無期転換ルール に関する特別調査 調査結果の概要 1 無期転換の申込みを受けた企業は全体の1 割足らず 2 無期転換ルール に向けた等の整備がされていない企業が過半数を占めた 3 無期転換の申し出を受けたときの対応を決めている企業は約 6 割 平成 25 年 4 月施行の改正労働契約法は 雇用を 安定化させる目的で 無期転換ルール を定め 2018 年問題 の 1 つとして注目されてきた 無 期転換ルール とは パート アルバイト 契約社 員 嘱託 派遣などの 有期契約労働者 が 5 年を 超えて反復して更新された場合には 本人が希望す れば 期間の定めのない労働契約 ( 無期雇用 ) への 転換ができる制度だ 施行から 5 年となる今年 4 月 以降は 無期転換の申し込みが本格化する可能性が ある そのため 各企業は 無期転換した社員と従 来の 正社員 の役割や責任 処遇等を同じにする か区別するかなどを明確にし トラブルが発生しな いようにや社内制度等をあらかじめ整備し ておく必要がある そこで 6 月に実施した 第 183 回企業動向調査 において 岐阜県 愛知県の企業に対し 無期転換 ルール に関するアンケート調査を実施した 調査要領 1. 調査方法岐阜県 愛知県の企業に対し 郵送によるアンケートを実施 2. 調査時期 2018 年 6 月 1 日 ~15 日 3. 回答状況有効回答数 219 社 ( 岐阜県 愛知県の企業 600 社 ; 有 効回答率 36.5%) ( 注 ) 本文中の図表の計数は 四捨五入の関係で内訳の合計等が合致しない場合がある 1. 概要 1 有期契約労働者を雇用したことのある企業のうち 申し込みを受けた と回答した企業は全体の 8.8% だった 業種グループ 従業員規模 地域での偏りはなく 全体的に申し込みを受けた企業は少なかった 2 無期転換ルール への対応として必要な等の整備がされていない企業が全体の 55.8% で過半数を占めた 現在 有期契約労働者を雇用している企業に限ってみても 等を整備している企業よりもすると答えた企業が多かった 3 無期転換の申し出があった場合 有期契約との変更点や どのように従来の 正社員 と区別して雇用するかなど 対応を決めている企業は 63.6% で 今後検討すると答えた企業が 36.4% だった 総じて 無期転換ルール に対する認知度は企業側 労働者側どちらとも高くないようだ 無期転換の申し出を受ける可能性があるにも関わらず まだ整備をすすめていない企業においては さまざまなリスクが顕在化する前に 自社の方針を固めて等を整備することが喫緊の課題である さらに 有期契約労働者に対して 無期転換ルール に関する方針や申し出方法などの説明していない企業は周知していく必要がある 十六総合研究所 1
2. 有期契約労働者を雇用しているか 設問 1 パート アルバイト 契約社員 嘱託 派遣社員などの有期契約労働者を雇用していますか 選択肢 1 雇用している 2 雇用していないが 今後雇用する予定 3 雇用していないが 以前雇用していた 4 雇用しておらず 今後も雇用しない予定 3.2 5.6 全体 (n=216) 25.5 65.7 74.5% 雇用している雇用していないが 今後雇用する予定雇用していないが 以前雇用していた雇用しておらず 今後も雇用しない 有期契約労働者を雇用している企業は 65.7% であった 今後雇用する予定の企業 (5.6%) や 以前雇用 していた企業 (3.2%) も含めると全体の 74.5% の企業が 無期転換ルール の対象となる可能性がある 3. 無期転換の申し込みを受けたか 設問 2 ( 設問 1 で 1 3 を選択した企業のみに質問 ) 今年 4 月から無期転換申込権が本格的に発生しますが 無期転換の申し込みを受けましたか 選択肢 1 申し込みを受けた 2 申し込みを受けていない 有期契約労働者を雇用したことのある企業で回答 のあった 147 社のうち 申し込みを受けた と回 答した企業はわずか 13 社 (8.8%) だった 業種グ ループ 従業員規模 地域での大きな偏りはなかっ た 雇用の安定の観点から 有期契約労働者にとっ て無期雇用への転換はメリットの大きい制度である にも関わらず 申し出を受けている企業は少ないよ うだ この制度について まだ労働者側の認知度が 低い可能性が高い 無期転換の対象となる労働者に 対し 無期転換ルール に関する方針や申し出方法 などの説明をしていない企業は 早急に周知する必 要がある 無期転換申込者の有無 ( 業種別 )n=147 全体素材型加工 組立型生活関連 その他卸売 小売業建設業運輸業サービス業 8.8 2.3 7.4 15.4 13.8 7.1 12.5 16.7 91.2 97.7 92.6 84.6 86.2 92.9 87.5 83.3 申込を受けた 申込を受けていない 無期転換申込者の有無 ( 従業員規模別 )n=147 全体 8.8 91.2 50 人未満 9.8 90.2 50 人 ~100 人未満 2.6 97.4 100 人 ~300 人未満 13.6 86.4 300 人以上 8.7 91.3 申込を受けた 申込を受けていない 無期転換申込者の有無 ( 地域別 )n=147 岐阜合計愛知合計 9.2 8.2 90.8 91.8 申込を受けた 申込を受けていない 十六総合研究所 2
4. 無期転換ルール への対応 設問 3 ( 設問 1 で 1~3 を選択した企業のみに質問 ) 無期転換ルール への対応として当てはまるものすべてに をつけてください 選択肢 1 社内制度等の整備をした 2 に関する特例の適用認定を受けた 3 の高齢者に関する特例の適用認定を受けた 4 する予定 5 ( 企業数 ) 無期転換ルール への対応 60 ( 設問 1の回答別 ) n=147 50 40 30 20 10 0 40 2 23 54 21 4 4 1 3 1 2 雇用している今後雇用する予定以前雇用していた の整備など 選択肢 1~3 のうちいずれかの対応をした企業は全体の 44.2% だった と回答した企業の合計が 55.8% で 整備していない企業が過半数を占めた 地域別でみると 愛知県の方が岐阜県よりも若干整備が進んでいる 無期転換ルール への対応 ( 地域別 ) n=147 岐阜 42.9 42.9 14.3 57.1% 愛知 46.9 32.7 20.4 53.1% 全体 44.2 39.5 16.3 整備していない企業 55.8% 対応した 設問 1の回答別でみると 有期契約労働者を現在雇用している企業のうち を選択した企業が 54 社で 等を整備している企業を上回った を選択した企業も 21 社にのぼり 準備不足で様々なリスクをはらんでいる企業が予想以上に多い結果となった また やの高齢者に関する対応のみを選択した企業が 18 社あり これらの特例に関する適用認定を受けたものの 等の整備をしていない 隠れ の企業もありそうだ 業種グループ個別業種 (21 業種 ) 回答数比率 次に 調査対象を 右表の 7 つの業種グループに分類してそれぞれの傾向を分析した 等の整備をした企業の割合は 運輸業では 7 割を超えていたが その他の業種グループでは 2 割から 4 割弱であった また に関する 無期転換ルール の特例を受けた企業は 2 社のみで いずれも建設業であった の高齢者に関する特例を受けた企業は建設業 サービス業では 0 で それ以外の業種では 1~3 割程度ずつであった サービス業では よりも が多く 整備に向けた取り組みを始めていない企業が多いようだ 1. 素材型 2. 加工 組立型 3. 生活関連 その他 木材 木製品 紙 紙加工品 化学工業 窯業 土石製品 鉄鋼 非鉄金属 刃物 金属製品 プラスチック その他製造業 鉱業 一般機械器具 電気機械器具 輸送用機械器具 食料品 繊維 衣類その他繊維製品 家具 装備品 出版 印刷 71 32.4% 31 14.2% 23 10.5% 4. 建設業建設業 46 21.0% 5. 卸売 小売業卸売業 小売業 22 1% 6. 運輸業運輸業 11 5.0% 7. サービス業サービス業 15 6.8% 全業種 合計 219 10% 十六総合研究所 3
全体 (n=147) 32.0 1.4 16.3 39.5 16.3 素材型 (n=47) 31.9 19.1 36.2 14.9 加工 組立型 (n=26) 23.1 11.5 38.5 30.8 生活関連 その他 (n=13) 建設業 (n=16) 卸売 小売業 (n=27) 23.1 25.0 37.0 12.5 23.1 25.9 53.8 5 40.7 18.8 7.4 運輸業 (n=7) 71.4 28.6 28.6 サービス業 (n=11) 36.4 27.3 36.4 地域別 30.6 34.7 1.0 2.0 岐阜合計 17.3 14.3 愛知合計 42.9 32.7 14.3 20.4 次に 従業員規模別で分類してそれぞれの傾向を分析した いずれも の割合が最も多く 4 割前後だった 300 人以上の規模では 4 割強の企業で等の整備がされており の企 業も 4.5% と比較的少なく 一番対応が進んでいる その他の規模では 等の整備がされていたのは 3 割程度だった の企業の割合は規模が大きくなるにつれて減っている 50 人未満 (n=39) 30.8 50 人 ~100 人未満 (n=42) 31.0 100 人 ~300 人未満 (n=44) 29.5 300 人以上 (n=22) 40.9 4.5 5.1 21.4 18.2 22.7 38.5 40.5 36.4 45.5 28.2 14.3 13.6 4.5 十六総合研究所 4
5. 無期転換の申し出があった場合の対応 設問 4 ( 設問 1 で 1~3 を選択した企業のみに質問 ) 無期転換の申し出があった場合の対応として当てはまるものに をつけてください 選択肢 1 雇用期間のみを変更し 他の労働条件はそのままで雇用 2 雇用期間だけでなく 賃金体系や業務内容なども変更し 正社員とは区別して雇用 3 正社員として雇用 4 今後検討する 無期転換の申し出を受けたとき 無期転換後の雇 用契約について対応を決めている企業 ( 選択肢のう ち 1~3 いずれかを選択した企業 ) は全体の 63.6% だった 一方 今後検討する と回答した企業が 36.4% で まだ対応を決めていない企業も多い 全 体でみると 対応を決めている企業の中では 雇用 期間のみ変更 の割合が 31.1% で最も多かった 業種グループ別でみると 加工 組立型のみ 正 対応を決めているかどうか (n=132) 社員として雇用 を選択した企業の割合が 雇用期間のみ変更 の割合を上回った それ以外のグループでは 雇用期間のみ変更 の割合が 正社員として雇用 の割合を上回った 生活関連 その他では 今後検討する の割合が 58.3% で過半数を占めた 素材型 加工 組立型 卸売 小売業では 正社員として雇用 の割合が 3 割近くあった 36.4 今後検討する 対応を決めている 63.6 十六総合研究所 5
次に 従業員規模別でみると 50 人 ~100 人未満の企業では 今後検討する の割合が約 5 割を占めた また 無期転換後の対応としては 50 人 ~100 人未満の企業では 正社員として雇用 の割合が高く それ以外の規模では 雇用期間のみ変更 の割 合が高かった 地域別でみると 無期転換後の対応としては 岐阜県では 雇用期間のみ変更 が多く 愛知県では 正社員として雇用 が多い 複数選択 の企業については 選択肢のうち 1 と 3 を選択した企業が 2 社 2 と 3 3 と 4 1 と 2 と 3 を選択した企業が 1 社ず つであった 対応を決めている企業 の割合に含めている ( 研究員藤木由江 ) 十六総合研究所 6