リウマチ膠原病通信 ( 第 9 回 ) ~ トピックス ~ 2018 年 6 月 10 日に高槻市障害学習センターでリウマチ市民公開講座を行いました 今年のリウマチ市民講座は下記の内容の講演でした 患者様の体験談 リウマチが教えてくれた : 宮崎惠子さん 知っておきたい関節リウマチの検査 : 中央検査部医師松村洋子 関節リウマチのリハビリテーション治療 ~ 知っておきたい 5 つのこと ~ リハビリテーション科作業療法士田村裕子 関節リウマチの最新治療 : リウマチ膠原病内科医師秦健一郎 また 今年も講演終了後に医療相談会と関節エコー体験会を行いました たくさんの方にご来場いただき 本当に有難うございました 今回の第 9 回リウマチ通信は 知っておきたい関節リウマチの検査 の内容を掲載致します
知っておきたい関節リウマチの検査 : 中央検査部医師松村洋子 そもそも 膠原病って何? 本来であれば自分を守ってくれるはずの免疫が 自分自身を攻撃するようになり 体のあちこちに炎 症を引き起こす病気の総称です 全身のあらゆる臓器に存在する血管や結合組織 ( 結合組織 : 体内の組織と組織 器官と器官の間を埋 めて組織や器官を結合し支えている組織 ) に炎症が起こる病気で 疾患ごとに炎症を起こしやすい臓器 が異なります また 同じ疾患でも患者様ひとりひとりに出てくる症状が異なります < 主な膠原病の病気 > 疾患発症者数症状 関節リウマチ約 70-100 万人関節痛 関節腫脹 全身性エリテマトーデス約 6 万人多臓器病変に炎症が起こる 多発性筋炎 / 皮膚筋炎約 2 万人皮膚 筋肉 肺に病変が起こる 強皮症約 2 万人皮膚がむくみ 硬くなる リウマチ性多発筋痛症約 18-63 人 /10 万人発熱 大関節痛 血管炎約 3-8 人 /100 万人血管に炎症が起こる シェーグレン症候群約 100 万人目や口が乾燥する まだありますが ほんの一部です
膠原病疾患の診断に役立つ検査は? 自己抗体 : 血液検査の中で特に膠原病の診断の手がかりとなる検査です 膠原病の発症には免疫異 常が関与しており 自己抗体は体に害をおよぼす異物を排除するための免疫反応が自分の体の成分に 向けられることにより作られるタンパク質の一種です 膠原病疾患の種類によってどの抗体が出現し やすいかが分かっています ( もちろん 自己抗体が陽性にならない場合もあります ) 疾患 主な自己抗体 関節リウマチ RF 抗 CCP 抗体 全身性エリテマトーデス 抗 ds-dna 抗体 多発性筋炎 / 皮膚筋炎 抗 ARS 抗体 強皮症 抗 Scl-70 抗体 リウマチ性多発筋痛症 なし 血管炎 MPO-ANCA PR3-ANCA シェーングレン症候群 抗 SS-A 抗体 抗 SS-B 抗体 ところで 関節リウマチの検査って? まず 関節リウマチ患者様が受ける検査には次の 3 つの目的があります 1 症状 ( 朝のこわばり 関節痛 関節腫脹など ) が関節リウマチかどうかを調べる検査 2 関節リウマチと診断された場合 病状が良くなっているか悪くなっているかを調べる検査 3 薬の副作用や合併症を調べる検査
< 関節リウマチかどうかを調べる検査 : 血液検査 > 右図は関節リウマチの分類基準です (6/10 点以上 ) 2010 年米国リウマチ学会 / 欧州リウマチ学会分類基準 まず関節が腫脹し 炎症を起こしていることが大前提ですが 血液検査 ( リウマトイド因子 (RF) や抗 CCP 抗体 炎症反応 (CRP ESR)) と症状持続期間で診断していきます しかしながら RF や抗 CCP 抗体が陰性でも関節リウマチと診断される場合 ( 血清反応陰性関節リウマチ ) もあれば 診断基準を満たしても他の疾患である場合がありますので 他の疾患と間違わないために 血液検査以外の検査を組み合わせることが重要となってきます A 腫脹又は圧痛のある関節数 ( 診察 ) 大関節の 1 か所 0 大関節の 2-10 か所 1 小関節の 1-3 か所 ( 大関節障害の有無にかかわらず ) 小関節の 4-10 か所 ( 大関節障害の有無にかかわらず ) 最低 1 つの小関節を含む 11 か所以上 5 B 血清反応 ( 血液検査 ) RF, 抗 CCP 抗体の両者が陰性 0 RF, 抗 CCP 抗体のいずれかが低値陽性 2 RF, 抗 CCP 抗体のいずれかが高値陽性 3 C 炎症反応 ( 血液検査 ) CRP,ESR の両者が正常 0 CRP もしくは ESR のいずれかが異常高値 1 Ⅾ 罹患期間 ( 症状の持続時間 ) 6 週間未満 0 6 週間以上 1 2 3 リウマトイド因子 (RF) とは? 自分自身の抗体に結合する性質をもつ抗体で 関節リウマチで高率に陽性となります その他 下の表のように 炎症が慢性に持続する自己免疫疾患 感染症 肝疾患などでも RF が陽性に なる場合があります 他の疾患や健常者でも陽性となる割合が高いのが分かります RF の陽性率
抗 CCP 抗体とは? 環状シトルリン化ぺプチドに対する抗体です 炎症をおこした関節滑膜には多くのシトルリン化蛋白が発現しており 血清中にはシトルリン化抗原に 対する自己抗体が産生されています 関節リウマチの患者様の 70-80% で陽性で 関節リウマチの発症 早期から陽性となるため早期診断に有用です ( 関節リウマチ以外の膠原病で陽性率は数 % と低いです ) ~ ところで 血清反応陰性関節リウマチとは? ~ RF 抗 CCP 抗体が陰性の関節リウマチのことです 関節リウマチ患者様の約 20-30% で RF 陰性 ( 抗 CCP 抗体のみ陽性の場合もあります ) 約 10% で RF 抗 CCP 抗体ともに陰性です 大関節 ( 肩や膝 ) の痛みで発症する場合や高齢で発症する場合に多いです この場合 関節リウマチ分類基準を満たさないことがありますので その他の検査所見と合わせて診断 していくことになります < 関節リウマチの活動性を調べる検査 : 血液 1> 検査項目 内容 赤沈 数値の強さの程度をみる 貧血があると数値が高くなることもある CRP 炎症の強さの程度を見る MMP-3 滑膜の増殖の程度や病気の活動性をみる ステロイド内服中や腎機能が悪いと数値が高くなることもある
< 薬の副作用や合併症を調べる : 血液検査 2> 検査 役割 血球 白血球 好中球 ヘモグロビン 血小板などのことで 貧血の有無や薬の副作用をみる AST ALT 肝臓の検査で肝機能低下があると数値が高くなる 薬の副作用で上昇することもある 血清クレアチニン 腎臓の検査で 腎機能が落ちると排出量が減り数値が高くなる 薬の量の調整 副作用のチェックに必要 コレステロール 血液中の脂質を調べる 中性脂肪 高値が持続すると動脈硬化の原因になる < 臨床検査 : レントゲン> 血糖値 HbA1c 糖尿病の有無を見る 尿検査 尿蛋白や固形成分を調べる 腎臓の状態を調べ 他の病気との鑑別や薬の副作用をみる β-d グルカン 真菌感染やニューモシスチス肺炎を疑う場合に調べる KL-6 間質性肺炎の指標として用いる T-SPOT 結核菌感染の既往があるかをみる HBV-DNA 量 B 型肝炎の再活性化の有無をみる NTX 関節リウマチや薬の副作用による骨粗鬆症についてみる TRACP-5b 受診時の採血量が異なるのは 様々な検査項目を 組み合わせているからです
< 関節リウマチの骨破壊の進行をみる検査 : レントゲン検査 > レントゲン検査はすでに起こった骨破壊の進行を見るのに必要な検査です 定期的に必ず評価し 関節 破壊がどの程度進行しているのかを確認します 上の写真は左手首のレントゲン写真ですが 経過を追 うごとに骨と骨の間は狭くなっており 関節破壊の進行している様子が分かります < 関節リウマチの骨破壊の進行をみる検査 :MRI 検査 > 早期診断に用いられます しかしながら 1 回に撮影できる箇所が限られているため 全ての関節を見る のには不向きです
< どの関節にどの程度の炎症 ( 滑膜炎 ) があるかを調べる検査 : 関節エコー検査 > 正常 関節リウマチ 左が正常 右が関節リウマチのエコー所見です 炎症のある部分 ( 滑膜炎 ) は赤くなります 炎症の程 度を直接見ることができ 早期診断や治療の経過をみるのに用いられます MRI と違い 同時に複数の 関節を評価できるのが利点です また 診察で把握できない関節腫脹 ( 無症候性滑膜炎 ) の検出も可能 です ~ 検査のまとめ ~ 関節リウマチ診療には 血液検査 尿検査 レントゲン エコー CT 検査など様々な検査があります 検査は 関節リウマチの活動性の評価 薬の効果 副作用などの評価をするために用いられます 患者様の状態ごとに検査内容は異なりますので 気になる点がありましたら主治医に相談下さい 文責リウマチ外来吉川紋佳