季刊家計経済研究 2003 SPRING No 万円 1世帯当たり平均可処分所得金額は 187.4万円 世帯人員1人当たり平均所得金額は 図表-9 高齢者世帯の平均収入の伸びに対する稼働所得 及び公的年金 恩給等の寄与率 212.3万円である 平均世帯人員は3.23人 平 均有業人員

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目次 第 1 章調査概要 調査の目的 調査の方法... 1 第 2 章分析内容 世帯主年齢階級別の世帯数割合 世帯主年齢階級別の等価可処分所得 世帯主年齢階級別の等価所得 拠出金の内訳 世帯主年齢階級別

2. 年金額改定の仕組み 年金額はその実質的な価値を維持するため 毎年度 物価や賃金の変動率に応じて改定される 具体的には 既に年金を受給している 既裁定者 は物価変動率に応じて改定され 年金を受給し始める 新規裁定者 は名目手取り賃金変動率に応じて改定される ( 図表 2 上 ) また 現在は 少

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中小企業の退職金制度への ご提案について

2. 年金改定率の推移 2005 年度以降の年金改定率の推移をみると 2015 年度を除き 改定率はゼロかマイナスである ( 図表 2) 2015 年度の年金改定率がプラスとなったのは 2014 年 4 月の消費税率 8% への引き上げにより年金改定率の基準となる2014 年の物価上昇率が大きかった

生活福祉研レポートの雛形

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平成30年版高齢社会白書(概要版)(PDF版)

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年金改革の骨格に関する方向性と論点について

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タイトル

税・社会保障等を通じた受益と負担について

01 公的年金の受給状況

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150130【物価2.7%版】プレス案(年金+0.9%)

2. 繰上げ受給と繰下げ受給 65 歳から支給される老齢厚生年金と老齢基礎年金は 本人の選択により6~64 歳に受給を開始する 繰上げ受給 と 66 歳以降に受給を開始する 繰下げ受給 が可能である 繰上げ受給 を選択した場合には 繰上げ1カ月につき年金額が.5% 減額される 例えば 支給 開始年齢

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問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

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消費税増税等の家計への影響試算

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いずれも 賃金上昇率により保険料負担額や年金給付額を65 歳時点の価格に換算し 年金給付総額を保険料負担総額で除した 給付負担倍率 の試算結果である なお 厚生年金保険料は労使折半であるが 以下では 全ての試算で負担額に事業主負担は含んでいない 図表 年財政検証の経済前提 将来の経済状

2019年度はマクロ経済スライド実施見込み

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平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~


< 参考資料 目次 > 1. 平成 16 年年金制度改正における給付と負担の見直し 1 2. 財政再計算と実績の比較 ( 収支差引残 ) 3 3. 実質的な運用利回り ( 厚生年金 ) の財政再計算と実績の比較 4 4. 厚生年金被保険者数の推移 5 5. 厚生年金保険の適用状況の推移 6 6. 基

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平成の30年間、家計の税・社会保険料はどう変わってきたか

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公 的 年金を補完して ゆとりあるセカンドライフを実 現するために は 計 画 的 な 資金準備 が必要です 老後の生活費って どれくらい 必要なんですか 60歳以上の夫婦で月額24万円 くらいかな? 収入は 公的年金を中心に 平均収入は月額22万円くらいだ 月額2万の マイナスか いやいやいや 税

年の家族 2-1 世帯モデル設定本章では 3 つの社会変化をもとに世帯モデルを以下のように設定する 1 専業主婦世帯 ( 標準モデル世帯 ) 平均的な男性賃金で 45 年間厚生年金に加入した夫と 45 年間専業主婦の夫婦 2 生涯単身男性世帯 平均的な男性賃金で 45 年間厚生年金に加

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2. 改正の趣旨 背景給与所得控除額の変遷 1 昭和 49 年産業構造が転換し会社員が急速に増加 ( 働き方が変化 ) する中 (1) 実際の勤務関連経費が給与所得控除を上回っても 当時は特定支出控除 ( 昭和 63 年導入 ) がなく 会社員は実際の勤務関連経費がいくら高くても実額控除できなかった

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年金制度のポイント

厚生年金 健康保険の強制適用となる者の推計 粗い推計 民間給与実態統計調査 ( 平成 22 年 ) 国税庁 5,479 万人 ( 年間平均 ) 厚生年金 健康保険の強制被保険者の可能性が高い者の総数は 5,479 万人 - 約 681 万人 - 約 120 万人 = 約 4,678 万人 従業員五人

本資料は 様々な世帯類型ごとに公的サービスによる受益と一定の負担の関係について その傾向を概括的に見るために 試行的に簡易に計算した結果である 例えば 下記の通り 負担 に含まれていない税等もある こうしたことから ここでの計算結果から得られる ネット受益 ( 受益 - 負担 ) の数値については

市場と経済A

米国の給付建て制度の終了と受給権保護の現状

被用者保険の被保険者の配偶者の位置付け 被用者保険の被保険者の配偶者が社会保険制度上どのような位置付けになるかは 1 まず 通常の労働者のおおむね 4 分の 3 以上就労している場合は 自ら被用者保険の被保険者となり 2 1 に該当しない年収 130 万円未満の者で 1 に扶養される配偶者が被用者保

社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

[Case 2-1] 横浜さんは 首尾良く就職できて昨年 4 月から新社会人となり仕事をしている 学生の時よりは自由な時間は減ったが 毎月 まとまった給与がもらえて 学生の時よりはるかに自分の自由になるお金を得ることができた しかし給与明細を見ると 支給額は 215,000 円のはずなのに 実際の手

図表 II-39 都市別 世帯主年齢階級別 固定資産税等額 所得税 社会保険料等額 消 費支出額 居住コスト 年間貯蓄額 ( 住宅ローン無し世帯 ) 単位 :% 東京都特別区 (n=68) 30 代以下 (n=100) 40 代

政策課題分析シリーズ16(付注)

金のみの場合は年収 28 万円以上 1 年金収入以外の所得がある場合は合計所得金額 2 16 万円以上が対象となる ただし 合計所得金額が16 万円以上であっても 同一世帯の介護保険の第 1 号被保険者 (65 歳以上 ) の年金収入やその他の合計所得が単身世帯で28 万円 2 人以上世帯で346

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自動的に反映させないのは133 社 ( 支払原資を社内で準備している189 社の70.4%) で そのうち算定基礎は賃金改定とは連動しないのが123 社 (133 社の92.5%) となっている 製造業では 改定結果を算定基礎に自動的に反映させるのは26 社 ( 支払原資を社内で準備している103

質問 1 11 月 30 日は厚生労働省が制定した 年金の日 だとご存じですか? あなたは 毎年届く ねんきん定期便 を確認していますか? ( 回答者数 :10,442 名 ) 知っている と回答した方は 8.3% 約 9 割は 知らない と回答 毎年の ねんきん定期便 を確認している方は約 7 割

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社会保障 税一体改革大綱(平成24 年2月17 日閣議決定)社会保障 税一体改革における年金制度改革と残された課題 < 一体改革で成立した法律 > 年金機能強化法 ( 平成 24 年 8 月 10 日成立 ) 基礎年金国庫負担 2 分の1の恒久化 : 平成 26 年 4 月 ~ 受給資格期間の短縮

2. 特例水準解消後の年金額以下では 特例水準の段階的な解消による年金額の変化を確認する なお 特例水準の解消により実際に引き下げられる額については 法律で定められた計算方法により年金額を計算することに加え 端数処理等の理由により203 年 9 月の年金額に所定の減額率を乗じた額と完全に一致するもの

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[ 特別控除の一覧 ] 控除の内容 特定扶養親族控除 ( 税法上の扶養親族で満 16 才以上 23 才未満の扶養親族 ) 老人扶養親族 配偶者控除 ( 税法上の扶養親族で満 70 才以上の扶養親族 ) 控除額 1 人につき 250,000 1 人につき 100,000 障がい者控除寡婦 ( 夫 )

平成25年4月から9月までの年金額は

(3) 可処分所得の計算 可処分所得とは 家計で自由に使える手取収入のことである 給与所得者 の可処分所得は 次の計算式から求められる 給与所得者の可処分所得は 年収 ( 勤務先の給料 賞与 ) から 社会保険料と所得税 住民税を差し引いた額である なお 生命保険や火災保険などの民間保険の保険料およ

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3 世帯属性ごとのサンプルの分布 ( 両調査の比較 参考 3) 全国消費実態調査は 相対的に 40 歳未満の世帯や単身世帯が多いなどの特徴がある 国民生活基礎調査は 高齢者世帯や郡部 町村居住者が多いなどの特徴がある 4 相対的貧困世帯の特徴 ( 全世帯との比較 参考 4) 相対的貧困世帯の特徴とし

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保険料は個人ごとに 後期高齢者医療制度では 被保険者一人ひとりに保険料を負担していただくことになります 新たに 75 歳になられた方 (65 歳以上 75 歳未満で一定以上の障害があり 認定を受けた方を含む ) は 以前に加入していた国民健康保険や被用者保険を脱退して この制度に移行することになりま

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12 ページ, 図表 ,930 円 保険料納付済月数 + 全額免除月数 1/2+4 分の 3 免除月数 5/8+ 半額免除月数 3/4+4 分の 1 免除月数 7/8 ( 出所 ) 厚生労働省 老齢年金ガイド平成 2730 年度版 より筆者作成 40 年 ( 加入可能年数

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要 旨 2009 年の年金財政検証によると 標準的な厚生年金世帯 であれば 世代間格差はあるものの 将来世代においても 平均寿命 (60 歳時点の平均余命 ) まで生存すれば 負担した保険料の 2.3 倍の給付が受けられる見通しであることが明らかにされた これはこの倍率の分母である負担に事業主負担が

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季刊家計経済研究 2003 SPRING No.58 729.1万円 1世帯当たり平均可処分所得金額は 187.4万円 世帯人員1人当たり平均所得金額は 図表-9 高齢者世帯の平均収入の伸びに対する稼働所得 及び公的年金 恩給等の寄与率 212.3万円である 平均世帯人員は3.23人 平 均有業人員は1.67人 有業率は52 である 6 98年では 生活保護受給世帯のうち46 が高 1962年 76年 稼働所得 公的年金 恩給 45 37 仕送り 0 05 1962年 81年 41 7 48 7 1962年 98年 24 2 64 0 0 1 齢者世帯であるが これには高齢者世帯の増 加も影響している 世帯保護率は 62年の である この時期すでに 稼働所得と公的年 22 70年の16.5 75年の14.4 80年の 金 恩給の寄与率がかなり接近していた 9.7 90年の5.7 98年の4.1 と母子世帯や 第2に 81年までの20年間をみると 年金の寄 一般世帯よりも大きく低下した 生活保護を 与率が48.7 で はじめて稼働所得の寄与率 受給する高齢者世帯のうち単独世帯の割合が 41.7 を上回った 第3に 62年から98年までの 高まっているのが近年の特徴であり 単身世帯 37年間において 世帯人員1人当たり平均所得金 割合は71年には76.3 であったが 98年には 額の伸びに最も大きく寄与したのは公的年金 恩 88.4 となっている 給であり寄与率は64 次に稼働所得であり寄 第1分位以下には62年当時に高齢者世帯の 与率が24.2 仕送りはマイナス0.1 である 一 85 が属していた 72年に79.6 と低下した後 般世帯については稼働所得の寄与率が90 以上 73年には83.7 に上昇した しかし 大幅な年 であることを考えると大きな違いである 金給付水準の引き上げがほぼ完了した76年に 公的年金 恩給の伸びが高齢者世帯の世帯人 76.1 に低下し 79年には78 81年には 員1人当たり平均所得金額の伸びに大きく貢献し 71.3 98年には60 となった 37年間の大き た この間 公的年金 恩給が高齢者世帯の年 な変化である つまり 貧しい高齢者世帯が減 間収入に占める割合は62年の12.7 から98年の 少したのである 61 に上昇した 年金受給世帯も半数からほぼ 全世帯に当たる95 まで伸びた 公的年金 恩 4 世帯人員1人当たり平均所得金額均等化 高齢者家計の構造変化 世帯業態の 変化に及ぼした公的年金の影響 1 公的年金 恩給の寄与率 給は高齢者世帯の所得を底上げし 所得第1分位 の所得の低い層に属する割合を85 から60 に大 幅に低下させ 高齢者世帯の世帯保護率を62年 の25 から98年の4 に激減させた ほかの世帯 類型にはみられない減少幅である おまけに 高 62年を起点として 76年 81年 98年までの 齢者世帯の割合はおよそ6倍程度増加し 公的 それぞれ15年間 20年間 37年間について 世 年金の充実は高齢者世帯の家計の独立性を確保 帯人員1人当たり平均所得金額の伸びに対する公 し 世帯分離が可能になり 労働からレジャーへ 的年金 恩給 稼働所得 仕送りなどの収入種 の代替を促進し 不就業世帯が増加した 類別の寄与度を示したのが図表 9である 高齢 40年ほどの間に公的年金 恩給が高齢者世帯 者世帯についての結果をまとめると 以下のよう の家計にこのようなパワフルな影響を与えること になる ができたのは以下の理由によると考えられる 62 第1に 65年の 1万円年金 70年の 2万円 年ごろからは強制加入で拠出制の公的年金 老 年金 年金の年 といわれた73年 およびそれ 齢年金 の受給者がようやく出始めたこと 加入 に引き続いた年金改正の影響が表れる76年までの 期間が短い人にも経過措置などの優遇措置があ 15年間において もっとも大きな寄与率は稼働所 ったことが 爆発的に受給者が増える要因であっ 得の45 であり 公的年金 恩給の寄与率は た 加えて 73年以降は 新規裁定年金が現役 37 で第2位 仕送りの寄与率はマイナス0.05 世代の賃金を基準にして決められたこと 既裁定 56

社会保障制度の充実が高齢者世帯と一般世帯の所得格差にいかなる影響を与えたのか 1956年-98年 いは高齢者世帯の収入の目安は世帯人員1人当た 世帯間の帰着を分析するには 所得再分配調査 り平均所得金額が一般世帯と等しくなること が有用である 所得再分配調査 は 国民生活 ということを認めるなら 次のことが言える 基礎調査 と比較すると サンプルが少ないとい おそらく 高齢者は 日々雇用も含めて稼働 う点は留意すべきである 所得再分配調査 に 所得を増やすことによって また 子世代からの よって数値を得ることができない年については 仕送りを確保することによって 一般世帯との所 医療給付の分析のところで他の資料を用いて推計 得格差が拡大することを防いだと考えられる そ することにしよう なお 本稿でいう世代間格差 して 高齢者世帯で 生活保護率が上昇したと とは生年による格差ではなく 各時点における高 考えられる また 高齢者は世帯分離を行わず三 齢者世帯と一般世帯の所得や給付 負担の格差 世代世帯を維持することで 家計上の規模の利 を意味している 益を得たと考えられる しかし 三世代世帯の維 図表-10 1 2 から明らかなように 第1に 持には限界がある というのは 子世代の都市へ 高齢者世帯が受ける社会保障給付は一般世帯と の移動および高齢期に移動を好まない親世代の選 比較して特段に大きい とくに75年以降 公的 好の結果として 高齢者世帯は生み出された部 年金制度の充実にともなって 世代間格差が拡 分が少なくないからである つまり 年金の充実 大した 72年では高齢者世帯の給付割合は25.4 は高齢者の家計独立を高め世帯分離を促進した であったが 96年には84 に増大した 一方 しかし 逆は真ならず である 同じ時期の一般世帯のそれは72年には6.2 であ 今後 確定拠出型年金の導入や 年金給付水 ったが 96年には13 に上昇したとはいえ 高齢 準の切り下げ 賃金スライド制廃止の影響にたい 者世帯に比べると格段に低い この上昇の原因 して高齢者世帯は とりあえずは稼働所得を増や は主に年金引き上げの効果による すことで補償すると考えられる というのは 今 第2は 収入に占める拠出総額の割合は 高 後厚生年金の年金保険料率の引き上げが10ポイ 齢者世帯のほうが低い ただし 収入に占める給 ント程度 月収比 は予定されており 今後個 付割合の世帯間格差のような開きはない 56年 人が老後のために自助努力で貯蓄をするための税 当時は 世帯間で負担割合の格差はほとんどな 制などが整備されたとしても 利用する余力のあ かった それが明らかになったのは75年である るのはある程度の所得水準以上であると考えられ とくに一般世帯では社会保険料の負担割合が大 るからである 今の自営業者のように 今後は75 きいことが 高齢者世帯との違いである その理 歳ぐらいまではいくらかでも稼働所得を得るよう 由は 年金保険料は高齢期に賦課されないこと に行動する可能性がある 在職老齢年金や高齢任意加入を除く 累進税 率の所得課税のもとでは 所得の高い現役世代 5 高齢者世帯と一般世帯の社会保障給付と 税 社会保険料負担格差 1 税 社会保険料の負担 ほど負担割合が大きくなること 87年の改正によ る公的年金等控除のように公的年金にたいする手 厚い租税優遇措置があることなど である 67年 や75年で社会保険料率が高まったのは 厚生年 本章では 税 社会保険料の負担 現物給付 金や各種の医療保険の保険料の引き上げがあっ である医療給付も含めた社会保障給付の世代間 たからである とくに67年までに厚生年金保険料 の格差について述べ これらを考慮した場合 世 率が1,000分の30から2倍近くに引き上げられ 国 帯人員1人当たりの平均可処分所得の世代間格差 民年金保険料支払いが一般世帯に加わったこと は時系列的にどのような動きを示したのかを考え を反映している る ただし医療給付は除く 医療の現物給付について 個人間ではなく 第3に 給付から負担を差し引いたネットの給 付が収入に占める割合は 56年には医療を考慮 59

季刊家計経済研究 2003 SPRING No.58 図表 -10-1 給付の推移 90 80 70 60 医療 50 年金等 40 30 高 20 齢 者 世 10 帯 0 一 般 世 帯 1 9561 9561 96 96 9721 9721 9751 9751 9841 9841 98 98 9901 9901 9931 9931 9961 996 年 図表 -10-2 負担の推移 20 18 16 14 高 齢 12 者 世 帯 10 一 般 世 帯 社会 保険料 8 税 6 4 2 0 1 9561 9561 96 96 9721 9721 9751 9751 9841 9841 98 98 9901 9901 9931 9931 9961 996 年 していないものの高齢者世帯においてマイナス ている 4 なのである 67年では たとえ給付から医療 を除外した場合でも 高齢者世帯のネットの給付 割合はプラス8 となるのと比べると興味深い 2 可処分所得について 前節までで 公的年金の拡充が高齢者世帯と 時系列的に高齢者世帯のネットの給付割合は大 一般世帯の世帯人員1人当たり平均所得金額の格 きくなり 96年では72 である 一方 一般世帯 差縮小に貢献したことを述べた ほかの条件が同 では56年と同じく医療給付を入れずに計算する じならば 経済成長期においては世帯人員1人当 と ネットの給付割合はマイナス9.6 であった たり可処分所得金額の世代間格差が開くと予想 75年以降およそマイナス3 の給付割合で推移し される なぜならば 累進税率の所得額の上昇や 60