金融テーマ解説

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FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

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米労働市場は直近の回復基調に変化なし ~FRB出口政策への影響は限定的~

< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

1. 30 第 2 運用環境 各市場の動き ( 7 月 ~ 9 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは上昇しました 7 月末の日銀金融政策決定会合のなかで 長期金利の変動幅を経済 物価情勢などに応じて上下にある程度変動するものとしたことが 金利の上昇要因となりました 一方で 当分の間 極めて低い長

退職等年金給付積立金 平成30年度第2四半期運用状況

(2) 資産構成割合の推移 ( 給付確保事業 ) 1 資産配分実績の基本ポートフォリオからの乖離の推移 2 実践ポートフォリオと資産配分実績の推移 3. 運用受託機関 平成 29 年 3 月末現在 2

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第 1 四半期運用実績 ( 概要 ) 運用利回り +1.54% 収益率 ( ) ( 第 1 四半期 ) (+1.02% 実現収益率 ( )) 運用収益額 +3,222 億円 総合収益額 ( ) ( 第 1 四半期 ) (+1,862 億円 実現収益額 ( )) 運用資産残高 ( 第 1 四半期末 )

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定期調査の質問のうち 代表的なものの結果 1. 日本の株価を 企業のファンダメンタルズと比較してどう評価するか 問 1. 日本の株価は企業の実力( ファンダメンタルズ ) あるいは合理的な投資価値にくらべて 1. 低すぎる 2. 高すぎる 3. ほぼ正しく評価されている 4. わからないという質問で

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日本株市場を泳ぐ 5 頭のクジラ SMBC 日興証券株式会社投資情報部 2016 年 10 月 4 日更新版

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マクロ インサイト FRB FRB 長期金利 FRB bp 図表 1 FRB と市場の金利予測の乖離 FOMC 予測 vs 市場予測 年末 年末 2.0 市場が

第 79 回 2017 年 5 月投資家アンケート調査結果 アンケート調査にご協力下さりました皆様 今年 5 月に実施致しましたアンケート調査にご回答下さり誠にありがとうございます このたび調査結果をまとめましたのでお送りさせていただきます ご笑覧賜れましたら幸 いです 今後もアンケート調査にご協力

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サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

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ファンダの鬼・柳澤 浩と小杉 篤諭の「ファンダメンタルズの学び方、活かし方セミナー!」

目次 1. 平成 29 年度第 1 四半期 ( 平成 29 年 4 月 ~6 月 ) における運用環境について 2. 平成 29 年度第 1 四半期 ( 平成 29 年 4 月 ~6 月 ) におけるポートフォリオ別の運用状況 3. ベンチマーク インデックスの推移 ( 参考 ) 用語の説明 頁 1

目 次 1. 平成 27 年度 ( 平成 27 年 4 月 ~ 平成 28 年 3 月 ) における運用環境について 2. 平成 27 年度 ( 平成 27 年 4 月 ~ 平成 28 年 3 月 ) のポートフォリオ別の運用状況 3. ベンチマーク インデックスの推移 ( 参考 ) 被保険者ポート

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調査結果の要約 1. グローバル調査結果調査対象 : 日本 中国 ( ) の個人投資家 (1-1) 世界の株式市場見通し DI ( 注 ) は 3 地域そろって大幅上昇 各地域の個人投資家に今後 3 ヶ月程度の世界の株式市場に対する見通しを尋ねたところ 各地域とも前回調査 (17 年 5 月 ~6

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米国株 投資家心理が落ち着けば 上昇基調に回帰と想定 株式市場 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 長期金利の上昇を契機に急落米国株式市場は下落しました 月初に発表された1 月の雇用統計において 時間当たり賃金が市場予想を上回る伸び率となったことを受けて 長期金利が約 4 年ぶ

「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入

平成30年度第1四半期における運用状況等

受益者の皆様へ 平成 28 年 2 月 15 日 弊社投資信託の基準価額の下落について 平素より弊社投資信託をご愛顧賜り 厚くお礼申しあげます さて 先週末 2 月 12 日 ( 金 ) 以下のファンドの基準価額が 前営業日の基準価額に対して 5% 以上下落しており その要因につきましてご報告いたし

第 2 四半期運用実績 ( 概要 ) 運用利回り +0.09% 実現収益率 ( ) ( 第 2 四半期 ) 運用収益額 億円 実現収益額 ( ) ( 第 2 四半期 ) 運用資産残高 ( 第 2 四半期末 ) 357 億円 年金積立金は長期的な運用を行うものであり その運用状況も長期的に

ファンド設定以降の基準価額変動の背景について 2016 年 8 月 ( 設定月 )~2016 年 10 月下旬まで 上昇傾向 2016 年 8 月から 10 月下旬にかけては 米国の政策金利の引き上げ観測の高まりなどから金利は小幅に上昇したものの ECB( 欧州中央銀行 ) の量的金融緩和の継続や原

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経済学でわかる金融・証券市場の話③

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オーバルネクスト ETF 情報 2010 年 2 月 15 日号 ( 株 ) オーバルネクスト 東京都中央区日本橋兜町 13-2 TEL 03(5641)5777

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各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

おカネはどこから来てどこに行くのか―資金循環統計の読み方― 第4回 表情が変わる保険会社のお金

定期調査の質問のうち 代表的なものの結果 1. 日本の株価を 企業のファンダメンタルズと比較してどう評価するか 問 1. 日本の株価は企業の実力( ファンダメンタルズ ) あるいは合理的な投資価値にくらべて 1. 低すぎる 2. 高すぎる 3. ほぼ正しく評価されている 4. わからないという質問で

金融政策決定会合における主な意見

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当面の金融政策運営について(貸出増加支援資金供給の延長等、12時29分公表)

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変額年金 ( 特別勘定 ) の現況をご覧になる方に 特にご確認いただきたい事項 投資リスクについて 変額年金保険の特別勘定の資産運用は 国内外の株式および公社債 国内外のその他の有価証券 貸付金 コールローンおよび預貯金等を主な運用対象としておりますので 株価の下落や金利の変動 為替の変動などにより

当ページは 各種の信頼できると考えられる情報源から取得した情報に基づき アクサ生命保険株式会社が作成し提供するものです 情報の内容に関しては万全を期しておりますが その正確性 完全性については これを保証するものではありません 日本株式市場 運用環境 [ 2015 年 4 月 ~2016 年 3 月

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平成 21 年 9 月 5 日 角山智 投資環境レポート (2009 年 9 月 ) 1. 主な株価指数 8 月は 中国株が大幅に値下がりしました 反面 出遅れていた英国株が好調です 市場 日本株 日本新興市場 J-REIT 米国株 英国株 中国株 ( 指数 ) (TOPIX) (JASDAQ) (

ピクテ・インカム・コレクション・ファンド(毎月分配型)

マイナス金利付き量的 質 的金融緩和と日本経済 内閣府経済社会総合研究所主任研究員 京都大学経済学研究科特任准教授 敦賀貴之 この講演に含まれる内容や意見は講演者個人のものであり 内閣府の見解を表すものではありません

チャート編 1 日経平均株価 ( 日経 225) TOPIX( 東証株価指数 ) 2,0 NY ダウ工業株 30 種平均株価 ( 米ドル ) ダウセレクト配当込み指数 3,000 28,000 26,000 24, ,000 26,000 2,0 20,000 1,0 24,000 1

足元 ファンドの基準価額にはプラスの影響 当ファンドでは マザーファンドを通じて実質的に日本国債への投資を行っています 今回の日銀による追加金融緩和により 年限の短い部分から長い部分まで日本国債の利回りが大幅低下した結果 ( 図表 4) 当ファンドの基準価額は組入債券の価格上昇 ( 金利低下 ) を

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年 7 月 21 日 団体年金事業部 ECB 理事会レビュー : 総裁の夏休みの宿題 ~ 秋にテーパリング決定へ ~ 当社のシンクタンク 株式会社第一生命経済研究所の田中主席エコノミストによる EC B 理事会レビュー : 総裁の夏休みの宿題 ~ 秋にテーパリング決定へ~

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( 平成 3 年 11 月 2 日 ) ユーロ / 円 ワイタ ーハ ント (25 日線 ) 3.% 7/ / ( 円 / ユーロ ) / / /15 7/13 8/1 9/7 1/5 11/

ヘッジ付き米国債利回りが一時マイナスに-為替変動リスクのヘッジコスト上昇とその理由

週間マーケット情報 (2016 年 9 月 2 日 ~2016 年 9 月 9 日 ) ご参考資料 2016 年 9 月 12 日 野村アセットマネジメント 市場の動向 日本の株式市場 日本の株式市場の代表的な指数である東証株価指数 (TOPIX) は 2 日比で 0.23% 上昇しました 週初の日

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(2) 円安を予想する割合が大幅に増加 [ 参照 : 別紙レポート 5 ページグラフ 3] 今後 3 ヶ月程度の米ドル / 円相場の見通しについて 円安になる と回答した個人投資家の割合が 51% と 前回調査時の 32% から大きく高まりました 米国の年内追加利上げの可能性がかなり高まってきたとみ

2013 年 8 月 19 日号

目次 平成 29 年度 第 2 四半期運用実績 ( 概要 ) P 2 平成 29 年度 市場環境 ( 第 2 四半期 ) 1 P 3 平成 29 年度 市場環境 ( 第 2 四半期 ) 2 P 4 平成 29 年度 退職等年金給付組合積立金の資産構成割合 P 5 平成 29 年度 退職等年金給付組合

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平成23年11月1日

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変額年金 ( 特別勘定 ) の現況をご覧になる方に 特にご確認いただきたい事項 投資リスクについて 変額年金保険の特別勘定の資産運用は 国内外の株式および公社債 国内外のその他の有価証券 貸付金 コールローンおよび預貯金等を主な運用対象としておりますので 株価の下落や金利の変動 為替の変動などにより

黒田総裁が 10 月 6 7 日の金融政策決定会合や 直前の参議院財政金融委員会 (10/28) でも物価目標達成への自信を示していたため 市場では今回は追加緩和が行われないとの見方が大勢であった 追加緩和は市場にとってサプライズとなり 株高 円安が進展することとなった 日銀は 追加緩和を行った理由

3. 資産購入プログラムの円滑な実施に向けた選択肢が検討されることに上述の通りECBの景気 物価見通しがほぼ変わらない中 記者会見においてドラギ総裁は 実施期間の延長や購入規模の拡大などは議論していない ことを明かした 理事会の前には 9 月理事会で資産購入プログラムの実施期間が延長されると予想する

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円 N 先週のメキシコペソ相場今週の見通し 12 月 17 日 - 12 月 21 日取引レンジ 5.53 円 円想定レンジ 5.50 円 円 対円レートは強含み 大幅な歳出拡大計画の発表が期待されており 歳出拡大による景気浮揚への期待が高まったことから 投機的なペソ売り

Transcription:

金融テーマ解説 Financial Market Update 2017/6/13 チーフ アナリスト大槻奈那 日米金融政策決定会合プレビュー : 米国の 9 月利上げ期待は維持できるか - 今週の日米政策決定会合については 各種指標等をみる限り 大きなサプライズは考えにくい 米国は 0.25% の引き上げ 日本は 金利 資産購入のメド等の据え置きを予想する - 日本の個人投資家は物価上昇に懐疑的 エコノミストの間では日銀の次の方向性は 引き締め という見方が大勢を占めるが 個人が物価上昇を信じない限り 日銀はアクションをとりにくいだろう - 日米の短期金利差は開く方向 だが 長期金利については 米国では足元の景気拡大ペースの鈍化で縮小も ドル円レートの動きは限定的とみられるが 金利の動き次第ではやや円高に向かう可能性 各国の金融政策の方向性 : 日本以外は早晩引き締めへ今週は 日本 米国 英国で相次いで政策金利決定会合が開催される ( 図表 1) 今回は これまでの経済指標や当局関係者の発言から サプライズ無しで 日本は金利 量的目標ともに維持 米国は 0.25% の引き上げ と予想される なお 年初に利上げ予想も出ていた英国は 政治的混乱などから 変更は先送りで 政策は維持される方向とみられる 図表 1: 各国の金融政策まとめ :3 月以降の政策金利決定会合 政策会合 ( 発表日 ) 現在の政策金利と予想 日本 2017/6/16 超過準備預金の一部 : -0.1% 維持へ? 米国 FRB 2017/6/15 FF レート上限 : 1.0% 1.25% 引き上げへ? 英国 BoE 2017/6/15 中銀金利 : 0.25% 維持へ? 欧州 ECB 2017/6/8 中銀預金金利 : -0.4% ( 維持決定 ) 次回の政策会合 ( 発表日 ) 量的目標と予想 2017/7/20 年間国債増加額 80 兆円をメド 維持へ? 2017/7/27 中央銀行の資産規模を維持 米国債や MBS( 住宅ローン担保債券 ) の償還分を再投資 ( 資産圧縮は金利を十分引き上げた後 ) 2017/8/3 資産購入枠 :4350 億ポンド据え置き 投資適格級社債購入枠 : 最大 100 億ポンド維持 2017/7/20 国債等の買い入れ額毎月 600 億ユーロ ( 少なくとも年末まで継続 ) 今後半年程度の金融政策の方向性予想 金融引き締め方向 金融緩和方向 その他の政策 コメント 報道等 - ETF 年間 +6 兆円 JREIT+0.9 兆円の保有残高増加 -CP2.2 兆円 社債 3.2 兆円の残高維持 -10 年国債利回りゼロ % 程度? 年初頃までは 金融引き締め方向の予想が大半だったが 現在は据え置き予想が大勢 6/8 の会合で 今後の利下げ可能性を削除 金融緩和からの 出口 への方向性を示唆銀行への長期貸出ファシリティ (TLTROII) は 17/3 月まで オーストラリア RBA 2017/6/6 政策金利 :1.5% ( 維持決定 ) 2017/7/4? 景気 雇用拡大 但し 住宅市場や家計債務めぐるリスク が前々回会合では警告されたが 5 月の住宅価格は1.5 年 ぶりに下落し 金利引き上げ時期の予想はやや後退 カナダ BoC 2017/5/24 O/N 政策金利 : 0.5%( 維持決定 ) 2017/7/12 副総裁等 景気拡大から緩和の方向を示唆 ( 出所 ) 各中央銀行 Website, ブルームバーグデータよりマネックス証券作成 - 1 -

2013/06 2013/09 2013/12 2014/03 2014/06 2014/09 2014/12 2015/03 2015/06 2015/09 2015/12 2016/03 2016/06 2016/09 2016/12 2017/03 Financial Market Update 日本 : 注目点は景気判断の表現 日銀の景気判断は 4 月の前回会合で 緩やかな拡大に転じつつある と上方修正され 約 9 年ぶりに 拡大 という表現が盛り込まれた 今回の会合では 景気判断の表現をどのように修正するかが注目される もっとも 景気は 国内消費が盛り上がらない分 海外頼み であり 先行きが読みにくい しかも 4 月に上方修正したばかりであることから 今回大きな調整は考えにくいだろう 米国 : 注目点は 中央銀行の資産縮小の具体策 懸念要因への言及 市場では イエレン米連邦準備理事会議長が これまで積み上げてきたバラスシートをどう正常化 ( 縮小 ) するか その時期や規模について言及するかどうかが注目されている しかし 現時点では 国内の政策の混乱 欧州 ( 特に英国 ) の不透明性から そこまで具体的なタイミングや規模は示しにくいだろう 12 月 3 月に次いで 今回 6 月と 四半期ごとに 0.25% ずつ 着実に利上げを続けるだけでも十分なペースともいえる また 先行き見通しについて どのような点をリスク要素として挙げるのかも注目される 例えば 直近の期待インフレ率の低下 ( 図表 2) や雇用者数の伸びの鈍化 海外の政治経済情勢など 何らかのリスクの増大について言及されると 9 月の利上げ予想の低下に繋がりうる 図表 2: 米国の期待インフレ率 ( 直近は 17/5 月 ) 4.0 3.8 (%) 3.6 3.4 3.2 3.0 2.8 1 年先 3 年先 2.6 2.4 ( 出所 )NY 連銀 - 2 -

今後の方向性 今後半年程度で見ると 日本以外は概ね金融引き締めの方向性が示唆されている ( 前掲図表 1) 米国では 9 月か 12 月の再利上げ ( 当方では 12 月を予想 ) カナダでも中銀幹部から利上げの方向性が示唆されている 欧州も 先週の ECB 理事会で インフレ見通しは下方修正されたものの 追加利下げは打ち切る方針が示され 出口への 地ならし が始まった 一方日本については 超緩和的な金融政策が維持されることが予想される 依然として消費者物価が低迷し 上昇への不信感が根強いためである 弊社が 5/29~6/2 に個人投資家向けに行ったアンケート調査では 消費者物価指数に対する見方は引き続き慎重だという結果が出た 日銀はインフレ率 2% 達成を 2018 年度頃 としていますが 達成できると思いますか? という問いに対しては 前回調査同様 7 割以上の高い比率の回答者が 達成できない と回答している ( 図表 3) また 金融政策のインフレ期待形成に対する貢献についても 貢献していない という回答が半数近くに上り 貢献している という回答の 3 倍近かった ( 図表 4) 図表 3: インフレ 2% は達成できるか 図表 4: 日銀の金融政策は インフレ 2% に貢献しているか 201706 8.1% 73.7% 18.1% 201706 16.3% 45.6% 38.1% 201704 11.6% 54.3% 34.2% 201704 6.1% 76.3% 17.6% 201703 17.2% 47.2% 35.6% 201701 15.7% 47.7% 36.6% 201703 5.9% 75.9% 18.2% 201612 12.0% 46.9% 41.1% 201610 11.1% 50.3% 38.5% 201701 8.0% 71.3% 20.7% 201609 9.4% 51.8% 38.8% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 達成できる達成できないわからない / どちらともいえない 0% 20% 40% 60% 80% 100% 貢献している貢献していないわからない / どちらともいえない これらの予想を反映し 次の金融政策は 緩和方向 という予想が 引き締め方向 という予想とほぼ拮抗している ( 図表 5) これは ブルームバーグが市場のアナリスト エコノミスト向けに行っている調査で 引き締め方向 が圧倒的であることと対照的である ( 図表 6) 個人の方がより低インフレの実感が強く 結果として引き締めは時期尚早と強く感じている様子が伺われる - 3 -

図表 5: 今後の日銀の金融政策の方向性 : 弊社による個人向け調査 図表 6: 今後の日銀の金融政策の方向性 : ブルームバーグによるアナリスト エコノミスト向け調査 14.0% 39.6% 29.8% 30.6% 86.0% 追加緩和する方向引き締める方向わからない ( 出所 ) ブルームバーグ 追加緩和する方向 引き締める方向 もしこれらの個人の感覚を日銀が正しく捕らえていれば 引き締めと取られるような行動も表現も まだ封印しておくだろう 逆にもし現時点で引き締めの方向性を示した場合 個人の投資消費マインドの落ち込みが懸念される 仮になんらかの政策変更が取られた場合 市場への影響はどうか 個人投資家アンケートによれば 以下の施策がとられた場合 投資に対してポジティブになれるとしている ( 図表 7) 第一位は マイナス金利の停止 という回答である これは金融引き締めになるので 理論的にはマインドを冷やすはずだが その施策がマインドを冷やした ため 良いニュースとして市場に好感されそう ということで期待されているようだ 図表 7: 日銀がどのような金融政策を行ったら 投資に強気になれますか? マイナス金利政策の停止 ( 金利引き上げ ) 354 ETF JREIT 買入の更なる増額 259 国債の直接引き受け ( いわゆるヘリコプターマネー ) 145 マイナス金利幅の拡大 132 国債買い入れ減額 または買い入れメドの停止 113 イールドカーブ操作の変更 ( 長期金利目標の引き上げなど ) 99 その他 48 0 50 100 150 200 250 300 350 400-4 -

米国 : 会合後 9 月追加利上げの確度次第 : 足元では追加利上げの強いメッセージは出しにくい環境 今週の利上げは殆ど 所与 のものだとしても 今後の追加利上げの時期については市場の意見は分かれている 最も多いのは 9 月 であるが 今回の会合後 この早期追加利上げの期待が拡大すれば 金利は上昇し円安 ドル高方向に向かうだろう しかし 前述の通り 足元では若干国内市場にも弱い動きが見えている 潜在成長率などから算定される 自然利子率 ( 中立的な金利 ) も低迷している 9 月に向けて利上げ方向を強く示すような発言は出しにくい環境だと考える 日米政策決定会合後の金利 為替の動きは? 想定通りの米利上げ 日銀政策維持に加え 米国の 9 月の追加利上げ期待が低下した場合 このところの米国の金利持ち直しの動きに水をさすだろう ( 図表 8) 日本の金利も緩やかながら上昇傾向にあり 金融政策決定会合後には 米国の 9 月利上げ期待が維持できなければ 若干円高ドル安に触れる可能性があるだろう ( 図表 9) 金利など政策会合の 結果 については見どころは少ないものの 声明文やコメントなどのニュアンスには十分注意を払いたい 図表 8: 日米 10 年国債利回り 0.08 0.07 0.06 0.05 ( 円金利 %) 前回の米 FOMC(5/4)/ ( 米金利 日銀 (4/27) 政策決定会合 %)) 2.5 2.4 2.3 図表 9: ドル円レート vs 日米 10 年国債利回り差 116 114 ( ドル / 円 ) 前回の米 FOMC(5/4)/ ( 日米金利差 日銀 (4/27) 政策決定会合 %)) 2.4 2.3 0.04 0.03 2.2 112 2.2 0.02 0.01 日本 米国 0.00 2017/03/31 2017/04/30 2017/05/31 2.1 2.0 110 ドル円レート 日米 10 年金利差 108 2017/03/31 2017/04/30 2017/05/31 2.1 2.0 ( 出所 ) ブルームバーグデータよりマネックス証券作成 ( 出所 ) ブルームバーグデータよりマネックス証券作成 - 5 -

当社は 本書の内容につき その正確性や完全性について意見を表明し また保証するものではございません 記載した情報 予想及び判断は有価証券の購入 売却 デリバティブ取引 その他の取引を推奨し 勧誘するものではございません 過去の実績や予想 意見は 将来の結果を保証するものではございません 提供する情報等は作成時現在のものであり 今後予告なしに変更又は削除されることがございます 当社は本書の内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません 投資にかかる最終決定は お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします 本書の内容に関する一切の権利は当社にありますので 当社の事前の書面による了解なしに転用 複製 配布することはできません 内容に関するご質問 ご照会等にはお応え致しかねますので あらかじめご容赦ください マネックス証券株式会社金融商品取引業者関東財務局長 ( 金商 ) 第 165 号加入協会 : 日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会 一般社団法人日本投資顧問業協会 - 6 -