課題春彼岸に出荷可能な切花の作型試験 担当者木下実香 目的切花の需要期のひとつである春彼岸 (3 月下旬 ) に向けて 無加温ハウスで出荷 可能な切花品目 作型を検討する 供試品種一本立ちストックアイアンシリーズ ( サカタのタネ ) ( ホワイト イエロー ピンク マリン ) スプレーストックカルテットシリーズ ( サカタのタネ ) ( ホワイト イエロー 2 ローズ ブルー) キンギョソウアスリートシリーズ ( サカタのタネ ) ( ホワイト イエロー ブライトピンク パープル ) キンセンカオレンジスター ゴールドスター ( タキイ種苗 ) ナデシコフォトン ( サカタのタネ )( ローズ ホワイト ) 脚光 ( 福花園種苗 ) 試験区構成 1 区 8 月 31 日播種 9 月 27 日定植 ( キンギョソウのみ 10 月 5 日定植 ) 9 月 8 日播種 10 月 5 日定植 3 区 9 月 19 日播種 10 月 16 日定植 4 区 9 月 29 日播種 10 月 26 日定植 区制及び株数 1 区制 1 区 15 株 耕種概要栽培条件施設 ( 無加温ハウス ) 栽植密度畝幅 80cm 株間 15cm 4 条 1,900 本 /a ( スプレーストック ) 畝幅 60cm 株間 12cm 4 条 2,800 本 /a ( 一本立ちストック キンギョソウ キンセンカ ナデシコ ) 施肥量 ( 全量元肥 ) 苦土 有機入り複合 A801T 号 12.5 kg/a 結果及び考察 一本立ちストック採花時期 採花物調査の結果を表 1 に示した 1 区は春彼岸前に採花が終了した 春彼岸の期間中に採花できたのは 3 区 4 区だったが 3 区 4 区は開花開始が春彼岸の期間に入ってからであった 草丈はいずれも 40~50cm と短く 切花のボリュームも小さいものが多かった また 一部で茎が縦方向に割れる症状が見られた 以上の結果から 一本立ちストックを春彼岸に合わせて採花するには 9 月上中旬に播種 10 月上中旬に定植すればよいことが示された また この作型では草丈 ボリュームがやや小さくなることが示された この原因として まず低温期で生育が抑制されたことが考えられる また 茎が縦に割れるホウ素不足の症状が見られるなど肥料不足であったことも考えられる 今回苦土 有機入り複合 A801T 号を 12.5kg/a 元肥として施肥したが 量を増やして 18.8kg/a 程度にする 葉の色を見て追肥をする ホウ素を含んだ肥料を用いるなどの施肥を行えば 草丈 ボリュームの大きいものが採花できると思われる 1
スプレーストック採花時期 採花物調査の結果を表 2 に示した スプレーストックは主軸だけでなく 主軸の下部から発生する側枝も採花できるため 主軸と側枝を分けて調査を行った 主軸と側枝では 側枝の方が先に採花が始まった 側枝について 1 区は春彼岸前に採花が終了した 3 区 4 区は春彼岸の期間中に採花できた 草丈は 50cm 前後 切花重は 30g 前後であった 主軸 側枝ともに採花が春彼岸までに終了した 1 区 について 株あたりの側枝数は 1~3 本であった 主軸について 1 区は春彼岸の 1 週間前に採花が終了し 3 区が春彼岸中に採花ができた 4 区の主軸は春彼岸中には採花できなかった 草丈は 50cm 以上 切花重も 100g 前後とボリュームは十分なものが採花できた 以上の結果から スプレーストックを主軸 側枝ともに春彼岸に合わせて採花するには 9 月上中旬に播種 10 月上中旬に定植すればよいことが示された また この作型で春彼岸の時期に草丈 ボリューム共に十分な品質の主軸が採花できることが示された 主軸採花前には株あたり 2 本程度の側枝も採花できる ストックについては 一本立ちよりもスプレーの方が春彼岸出荷に向いていると思われる ただし 低温時に葉に白斑が生じることがある ( 低温障害 ) 特に早朝に気温が下がり 日中晴れて急に気温が上昇するなど気温差が大きいときに発生しやすいので 晴れる日はすぐに換気を行うなど 気温差を小さくする管理が必要になる キンギョソウ採花時期 採花物調査の結果を表 3 に示した 春彼岸の期間までに採花可能な作型は 1 区 のみで これらは早くても 3 月の上旬から 多くは春彼岸の始まる週から採花が始まった また キンギョソウは側枝が発生するが いずれの区でも側枝は期間中に開花しなかった 草丈はいずれも 80cm 以上と十分に伸び 切花のボリュームも十分であった しかし 穂状になっている花が部分的に咲かない花飛び症状がほとんどの採花物で見られた また 一部の採花物で茎の曲がりが見られた 以上の結果から キンギョソウを春彼岸に合わせて採花するには 8 月下旬に播種 9 月下旬に定植すればよいことが示された また この作型で春彼岸の時期に草丈 ボリューム共に十分な品質の切花が採花できることが示されたが 花飛びや茎の曲がりが発生しないように栽培する必要がある 花飛びは花芽が 0 以下の低温に遭遇すると開花しなくなることにより発生する 今年度のように冬季に気温が下がり ハウス内でも 0 以下になることが想定されるときは 保温対策を行う必要がある また 茎の曲がりはフラワーネットを生育に合わせて上げて 切花が倒れないように栽培する必要がある キンセンカ採花時期 採花物調査の結果を表 4 に示した キンセンカは主軸の採花後 4 週間前後で側枝が発生するので 主軸と側枝を分けて調査を行った 1 区は 11 月 は 12 月から主軸の採花が始まり 側枝も春彼岸には採花が終わりかけであった 3 区 4 区も主軸は春彼岸前に採花が始まったが 側枝の開花が春彼岸頃であった 草丈は主軸 側枝ともに 30~40cm と短かった さらに 側枝は株あたり 2~3 本発生したが 特にゴールドスターで 草丈が 30cm に満たず 販売が難しいものが多く 可販率が 60% 前後であった このほか 気温が低い時期でもシンクイムシによる蕾 茎への食害が発生し 切花の姿が乱れるものが一部あった 以上の結果から キンセンカを春彼岸に合わせて採花するには 9 月中下旬に播種 10 月中下旬に定植すればよいことが示された また この作型では切花の草丈が伸びにくいことが示された 主軸も側枝もあまり品質が変わらないことから 主軸を生育初期に摘心して 側枝の生育を促した方がよい切花が得られると考えられる また ゴールドスターの草丈が特に伸びにくいので 低温でも草丈の伸びやすい他の黄色系の品種を使用するとよいと思われる シンクイムシは発生すると花数が減少したり 草姿が乱れるので 低温期でも発生に注意し 初期発生のうちに防除する必要 2
がある ナデシコ採花時期 採花物調査の結果を表 5 に示した ナデシコは主軸の採花後に側枝が発生するので 主軸と側枝を分けて調査を行った フォトンは ホワイトの方がローズよりも早く開花が始まり 1 区は 1 月に採花が始まり 春彼岸には側枝もほとんど採花終了した 3 区は春彼岸中に採花が可能であったが 4 区は主軸も春彼岸までに開花しなかった 脚光は一季咲きで 春にならないと開花しない性質があるので 3 月に入って気温が上がるまで開花しなかった 開花開始が遅かったため 春彼岸に間に合ったのは 1 区 のみであった フォトンは 主軸 側枝ともに草丈 60cm 以上と十分な長さがあり ボリュームも十分であった 側枝は一部切花重が小さいものもあったが 可販率は 70% 以上であった 側枝は株あたり 6~8 本程度採花できた 脚光は 主軸は 50cm 程度あったものの 側枝は 40cm 前後で 切花重が小さすぎて販売できないものが多かった 以上の結果から ナデシコを春彼岸に合わせて採花するには 9 月上中旬に播種 10 月上中旬に定植すればよいことが示された また フォトンはこの作型で十分草丈が伸び 株あたり 6~8 本程度の側枝も採花できることが示された 脚光は 3 月に入ってから生育するので 草丈が伸びにくく 春彼岸までに間に合うものが少ないので この作型には適していないことが示された フォトンの可販率をさらに向上させるために 生育初期に主軸を摘心し 側枝の生育を揃えると効果があると思われる 表 1 一本立ちストックの採花物調査 ( 主軸のみ ) アイアンホワイト 1 月 22 日 3 月 6 日 52 116 20 1 区 アイアンイエロー 1 月 22 日 3 月 12 日 49 71 20 アイアンピンク 1 月 22 日 3 月 12 日 48 60 20 アイアンマリン 1 月 22 日 3 月 6 日 45 64 20 アイアンホワイト 2 月 26 日 採花中 44 41 14 アイアンイエロー 3 月 12 日採花中 48 54 6 アイアンピンク 3 月 6 日採花中 46 47 7 アイアンマリン 2 月 26 日 採花中 44 53 11 アイアンホワイト 3 月 19 日 採花中 46 48 6 3 区 アイアンイエロー 3 月 19 日採花中 43 43 9 アイアンピンク 3 月 19 日採花中 47 66 11 アイアンマリン 3 月 19 日 3 月 22 日 48 71 19 アイアンホワイト 3 月 22 日 採花中 43 85 2 4 区 アイアンイエロー 3 月 22 日採花中 40 64 5 アイアンピンク - - - - - アイアンマリン 3 月 19 日 採花中 45 127 9 採花は 5 輪以上開花したタイミングで行った 草丈は 地際から花首までの長さを測定した 3
表 2 スプレーストックの採花物調査 ( 主軸 ) カルテットホワイト 2 月 14 日 3 月 12 日 53 159 16 1 区 カルテットイエロー 2 月 14 日 3 月 12 日 54 95 15 カルテットローズ 2 月 21 日 2 月 26 日 55 109 15 カルテットブルー 2 月 14 日 3 月 6 日 55 136 16 カルテットホワイト 3 月 6 日 3 月 19 日 54 87 16 カルテットイエロー 3 月 6 日 3 月 19 日 54 96 15 カルテットローズ 3 月 6 日 3 月 19 日 61 119 16 カルテットブルー 2 月 21 日 3 月 19 日 53 147 15 カルテットホワイト 3 月 12 日 採花中 49 71 4 3 区 カルテットイエロー - - - - - カルテットローズ 3 月 19 日採花中 56 101 3 カルテットブルー 3 月 22 日 採花中 55 124 8 採花は 分枝した花の半分で 3 輪以上開花したタイミングで行った 草丈は 地際から花首までの長さを測定した ( 側枝も同様 ) ( 側枝 ) 株あたり 側枝数 ( 本 ) カルテットホワイト 1 月 9 日 3 月 6 日 48 36 53 3 1 区 カルテットイエロー 1 月 9 日 3 月 12 日 49 26 35 2 カルテットローズ 1 月 9 日 2 月 26 日 52 28 24 2 カルテットブルー 1 月 9 日 2 月 26 日 50 31 15 1 カルテットホワイト 1 月 16 日 3 月 19 日 44 23 30 2 カルテットイエロー 2 月 14 日 3 月 19 日 48 26 27 2 カルテットローズ 1 月 22 日 3 月 19 日 53 33 18 1 カルテットブルー 1 月 29 日 3 月 19 日 51 34 15 1 カルテットホワイト 3 月 6 日 3 月 22 日 44 17 36-3 区 カルテットイエロー 3 月 12 日 3 月 22 日 45 20 41 - カルテットローズ 3 月 6 日 3 月 19 日 49 27 41 - カルテットブルー 3 月 6 日 3 月 19 日 49 30 30 - カルテットホワイト 3 月 19 日 採花中 39 22 12-4 区 カルテットイエロー 3 月 19 日採花中 42 24 8 - カルテットローズ 3 月 12 日採花中 42 21 25 - カルテットブルー 3 月 19 日 採花中 44 44 5 - 採花は 3 輪以上開花したタイミングで行った 4
表 3 キンギョソウの採花物調査 ( 主軸のみ ) 区 品種 採花開始 アスリートイエロー 3 月 19 日 86 168 2 1 区 アスリートブライトピンク 3 月 22 日 93 132 3 アスリートパープル 3 月 19 日 105 139 9 アスリートホワイト 3 月 6 日 84 209 3 アスリートイエロー 3 月 6 日 87 160 11 アスリートブライトピンク 3 月 19 日 100 196 9 アスリートパープル 3 月 19 日 115 165 9 採花は 花首が硬くなり 10 輪以上開花したタイミングで行った 草丈は 地際から花首までの長さを測定した 表 4 キンセンカの採花物調査 ( 主軸 ) 区品種採花開始採花終了 草丈 (cm) 切花重 (g) 採花数 1 区ゴールドスター 11 月 13 日 11 月 27 日 42 129 16 オレンジスター 11 月 20 日 12 月 18 日 43 174 16 ゴールドスター 12 月 4 日 1 月 9 日 36 105 16 オレンジスター 12 月 11 日 2 月 20 日 36 105 11 3 区ゴールドスター 12 月 25 日 2 月 20 日 38 104 15 オレンジスター 1 月 9 日 3 月 6 日 39 108 16 4 区ゴールドスター 2 月 14 日採花中 32 81 14 オレンジスター 2 月 14 日採花中 30 87 12 採花は 花弁が色づき 開花し始めたタイミングで行った ( 側枝も同様 ) 草丈は 地際から花首までの長さを測定した ( 側枝も同様 ) ( 本 ) ( 側枝 ) 区品種採花開始採花終了 草丈 (cm) 切花重 (g) 採花数 ( 本 ) 可販数 ( 本 ) 可販率 株あたり 側枝数 ( 本 ) 1 区ゴールドスター 11 月 27 日 3 月 19 日 37 47 50 28 56% 3 オレンジスター 12 月 18 日 3 月 22 日 41 68 48 46 96% 3 ゴールドスター 1 月 9 日 3 月 19 日 36 40 35 22 63% 2 オレンジスター 2 月 26 日 3 月 19 日 37 50 25 21 84% 2 3 区ゴールドスター 2 月 14 日採花中 34 33 37 28 76% - オレンジスター 3 月 12 日採花中 39 51 7 7 100% - 4 区ゴールドスター 3 月 12 日採花中 33 38 5 3 60% - オレンジスター 3 月 19 日採花中 35 24 3 3 100% - 草丈 30cm 以上かつ切花重 20g 以上のものを可販数として数え 可販率を求めた 5
表 5 ナデシコの採花物調査 ( 主軸 ) フォトンローズ 1 月 4 日 2 月 14 日 63 38 11 1 区 フォトンホワイト 1 月 4 日 1 月 22 日 62 34 12 脚光 3 月 6 日 採花中 50 25 8 フォトンローズ 1 月 29 日 3 月 19 日 68 39 12 フォトンホワイト 1 月 29 日 2 月 26 日 59 37 12 脚光 3 月 12 日 採花中 49 39 4 フォトンローズ 3 月 6 日 採花中 64 50 5 3 区 フォトンホワイト 3 月 6 日 採花中 58 51 11 脚光 - - - - - 採花は 2 輪目が開花し始めたタイミングで行った ( 側枝も同様 ) 草丈は 地際から花首までの長さを測定した ( 側枝も同様 ) ( 側枝 ) 草丈 切花重 採花数 可販数 株あたり 可販率 ( 本 ) 側枝数 ( 本 ) フォトンローズ 2 月 14 日 3 月 19 日 68 19 92 68 74% 8 1 区 フォトンホワイト 1 月 9 日 3 月 22 日 64 16 92 68 74% 8 脚光 3 月 19 日 採花中 41 11 9 2 22% - フォトンローズ 2 月 20 日 3 月 22 日 67 18 43 40 93% 4 フォトンホワイト 2 月 20 日 3 月 19 日 60 19 67 50 75% 6 脚光 3 月 19 日 採花中 41 12 1 1 100% - フォトンローズ 3 月 19 日 採花中 64 31 3 2 67% - 3 区 フォトンホワイト 3 月 19 日 採花中 54 18 10 9 90% - 脚光 - - - - - - - - 草丈 30cm 以上かつ切花重 10g 以上のものを可販数として数え 可販率を求めた 6