Similar documents
ぬか床ベッドによる乳房炎の予防 乳房炎と環境 2018/07/04 1. ぬか床ベッドとは ぬか床ベッド とは 乳酸菌製剤 ( 商品名 : バイオバランス, 乳酸菌名 :Lactobacillus Delbrueckii, Anti Muffa 通称名 : アンティムッファ株 ) を乳牛に経口投与し

2. 乳酸菌製剤 :Lactobacillus Delbrueckii, 通称名 : アンティムッファ株の特徴 抗カビ活性 (Anti Muffa) を有し 且つ単独で用いてもプロバイオティクス活性に優れる新 規な乳酸菌を提供することで 乳酸菌名 : ラクトバチルス デルブリッキー ( Lactob

Microsoft Word - H19_04.doc

A 農場の自家育成牛と導入牛の HI 抗体価の と抗体陽性率について 11 年の血清で比較すると 自家育成牛は 13 倍と 25% で 導入牛は 453 倍と % であった ( 図 4) A 農場の個体別に症状と保有している HI 抗体価の と抗体陽性率を 11 年の血清で比較した および流産 加療

Taro-H26-01○【差替】 (佐藤)

地域における継続した総合的酪農支援 中島博美 小松浩 太田俊明 ( 伊那家畜保健衛生所 ) はじめに管内は 大きく諏訪地域と上伊那地域に分けられる 畜産は 両地域とも乳用牛のウエイトが最も大きく県下有数の酪農地帯である ( 表 1) 近年の酪農経営は 急激な円安や安全 安心ニーズの高まりや猛暑などの

現在 乳房炎治療においては 図 3に示す多くの系統の抗菌剤が使用されている 治療では最も適正と思われる薬剤を選択して処方しても 菌種によっては耐性を示したり 一度治癒してもすぐに再発することがある 特に環境性連鎖球菌や黄色ブドウ球菌の場合はその傾向があり 完治しない場合は盲乳処置や牛を廃用にせざるを

PowerPoint プレゼンテーション

検査の重要性 分娩前後は 乳房炎リスクが高まる時期 乾乳軟膏の効果が低下する分娩前後は 乳房炎感染のリスクが高まる時期です この時期をどう乗り越えるかが 乳房炎になるかどうか重要なポイントです 乾乳期に分娩前乳房炎検査を実施して 乳房炎の有無を確認 治療を行い泌乳期に備えます 分娩前後いかに乗り切る

(Taro-09\221S\225\ \221S\225\266\217\274\226{.jtd)

参考1中酪(H23.11)

NEWS RELEASE 東京都港区芝 年 3 月 24 日 ハイカカオチョコレート共存下におけるビフィズス菌 BB536 の増殖促進作用が示されました ~ 日本農芸化学会 2017 年度大会 (3/17~

システムの構築過程は図 1 に示すとおりで 衛生管理方針及び目標を決定後 HAC CP システムの構築から着手し その後マネジメントシステムに関わる内容を整備した 1 HACCP システムの構築本農場の衛生管理方針は 農場 HACC P の推進により 高い安全性と信頼を構築し 従業員と一体となって


Taro-H24.10.jtd

Microsoft Word - 4_ozutsumi0707.docx

緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

豚丹毒 ( アジュバント加 ) 不活化ワクチン ( シード ) 平成 23 年 2 月 8 日 ( 告示第 358 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した豚丹毒菌の培養菌液を不活化し アルミニウムゲルアジュバントを添加したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株 名称豚丹

学位論文要旨 牛白血病ウイルス感染牛における臨床免疫学的研究 - 細胞性免疫低下が及ぼす他の疾病発生について - C linical immunological studies on cows infected with bovine leukemia virus: Occurrence of ot

<4D F736F F D AAE90AC94C B835794D48D8682C882B5816A915395B68CB48D652E646F63>

資料2発酵乳

< F2D825193AA B FC48EAE8AA >

指導者検証用のガイドライン等について(案)

られる 3) 北海道での事例報告から 100 頭を超える搾乳規模での発生が多かった (33 例 82.5%) 冬から春にかけての発生がやや多い傾向 2006 年は 9 例 2007 年は 6 例が発生 全道的にも増加していると推察された 発生規模は 5~20% と一定で 搾乳規模に相関しなかった 発

B 農場は乳用牛 45 頭 ( 成牛 34 頭 育成牛 7 頭 子牛 4 頭 ) を飼養する酪農家で 飼養形態は対頭 対尻式ストール 例年 BCoV 病ワクチンを接種していたが 発生前年度から接種を中止していた 自家産牛の一部で育成預託を実施しており 農場全体の半数以上の牛で移動歴があった B 農場

< F2D382E8D9596D198618EED82C982A882AF82E98B8D94928C8C9561>

目 次 1. はじめに 1 2. 組成および性状 2 3. 効能 効果 2 4. 特徴 2 5. 使用方法 2 6. 即時効果 持続効果および累積効果 3 7. 抗菌スペクトル 5 サラヤ株式会社スクラビイン S4% 液製品情報 2/ PDF

GREEN BIO

1,透析液汚染調査の狙い

卸-11-2.indd

表紙

<4D F736F F F696E74202D204A A815B E82CD82DC82C882B78E9197BF>

牛・豚処理工程の変更に伴う枝肉細菌汚染の変動について

< F2D915395B68CB48D BD816A2E6A7464>


材料と方法 堆肥原料として生ゴミ区乾燥生乾燥生牛ふん区搾乳牛ふん ( 水分ゴミ少区ゴミ多区 85%) 生ゴミ( 水 生ゴミ分 82%) 乾燥生ゴ現48 乾55 物物ミ ( 水分 10%) も 49 割割75 34 乾燥生ゴミ 83 みがら ( 水分 10%) 合2

( 一財 ) 沖縄美ら島財団調査研究 技術開発助成事業 実施内容及び成果に関する報告書 助成事業名 : 土着微生物を活用した沖縄産農作物の病害防除技術の開発 島根大学生物資源科学部 農林生産学科上野誠 実施内容及び成果沖縄県のマンゴー栽培では, マンゴー炭疽病の被害が大きく, 防除も困難となっている

DNA/RNA調製法 実験ガイド

バンカーシート 利用マニュアル 2017年版(第一版)

よる感染症は これまでは多くの有効な抗菌薬がありましたが ESBL 産生菌による場合はカルバペネム系薬でないと治療困難という状況になっています CLSI 標準法さて このような薬剤耐性菌を患者検体から検出するには 微生物検査という臨床検査が不可欠です 微生物検査は 患者検体から感染症の原因となる起炎

白金耳ご購読者各位

(Microsoft Word - \202\205\202\2232-1HP.doc)

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

<4D F736F F D E9197BF815B A8DC58F498F8895AA8FEA82C982A882AF82E997B089BB E646F63>

2012 年 2 月 29 日放送 CLSI ブレイクポイント改訂の方向性 東邦大学微生物 感染症学講師石井良和はじめに薬剤感受性試験成績を基に誰でも適切な抗菌薬を選択できるように考案されたのがブレイクポイントです 様々な国の機関がブレイクポイントを提唱しています この中でも 日本化学療法学会やアメ

第 11 章 保健衛生 600 人 図 11-1 乳幼児健康診査実施状況 幼児一般検診 1 歳 6ヶ月検診 3 歳児検診 平成 20 年度平成 21 年度平成 22 年度平成 23 年度平成 24 年度平成 25 年度平成 26 年度平成 27 年度 14

主な内容 腸管出血性大腸菌とは 2 肉用牛農場における全国的な保有状況調査 3 継続的な保有状況調査 4 乳用牛農場における STEC O7 及び O26 保有状況調査 5 消化管内容物 肝臓 胆汁調査 2

マイコプラズマについて


<4D F736F F F696E74202D208D9197A789718CA E9197BF97708CDC8F5C8C4E462E B8CDD8AB B83685D>

に侵入する ( 環境性乳房炎 ) その多くは明確な症状を呈し 農場内で顕在化することから 治療をはじめとして 感染個体の早期対応が可能となる 一方 SAは搾乳器具や人の手指を介して個体間を伝搬する微生物であり それによる乳房炎は伝染性乳房炎 ( ウシからウシに伝染する乳房炎 ) として位置付けられて

第2章マウスを用いた動物モデルに関する研究

目について以下の結果を得た 各社の加熱製品の自主基準は 衛生規範 と同じ一般生菌数 /g 以下 大腸菌 黄色ブドウ球菌はともに陰性 未加熱製品等の一般生菌数は /g 以下であった また 大腸菌群は大手スーパーの加熱製品については陰性 刺身などの未加熱製品については


パイプハウス利用型発酵乾燥処理施設における乳牛ふん尿の堆肥化技術

い 乳房炎によって乳量が増加することはないので 確率変数と見た場合の泌乳量の分布は減少局面のみとなるため 酪農生産基盤が ぜいじゃく 脆弱化している近年においてはその効果が 需給に大きな影響を及ぼしうる 乳房炎を経済的側面から分析した研究はいくつかあるが そのほとんどは経営段階や全国のマクロレベルで

PowerPoint プレゼンテーション

シンデレラ合宿

製品案内 価格表 2014/4/1

3.ごみの減量方法.PDF



スライド 1

家政_08紀要48_自然&工学century


140221_ミツバマニュアル案.pptx

ゆたか事例集.indb

第4章

(Microsoft Word -

140221_葉ネギマニュアル案.pptx

卵及び卵製品の高度化基準

Microsoft Word 村田.doc

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

T-News_No29.pdf

Vol. 31, No. 1,

Vol


2 No,

untitled


untitled


untitled

1001.indd

0007

“LŁñ‡È‡©‡ª‡í409“ƒ

STEEL_No.24_h1-4

みさき_1


2008CHORD11....



もりおか医報人7.indd

2

H21_report


表1-2_pdf用101.indd

untitled


1 2

Transcription:

戻し堆肥の敷料利用による乳房炎予防効果 西部家畜保健衛生所 三好里美 中嶋哲治 光野貴文はじめに大腸菌性乳房炎を予防するために 敷料として戻し堆肥を利用することにより 抗菌効果が期待できることが知られている 1)2) 昨年の基礎調査の結果 堆肥化処理 10 日目以降で堆肥中の大腸菌群は消失し 大腸菌に対する抗菌効果が認められることを確認した 3) そこで この効果を現場段階で乳房炎対策に活用し 大腸菌性乳房炎多発農場 (A 農場 ) で戻し堆肥の敷料利用による乳房炎予防効果を検討した A 農場の概要 A 農場は 搾乳牛 85 頭をフリーバーンで飼養している 敷料は オガクズを県内の材木業者から購入し 牛床全体の敷料を 3~5 日おきに交換しており 常に乾燥し 見た目きれいな状況であるにもかかわらず 以前から大腸菌性乳房炎が多発していた また 堆肥舎は 180 m3 / 区画 4 区画の収容規模であった 表 1. 農場概要 A 農場におけるにおける乳房炎対策乳房炎対策の課題 A 農場では 頻回な敷料交換を実施しているにも拘らず以前から大腸菌性乳房炎が多発したことから 敷料自体に問題があるのではと思われた そこで A 農場における乳房炎対策の課題としては課題 1. 畜主の敷料への意識改革課題 2. 既存の堆肥舎で継続的な戻し堆肥作りであると考えられた 課題 1. 畜主の敷料敷料へのへの意識改革課題 1に対して 管内で敷料として利用されている資材の細菌検査を行った 材料と方法材料は オガクズを管内 2 農家から モミガラをカントリーから 2 回採材し また 堆積 1 ヶ月程度 ( 乳牛糞 : オカ クス =1:1) の堆肥を 2 農場から採材した

採材した材料を滅菌生食で段階希釈し 血液寒天培地 DHL 寒天培地で 37 度 24 時間培養 し 発育した集落数を計測するとともに溶血性 色などから主要と思われる菌を同定した 成績青色が一般細菌数を 赤色は DHL 寒天培地に生えた腸内細菌科 シュート モナス科などの菌数を腸内細菌とした ( 図 1) 一般細菌数は モミガラ オガクズの順に多く 最も少なかったのは堆肥であった また モミガラ オガクズからは 多くの腸内細菌が分離され 有意な菌を同定したところ モミガラにはクレフ シ エラやシュート モナス オガクズにはエンテロハ クター エロモナス クレフ シ エラなどが検出された 一方 堆肥からは腸内細菌が分離されなかったため 発酵過程の温度感作により消失したと考えられた 図 1. 敷料資材の細菌検査成績 この結果を農場畜主に説明し 牛床の衛生状態を良くしようとオガクズを頻回に交換することで かえって多くの菌を牛床に持ち込んいる現状と戻し堆肥の利用の必要性を認識してもらった 課題 2. 既存の堆肥舎堆肥舎で継続的継続的な戻し堆肥作堆肥作り 続いて 課題 2 の既存堆肥舎での継続的 な戻し堆肥作りについて検討した 材料と方法 A 農場では オガクズ置場と切返し場所を 設けると敷料 1 ヶ月分に相当する量の堆肥 は ふた山 つまり 2 ケ月堆積するのが精 一杯と考えられた 水分調整のため一度に大量のオガクズ と混合すれば 広い堆積場所が必要となる 問題を解決するため 表 2 のように堆肥を 作成することとした 2 ケ月 1 週間 戻し堆肥作成概要 表 2. 堆肥作成概要 生糞 : オガクズ =1:1 2~3 日おきに切返し オガクズ混合 敷料利用開始 :H19 年 10 月 水分約 70% 約 60% 発酵温度 60~70 60~70 腸内細菌の消失を確認 交換 : 毎日 ベッド低部を除去 堆肥をベッド高部に敷く まず 生糞とオガクズを 1:1 で混合し 2~3 日おきに切返し 発酵温度の確認をしな がら 2 ケ月間堆積した 2 ヶ月堆積後もまだ水分が高かったため 水分調整のため これを 少量ずつとって さらにオガクズと混合し 1 週間堆積発酵後 腸内細菌の消失を確認し

敷料への利用を平成 19 年 10 月から開始した 利用方法は 水分の高い牛床のベッド低部のみを毎日取り除き 戻し堆肥をベッド高部に敷いた 戻し堆肥の敷料利用の効果について 家畜診療所の協力のもとに当農場の乳房炎の治療状況について調査した 成績図 2は 平成 18 年 4 月からの当農場における乳房炎の治療回数を青色で示した また 乳房炎治療の中でも 急性乳房炎の場合に施される抗生物質の外陰部動脈注射 ( 以下動脈注射 ) の回数をオレンジ色で示した 戻し堆肥の利用を開始した平成 19 年 10 月から 乳房炎の治療回数及び動脈注射回数が減少した 図 3は 乳房炎治療について 戻し堆肥利用前 1 年間と利用後 1 年間を比較した 治療回数は 年間 442 回から 235 回に有意に減少した また このうち動脈注射の回数も 年間 66 回から 18 回に有意に減少した 治療頭数は 年間 140 頭から 76 頭に有意に減少し うち動脈注射頭数も年間 33 頭から 6 頭と有意に減少した 治療頭数の年間の推移を戻し堆肥利用前後で比較した 5 月 ~9 月の夏場に治療頭数が増加していたが 戻し堆肥利用後は増加せず 改善がみられた ( 図 4) また 動脈注射頭数についても同様に 夏場増加していたが 戻し堆肥利用後は 増加せず 改善がみられた ( 図 5) 以上の結果から A 農場では 戻し堆肥を敷料に利用することにより 特に夏場に増加するといわれている環境性乳房炎が減少したと考えられた 図 2. 乳房炎治療回数 ( うち動脈注射回数 ) 図 3. 乳房炎治療回数及び頭数 図 4. 乳房炎治療頭数

図 5. 動脈注射頭数 戻し堆肥利用後は A 農場において 最も廃用の原因となっていた急性乳房炎が減少したことにより 搾乳頭数は徐々に増加した ( 図 6) 戻し堆肥利用後 月別生乳出荷量は大きく増加し また 頭数当りの出荷量も大きく増加がみとめられた ( 図 7) これは 乳房炎治療が減少したことによる廃棄乳の減少によるものと考えられた 搾乳頭数の増加と廃棄乳の減少により 経済効果は戻し堆肥利用する直前の 9 月と利用後の 9 月を比較すると 出荷量は 日量で約 400kg 増加し 月 11.6 トン 1 月当り約 100 万円の粗収入増加となった ( 図 8) 図 6. 搾乳頭数 図 7. 月別生乳出荷量 図 8. 経済効果 まとめ及び考察大腸菌性乳房炎が多発していたA 農場において戻し堆肥の敷料利用による乳房炎予防効果を検討した まず 基礎調査として実験室内で大腸菌添加試験を行い 堆肥の大腸菌に対する抗菌効果を検討したところ わずか堆肥化処理 20 日程度の堆肥でも十分抑制効果があることがわかった 3) また 敷料資材の細菌検査結果から使用前のモミガラやオガクズには多くの一般細菌 特に腸内細菌が含まれていることがわかり 畜主の敷料への意識改革につながった

そこで A 農場の既存の堆肥舎で堆肥を継続して作れるよう検討し 2 ヶ月堆肥化処理後 さらに少量ずつオガクズ添加後 1 週間発酵させて 腸内細菌の死滅を確認し 敷料利用を開始した 結果 乳房炎は有意に減少し 特に急性乳房炎が激減した また 特に夏場の乳房炎の激減が認められたことから 環境性乳房炎が減少したと考えられた これは堆肥の大腸菌に対する抗菌効果に加え オガクズの殺菌にも効果があったと考えられた 今回実施した対策による経済効果は 廃用牛の減少による搾乳頭数の増加と乳房炎治療が減少したことによる廃棄乳の減少により 生乳出荷量は 日量約 400kg 一月 11.6 トン増加し 月約 100 万円の粗収入増加となった 大腸菌性乳房炎の多発に困っていた畜主が この劇的な効果を実感し 継続的に実施したことが 大幅な経済効果につながったと考えられた また 一般的に環境性乳房炎を予防するためには 敷料を交換して乾燥させることが良いとされているが 細菌検査結果から使用前のモミガラやオガクズには多くの一般細菌 特に腸内細菌が含まれており 水分わずか 10% のモミガラにも 10 7 CFU/g 以上の大腸菌群が含まれていることから 乾燥状態を保つため 頻繁に敷料交換することで かえって環境性乳房炎の原因菌を牛床に持ち込むことになると考えられた 3) 今後の戻し堆肥の利用については 基礎調査の結果も踏まえると 堆肥化処理期間が短い堆肥でも十分な大腸菌に対する抗菌効果が得られることから より戻し堆肥を敷料として利用しやすくなるのではないかと考えられた 引用文献 1) 細川紀子 (1996): 環境性乳房炎の防除法の検討 JVM Vol.49 N0.2 101-104 2) 細川紀子 (1997): 環境性乳房炎の予防畜産の研究第 51 巻第 2 号 60-63 3) 三好里美ら (2008): 安全で効率的な戻し堆肥作りの検討平成 19 年度香川県家畜保健衛生業績発表会集録