農業気象技術対策資料

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高温干ばつ対策 H20 7/25

コシヒカリの上手な施肥

今後の管理のポイント [懸案事項] ①早期作型における2番花 房の花芽分化遅延 ②炭そ病とハダニ類の発生 拡大 [対策] ①寒冷紗を被覆して 花芽分化を誘導する 2番花房 の花芽分化を確認して被覆を除去する 被覆期間の目安 9月25 10月20日 ②定期的に薬剤による防除を行う 特に葉かぎ後の 葉か

平成 30 年 7 月 27 日 ( 表題 ) 台風第 12 号の接近に伴う農作物被害技術対策情報について ( 担当 ) 佐賀北部農業技術者連絡協議会事務局 気象庁によると台風第 12 号は 現在 ( 平成 30 年 7 月 27 日 6 時 45 分 ) 硫黄島の南 東約 80km を北東に向かっ

4 野菜夏野菜のナス トマト キュウリ等は 高温乾燥による生理障害等の発生や草勢の低下による着果不良 着色不良等による品質低下に注意する 秋野菜のキャベツ ハクサイ等は 育苗時の発芽不良や定植時の活着不良等に注意する 高温 少雨は チョウ目 アザミウマ類 アブラムシ類等害虫の多発生を助長するため 害

あたらしい 農業技術 No.510 環境にやさしい柑橘の草生栽培 平成 20 年度 - 静岡県産業部 -

予報 岡病防第16号

隔年結果

11月表紙

台風15号技術対策資料 H24年8月27日

項目換気遮光かん水敷きワラ散水 対策技術熱気は高い位置から抜くのが基本 妻面上部の開放妻面フィルム展張部をネットに張り替える サイド換気の改善フルオープンハウス ハーフオープンハウスの導入を検討する サイドフィルムの換気位置をできるだけ高くする 天窓換気 換気扇 ( 循環扇と併せて設置 ) 循環扇

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バンカーシート 利用マニュアル 2017年版(第一版)

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仙台稲作情報令和元年 7 月 22 日 管内でいもち病の発生が確認されています低温 日照不足によりいもち病の発生が懸念されます 水面施用剤による予防と病斑発見時の茎葉散布による防除を行いましょう 1. 気象概況 仙台稲作情報 2019( 第 5 号 ) 宮城県仙台農業改良普及センター TEL:022

281003(最終)台風18号対策.doc

Microsoft Word - ⑦内容C【完成版】生物育成に関する技術.doc

Ⅰ 収穫量及び作柄概況 - 7 -

Ⅱ 今後の管理について 1 水管理について (1) 気象変動に対応した水管理 幼穂形成期に入ったら間断かん水 出穂期から開花期にかけては湛水管理 その後は間断 かん水が水管理の基本になりますが 気象変動に対応した水管理を心がけましょう 1 減数分裂期の低温 減数分裂期 ( 葉耳間長 ±0cm 出穂期

圃場試験場所 : 県農業研究センター 作物残留試験 ( C-N ) 圃場試験明細書 1/6 圃場試験明細書 1. 分析対象物質 およびその代謝物 2. 被験物質 (1) 名称 液剤 (2) 有効成分名および含有率 :10% (3) ロット番号 ABC 試験作物名オクラ品種名アーリーファ

日照不足技術対策資料 H18,5.26

畜舎内から畜舎温度を下げる技術 換気扇 扇風機による送風 細霧装置による冷房 家畜への直接送風 散水等の技術が7 割半ば程度取り組まれ ほぼ全てにある程度以上の効果が認められるが 畜舎構造に合わせた効果的な送風技術の確立のための 技術改良 導入基準 ( の設定 ) 農家の設置費用と経済効果といった

元高虫防第 139 号令和元年 7 月 4 日 各関係機関長様 高知県病害虫防除所長 病害虫発生予察情報について 令和元年度病害虫発生予察 6 月月報及び令和元年度予報 4 号 (7 月 ) を送付します 令和元年度病害虫発生予察 6 月月報 Ⅰ. 気象概況半旬 (6 月 ) 平均気温最高気温最低気

26愛媛の普及原稿 軽 Ⅱ

表 30m の長さの簡易ハウス ( 約 1a) の設置に要する経費 資材名 規格 単価 数量 金額 キュウリ用支柱 アーチパイプ ,690 直管 5.5m 19mm ,700 クロスワン 19mm 19mm ,525 天ビニル 農 PO 0.1mm

営農のしおり(夏秋キク)

目 的 大豆は他作物と比較して カドミウムを吸収しやすい作物であることから 米のカドミウム濃度が相対的に高いと判断される地域では 大豆のカドミウム濃度も高くなることが予想されます 現在 大豆中のカドミウムに関する食品衛生法の規格基準は設定されていませんが 食品を経由したカドミウムの摂取量を可能な限り

PowerPoint プレゼンテーション

Taro-農業被害の概要

新梢では窒素や燐酸より吸収割合が約 2 分の1にまで低下している カルシウム : 窒素, 燐酸, カリとは異なり葉が52% で最も多く, ついで果実の22% で, 他の部位は著しく少ない マグネシウム : カルシウムと同様に葉が最も多く, ついで果実, 根の順で, 他の成分に比べて根の吸収割合が高い

5月の病害虫発生予想と防除のポイント

本文、発送文

作物ごとの対策については 以下のとおりです 水稲 水稲に対する日照不足の影響で最も懸念されることはいもち病の発病であり 出穂期以降では登熟障害 いわゆる白未熟の発生が懸念される また 大雨により河川の水位が高くなり 排水路の水が河川に放流できずに冠水被害をもたらすことがある これらを考慮して健全な生

水田メタン発生抑制のための新たな水管理技術マニュアル(改訂版)

日照不足技術対策資料 H18,5.26

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Ⅲ-2-(1)施設野菜

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H26 中予地方局産業振興課普及だより 新技術情報 -1 いちご新品種 紅い雫 ( あかいしずく ) 1. 紅い雫 の来歴県農林水産研究所が育成したいちご新品種 紅い雫 は あまおとめ ( 母親 ) 紅ほっぺ ( 父親 ) の交配により誕生し 平成 26 年 6 月 25 日に品種登録出願されました

カンキツの土づくりと樹勢回復対策 近年高品質果実生産のために カンキツ類のマルチ栽培や完熟栽培など樹体にストレスをかける栽培法が多くなっています それにより樹体への負担が大きく 樹勢が低下している園地が増えています カンキツ類を生産するうえで樹が適正な状態であることが 収量の安定とともに高品質生産の

1 台風通過後は降雨の状況に応じ 入排水を行なう 2 茎葉の損傷により根の老化が進むので台風通過後は毎日通水するなど間断通水の間隔を短くし 根の機能維持に努める また 可能であれば夜間通水を行なうなどきめ細かな水管理を実施する 3 塩水が水田に侵入した場合は 速やかに塩水を排出し 淡水の散水や入水に

取組の詳細 作期の異なる品種導入による作期分散 記載例 品種名や収穫時期等について 26 年度に比べ作期が分散することが確認できるよう記載 主食用米について 新たに導入する品種 継続使用する品種全てを記載 26 年度と 27 年度の品種ごとの作付面積を記載し 下に合計作付面積を記載 ( 行が足りない

農業における豪雨被害に対する総合的な産地再生対策について 豪雨被害鳥獣害防止施設復旧事業 鳥獣被害防止総合対策事業 (43,379 千円 ) 予定 被災した侵入防止柵の再整備に要する経費 [ 補助率 : 国定額 ( 資材費相当 ) 又は国 1/2 県 1/4 ( 市町 1/4)] 鳥獣害防止施設復旧

Ⅲ-3-(1)施設花き

4. 台風通過後の対策として 適時適切な防除を心掛けること 特に 都道府県病害虫防除所から発表される発生予察情報に基づき適期防除に努めること 作目別対策 1. 園芸作物全般 (1) 事前の対策ア. 台風が接近する前に施設やほ場周辺の点検 排水路の清掃を行うこと イ. 温室 育苗 集荷施設等については

窒素吸収量 (kg/10a) 目標窒素吸収量 土壌由来窒素吸収量 肥料由来 0 5/15 5/30 6/14 6/29 7/14 7/29 8/13 8/28 9/12 9/ 生育時期 ( 月日 ) 図 -1 あきたこまちの目標収量確保するための理想的窒素吸収パターン (

ふくしまからはじめよう 農業技術情報 ( 第 39 号 ) 平成 25 年 4 月 22 日 カリウム濃度の高い牧草の利用技術 1 牧草のカリウム含量の変化について 2 乳用牛の飼養管理について 3 肉用牛の飼養管理について 福島県農林水産部 牧草の放射性セシウムの吸収抑制対策として 早春および刈取

3 園芸作物 < 果菜類 > 1-1 トマト [ ハウス ] ア導入すべき持続性の高い農業生産方式の内容 トマトは主に道央 道南および道北の施設で栽培され 作型は促成 ( ハウス加温 マルチ ) 半促成 ( ハウス マルチ ) 抑制 ( ハウス ) などである 品種は 桃太郎 ハウス桃太郎 桃太郎

山形県における 水稲直播栽培の実施状況 平成 28 年 8 月 26 日 ( 金 ) 山形県農業総合研究センター 1 1 山形県における水稲直播栽培の現状 1 (ha) 2,500 2,000 1,500 1, 乾田直播 湛水 ( 点播 ) 湛水 ( 条播 ) 湛水 ( 散播 )

高品質米の生産のために

Ⅰ ミニトマトの袋培地栽培マニュアル 1 ミニトマト袋培地栽培システムの設置 ア ほ場の準備 袋培地を用い 地床と完全に分離した隔離栽培を実現します 下敷シートと発泡スチロールにより根の土壌への侵入を防ぎ 土壌病害をシャットアウトします 下敷シート 発泡スチロール板 ほ場を整地し 土ぼこりや雑草を防

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果樹の生育概況

     くらぶち草の会の野菜、畑作栽培技術

梢の発生が期待できるよう9月には必ず仕上げ摘果を徹底し 適正葉果比に仕上げましょう 着果量が中庸以上の樹では早生温州では9月中 普通温州では10 月上旬までに行いましょう(表2) ⑴着果過多樹着果量が多く肥大が悪い樹は 商品性の低い小玉果や傷果 病害虫被害果を中心に早急に

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メラレウカ苗生産技術の検討 供試品種は レッドジェム, レボリューションゴールド を用い, 挿し木を行う前日に枝を採取し, 直ちに水につけ持ち帰り, 挿し穂の基部径を 0.8~1.2mm,1.8~2.2mm,2.8~3.3mm で切り分けた後, 長さ約 8cm, 基部から 3cm の葉を除いた状態に

140221_ミツバマニュアル案.pptx

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麦 類 生 育 情 報


農薬登録事項変更登録申請書

1 作物名     2 作付圃場 3 実施年度   4 担当

Microsoft Word - cap4-2013chugoku-hirosima

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140221_葉ネギマニュアル案.pptx

○地下かんがい手引き.doc

委託試験成績 ( 平成 25 年度 ) 担当機関名 部 室名 実施期間 大課題名 課題名 目的 担当者名 山口県農林総合技術センター 農業技術部土地利用作物研究室 資源循環研究室 平成 24~26 年度 Ⅰ 大規模水田営農を支える省力 低コスト技術の確立 うね立て同時条施肥機を利用した被覆尿素の深層

失敗しない堆肥の使い方と施用効果

農業指導情報 第 1 号能代市農業総合指導センター環境産業部農業振興課 発行平成 26 年 4 月 25 日二ツ井地域局環境産業課 確かな農産物で もうかる 農業!! 農家の皆さんを支援します!! 農家支援チームにご相談ください! 今年度 農業技術センター内に農家支援

図 2 水稲栽培における除草剤処理体系 追肥による充実不足 白粒対策 ~ 生育後半まで肥切れさせない肥培管理 ~ 図 3 追肥作業は 水稲生育中 後期の葉色を維持し 籾数及び収量の確保と玄米品質の維持に重要な技術です しかし 高齢化や水田の大区画化に伴い 作業負担が大きくなり 追肥作業が困難になりつ

Taro-ホームページ原稿(暖候期対

毒 2 全面土壌散布 ( 注 : 対象雑草のはシバムギ レッドトップを示す ) 8 カイタック乳剤 [PL-10] -H7 9 カイタック細粒剤 F [PL-10] -H8 ヘ ンテ ィメタリン 15% リニュロン 10% ヘ ンテ ィメタリン 1.5% リニュロン 1.0% は種直後 ~ は種後

排水対策の実施例 暗渠がある場合排水がよいほ場 排水が悪いほ場 周囲明渠 弾丸暗渠 心土破砕は 2 ~5m おきに行う 周囲明渠は深さ 30 cmを確保する 周囲明渠は排水口に確実に接続する 弾丸暗渠本暗渠 暗渠がない場合排水がよいほ場 排水がよく 長辺が長いほ場 100m 以 ほ場内排水溝は4 ~

PC農法研究会

図 1. ブドウの鉄欠乏症 図 2. トマトの亜鉛欠乏症 2. 亜鉛 (Zn) の欠乏症と過剰症亜鉛は植物体内の各種酵素の構成成分である また 植物ホルモンの一種であるオーキシンの代謝 タンパク質の合成に関与する 亜鉛が不足すると 上位葉の生育が著しく阻害され 地上部の生長点あたりは節間が短縮し 小

作業別の留意事項 ここに紹介します留意事項は りんごを栽培する際に特に留意すべき内容を列記したものです また 栽培方法によっては該当しない内容も含まれます 実際の栽培にあたっては 地域の普及指導センターや JA 等に問い合わせいただき 園地条件や品種に適した施肥設計 栽培方法等に基づき栽培してくださ

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スプレーストック採花時期 採花物調査の結果を表 2 に示した スプレーストックは主軸だけでなく 主軸の下部から発生する側枝も採花できるため 主軸と側枝を分けて調査を行った 主軸と側枝では 側枝の方が先に採花が始まった 側枝について 1 区は春彼岸前に採花が終了した 3 区 4 区は春彼岸の期間中に採

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殺虫剤 協友ダントツ 粒剤クロチアニジン 0.50% 種類名 / クロチアニジン粒剤登録番号 / 第 号 * 毒性 / 普通物有効年限 / 4 年包装 / 1kg 12 3kg 6 10kg 特 長 浸透移行性に優れ カメムシ目 ハエ目 コウチュウ目 チョウ目 バッタ目 アザミウマ目の各

(2018 年 10 月 31 日現在の内容 ) 住友化学の農業支援サイト :i- 農力 クロチアニジン粒剤 農林水産省登録第 号性状 : 類白色細粒毒性 : 普通物危険物 : ダントツ 粒剤有効年限 :5 年包装 :1kg 12 3kg 6 12 kg 1 有効成分

ジベレリン協和液剤 ( 第 6006 号 ) 2/ 年 6 月 13 日付け 25 不知火 はるみ 3 回以内 水腐れ軽減 0.5 ~1ppm 500L/10a 着色終期但し 収穫 7 日前まで 果実 ぽんかん 水腐れ軽減 0.5ppm 500L/10a 着色始期 ~4 分

ネギ 防除法

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Taro-02.台風対策(野菜)

病害虫発生予察情報(11月予報)

2 作物ごとの取組方針 (1) 主食用米本県産米は 県産 ヒノヒカリ が 平成 22 年から平成 27 年まで 米の食味ランキングで6 年連続特 Aの評価を獲得するなど 高品質米をアピールするブランド化を図りながら 生産数量目標に沿った作付けの推進を図る また 平成 30 年からの米政策改革の着実な

あけぼの255_01

2 穂の発育過程 (1) 穂の形態 イネの穂は 穂軸が枝分かれして し 1 次枝こう 2 次枝こうがつき それ にえい 花 ( 小穂 ) がつく 1 つのえい花 ( 小穂 ) は 1 花から成 っており その数は 1 次枝こうの先に 5~6 個 2 次枝こうに 2~4 個つき 1 穂全体では 80

茨城県農業総合センター園芸研究所研究報告第 13 号 半促成メロンの 4 月穫り栽培における品種選定および保温方法 金子賢一 小河原孝司 薄史暁 佐久間文雄 SelectionofUsefulCultivarsandaMethodofHeatInsulationinSe

4 パイプ埋め込み部分が水で緩くならないよう ハウス周囲の排水溝を点検して手直しする 5 強風により 資材 木片 小石等が飛来して被覆資材が破損しないように 施設周辺を清掃しておく 6 生育中の野菜がない簡易パイプハウスなどでは被覆資材を巻き上げて軒の部分にくくり付ける 7 鉄道沿線や幹線道路沿いの

附則この要領は 平成 4 年 1 月 16 日より施行する この要領は 平成 12 年 4 月 3 日より施行する この要領は 平成 30 年 4 月 1 日より施行する 2


わかっていること トマトすすかび病について

茨城県 消費者ニーズに応えるイチゴ産地の育成 活動期間 : 平成 22 年度 ~ 継続中 1. 取組の背景鉾田地域は, メロン, ピーマン, イチゴ, トマト, 葉菜類などの野菜類の生産が盛んな, 県内有数の野菜園芸産地である 経営体の多くが複数の園芸品目を組み合わせ, 大規模な複合経営を行っている

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農業気象技術対策資料 農作物の高温 少雨対策技術資料 平成 29 年 8 月 2 日 愛媛県農林水産部農業振興局農産園芸課

1 作物 水稲 (1) 総合的対策 1 計画配水 水稲が多量の水を必要とする幼穂形成期から出穂開花期に より多くの かん水ができるようかんがい水系ごとの配水計画をたてる 2 かんがい路の点検 用水路や畦まわり等からの漏水が無いように 点検 補修を再度行う (2) 早期栽培水稲の水管理 1 田面からの蒸発防止 干ばつがひどく用水がなくなった場合は 土壌表面からの蒸散量を少な くするため 畦畔沿いに切りわら 刈り草などで被覆する 2 雑草防除 干ばつ田では雑草の発生が多く 雑草が多発すると水分と養分を奪い 3 その他 干害を助長するので極力除草に努める 干ばつによりひび割れのひどい水田は少量のかん水では水の走りが悪い ので パイプやホースあるいはスプリンクラーによるかん水が有効であ る 干害を受けた水稲は 高温時に湛水すると 根傷みを起こすので 軽い かん水に止める (3) 普通期水稲の水管理 幼穂形成期 ~ 出穂開花期 普通期水稲ではこれから水が最も必要な時期である幼穂形成期 ~ 出穂開 花期になり 次のような計画的なかん水を行う 幼穂形成期 ( 出穂前 25~15 日 ) は 数回 少なくとも 1~2 回はかん水 して田面を乾かさないようにする 穂ばらみ期 ~ 出穂開花期 ( 出穂前 15 日 ~ 出穂後 5 日 ) は特に水を必要と するため 数回かん水して田面の湿潤状態を保つようにする その後も水に余裕があれば夜間の通水 収穫前まで早期落水防止等の水 管理を行う (4) 穂肥の施用 これから穂肥を施用する普通期栽培品種は 穂肥の適期を逃さないよう に注意する 窒素追肥したイネは気孔開度が大きくなり水消費量が増えるため 干ば つ時の追肥は干害を助長する場合がある また干ばつ時は 土壌に含ま れる塩類が地表付近に集結して 塩害をおこすこともある そのため用 水の少ないところでは穂肥の施用を見合わせ 用水が確保された段階で 施用する 肥沃な水田では 干ばつ後に湛水すると乾土効果により肥効を現す場合 1

があるので 穂肥の窒素を減肥する なお 追肥を抑制すると稲の活力低下から登熟後期に栄養不足を招き 品質低下を助長することがあるので 生育診断に基づく穂肥量や少量多数回施肥により稲の活力維持に努める (5) 塩害防止対策 干ばつの際 海岸部ではかんがい用水が塩分を含んだ水になり やむを得ずかん水することがある 一般的に塩分濃度は 0.1% では被害はほとんどないが 0.2~0.3% では多少被害があり 0.5% 以上では被害が大となる しかし 希薄な塩水でも連続してかん水すれば水分の蒸発に伴い次第に濃厚になり被害が多くなるので 低濃度のかん水でもなるべく早く真水で塩分濃度を薄めるようにする (6) 害虫防除 斑点米カメムシ類の発生が助長されるため ほ場周辺の除草の徹底と定期防除に加え 多発時は応急防除を行う 大豆 大豆は要水量の高い作物で 特に開花期以降は多量に水を必要とする 開花期から黄熟期までの1か月間に吸収する水分量は 全生育期間に吸収する水分量の約 8 割を占め 開花 10 日頃から登熟期間中にかけての水分不足は 落蕾 落花 落莢や子実の肥大が阻害されるため被害が大きい そのため この時期にかん水ができるよう用水を確保する なお 高温時のかん水は根痛みを起こすので朝夕に実施する また 少雨時にはハスモンヨトウ等の発生が助長され 葉や莢の食害が懸念されるので 定期防除に加え 初発生時に応急防除を行う 2 果樹 (1) かん水 温州みかん この時期は 果汁中の可溶性固形物質含量が増加する時期である 8~9 月の土壌乾燥は 糖含量を高める しかし 極度の乾燥は 酸高や樹勢低下を招く場合もあるため 葉の巻き具合 ( 昼も夜も萎凋したままで朝になっても元に戻らなくなる ) 等を見ながら 7 日間隔で 10~20mm(10~20t/10a) 程度のかん水を行う 中晩生柑橘類 大玉生産の必要な中晩生柑橘類は 果実肥大促進のために 7~ 10 日間隔で20~30mm(20~30t/10a) 程度を目安にかん水する 特に 乾燥で酸高となるポンカン 不知火 はるみは土壌が乾き過ぎないようかん水する 甘平の裂果軽減には土壌水分の急激な変化を抑えることが重要である 5 日間隔で20~30mmのかん水を行う キウイフルーツ 2

蒸散量が多く浅根性であるので 他の果樹に比べ 乾燥の影響を受けやすい 乾燥が続くと 葉の萎凋や葉焼けがおき 樹勢が低下し 果実肥大が抑制されるため 土壌の乾燥状態や葉の萎凋などの生育状況を観察しながら 5~7 日間隔で20~30mm(20~30t/10a) 程度かん水する また 敷ワラ 敷草を行い 土壌表面からの蒸散を防止する かき この時期は果実肥大期のため 乾燥が続けば葉が巻いて下垂し 果実肥大が抑制される そのため 10 日間隔で20~30mm(20~30t/10a) 程度かん水する くり 8 月は果実肥大期であり 乾燥が続くと肥大が極端に低下し 小玉果になり収量が低下する そのため 園内の草刈りと敷草により 土壌水分の蒸発防止に努める かん水可能な園では 10 日間隔で 20~30mm( 20~30t /10 a) 程度かん水する その他落葉果樹 ぶどうは成熟期に急激な土壌水分の変化があると果粒に水分が急激に集積し裂果の発生を助長するため 乾燥が続けば5~7 日間隔で20~30mm 程度かん水する また 直接果房に日が当たる場所では クラフト紙などの傘をかけ 果房が高温にさらされないようにする なしは乾燥が続けば 葉が萎れるまでに 10 日間隔で15~20mm (15~20 t/10a) 程度かん水する しかし 品質向上のため 収穫 2 週間前からはかん水しない なお 収穫が終了した樹種においても 乾燥が続き 葉が萎れ始めたら 20 ~30mm(20~30t/10a) 程度のかん水を行い 樹勢の維持に努める (2) 摘果着果過多状態にあると樹体への負担が大きくなるため 生育ステージに合わせた適正着果量まで摘果を行い 着果負担を軽減する (3) 苗木 高接ぎ樹の管理苗木や幼木 高接ぎ樹は乾燥に弱いため 土壌が乾燥しないように十分にかん水する その後 蒸発防止のため稲わらやビニルマルチなどを被覆する (4) ハウス管理温室ミカンでは 高温条件になると着色が遅れる そのため サイド 谷 つま部はできるだけ開放するとともに 遮光ネットを被覆するなどして施設内の高温を防ぐ また 樹の状態に応じて少量かん水を行い樹勢の維持を図る (5) 温州ミカンのマルチ被覆シートを被覆する時に土壌が過乾燥となっている場合は 10mm(10t/10a) 程度のかん水を行ってから被覆する また 被覆後の追加かん水ができるように 可能な限りマルチ下にかん水チューブを設置しておく (6) 敷わら 敷草 3

敷わら 敷草等を行うと 裸地に比べて土壌水分保持効果が高い また 高温時には地温上昇防止効果もある (7) 害虫防除ハダニ サビダニ チャノホコリダニ アブラムシ等の発生が助長され 果実や葉への被害増大が懸念される 定期防除に加え 多発園においては応急防除を行う 3 野菜 (1) 夏秋野菜少雨がさらに続くと 葉の萎凋や葉色の変化 ( ツヤがなくなり葉色が黒ずんでくる ) 等の症状が現れる さといもは葉の縁の黄変や葉が内側に巻き込むなどの症状が現れ 生育遅延により芋の着生や肥大に影響を及ぼす 果菜類では果実の肥大抑制や ナスのツヤ無し果など不良果の発生が見られる また 土壌の乾燥によりカルシウムの吸収が抑制され トマト ピーマンの尻腐れやキャベツの縁腐れ等が発生し 収量 品質の低下が懸念されるので以下の点に注意する 1 かん水生育状況に応じ 適期適量かん水を行う なお 水の有効利用を図るため 日没後又は早朝に集中的に行う サトイモでは 夕方 溝に水が溜まる程度にたっぷりかん水する 2マルチ地温の上昇を防ぎ土壌水分を保つため 反射フィルム 稲わら 刈草等のマルチを行う 3 摘果 摘葉 追肥夏秋キュウリ ナス ピーマン等の果菜類は 不良果を中心に摘果 または若穫りするなど草勢維持に努める 4 病害虫防除高温乾燥状態では アブラムシ類 ハダニ類 スリップス類などの害虫の発生が多くなるので 防除の徹底に努める 育苗中のイチゴでは 灌水回数の増加により高温多湿状態が続き 炭疽病の発生を助長するので 早期発見 廃棄及びローテーション防除を徹底する (2) 夏まき野菜夏まき野菜は 用水が確保できる場合 適期播種に努める 用水が確保できない場合は 降雨を待ってから播種する 移植可能な品目では 別の圃場で育苗し 計画的な生産 出荷に努める 1 圃場の選定圃場は肥沃で耕土が深く 水利の便の良い所を選ぶ 2 土づくり根を深く張らせ 耐干性を高めるため 深層まで有機物を施用する 3その他 4

種子は 一度吸水した後乾燥すると枯死しやすいので 播種後は乾燥防止 のため寒冷紗等で被覆し 発芽を促す 移植可能な品目は トレイ又はポット育苗を行い 集中的に水管理する 4 花き (1) 生育中の花き類高温 少雨が続くと植物体は萎凋し 養分の吸収や同化作用も抑制され 生長が抑えられる 一方 呼吸作用は盛んになるため 貯蔵養分の消耗は増大し 草丈は低く 葉は小さく 葉色は薄くなるなど 品質が低下するので以下の点に注意する 1かん水水の有効利用を図るため 日没後または早朝に畝間が湿る程度にかん水するか株元に集中的に行う 2 敷わら 敷草 中耕土壌表面からの水分蒸発を防止するため 敷わら 敷草等を徹底するとともに 圃場内の除草を兼ねて表面を軽く中耕する 3 遮光植物体からの水分蒸散防止や施設内の温度上昇防止のため 寒冷紗等で遮光する 4 下葉取り 脇芽取り植物体からの無駄な水分蒸散を防ぐため 品質に支障のない範囲内で下葉をかぎ取るとともに 無駄な脇芽や枝を取り除く 5 病害虫防除乾燥すると害虫の発生が多くなる 特にアブラムシ類 ハダニ類 スリップス類などの害虫の発生が多くなるので 防除に努める (2) これから作付けする花き類 1 圃場の選定圃場は肥沃で耕土が深く 水利の便の良い所を選ぶ 2 土づくり 整地 畝つくり等耐干性を高めるためには根を深く張らせることが重要なため 深層まで有機物を施用し膨軟な土にする また 整地や畝立て作業を早めに行い 土が落ちついてから 播種や植え付け作業を行う なお 畝立て後 事前に寒冷紗で被覆し地温を下げておく 3 種子や苗の確保発芽に失敗することもあるので まき直しができるよう種子を準備しておく また 苗は鉢上げをして予備苗を準備しておく 4 活着促進定植後は十分かん水し 寒冷紗被覆を一定期間継続して活着を促すとともに 毎朝夕に葉水を行う 5

5 畜産 飼料作物 (1) かん水の実施 高温 少雨が続いている場合は かん水を実施する かん水量は 気象 土性 作物類によって異なるが 降水量を差し引いて 1 日当たり 7~8 mm を目安として 3~5 日間隔でかん水を行う また かん水は土壌水分を補 うとともに 地温の調節に効果がある しかし 一時的なかん水は逆に干害 を助長するので かん水を始めたら次の降雨まで続けて行う かん水不能の場合は 堆厩肥 刈草などで被覆を行い 地表からの土壌水 分の蒸発や地温の上昇を抑える (2) 早期刈取り 早期に播種したトウモロコシやソルガムは 7 月から収穫期になる 今 後 干ばつの影響を受け 茎葉の変色 葉枯れ 稔実不良が見られる場合 は 早急に刈り取る なお 適正な給与を行うため 早期に刈り取った飼 料作物は 畜産研究センターへ分析を依頼する (3) 晩生及び二期作用トウモロコシの播種 耐干性に強い品種の選定を行う 二期作用トウモロコシを播種する場合 は 土壌が非常に乾燥しているため 降雨を待って行う この場合 砕土 を十分に行うとともに発芽率を高めるために必ず鎮圧を行う なお 播種 後 1 週間程度経過しても発芽しない場合は 圃場で掘り取り調査を行ない 種子が膨れていない状態であれば 早急にかん水を行う 家畜 飼育密度の緩和や 畜体等への散水 散霧により 家畜の体感温度の低下を図るとともに 屋根への散水や石灰塗布 寒冷紗等の設置 換気扇等による送風 換気により畜舎環境の改善を図る 良質で消化率の高い飼料及び清浄な冷水を給与する また ミネラル等の補給や 給与時間帯 給与回数を工夫することにより 飼料採食量の維持 回復に努める 6