大規模イベント開催時の危機管理等における消防機関のあり方に関する研究結果について ( 概要 ) 研究の趣旨 現在 国際社会では各地で多様な形態のテロが発生し また NBCテロ災害等 特別な備えが必要となる事案が発生する恐れも増してきている 2019 年のラグビーワールドカップ 2020 年のオリンピ

Similar documents
<4D F736F F D E58B4B96CD93C18EEA8DD08A518E9E82C982A882AF82E98D4C88E68D718BF38FC E89878EC08E7B97768D6A>


できない場合は 代表消防機関代行の倉敷市消防局又は津山圏域消防組合消防本部の職員をもって充てるものとする 4 岡山県大隊に 消火 救助 救急等の任務単位毎に中隊を設けることとし 各中隊を 消火中隊等 と呼称するものとする なお 中隊長は 岡山県大隊長が指定するものとする 5 各中隊に 各車両又は付加

< F2D E968CCC8DD08A5191CE8DF495D281458D718BF38DD0>

第 1 章実施計画の適用について 1. 実施計画の位置づけ (1) この 南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画 に基づく宮崎県実施計画 ( 以下 実施計画 という ) は 南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法 ( 平成 14 年法律第 92 号 以下 特措法 と

奈良県ライフライン 情報共有発信マニュアル 第 3.3 版 平成 24 年 7 月 奈良県ライフライン防災対策連絡会

id5-通信局.indd

緊急緊急消防援助隊について消防援助隊の概要 目的 地震等の大規模 特殊災害発生時における人命救助活動等を効果的かつ迅速に実施する消防の援助体制を国として確保 創設の経緯等 阪神 淡路大震災での教訓を踏まえ 平成 7 年に創設 平成 15 年 6 月消防組織法の改正により法制化 平成 16 年 4 月

緊急緊急消防援助隊について消防援助隊の概要 目的 地震等の大規模 特殊災害発生時における人命救助活動等を効果的かつ迅速に実施する消防の援助体制を国として確保 創設の経緯等 阪神 淡路大震災での教訓を踏まえ 平成 7 年に創設 平成 15 年 6 月消防組織法の改正により法制化 平成 16 年 4 月

第 5 部 南海トラフ地震防災対策推進計画

発災後 消防庁長官から被災都道府県以外の都道府県の知事等に電話等により連絡し 行うこととなる しかし 大規模地震においては 通信インフラ等に様々な障害が発生する可能性があり その場合には 緊急消防援助隊の出動に支障が生じることが考えられる このため 一定震度以上の大規模地震等が発生した場合に効力が発

Microsoft PowerPoint - 【参考配布】広域.pptx

大規模災害対策マニュアル

Microsoft PowerPoint - 修正●【HP版】概要版.ppt

資料 2-3 超大規模防火対象物等における自衛消防活動に係る訓練の充実強化方策 ( 案 ) 平成 30 年 10 月 31 日 事務局

( 社会福祉施設用作成例 ) (4) 施設管理者は, 緊急時連絡網により職員に連絡を取りましょう (5) 施設管理者は, 入所者の人数や, 避難に必要な車両や資機材等を確認し, 人員の派遣等が必要な場合は, 市 ( 町 ) 災害対策本部に要請してください (6) 避難先で使用する物資, 資機材等を準

自衛隊の原子力災害派遣に関する達

< C815B984196BF8E968BC68E9E8DD08A AD90B691CE8DF4837D836A B88C42E786C73>

2

Microsoft Word - RIN81_第8章.doc

02一般災害対策編-第3章.indd

目次 1 目的 1 2 医療機関及び行政機関等との協力関係の確保 1 3 事業主体 1 (1) ドクターヘリ 1 (2) 防災消防ヘリ 1 4 定義 1 (1) ドクターヘリ基地病院 1 (2) 地域救急医療体制支援病院 1 (3) ヘリ救急搬送体制支援病院 2 (4) 出動区分 2 5 ドクターヘ

1 外国人傷病者対応 資料 1

<4D F736F F D B089BB E9688C482CC8A8893AE977697CC2E646F63>

H30雑踏事故防止通達(公表用)

油漏洩 防油堤内 にて火災発生 9:17 火災発見 計器室に連絡 ( 発見 者 計器室 ) 発見後 速やかに計 器室に連絡してい る 出火箇所 火災の状況及び負傷者の発生状況等を確実に伝え 所内緊急通報の実施 火災発見の連絡を受 けて速やかに所内 緊急通報を実施し 水利の確保 ( 防災セ ンター 動

第3編 災害応急対策

< F2D E52979C8CA78C788E408E4793A58C78>

<4D F736F F D2091E DF81758DD08A518C7894F58C7689E681762E444F43>

<4D F736F F D AEB8CAF95A893C18DD BC814089BB8A C982A882AF82E98E968CCC96688E7E93992E646F6378>

( ウ ) 交通管制被災区域への車両の流入抑制及び緊急交通路を確保するための信号制御等の交通管制を行う (3) 警察官 自衛官及び消防吏員による措置命令警察官は 通行禁止区域等において 車両その他の物件が緊急通行車両の通行の妨害となることにより災害応急対策の実施に著しい支障が生じるおそれがあると認め

(6) 行方不明者の捜索 (7) 治安の維持 (8) 被災者等への情報伝達 (9) 前各号に掲げるもののほか 派遣先都道府県警察の長が特に指示する活動一部改正 平成 25 年第 15 号 ( 即応部隊の活動 ) 第 4 条即応部隊は 大規模災害発生時に直ちに被災地等へ赴き それぞれ次に掲げる活動を行

<4D F736F F F696E74202D208E9197BF C FC A1817A8C46967B926E906B82D682CC91CE899E82C982C282A282C42E >

参考資料 三郷市火災予防条例の一部を改正する条例案の素案 平成 26 年 9 月 三郷市消防本部 大規模な屋外催しにおける防火管理体制の構築について 1 改正の背景 1 京都府福知山市花火大会火災平成 25 年 8 月 15 日 京都府福知山市で行われた花火大会において 死者 3 名 負傷者 56

<4D F736F F D B4C8ED294AD955C8E9197BF E894A8AFA8B7982D191E495978AFA82C982A882AF82E996688DD091D490A882CC8BAD89BB82C982C282A282C4816A48502E646F63>

<4D F736F F D CA A30312D AD8F6F93FA817A8FC A192CA926D>

テロ対処訓練の実施 従業員 出入業者等が参加するテロ対処訓練を定期的に実施し テロ発生時の対応要領について確認するとともに 参加者のテロ対策への意識を高める また 警察 消防 海上保安機関 周辺の民間事業者等と共同で訓練を実施することで より実態に即した訓練が可能となる 救命講習の受講 テロ発生時に

病院機構災害医療センター ( 以下 災害医療センター という ) に DMAT 事務局を設置する 都道府県は 通常時に DMAT 運用計画の策定 医療機関等との協定の締結等を行い 災害時に 計画に基づき DMAT を運用し 活動に必要な支援 ( 情報収集 連絡 調整 人員又は物資の提供等 ) を行う

第6章  特殊災害対策計画

Taro-例規(雑踏警備実施要領につ

事業継続計画(BCP)作成用調査ワークシート

(6) 八丈町役場 青ヶ島村役場 八丈町災害対策本部 青ヶ島村災害対策本部の設置 7 訓練の様子 (1) 八丈町避難誘導訓練地震時における総合的な避難訓練と火山噴火時における避難訓練を併せて行い 八丈町及び防災関係機関並びに住民がとるべき防災処置を実践し 地震災害 火山噴火災害に対応した防災対策の習

<4D F736F F D208EA98EE596688DD DD A8890AB89BB837D836A B2E646F63>

学校の危機管理マニュアル作成の手引

< F2D817991E F1817A8C46967B2E6A7464>

(溶け込み)大阪事務所BCP【実施要領】

Microsoft Word - 雑踏事故の防止について.docx

Taro-ç·−æ•¥æŽ‡å¯¾å¿œã…Łã…�ã…¼.jtd

第 4 編 復旧等 第 2 章 武力攻撃災害の復旧 区は その管理する施設及び設備について 武力攻撃災害による被害が発生したときは 武力攻 撃災害の復旧を行うこととし 武力攻撃災害の復旧に関して必要な事項について 以下のとおり定 める (1) 国における所要の法制の整備等武力攻撃災害が発生したときは

1 情報通信基盤の整備

資料1 受援計画策定ガイドラインの構成イメージ

( 活動基地及び活動区域 ) 第 5 条 航空隊の活動基地は 西八代郡市川三郷町黒沢 5375 番地に設置する山梨県警察航空基地 ( 以下 航空基地 という ) とする 2 航空隊の活動区域は 県内全域とする ( 編成 ) 第 6 条 航空隊の編成は 別表第 1 のとおりとする ( 業務 ) 第 7

報告書_表紙.indd

< F2D817991E F1817A8C46967B2E6A7464>

第8章 災害復旧計画

PowerPoint プレゼンテーション

アンケート調査の概要 目的東南海 南海地震発生時の業務継続について 四国内の各市町村における取り組み状況や課題等を把握し 今後の地域防災力の強化に資することを目的としてアンケート調査を実施 実施時期平成 21 年 11 月 回答数 徳島県 24 市町村 香川県 17 市町 愛媛県 20 市町 高知県

東京事務所版 BCP 実施要領目次応急頁 < 第 1グループ> 直ちに実施する業務 1 事務所における死傷者の救護や搬送 応急救護を行う一時的な救護スペースの設置 運営 備蓄の設置 医療機関への搬送 1 2 事務所に緊急避難してきた県民や旅行者等への対応 避難 一次避難スペースの運営 指定避難所への

第 2 項交通応急対策 災害時には 道路 橋梁等の道路施設が被災するとともに 倒壊建物 がれき等による障害物や 緊急車両 一般車両による交通渋滞が発生し 緊急輸送等に支障をきたすおそれがある 町民等の避難 災害応急対策員の輸送および救助 救護のための資材 物資の輸送を確実に行うため 迅速かつ適切に交

2 研究開発の実施 研究開発事業については 次の事業を実施した これらの調査研究は 報告書としてまとめ 会員に配布した (1) ヘリコプターベースの運用に関する調査研究ヘリコプターは 通常ヘリポート ( 基地 ) を拠点として運用する したがって 基地を離陸して 災害発生場所に至り 活動が終了すれば

(2) 異常現象と認識しているにもかかわらず 情報収集を行った後に通報することとなっている場合には 異常現象と認識した時点で通報する体制とすること (3) 従業員 ( 協力会社等の従業員を含む ) が異常現象の判断に迷うことにより通報が遅れるおそれのある場合には 異常現象の通報に関する教育 訓練の内

<4D F736F F F696E74202D208E9197BF C E08A748AAF965B817A966B92A9914E82C982E682E9837E B94AD8ECB8E9688C482D682CC91CE899E82C982C282A282C42E B8CDD8AB B83685D>

< F2D817991E F1817A8C46967B2E6A7464>

Microsoft Word - 112_syoubousyo_kitei_ doc

(1) 生活安全部地域室通信指令課長 ( 以下 通信指令課長 という ) は 突発重大事案の発生を認知したときは 報告 連絡系統表 ( 別表第 2) により 迅速に関係所属長 ( 警備部警備課長 ( 以下 警備課長 という ) 事案主管課長 現地警察署の警察署長 ( 以下 署長 という ) 等 )

各府省からの第 1 次回答 1. 災害対策は 災害対策基本法に規定されているとおり 基礎的な地方公共団体である市町村による第一義的な応急対応と 市町村を包括する広域的な地方公共団体である都道府県による関係機関間の総合調整を前提としている を活用してもなお対応できず 人命又は財産の保護のため必要がある

Taro-公表:雑踏例規通達

時間災害状況等の推移関係機関関係機関の活動内容道府県 ( 防災本部 ) の留意事項 ( 評価の視点 ) 1 日目 3.1 地震に基因する標準災害シナリオ 9:00 (0:00) 地震発生 ( 震度 6 強 ) 特定事業所 施設等の緊急停止措置 災害拡大防止上必要な施設の手動停止操作 地震発生後 速や

<4D F736F F F696E74202D F093EF8A6D95DB8C7689E681768DEC90AC82CC8EE888F882AB2E B8CDD8AB B83685D>

平成  年  月  日

消防庁予算 ( 案 ) の概要 H30 当初 予算額 ( 案 )142.9 億円 ( 対前年度比 4.2 億円増 3.0% 増 ) 一般会計 億円 ( 対前年度比 0.2 億円減 0.2% 減 ) 復興特別会計 17.3 億円 ( 対前年度比 4.4 億円増 33.8% 増 ) H29

Microsoft Word - GH.docx22.docx

目  次

ことを呼びかけます Q4. ミサイルが落下する可能性がある との情報伝達があった場合は どうすれば良いのでしょうか A4. 屋外にいる場合 近くの建物 ( できれば頑丈な建物 ) の中又は地下に避難してください 近くに適当な建物等がない場合は 物陰に身を隠すか地面に伏せ頭部を守ってください 屋内にい

はじめに 消防法の規定では 一定規模の建物の管理権原者は 防火管理者を定め 消防計画を作成し 防火管理上必要な業務の実施を定めています その中でも 消防計画に基づく訓練の実施は最も重要な事項です 特に特定防火対象物 ( 集会場 スーパー ホテル 病院等の不特定多数の人が出入りする施設 ) には 年

( 県の責務 ) 第三条県は 地震防災に関する総合的な施策を策定し 及びこれを実施する責務を有する 2 県は 市町村 自主防災組織その他防災関係機関等と連携して 地震防災対策を推進しなければならない 3 県は 地震に関する調査及び研究を行い その成果を県民 事業者及び市町村に公表するとともに 地震防

平成 30 年度救急業務のあり方に関する検討会報告書の概要 消防庁救急企画室 はじめに 消防庁救急企画室では 高齢化を背景として救急需要が増大する中 救急車の適正利用の推進や救急業務の円滑な実施と質の向上等 救急業務を安定的かつ持続的に提供し救命率の向上を図ることを目的に 平成 30 年度救急業務の

<4D F736F F D F9D95618ED282CC94C EF393FC82EA8EC08E7B8AEE8F C9F93A289EF95F18D908F B A97768E862E646F6378>

1青森県防災ヘリコプター運航管理要綱

第 1 章 危機管理とは 1 1 目的 2 分類 3 対象とする危機の内容 4 体制 5 対応 6 原因の分析と評価 7 見直しの観点 第 2 章 初動対応編 6 1 交通事故発生時の対応 2 事故 ( けが等 ) 発生時の対応 3 病気等 ( 学校において予防すべき感染症含む ) 発生時の対応 4

目次 はじめに P3 1 災害 緊急の範囲 P3 2 時間と場所を考慮した対応の必要性 P3 3 時間ごとの対応 P4 4 場所ごとの対応 P5 5 デジタルサイネージの提供コンテンツ P6 6 緊急時を意識したデジタルサイネージシステム P6 7 情報の切替 復帰の条件 P7 8 緊急運用体制 P

防災業務計画(第3編 東海地震防災強化計画)

防災業務計画 株式会社ローソン

平成 31 年度消防庁予算 ( 案 ) の概要 H31 当初 一般会計予算額 億円 ( 対前年度比 42.0 億円 33.5% 増 ) 復興特別会計予算額 26.7 億円 ( 対前年度比 9.4 億円 54.0% 増 ) H30 補正予算額 ( 案 ) 45.1 億円 ( 一般会計 )

Taro-309 緊急事態における新潟県警察の組織に関する要綱の制定について(例規通達)

01講習会スライド(報告書用).pptx

二戸市地域防災計画 ( 震災編 ) の一部修正の新旧対照表現行改正案 目次 ( 震災編 ) 目次 ( 震災編 ) 第 1 章総則 第 1 章総則 第 1 節 計画の目的 351 第 2 節 計画の性格 352 第 2 節の2 災害時における個人情報の取り扱い 352 第 3 節 防災関係機関の責務及

川越地区消防局 消防署組織図 消防局長 消防局 ( 代 ) 総務課 総務担当 消防団担当 財務担当職員担当 管理担当 予防課 予防担当 査察指導担当 保安担当 警防課 警防担当 装備担当 救急課 0

大津市避難所運営マニュアル

PowerPoint プレゼンテーション

事務連絡平成 30 年 10 月 26 日 各都道府県消防防災主管課東京消防庁 各指定都市消防本部 } 殿 消防庁予防課 外国人来訪者や障害者等が利用する施設における災害情報の伝達及び避難誘導に関するガイドライン のリーフレットの配布について 2020 年東京オリンピック パラリンピック競技大会が開

2. 運用の基本方針 DMATの活動は 通常時に都道府県と医療機関との間で締結された協定及び厚生労働省 文部科学省 独立行政法人国立病院機構等により策定された防災計画等に基づくものである DMATの派遣は被災地域の都道府県の派遣要請に基づくものである ただし 厚生労働省は当分の間 被災地域の都道府県

イ留意事項 ( ア ) 対処基本方針が廃止された場合は 救援の継続や復帰のための措置について 何らかの措置により行います ( イ ) 復帰のための措置 a 誘導以外の措置 b 市長 知事による誘導 (2) 別紙第 1 情報計画 参照 2 構想 (1) 活動方針市 ( 環境防災課ほか各課 ) は 県

2-1 出場体制等 1 出場体制東京消防庁における出場体制は 火災 救助 救急及び危険排除等の災害区分に応じて 普通出場 特別出場 特命出場により対応しています ⑴ 火災普通出場 市街地の一般火災及び大規模又は特殊な対象物の火災が発生した場合 火災の規模に応じて第 1 出場から第 4 出場に区分して

応急対策計大規模事故対策編第1章応急活動体制大規模事故第対2策章編大規模事故時の応第2章急対大策規計模画事故時の大規模事788 故対策編第 2 章大規模事故時の応急対策計画第 3 節道路 橋梁 トンネル事故 大規模機関名対策内容編3 事故時の応急措置 (1) 東京消防庁 消防署又は 警視庁 警察署と

対応すべき行動_0921

280502ソフトターゲットにおけるテロ対策の推進について(依頼)

長野県消防防災ヘリコプター運航協議会会則

Microsoft Word - 【関係者】運用ガイドライン doc

病院等における耐震診断 耐震整備の補助事業 (1) 医療施設運営費等 ( 医療施設耐震化促進事業平成 30 年度予算 13,067 千円 ) 医療施設耐震化促進事業 ( 平成 18 年度 ~) 医療施設の耐震化を促進するため 救命救急センター 病院群輪番制病院 小児救急医療拠点病院等の救急医療等を担

Transcription:

大規模イベント開催時の危機管理等における消防機関のあり方に関する研究結果 平成 27 年 4 月 14 日消防庁 消防庁では 2019 年のラグビーワールドカップや 2020 年のオリンピック パラリンピック東京大会という大規模イベントの開催に向けて 消防機関等が今後取り組むべき課題及び対応策をとりまとめましたので公表します 1. 研究の趣旨 本研究は 2019 年のラグビーワールドカップ 2020 年のオリンピック パラリンピック東京大会という国家的 歴史的なイベントの開催にあたり テロ災害等の発生時に避難住民の誘導や救助 消火活動 傷病者の搬送等を担う消防機関において 現状の課題を整理 分析し 早急かつ計画的に体制を整備していくことを目的とし実施したものである 2. 研究の進め方 研究では 地下鉄サリン事件(1995 年 ) やボストンマラソン爆弾テロ事件 (2013 年 ) 等の過去の具体的な事例から教訓 課題等を抜き出すとともに 大規模イベント開催中に爆弾テロや NBC テロ等が発生した際の消防機関等の活動をシミュレーションし テロ災害等発生前後の消防機関の活動の段階毎に実践的な課題の抽出及び対応策の検討を行った 3. 研究の結果 今後の大規模イベントの開催にあたり 消防機関等が実施する必要がある各種計画等の作成や人員 車両 資機材等の配備 消防職員等への教育や実践的なテロ対処訓練の充実 関係機関間の連携の強化等について整理するとともに 大規模イベントの開催に向けた具体的な目標を工程表として取りまとめた 別添資料 大規模イベント開催時の危機管理等における消防機関のあり方に関する研究結果 について ( 概要 ) 大規模イベント開催時の危機管理等における消防機関のあり方に関する研究結果 ( 連絡先 ) 消防庁国民保護 防災部防災課国民保護室担当 : 近藤課長補佐 安藤事務官 TEL:03-5253-7550 FAX:03-5253-7543

大規模イベント開催時の危機管理等における消防機関のあり方に関する研究結果について ( 概要 ) 研究の趣旨 現在 国際社会では各地で多様な形態のテロが発生し また NBCテロ災害等 特別な備えが必要となる事案が発生する恐れも増してきている 2019 年のラグビーワールドカップ 2020 年のオリンピック パラリンピック東京大会という国家的 歴史的なイベントの開催にあたっては テロ災害等の緊急事態に際し 避難住民の誘導や救助 消火活動 傷病者の搬送等を担う消防機関においても 早急に そして 計画的に体制を整備していく必要がある 本研究は こうした状況認識の下 国家的な大規模イベントの開催に向けて 消防機関がこれから取り組まなければならない課題について 様々な視点から分析し 整理することを目的とし 実施したものである なお 本研究にいう大規模イベントとは 2019 年ラグビーワールドカップ及び2020 年オリンピック パラリンピック東京大会の2つのイベントを想定している 研究の方法等 本研究では 地下鉄サリン事件 (1995 年 ) やボストンマラソン爆弾テロ事件 (2013 年 ) 等の過去の具体的な事例から教訓 課題等を抜き出すとともに 大規模イベント開催中に爆弾テロやNBCテロ等が発生した際の消防機関等の活動をシミュレーションし テロ災害等発生前後の消防機関の活動の段階毎に実践的な課題の抽出及び対応策の検討を行った 1. テロ災害等の発生時における消防の任務 避難住民の誘導 救助活動 消火活動 傷病者の搬送等 2. 消防機関のテロ災害等の発生前後の主な活動 本研究は 消防が今後取り組むべき事項を整理するものであることから テロ災害等発生前後の消防機関の任務である避難住民の誘導 救助活動 消火活動 傷病者の搬送等を中心として検討した なお 関係機関間の連携が必要な事項については 必要な範囲で課題を検討整理した テロ災害等の発生前後における消防機関の任務及び主な活動は 右のとおりである テロ災害等の発生前 競技実施建築物等の立入検査 ( 火気使用設備状況 避難経路の確認等 ) 医療機関への働きかけ ( 特別な収容体制の確保依頼 ) 状況に応じた警戒 ( 火災危険 NBC テロ 熱中症対応等を想定 考慮した人員 資機材等の配備 ) テロ災害等の発生後 覚知 緊急情報の伝達 避難誘導 検知 ゾーニング 消火活動 傷病者の救助 除染 トリアージ 応急救護 傷病者の救急搬送

大規模イベント開催時の危機管理等における消防機関のあり方に関する研究結果について 研究結果の概要 想定される状況と主な課題 1. テロ災害等の発生に備えた警戒体制 会場等を巡回し 警戒する人員や会場の警戒本部等で待機する人員及び車両 資機材等の確保が必要 テロ災害等の発生時に 近隣の消防署や他の消防本部等から人員や車両 資機材等を速やかに現場へ投入できる体制の構築が必要 警戒体制の構築にあたり 地元消防本部において人員や車両 資機材等が不足する場合 他の消防本部からの応援等により補うことが必要 この時 警戒体制が国家的な対応が必要となるテロ対策に係るものであること等を踏まえ 国が広域的な調整やその他支援を行うことが必要 2. テロ災害等の覚知 通報 警戒にあたる消防職員等は テロ災害等発生時に現場に先着し ファーストレスポンダーとなるため 状況に応じて NBC テロの発生を疑い 二次災害に遭わないよう適切な行動を取るための教育が必要 このため 警戒にあたる消防職員等には 携帯可能な防毒マスクや検知器等 最低限必要な装備 資機材等の配備が必要 会場スタッフや大規模集客施設の職員等に NBC テロに関する基礎知識を普及させることが必要 3. 消防活動の開始 消防各隊が速やかに現場に到着するために 事案発生後の速やかな交通整理や部隊の集結スペースの確保が必要 また 交通の混雑等により迅速な部隊集結が困難になると予想される場合には 道路混雑等の影響を受けないヘリコプターや消防艇等による人員や物資等の支援が有効 テロリストの潜伏等が危惧される現場では 警察機関等と緊密に連携し 消防機関や医療チーム等の安全を確保することが必要 4. 観客等の避難誘導 各機関が適切な情報共有の下で避難誘導の方針を統一し 現場の警戒人員が所属機関を問わず一致した避難誘導を実施できる仕組みが必要 5. 検知 ゾーニング テロの発生時には 直ちに NBC の検知を実施し 検知結果を関係機関間で共有することが必要 NBC テロが疑われる場合には NBC 対策隊による検知やゾーニングの結果に基づき 消防隊や救急隊は活動を開始する このため 時間との戦いとなる傷病者の救助 救急活動を迅速に開始できるよう NBC 対策隊を速やかに現場に投入することが必要 6. 消火 救助活動 爆弾テロの場合 爆発による倒壊建物等における救助活動では 建物等の更なる倒壊等による二次災害の危険性への配慮が必要 NBC テロの場合 汚染地域内での救助活動には 陽圧式防護衣等の防護措置を施した十分な数の NBC 対策隊を投入することが必要 7.NBC 災害により汚染された者の除染 NBC テロ発生時には 汚染された傷病者等に対し 除染テントや大型除染システム等を活用し除染を実施する 汚染された傷病者の多数発生時には 必要な除染能力を 近隣の消防本部等も含め 速やかに確保することが必要 8. トリアージ 応急救護から救急搬送 医療機関の収容 傷病者は 現場付近の応急救護所等においてトリアージされ 救護 医療提供を受けながら 医療機関への搬送を待つことになる 会場等に応急救護所の設置スペースや救護用資機材等の確保が必要 傷病者の搬送手段の確保が必要であり 特に 地元の消防本部は計画的に救急車両等の搬送力を増強することが必要 多数傷病者の発生に備えた 医療機関の傷病者の受入れ数の確保が必要 また NBC 災害による傷病者を医療機関において円滑に受け入れるため 事前の調整が必要 大規模イベント開催に向けた消防の具体的目標 1. 計画等の作成 地元消防本部は イベント主催者等が作成する会場の警戒に関する全体計画等との整合性を図りながら 消防の応援に係る地元消防本部の配置予定人員数及び他の消防本部からの応援予定人員の規模を含めた会場等消防警戒計画を作成する 2016 年度目途 地元消防本部は テロ災害等の発生時に備え 災害の規模等に応じた出動部隊数や応援要請の基準 部隊の集結場所等を定めた消防応急対応要領を作成する 2017 年度 ~ 消防庁は テロ災害等の発生時に備え 派遣部隊の規模や部隊編成 進出拠点等を定めたラグビーワールドカップ緊急消防援助隊アクションプラン及びオリンピック パラリンピック緊急消防援助隊アクションプランを作成する 2017 年度 開催地の都道府県は 関係消防本部及び医療機関等間で調整の上 広域的な分散搬送を含めた 地域医療搬送要領を作成する 2017 年度 ~ 別添資料 1 2 参照 2. 人員の確保 地元消防本部は 会場等消防警戒計画の調整状況を踏まえ 消防の警戒に係る配置予定人員の規模を決定し 計画的に必要人員を確保する 2015 年度 ~ 地元消防本部の配置予定人員では 人員が不足する場合 他の消防本部からの応援予定人員の規模を決定する 2016 年度 ~ 消防庁は 他の消防本部からの応援体制の構築にあたり 必要な調整 支援を行う 別添資料 1 参照 3. 車両 資機材等の確保 会場等の警戒体制の構築にあたり 会場等の警戒にあたる部隊は 別添資料 2のような装備 資機材等を準備する 消防庁は NBC 災害対策車両やスーパーアンビュランス 大型除染システム NBC 検知 同定装置等の車両や資機材等を 無償貸与制度等を活用しながら 計画的に配備する 2015 年度 ~ 4. 研修 訓練等の実施 消防庁は NBC 対策隊に対するNBC 災害の専門部隊としての標準化された教育カリキュラムを決定 2015 年度 し 消防大学校において当該カリキュラムを用いた教育訓練を実施するとともに 教育訓練を受けた者に対する認証を行う 2016 年度 ~ 消防庁は 警戒にあたる消防職員に対するNBCテロ災害等のファーストレスポンダーとしての教育内容を決定 2016 年度 し 各消防学校等において教育訓練を実施する 2017 年度 ~ なお 警戒にあたる消防団についても NBCテロ災害等のファーストレスポンダーとなる可能性があるため 各消防学校における訓練等に上記の内容を反映する 2017 年度 ~ 消防庁は 会場スタッフや大規模集客施設等の職員に対する NBCテロ災害等の基礎知識について普及啓発資料を作成し 普及を図る 2016 年度 ~ 消防庁は 国と地方公共団体が共同で実施するテロ災害等への対処能力向上のための国民保護共同訓練について 大規模イベントの開催団体を中心に実施回数を増やすとともに 内容の充実を図る 別添資料 2 参照 5. 関係機関間の連携 別添資料 2 参照 国は イベント期間中の警戒体制の水準を関係機関間の適切な役割分担の下で確保するとともに 警戒本部や合同指揮所等を中心に 関係機関が情報を共有し 連携する仕組みを構築する 多数傷病者やNBC 災害により汚染された者の医療機関の受入れ数について 事前に医療機関等と調整し確保する

別添資料 1 各種計画等の作成及び必要な部隊等 会場計画等 ( イベント主催者等が決定 ) 警戒 必要な部隊のイメージ 消防隊 航空隊 ( 上空 ) 警戒人員等の規模の決定 会場等消防警戒計画 ( 会場やその付近等 ) 待機 ( 会場等に設置された警戒本部 救護所等 ) 消防団指揮隊 消防隊 救助隊 NBC 対策隊 救急隊等 地元消防本部の配置予定人員の規模 他の消防本部の応援予定人員の規模 テロ災害等の発生 消防応急対応要領 出動 ( 消防署等 ) 消防隊 救助隊 NBC 対策隊 救急隊 航空隊等 緊急消防援助隊 アクションプラン 出動 ( 他の消防本部 ) 救助隊 救急隊 NBC 対策隊 ( 除染 ) 航空隊等 地域医療等搬送要領 傷病者の集結拠点 広域的な分散搬送等 消防は イベント主催者等の作成する会場計画や警戒に係る全体計画の下 全体計画や関係機関の計画と整合性を図りながら 各計画等を作成する

別添資料 2 各部隊の区分 任務 車両 資機材 教育 区分発生前の任務発生後の任務必要な車両必要な資機材等必要な教育 消防隊 会場等における警戒 ( 巡回 ) 会場等の警戒本部に待機 消防署等に待機 消防団 会場等における警戒 ( 巡回 ) 進入統制ライン 消防警戒区域の設定 観客の避難誘導等 救助活動支援 ( ショートピックアップ後の傷病者をウォ - ムゾーンへ搬送 ) 除染支援 後方支援 避難誘導等 ポンプ車 - 防毒マスク ( 多用途 ) ( 巡回時各自で携帯 ) NBC 検知器 ( 携帯型 ) ( 巡回する隊ごとに携帯 ) 携帯無線機 ( 巡回時各自で携帯 ) NBC テロ災害等のファーストレスポンダーとしての教育 NBC テロ災害等のファーストレスポンダーとしての教育内容を訓練等に反映 航空隊 上空からの警戒 近隣ヘリポート等で待機 上空からの情報収集 傷病者の搬送等 ヘリコプター ヘリサット 指揮隊 会場等の警戒本部に待機 情報収集 指揮命令等指揮隊車 - 救助隊 会場等の警戒本部に待機 消防署等に待機 NBC 対策隊 (NBC 災害専門救助隊 会場等の警戒本部に待機 消防署等に待機 消防署等に待機 爆弾テロ等に伴うがれきや破損車両等からの救助活動 NBC テロでは救助活動の支援 ( ショートピックアップ後の傷病者をウォ - ムゾーンへ搬送等 ) 救助車 工作車 検知 同定 ゾーニング 救助活動 ( ホットゾーン内のショートピックアップ ) NBC 災害対策車 救助活動支援 ( ショートピックアップ後の傷病者をウォ - ムゾーンへ搬送等 ) 除染 除染車 ウォーターカッター等の切断用資機材 救助用支柱資機材 探索用高度資機材 ( 画像探索機 地中音響探知機等 ) レベル A 防護服 ( 陽圧式 ) NBC 検知 同定装置 レベル A 防護服 ( 陽圧式 ) 大型除染システム 救急隊 会場等の救護所に待機 傷病者の救護 搬送救急車 応急救護車 NBC 災害への対処に係る専門教育 NBC 災害への対処能力の認証