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宅地建物取引士の使命と役割 公益社団法人神奈川県宅地建物取引業協会 顧問弁護士 立川正雄 第 1 章宅地建物取引士の使命と役割 ( 宅地建物取引士の誕生 ) 問 1 宅地建物取引士になるまで どのような歴史があったのか? P2 第 2 章宅地建物取引士としての使命 ( 顧客の利益保護 ) 第 1 購入者等の利益保護 ( 取引の安全確保 ) P4 第 2 購入者等の利益保護の事例 1 問 2 用途地域の確認と顧客の損害回避 P4 第 3 購入者等の利益保護の事例 2 問 3 ローン特約がある場合の顧客の利益保護 P5 第 3 章必要な知識および能力の向上第 1 必要な知識および能力の向上が求められる事例 1 問 4 民法の知識( 手付倍返しによる契約の解除 ) P7 第 2 必要な知識および能力の向上が求められる事例 2 問 5 土壌汚染対策法の知識 P8 第 4 章宅地建物取引業とコンプライアンス第 1 コンプライアンスが問題となる事例 1 問 6 自力救済を認める契約書作成と その約定を根拠にした P11 貸家からの家財の搬出第 2 コンプライアンスが問題となる事例 2 問 7 団体信用生命保険( 以下 団信 という ) の告知勧誘を P12 行い住宅ローンの借り入れをさせてしまった - 1 -

第 1 章宅地建物取引士の使命と役割 ( 宅地建物取引士の誕生 ) 問 1 宅地建物取引士になるまで どのような歴史があったのか? 1 宅地建物取引主任者を宅地建物取引士に改める内容の宅地建物取引業法 ( 以下単に 業法 という ) の一部を改正する法律案が 平成 26 年 6 月 18 日可決 成立し 平成 27 年 4 月 1 日から施行された 2 宅地建物取引士の資格は最初 1957 年 ( 昭和 32 年 ) の宅地建物取引業法の改正で定められたもので 宅地建物取引員と呼ばれた 1958 年度 ( 昭和 33 年度 ) の宅地建物取引員試験により初代の宅地建物取引員が誕生した 3 宅地建物取引員資格試験は 都道府県知事が行うとされ 各自治体で試験内容がバラバラであった 宅地建物取引員の質が統一されるよう 1958 年度 ( 昭和 33 年度 ) から 全国共通の問題を作成し共通の日に行うこととされた 4 1964 年 ( 昭和 39 年 ) の宅地建物取引業法の改正により 宅地建物取引員から宅地建物取引主任者に改められた 5 今回の改正で 宅地建物取引士に変更されたことに合わせ 資質の向上を求められている 1) 平成 27 年 4 月 1 日から施行された今回の改正で 宅地建物取引士に対し信用 品位を害するような行為を禁止する 信用失墜行為の禁止 が新設された ( 業法第 15 条の2) 2) 宅地建物取引士に対して 必要な知識および能力の向上に努めなければならない という文言も新たに追加された ( 業法第 15 条の3) 3) 宅地建物取引業者が従業者教育に努めなければならないとする項目も新設された ( 業法第 31 条の2) 4) 宅地建物取引業者および宅地建物取引士の欠格事由として 暴力団員等 を追加するなど不動産業界のコンプライアンスも強化された ( 宅業法第 5 条第 1 項 3 号の3 第 5 条第 1 項第 8 号の2) 宅地建物取引士に求められるコンプライアンスは 法令遵守はもちろん 公正 公平な活動を行う という意味もある 5) 宅地建物取引士の業務処理の原則として 宅地建物取引士は 宅地建物取引業の業務に従事するときは 宅地又は建物の取引の専門家として 購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう 公正かつ誠実 - 2 -

公益社団法人神奈川県宅地建物取引業協会 e-スクールにこの法律に定める事務を行うとともに 宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携に努めなければならないこと が明文化された 6) なお 現在 5 人に1 人 とされている宅地建物取引主任者の設置要件は変わらない ポイント! 第 1 章のまとめ 平成 27 年 4 月 1 日に 宅地建物取り引き主任者 から 宅地建物取引士 へ変更し 資質の向上が求められている 信用失墜行為は禁止 必要な知識および能力の向上に努めること 購入者の利益の保護 コンプライアンスの強化 - 3 -

第 2 章宅地建物取引士としての使命 ( 顧客の利益保護 ) 第 1 購入者等の利益保護 ( 取引の安全確保 ) ******************** 宅建業法第 1 条は法の目的として 購入者等の利益保護 を掲げており 宅地建物取引士はこの購入者等の利益保護を図る使命を負っている 参考条文 業法第 1 条 ( 目的 ) この法律は 宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し その事業に対し必要な規制を行うことにより その業務の適正な運営と宅地及び建物の取引の公正とを確保するとともに 宅地建物取引業の健全な発達を促進し もつて購入者等の利益の保護と宅地及び建物の流通の円滑化とを図ることを目的とする 第 2 購入者等の利益保護の事例 1 ***************************** 問 2 用途地域の確認と顧客の損害回避 事例 宅建業者が 自由が丘駅の近くの一戸建ての住戸をレストランの店舗として紹介した 借主は 隠れ家レストラン として営業するため 1000 万円以上かけて内装を行い開店した この一戸建てが建っている地域は第 1 種低層住居専用地域で レストラン経営をすることはできなかった 仲介により一戸建てを借りた借主は 隠れ家レストランを開業したところ 行政からその用途変更は認められないと言われ 閉店せざるを得なくなり 1000 万円以上の損害を被った 宅地建物取引士は借主の保護のためにどのような注意をしなければならなかったのか? 1 第 1 種低層住居専用地域では 建物を事務所や店舗の目的で使う事はできい 2 近時一戸建ての住戸をレストランに改装して営業する者も多いが 第 1 種低層住居専用地域の建物をレストランに改装して営業することはできない 3 第 1 種低層住居専用地域で営業できる店舗は 店舗と兼用の住宅があり 非住宅部分の床面積が 50m2以下で かつ店舗面積が建築物の延べ面積の2 分の1 未満の場合に限られる 4 本件の仲介を取り扱った宅地建物取引士は 借主を保護し 取引の安全を確 - 4 -

ポイント! 保するため 賃貸の交渉段階で借りる予定の建物ではレストランの開業ができないことに気づき 早めに本件建物を借りることを諦めるようにアドバイスすべきであった 建物をレストランに改装して営業することを知っている以上 賃貸借の重要事項で借りる建物が第 1 種低層住居専用地域にあることだけ説明しただけでは責任を果たしたことにならない 問 2のまとめ 1 用途地域で営業できる店舗に制約がある 2 第一種低層住居専用地域では 建物全体をレストランなどの店舗に使うことはできない ( 床面積が2 分の1 未満で50m2以下の場合のみ ) 3 宅地建物取引士は 仲介時 借主の使用目的や法令を検討し 借主が不測の損害を被らないよう注意することが必要である 参考 第 1 種低層住居専用地域で第 1 種低層住居専用地域で建築できる建築物建築できないもの ( 原則 ) 神社 寺院 教会 保育所 診療所 店舗 飲食店 事務所 ( 一般 ) 公衆浴場 ホテル 麻雀屋 パチンコ店 巡査派出所 公衆便所 公衆電話ボックス カラオケボックス バー 映画館 住宅 老人ホーム 図書館 工場 幼稚園 小学校 中学校 高等学校 第 3 購入者等の利益保護の事例 2 ***************************** 問 3 ローン特約がある場合の顧客の利益保護 事例 1) 仲介業者 ( 宅地建物取引士 A) は マンションを売却して一戸建てを買うという買い換えのお客の自宅売却の仲介と一戸建ての購入の仲介を行った 2) 仲介業者 ( 宅地建物取引士 A) は お客の買い換えの資金計画を作成し十分にお客の資金状態を知っており ローンが借りられなければ 一戸建てを買うことはできないことを承知していた 3) 仲介業者 ( 宅地建物取引士 A) はお客が一戸建てを買うためのローン借入に付 - 5 -

公益社団法人神奈川県宅地建物取引業協会 e-スクールき 銀行と折衝し 事前審査書類を提出するなどしていた 4) ところが 売買契約が締結されるとその後仲介業者 ( 宅地建物取引士 A) は ローンの借り入れについての処理を全くせず 銀行に必要な手続きや書類の提出をするよう助言しなかったため ローンの手続きが大幅に遅れてしまった 5) そのため一戸建ての売買契約で定められていたローン特約による解除期限を過ぎてしまい その後 融資銀行からは住宅ローンは貸せないといわれてしまい 売主から20% の違約金を取られてしまった 宅地建物取引士は買主の保護のためにどのような注意と対処をしなければならなかったのか? 1 仲介業者 ( 宅地建物取引士 A) は 一戸建ての購入客に対し ローン特約の解除期限があるから 早く銀行に対し必要書類を提出して手続きをするように助言すべき義務 がある 2 ローン特約で解除できなければ 購入客は売主から違約金を請求されてしまい 多大な損害を被る事を仲介業者 ( 宅地建物取引士 A) は予測することができる 仲介業者 ( 宅地建物取引士 A) が ローン特約の解除期限があるから 早く銀行に対し必要書類を提出して手続きをするように と助言していれば 売主から違約金を請求されることはなかった 3 ローン手続きの助言についても 判例は媒介契約上の義務であるとする 4 また 顧客の資金状態を熟知しており ローンを借りられなければ買うことができない事が分かっていれば 売主と交渉し売買契約書にローン特約を入れなければならない このような配慮も購入者の利益保護として必要である ポイント! 問 3のまとめ ローン申込みの期限やローン特約の解除期限を守るよう購入者に注意することは 仲介契約上の債務である ローンを借りなければ買うことができない場合は 売買契約にローン特約を入れるよう配慮し交渉することも 仲介業者 宅地建物取引士としての責務である - 6 -

第 3 章必要な知識および能力の向上 平成 27 年 4 月 1 日から施行された今回の改正で 宅地建物取引士に対して 必要な知識および能力の向上に努めなければならない という文言も新たに追加された ( 業法第 15 条の3) 参考条文 業法第 15 条の 3( 知識及び能力の維持向上 ) 宅地建物取引士は 宅地又は建物の取引に係る事務に必要な知識及び能力の維持向上 に努めなければならない 第 1 必要な知識および能力の向上が求められる事例 1 *********** 問 4 民法の知識( 手付倍返しによる契約の解除 ) 事例 宅建業者が素人同士の不動産売買契約を仲介した 1 億円の売買代金であったが 買主は手付金として1000 万円を払った 売主から 手付けを倍返しして解約したい との依頼を受けた 仲介業者 ( 宅地建物取引士 A) は 売主に対し 手付け倍返し金の2000 万円を払うので この通知書で解除する 旨 内容証明郵便で送るようアドバイスした 売主は 仲介業者 ( 宅地建物取引士 A) に言われたとおり 内容証明郵便を送り 手付け解除期限の前日に買主に届いた ところが 買主の側は 手付解除は無効だと主張している 宅地建物取引士 Aのアドバイスは正しかったか? ポイント! 1 最も良い方法は 解約合意書を締結して 倍返し金を合意書締結と同時に支払い 契約を解消する方法である 2 解約合意書を締結できないときは 売主から買主に2000 万円を 現実に提供 ( 売主が現金 2000 万円を持参して 買主に解除したいからこの200 0 万円を受領して欲しいと要請する ) して解除させる 売主からは内容証明を出しただけでは 解除できない 3 買手は 内容証明を出すだけで契約を解除できる 売手の手付解除は 倍返 し金を相手に受取らせる必要があるので 弁済の提供 ( 買主の前に現金 200 0 万円置いて 受け取れることができるようにすること ) をしないと手付倍返しによる解除ができない 4 上記手付倍返しによる契約の解除のため面会することを買主に伝えたところ 買主から 手付解除は認められないので 倍返し金は受け取れないし 会 - 7 -

ポイント! いもしない と受領を拒否されたときは 買主宛 解除の意思表示と倍返し金の受領催告を内容証明郵便で送り 倍返し金は念のため供託するほうがよい 注 このように 買主から予め 手付け倍返し金の2000 万円は受け取れない と受け取りを拒否されたときは 口頭の提供 (2000 万円を払えるよう準備して受け取りを催告する ) で 弁済の提供 が認められるから 現実に買主が2000 万円を受け取っていなくとも売主からの手付解除ができる 5 買主は手付金を放棄するだけなので 手付放棄による解除を売主に内容証明で送るだけでよい 6 解除の意思表示は 自分の側の仲介業者に伝えただけでは解除の効果は発生しない 相手方の仲介業者に伝えた場合でも手付解除はできない 売主又は買主から直接相手方に通知させること もちろん 解除の内容証明を仲介業者が代書することはかまわない 問 4のまとめ 仲介業者 宅地建物取引士は 不動産取引に精通していなければならない また 仲介業者 宅地建物取引士はよく勉強して 顧客に対して間違いのないアドバイスをしなければならない 第 2 必要な知識および能力の向上が求められる事例 2 *********** 問 5 土壌汚染対策法の知識 事例 宅建業者 B 社が 元鉄工所後の土地を更地としてA 社 ( 非宅建業者 ) に売却するについて仲介をした 仲介したのは 地元の古い宅建業者で 本件土地が鉄工所として使われていたことはよく知っており 雑談の中で買主に対し 現在は駐車場になっているが 20 何ほど前までは 元鉄工所があったところですよ と教えた 売買契約書では瑕疵担保責任は引き渡し後 3ヶ月となっていた 1 年後 買主 A 社が本件土地を転売したところ その買主から 土壌染汚染を理由に瑕疵担保責任の追求を受け3000 万円の賠償をしなければならなくなった 汚染物質は鉄工所で錆び止めとして使われていた薬剤によるものであった 買主 A 社の社長は 宅建業者 B 社は 本件土地が鉄工所として使われていたことはよく知っているのに 土壌汚染がある可能性があること したがって本件土地を買うについては 土壌汚染があるかないかの調査をしてから買うべきだと言うアドバイス 注意をしてくれなかったので 仲介し - 8 -

公益社団法人神奈川県宅地建物取引業協会 e-スクールた宅建業者を訴えたい と考えている 宅地建物取引士は買主の保護のためどのような知識を習得していなければならなかったのか? 1 仲介業者 ( 宅地建物取引士 ) は土壌汚染対策法と具体的な問題点を勉強し これらの知識を習得しておく必要があった 2 本件仲介行為で 買主が仲介業者を訴えた裁判で勝つ ( 宅建業者が賠償責任を負う ) には この状況で 元鉄工所であれば 土壌汚染がある可能性がある を仲介業者 ( 宅地建物取引士 ) が注意すべき義務があったと裁判所が認めるかの問題 3 土壌汚染対策第 3 条では 汚染物質を使用していた工場を廃業する場合は 廃業に当たり 土壌汚染の調査をしなければならないと定める 4 しかし 土壌汚染対策法ができたのは 平成 14 年 ( 施行は平成 15 年 ) であり 20 年前の平成 7 年頃には 汚染物質を使っていた工場も廃業時に 土壌汚染の調査義務がなかった 5 言い換えると 本件鉄工所の廃業時 ( 平成 7 年頃 ) には 廃業時に土壌汚染の調査が行われておらず 土壌汚染対策がとられていない可能性が高い 6 仲介業者 ( 宅地建物取引士 ) が土壌汚染対策法と具体的な問題点を勉強し 買主に対し ここは 元鉄工所で しかも土壌汚染対策法の施行前に廃業しているから 購入に際し土壌汚染の調査をしておいた方が良い とアドバイスしていれば 本件トラブルはなかったし 訴訟を起こされる危険も防止できた 参考条文 土壌汚染対策第 3 条 ( 使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場又は事業場の敷地であった土地の調査 ) 1 使用が廃止された有害物質使用特定施設 ( 水質汚濁防止法 ( 昭和四十五年法律第百三十八号 ) 第二条第二項に規定する特定施設 ( 第三項において単に 特定施設 という ) であって 同条第二項第一号に規定する物質 ( 特定有害物質であるものに限る ) をその施設において製造し 使用し 又は処理するものをいう 以下同じ ) に係る工場又は事業場の敷地であった土地の所有者 管理者又は占有者 ( 以下 所有者等 という ) であって 当該有害物質使用特定施設を設置していたもの又は第三項の規定により都道府県知事から通知を受けたものは 環境省令で定めるところにより 当該土地の土壌の特定有害物質による汚染の状況について 環境 - 9 -

大臣又は都道府県知事が指定する者に環境省令で定める方法により調査させて その結果を都道府県知事に報告しなければならない ただし 環境省令で定めるところにより 当該土地について予定されている利用の方法からみて土壌の特定有害物質による汚染により人の健康に係る被害が生ずるおそれがない旨の都道府県知事の確認を受けたときは この限りでない ポイント! 問 5のまとめ 仲介業者 宅地建物取引士は 鉄工所 ガソリンスタンド 化学工場などの汚染の可能性のある土地の取引を行うときは 土壌汚染対策法などの法令をよく勉強し 当該取引の問題点を把握して 買主に不測の損害を被らせないように知識を蓄えておく必要がある - 10 -

第 4 章宅地建物取引業とコンプライアンス 第 1 コンプライアンスが問題となる事例 1 ********************* 問 6 自力救済を認める契約書作成と その約定を根拠にした貸家からの家財の搬出 事例 仲介業者( 宅地建物取引士 A) はいつも依頼を受けているアパートオーナーから頼まれ 以下の特約がある建物賃貸借契約書を作成した 特約第 条 借主が賃料を 2 か月分以上滞納した場合 貸主は借主の承諾を得ずに本件 貸室に立ち入り中の荷物を搬出のうえ 本件貸室を他に賃貸することができる 仲介業者 ( 宅地建物取引士 A) が 仲介して入居させた借主が半年後に 2 か月分の家賃を滞納したので 貸主から相談された宅地建物取引士 Aは 貸主とともに借主の留守中に貸室に立ち入り 中の荷物を物置に移動して貸室の鍵を変えてしまった 宅地建物取引士 Aの対処に問題はないか? 1 そもそも このような裁判手続きによらずに 強制的に貸室の荷物を貸主側で搬出できるという特約は 自力救済 を容認する特約で無効である ( 特約は公序良俗違反 消費者契約法で無効となる ) 2 貸主の要請があるからといって このように法令に違反する特約を作り 自ら貸主とともに違法行為を行うのは コンプライアンス上非常に問題の行動である 3 宅地建物取引士 Aは アパートの賃貸仲介にあたり 貸主からこのような特約を入れることを要請されても 貸主に理由を話して拒否をすべきである 4 さらに 貸主が現にこの特約に基づいて借主の居室に入り荷物の搬入を行おうとする場合には この特約が無効であることを説明して貸主に違法行為をしないよう説得をしなければならない 問 6 のまとめ 仲介業者 宅地建物取引士には コンプライアンスを守ることが求められる 依頼者にもコンプライアンスを守ってもらうようにすることが必要である - 11 -

第 2 コンプライアンスが問題となる事例 2 ********************* 問 7 団体信用生命保険( 以下 団信 という ) の告知勧誘を行い住宅ローンの借り入れをさせてしまった 事例 仲介業者( 宅地建物取引士 A) はマンションの売買の仲介を行い 買主と共に銀行の住宅ローンの申し込みに立ち会うことになった 買主からは事前に 2 年前に心筋梗塞で 1 ヶ月以上入院した 今でも通院している と告げられた それを聞いた宅地建物取引士 Aは その病歴は申告しないほうがいいですよ とアドバイスし 買主が宅地建物取引士 Aのアドバイス通りに上記病歴を申告しなかったため 住宅ローンがおりて買主はマンションを買うことができたが 1 年後買主は上記心筋梗塞が原因で死亡したが この不告知が原因で生命保険金が下りなかった 宅地建物取引士 Aのアドバイスに問題があるか? 1 問題がある 団信加入時の告知義務違反が判明すれば 団体信用生命保険の契約は保険会社から解約されてしまい 買主側は生命保険の保障が無くなってしまう 2 買主は団信加入時に病歴について告知義務があり 団信が通らないと融資が受けられなくなるとの理由で 病歴を告知しないようアドバイス ( 教唆 ) することは コンプライアンス上大変問題のある行為であり 媒介契約上の義務違反になると考えられる 3 本件のような場合 買主の遺族は住宅ローンを支払う義務を負ってしまうので 宅地建物取引士 Aや仲介業者は遺族から媒介契約上の債務不履行 不法行為を理由に損害賠償を請求されてしまう 第 4 章のまとめ 仲介業者 宅地建物取引士は コンプライアンスを常に考えるべきである コンプライアンスを守ることは お客様の利益を守ること 取引上のトラブルを防ぐことである また 最終的には仲介業者 宅地建物取引士自身を守ることでもある - 12 -