠に伴う通勤緩和 妊娠中の女性職員が通勤に利用する交通機関の混雑の程度が母体又は胎児の健康保持に影響があると認められ 所定の勤務時間の始め又は終わりにおいて 勤

男女共同参画に関する意識調査

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2 仕事と家庭の両立 1 ワーク ライフ バランス ワーク ライフ バランス ( 仕事と生活の調和 ) とは 仕事だけに偏らず 生活とのバランスがとれた生き方を目指そうという考え方です なぜ今仕事と生活の調和なのかパートや派遣などの経済的に不安定な非正規社員が増加する一方で 正社員の労働時間は長時間化しています 家族との時間や地域の活動に参加する余裕もなく 健康を害する労働者も少なくありません また 共働き家庭が増える一方で 育児 家事は女性といった役割分担意識にはあまり変化がなく 子育て支援の社会的基盤の整備も十分ではありません 仕事と育児の両立の難しさから 出産を機に仕事を辞めざるを得ない場合が多くあります このように仕事と生活の間で問題を抱える人が増加する中で 仕事によりやりがいと経済的な自立を持ちつつ プライベートでも充実した生活が送れる 多様な働き方 生き方が選択できる社会を目指して 国 地域 企業 個人がそれぞれの立場で取り組んでいくことになりました 会社に両立のための支援制度があっても上司に言いだしにくかったり 子どものことで休むのは悪いと思っていませんか? 会社が制度や環境を整えるのはもちろん 職場で働く人たち自身がワーク ライフ バランスを理解して お互いに残業を減らし 休みを取りやすい雰囲気を作っていくことが大切です 性差なく意欲に応じて あらゆる分野で活躍できる社会を目指して 男女が互いに人権を尊重しつつ 責任も分かち合い 性別にかかわりなく その個性と能力を十分に発揮できる社会の実現は 人々の希望ややる気を生み出し 社会に活力を与えます そのためには 思いやりの心を育み 相手を尊重することが社会人としての私たちの責任ではないでしょうか (P24 参照 ) 35

2 育児 介護のための両立支援制度 働く女性と男性がともに子育てや介護をしながら働き続けることができるよう 労働基準法 男女雇用機会均等法 育児 介護休業法で両立支援のための制度が定められています 介護をしながら働く方が介護休業を 有期契約労働者の方が育児休業を利用しやすくなるよう 育児 介護休業法が改正されています ( 下線部分 ) また 平成 29 年 10 月 1 日からは 保育園などに入れない場合に2 歳まで育児休業が取れる等の改正が行われました 法定以上の制度を設けている会社もあります 就業規則で確認しましょう 妊産婦の母性保護規定 ( 女性のみ適用 ) 妊娠 出産時の母親と子どもを守るために 労働基準法と男女雇用機会均等法に母性保護の規定が定められています 1 産前休暇 出産予定日の6 週間前から休暇を取得できる 2 産後休暇 産後 8 週間は就業させることを禁止 3 軽易業務転換 請求により他の軽易な業務に転換できる 4 就業制限 重量物を扱う等妊産婦に有害な業務を禁止 5 時間外労働 休日労働 深夜業の制限 6 育児時間 1 日 2 回 各最低 30 分の育児時間を請求できる 育児のための制度 1 育児休業 子ども1 人につき1 年間の休業 (1 歳未満 夫婦ともに取得した場合は1 歳 2か月未満 パパ ママ育休プラス ) 保育所等の利用を希望しているが入所できない場合等 最長 2 歳まで延長可 2 短時間勤務 1 日 6 時間の短時間勤務 (3 歳未満 ) 3 所定外労働の免除 残業をしないことができる (3 歳未満 ) 4 深夜業の免除 深夜就業をしないことができる ( 小学校就学前 ) 5 子の看護休暇 子の病気のため年 5 日 ( 子が2 人以上の場合は10 日 ) の休暇 ( 小学校就学前 ) 半日単位での取得が可能 6 時間外労働の制限 残業を月 24 時間 年 150 時間までに限ることができる ( 小学校就学前 ) 36

子どもを養育している男女ともに申請すれば取得可能となっており 1 年 以上雇用されているなどの条件を満たしていれば パートなどの非正規社 員も取得できます また 性別に関わらず夫婦の一方が既に育児休業中や無職であっても取 得できます 現在法律で定められている両立支援制度の概要は次のとおりです 介護のための制度家族が病気やケガ等で要介護状態になった時は 介護休業制度を利用できます 1 介護休業 要介護の家族 1 人につき通算 93 日まで 3 回を限度として分割して取得できる 2 介護休暇 年 5 日まで短期の休暇を取得できる ( 要介護者が2 人以上の場合は10 日 ) 半日単位での取得が可能 3 時間外労働の制限 残業を月 24 時間 年 150 時間までに限ることができる 4 所定外労働の免除 会社の定めた所定労働時間を超えて労働しないことができる ( 介護終了まで ) 5 所定労働時間の短縮措置 介護休業とは別に 利用開始から3 年の間で2 回以上の利用が可能 6 深夜業の制限 深夜就業を制限することができる ( 介護終了まで ) 37

出産 育児と介護の経済支援出産 育児や介護には費用がかかりますが 産前産後休業 育児 介護休業中の賃金は法律に定めがなく 通常は賃金が支払われません 雇用保険が適用されている労働者は 育児 介護休業給付を受けることができます 1 出産一時金 ( 健康保険 ) 被保険者及び被扶養者の出産に対し 1 児につき一律 42 万円支給 ( 産科医療補償制度非加入の医療機関等で出産した場合は40 万 4 千円 ) 2 出産手当金 ( 健康保険 ) 被保険者の産休中に給料の約 3 分の2を支給 国民健康保険は支給なし 3 育児 介護休業給付 ( 雇用保険 ) 育児休業開始から180 日目まで給料の67% 181 日目からは給料の 50% 介護休業中には給料の67% を支給 介護休業開始が平成 28 年 8 月以降の場合 4 産前 産後育児休業等期間中の社会保険料免除休業中の社会保険料 ( 健康保険 厚生年金 ) が免除される 5 育児休業期間中の住民税の徴収猶予 休業中に納税が困難な場合 1 年まで猶予される ( 職場復帰後に納税 ) この他に 児童手当や市町村が子どもにかかる医療費を助成する こども 医療費 等の制度があります 不利益取り扱いの禁止 防止措置義務これらの制度は法律で定められた労働者の権利なので 会社は労働者から休業等の取得の申し出があれば拒むことはできません また 休業を取得したことなどを理由に解雇 雇止め 正社員をパートに切り替えるといった不利益な取り扱いは禁止です また 事業主はそのような環境にならないよう防止措置を講じる義務があります もし 出産や介護のために会社から不利な扱いをされそうになったら 辞めてしまう前にご相談ください 問い合わせ先 P42 埼玉労働局雇用環境 均等室 38

3 働き方改革 働き方改革では 労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現するため 長時間労働の是正 多様で柔軟な働き方の実現 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保等のための措置を講じます Ⅰ Ⅱ Ⅲは平成 31 年 4 月 1 日 Ⅳ Ⅴ Ⅵについては2020 年 ( 平成 32 年 )4 月 1 日から施行されます ( 中小企業に対する施行時期の特例があるものもあります ) Ⅰ 長時間労働の是正 1. 残業時間の上限規制の導入 残業時間の上限は 原則として月 45 時間 年間 360 時間とし 特別な事情がある場合でも年間 720 時間 休日労働を含め月 100 時間未満 複数月平均 80 時間を限度に設定する必要があります 2. 中小企業における月 60 時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し 月 60 時間を超える時間外労働に係る割増賃金率 (50% 以上 ) について 2023 年 ( 平成 35 年 )4 月 1 日から猶予措置が廃止されます 3. 一定日数の年次有給休暇の確実な取得 使用者は 10 日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し 5 日について毎年時季を指定して与えなければならないとされています 4. 労働時間の状況把握の実効性確保 労働時間の状況を 使用者の現場確認や客観的な方法により把握しなければならないとされています Ⅱ 多様で柔軟な働き方の実現 1. フレックスタイム制の見直し 労働時間の調整が可能な期間 ( 清算期間 ) の上限を1か月から3か月に延長します 2. 高度プロフェッショナル制度の新設 専門的な職業の方の自律的で創造的な働き方を希望する方々が 高い収入を確保しながらメリハリのある働き方をできるよう 本人の希望に応じた自由な働き方を選べます 39

Ⅲ 勤務間インターバル制度の普及促進事業主は 前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければなりません Ⅳ 不合理な待遇差をなくすための規定の整備同一企業内で正社員と非正規社員との間で 基本給や賞与などの個々の待遇ごとに 不合理な待遇差を設けることが禁止されます 禁止される不合理な待遇差には2つの側面があります 不合理な待遇差の禁止 正社員と仕事の内容が異なる非正規社員については 正社員と異なる待遇 ( 給与や勤務時間など ) とすることも許されますが 正社員と比較して不合理な待遇差を設けることは禁止されます 差別的取り扱いの禁止 正社員と仕事の内容が同じ非正規社員について 正社員と比較して差別的な賃金とすることが禁止されます 派遣労働者については 1 派遣先の労働者との均等 均衡待遇 2 一定の要件を満たす労使協定の待遇 のいずれかの確保が義務化されます Ⅴ 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化非正規社員は 正規社員との待遇差の内容や理由 など自分の待遇について 説明を求めることができるようになります 今までは一部の労働者について説明義務の規定がありましたが 今後は雇用形態に関わらず 事業主は非正規社員から求めがあった場合には 待遇について説明をしなければなりません Ⅵ 行政による事業主への助言 指導等や裁判外紛争手続の規定の整備都道府県労働局において 無料 非公開の紛争解決手続きが実施されていますが 今後はさらに 雇用形態に関わらず非正規社員も該当となり 均衡待遇 や 待遇差の内容 理由 に関する説明についても対象となります 働き方改革とは働き方改革の目標は 労働生産性を上げるための一億総活躍社会の実現です 労働生産性を妨げる要因として 長時間労働 非正規と正社員の格差 労働人口不足などが挙げられます これらの改善が働き方改革です 40