めました 存した生活を形成している社会的弱者は 地球温暖化 地球上では 既に 海面水位の上昇 熱波による死 亡 動植物の生息地域の高緯度 高地方向への移動 などの生態系の変化 媒介生物による感染症の発生な 注2 どの影響が現れており に伴う環境の変化の影響を最も受けやすいと考えられま す どんなに厳

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間を検討する 締約国が提出した 貢献 は 公的な登録簿に記録される 締約国は 貢献 ( による排出 吸収量 ) を計算する また 計算においては 環境の保全 透明性 正確性 完全性 比較可能性及び整合性を促進し 並びに二重計上の回避を確保する 締約国は 各国の異なる事情に照らしたそれぞれ共通に有して

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れまでの交渉経緯という一連のCOP/CMP 決定が採択された こQ1. 今年のカタール ドーハでの COP18 の焦点は何ですか? 今年のカタール ドーハでの COP18 では, 昨年の COP17 で合意されたダーバン合意を着実に前に進めることが重要であり,1 ダーバンプラットフォーム特別作業部会

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これまでの G7 コミットメント及び持続可能な開発のための世界的な枠組み を定める 2030 アジェンダに沿って行動する必要性を認識しつつ, 我々 G7 首 脳は, 以下にコミットする 強靱な沿岸及び沿岸部コミュニティ 1. より良い適応計画, 緊急事態への備え及び回復の支援 我々は, 政策ギャップ

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1. 地球温暖化問題の深刻化 第3節 気候変動問題 1. 地球温暖化問題の深刻化 2 0 0 7 年 2月 気 候 変 動に関 する政 府 間 パネル 注1 IPCC ともに 世界中のあらゆる地域の自然と社会が地球温 は 第4次評価報告書 第1作業部会報 暖化の影響を受けることを明らかにしました 2001年の 告書の政策決定者向け要約 を発表し 人間の活動 IPCC第3次評価報告書では 気候変動の影響が地域 から生じる温室効果ガスの増加が地球温暖化の原因 ごとに部分的に出始めていることが指摘されるにとど であるとほぼ断定しました その上で いくつかのシナリ まったのに対し 第4次評価報告書は 地球温暖化の オをもとに平均気温の上昇について予測を提示すると 進行に強い警鐘を鳴らし 国際社会の大きな関心を集 図表Ⅰ-5 世界平均気温の上昇による主要な影響 影響は 適応の度合いや気温変化の速度 社会経済経路によって異なる 1980 1999年に対する世界年平均気温の変化 0 1 2 3 4 5 湿潤熱帯地域と高緯度地域での水利用可能性の増加 中緯度地域と半乾燥低緯度地域での水利用可能性の減少および干ばつの増加 略語一覧 水 数億人が水不足の深刻化に直面する 最大30 の種で絶滅 リスクの増加 ほとんどの サンゴが白化 広範囲に及ぶサンゴの死滅 種の分布範囲の変化と 森林火災リスクの増加 15 ここでは40 以上 用語集 生態系 サンゴの白化 の増加 地球規模での 重大な絶滅 40 の生態系が影響を受けることで 陸域生物圏の正味炭素放出源化が進行 海洋の深層循環が弱まることによる生態系の変化 索引 小規模農家 自給的農業者 漁業者への複合的で局所的なマイナス影響 食 糧 低緯度地域における 穀物生産性の低下 中高緯度地域における いくつかの穀物生産性の向上 低緯度地域における すべての穀物生産性の低下 いくつかの地域で穀物生産性の低下 洪水と暴風雨による損害の増加 世界の沿岸湿地の 約30 の消失 沿岸域 2000 2080年の平均海面上昇率4.2mm/年に基づく 毎年の洪水被害人口が更に数百万人増加 栄養失調 下痢 呼吸器疾患 感染症による社会的負荷の増加 健 康 熱波 洪水 干ばつによる罹 り 病率 と死亡率の増加 罹 り 病率 病気の発生率のこと いくつかの感染症媒介生物の分布変化 医療サービスへの重大な負荷 出典 IPCC 第4次評価報告第2作業部会報告書 注1 IPCC Intergovernmental Panel on Climate Change 各国政府を代表する専門家が地球温暖化問題について議論 検証を行い 政策決定者に科学的知見に裏付けられた提言を行うことを目的として 国連環境計画 UNEP および世界気象機関 WMO の共催により1988年11月に設置された 21

めました 存した生活を形成している社会的弱者は 地球温暖化 地球上では 既に 海面水位の上昇 熱波による死 亡 動植物の生息地域の高緯度 高地方向への移動 などの生態系の変化 媒介生物による感染症の発生な 注2 どの影響が現れており に伴う環境の変化の影響を最も受けやすいと考えられま す どんなに厳しく温室効果ガス排出量の削減努力を 今後も 地球温暖化の進行 行っても 今後数十年間は気候変化の更なる影響を回 とともに様々な影響が顕在化してくることが予想されま 避することができないと評価されており 気候変動の緩 す 気候変動から受ける影響は 気候変動によって生じ 和策 温室効果ガス排出量の削減 とともに適応策 気 る現象そのものの大きさと社会システムのぜい弱性によ 候変動による悪影響への対応 を組み合わせ 気候変 り大きく異なりますが 特に多くの開発途上国において 動に伴うリスクを低減することが必要です 持続可能な は 現在の気象条件に対しても十分な対応ができてい 社会の構築のため 国際社会全体で温室効果ガスの ない状態であり 近い将来 気候変動の悪影響を受け 排出量削減に取り組み 温暖化の進行を食い止めると る可能性が高まっています 同一の国の中でも 自 同時に 悪化していく地球環境に対応する能力を強化 然災害に対してぜい弱な土地に居住し 自然資源に依 することが喫緊の課題となっています 2. 日本の途上国支援における気候変動対策 政府開発援助大綱 2003年8月 におい 進めています エネルギー貧困の解消について て 国際社会がただちに協調して対応を強化しなけれ は EAS参加各国の置かれている経済社会状況等を ばならない地球的規模の問題の一つとして 地球温暖 勘案した 電力設備の整備 地方電化等のエネルギー 化をはじめとする環境問題を位置付けています アクセス改善や省エネルギー対策を含む資金協力 技 政府開発援助に関する中期政策 2005年2月 に 22 術協力として 今後3年間で20億ドル規模のエネルギー おいて 環境分野の重点の一つに 地球温暖化対策 関連の支援を実施するとともに JBICの投資金融等も を挙げています このような方針の下 環境と開発の両 積極的に活用していく方針です 森林保全対策では 立を図り 持続可能な開発を進めていくため 気候変動 例えば ラオス北部において 焼畑移動耕作 不法伐採 対策を含む環境分野における途上国支援を積極的に などにより森林が著しく減少している状況を受け 地方 実施してきています 政府の職員が住民とともに村落森林管理を実施できる 1970年代の公害やオイルショックの経験から よう指導するとともに アグロフォレストリー 注3 養豚 魚 環境 省エネルギー対策を推進し 優れた技術やノウ 養殖や織物などで森林資源の持続的活用を図り 森 ハウを開発 蓄積してきました これらを活用して 省エ 林資源の回復と住民の生計向上を同時に図る技術協 ネルギー技術の普及 エネルギー効率の向上 森林対 力プロジェクトを実施しています 策などの緩和策を積極的に推進しています 例えば 気候変動枠組条約京都議定書の下で導入さ 中国においては 老朽化した石炭火力発電所に代え れたクリーン開発メカニズム CDM の促進は 温室効 小水力発電所や揚水発電所の建設を支援していま 果ガスの排出量を削減すると同時に日本が排出クレジッ す 2007年1月の東アジア首脳会議 EAS では 日本 トを獲得する可能性もあることから CDM促進のため は エネルギー協力イニシアティブ を発表し 省エネ の途上国支援も推進しています 例えば CDM案件の ルギーの推進 バイオマスエネルギーの推進 石炭のク 申請書類を作成するためには技術的な知見が必要で リーンな利用 エネルギー貧困の解消を柱とする協力 あることから CDM案件形成のための能力強化の事 策を打ち出しました これに基づき 省エネルギー分野 業を実施しています 注4 具体的には アルゼンチンの の研修員受入やエネルギー インフラ整備等を着実に CDM推進体制の強化と国内のCDMの理解促進を支 注2 例えば ツバル等の南太平洋諸国では 既に多くの海岸沿いの地域が海岸侵食 水没の危機にひんしている 干ばつと洪水の頻発はアフリカで顕著であり IPCC によれば2020年までに アフリカにおいて 7,500万人から2億5,000万人が気候変動に伴う増加する水ストレスにさらされると予測されている 注3 ある土地に 樹木などと農作物もしくは家畜をほぼ同時期に植栽したり放牧したりする 樹木などの成長度合に応じて 農作物 家畜を栽培 飼育し 植物資源を常に保有 しつつ土地を有効に利用し 生産するシステム 注4 開発途上国において気候変動問題を担当する行政官等を対象に研修を実施 2003年から2007年まで計44名の京都メカニズムの政策担当者を対象に研修を行った

図表Ⅰ-6 2. 日本の途上国支援における気候変動対策 気候変動が主要な議題となる今後の外交日程 2007年 6月 気候変動 枠組条約 4月 2008年 8月 10月 12月 1月 春 2009年 7月 12月 COP13 COP13 準備会合 ボゴール バリ COP14 ポーランド 1月 11月 12月 COP15 デンマーク 10/24 25 12/3 14 G8 ハイリゲンダム サミット 北海道 洞爺湖サミット 7/7 9 6/6 8 ドイツ 気候変動 クリーン エネルギー 持続可能な開発に関する閣僚級対話 G20対話 9/9 11 ドイツ 気候変動 クリーン エネルギー 持続可能な開発に関する閣僚級対話 G20対話 3/14 16 千葉 G8開発 G8環境 G8エネルギー 東京 神戸 青森 4/5 6 5/24 26 6/7 8 気候変動に関する 国連ハイレベル会合等 9/24 米国主催 主要経済国会合 9/27 28 ワシントン APEC首脳会議 9/8 9 シドニー 主要経済国 首脳会合 夏ごろ 場所未定 東アジア首脳会議 11/21 シンガポール TICAD Ⅳ 5/28 30 横浜 ASEM首脳会合 10/24 25 北京 略語一覧 京都議定書第1約束期間 2008 2012年 用語集 図表Ⅰ-7 開発途上国における気候変動関係の支援需要 気候変動の緩和策 温室効果ガスの削減 支援 エネルギー効率の向上 省エネルギー技術の普及 森林保全 植林 2 気候変動にぜい弱な 開発途上国の適応策 気候変動対応のための支援 水 農業 森林 防災等 開発途上国のデータ整備 モニタリング能力向上 援する CDM基盤整備プロジェクト を2006年6月から 注5 実施した結果 同国では具体的なプロジェクト 3 索引 1 クリーン エネルギーへの アクセス向上 太陽熱 小規模水力 バイオマスなどの 代替エネルギーの普及 農村電化とコミュニティ支援 開発調査を2006年2月から実施しています につ 対エジプト円借款 ザファラーナ風力発電計 きCDM申請に必要となる設計書が作成されるなど 気 画 が2007年6月 二国間協力事業として政府開発援 候変動問題への取組が進んでいます チリにおい 助により事業自体に支援 実施が行われる大型のCDM て 植林に関するCDM能力開発および促進のための 事業として 世界で初めて登録されました この風力発 注5 コルドバ州小火力発電モデルプロジェクト ミシオネス州製材所廃棄物利用発電プロジェクト 23

電計画から生じた排出クレジットは 日本の民間企業が を高める取組をすべきことが提言されています 買い取ることになっています 同年9月 イン しかしながら 援助実施の側面では 特に気候変動 ドにおいて デリーメトロに対する円借款による支援の の影響に最もぜい弱な最貧国等においては 貧困削 一部が活用された温室効果ガス排出量の少ない車両 減や教育の普及 保健衛生の向上などの基礎生活分 を地下鉄に導入する事業と スリランカにおいて 環境 野における数多くの課題に優先的に対処する必要が 対策投資の資金を提供する円借款事業の一部を活用 あり 生活に必要なインフラ整備における支援の必要性 してココナッツ殻の木炭化と発電を行う事業を CDM も高く 相手国政府からの支援要請もこれらの課題に 事業として承認しました 投資国による承認 インド政 集中する傾向があります 適応策を進めるためには 開 府 スリランカ政府による承認 ホスト国による承認 は 発途上国自身が 気候変動による影響を考慮し それ 既に取得しているので CDM理事会の承認を得れば を踏まえた開発計画を策定する必要がありますが 多 政府開発援助を活用した新たなCDM案件の具体例と くの途上国には そのような能力が十分に備わっていま なります 今後も 政府開発援助等を活用した せん さらに 気候変動をはじめとする環境問題への対 注6 CDMを推進していくこととしています 応には 高度な政策調整能力が要求されます 先進国 気候変動への適応策については 地球温暖化の進 では 複数の省庁が政策を調整しながら 科学的な知 行が明らかになるにつれ 世界的な取組の強化が求め 見も活用しつつ 総合的な観点から施策を実施していく られています 世界銀行や国連開発計画 UNDP な ことが可能ですが 行政能力 ガバナンス が弱い開発 どの開発関連の国際機関においても 適応策の取組 途上国においては 政策の調整自体が困難である場 注7 強化が議論され 先進国による取組強化の動き も出 てきています 合が多く見られます したがって 開発途上国において 気候変動対策を進めるためには このような途上国政 これまでも 防災や水 農業などの分野で適 府の人材育成等の能力強化も重要な課題です 応に資する支援を行ってきていますが 気候変動へ 気候変動への適応支援は 政府 コミュニティ 個人 の適応に対するODAに関する有識者会議 が2007年 まで 様々なレベルで行う必要があり 日本が提唱する 3月に外務省に提出した 気候変動への適応分野にお 人間の安全保障 の確立にも資するものです その ける開発途上国支援に関する提言 では 日本はこれ 一方で 開発援助の分野の新しいテーマであるため まで適応分野で行ってきた支援の経験や知見をいか 今後 適応支援策の好事例を積み重ねていく必要があ し 国際社会の連携促進のために先頭に立つべきであ ります り 同時に 日本の援助実施においても適応への関心 3. 日本の 美しい星50 提案 このように 気候変動に対して速やかな行動が求め スの排出の抑制と経済成長を両立させようとする志の られている状況を踏まえ 2007年5月 安倍晋三総理大 高い開発途上国を広く支援することを表明しました そ 臣 当時 は 美しい星50 を発表しました この中で 日 して この支援は 緩和 適応 クリーンエネルギーの利 本は 世界全体で2050年までに温室効果ガスの排出 用促進など 日本の技術と経験をいかし 途上国の事 量を50%削減するという長期目標を提案すると同時に 情にきめ細かく配慮しながら行っていくこと こういった 京都議定書の第一約束期間が終了する2013年以降 支援のための新しい 資金メカニズム を構築していく 注8 の枠組み構築に向けた3原則 を提唱しました これらの原則を実現していくため 温室効果ガ ことを表明しました この 資金メカニズム については 単に従来行っている途上国支援の資金を振り向けるも 注6 政府開発援助以外の公的資金によるCDM事業推進の取組として JBICは 2007年8月 インドの商業銀行と 日本企業の排出権購入機会拡大に資するとともにインド における温室効果ガス排出量の抑制に貢献する貸付契約を調印 その他 ブラジル等を対象に同様の取組を行っている 注7 2007年3月 英国は2008年からの3年間で8億ポンドの環境変革基金を設置し 開発途上国の気候変動対策を包括的に支援する旨を発表 注8 原則1 主要排出国がすべて参加し 京都議定書を超え 世界全体での排出削減につながること 原則2 各国の事情に配慮した柔軟かつ多様性のある枠組みとすること 原則3 省エネルギーなどの技術をいかし 環境保全と経済発展とを両立すること 24

4. 日本のリーダーシップ のではなく ある程度の長期で担当規模のものとするこ 力を強化していくことを発表しました ガイアナは 人口 とを検討しており 他の先進国や国際機関にも同調を呼 の9割が海抜0メートル以下の土地に居住しているとい びかけ 国際的に協調して行う方針です われ 気候変動による海面上昇や洪水で多大な被害 南米大陸に位置しカリブ海に面するガイアナのジャグ が発生するおそれがあります その他のカリブ諸国や デオ大統領は 2007年6月に来日し 安倍総理大臣 当 太平洋の島嶼国 アフリカの国々のように 気候変動に 時 との会談において ガイアナが直面する気候変動に ぜい弱な開発途上国は 同様の懸念を有しています よる海面上昇や異常気象による洪水の問題の深刻さ 日本の経験や技術をいかして気候変動分野における を述べた上で 気候変動対策分野における日本のリー 途上国支援を強化するとの提案に対し 開発途上国か ダーシップを高く評価しました そして 両国は 日 ガイア らは 強い期待感が示されています しょ ナ環境 気候変動共同声明を発出し この分野での協 4. 日本のリーダーシップ 2007年6月のドイツ ハイリゲンダムにおける主要国首 に取り組むことは 国際社会における日本のリーダーシッ 脳会議 G8サミット では 気候変動問題が大きなテー プを発揮することにつながります この関連で途上 マとなりました これは 環境の一分野の問題と認識さ 国支援を強化することは 現在 温室効果ガスの排出 れがちだった気候変動が 国際社会が直面する大きな 量の削減義務を負っていない開発途上国が温暖化対 課題として認識された結果といえます そして G8首脳 策の国際的な枠組みに関与することを促していく一つ は 2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出量 の手段になります さらに 気候変動対策は 日本の高 を少なくとも半減することを真剣に検討することに合意 い環境技術をいかした支援が可能であると同時に 政 し 気候変動の緩和策と同時に 開発途上国の気候 府開発援助を活用したCDMの促進は 排出クレジット 変動への適応における支援継続を強調しました を獲得し 日本の京都議定書上の約束達成に貢献す 2007年12月にインドネシアのバリで開催される気候変 るという効果も期待できます したがって 2013年以降 動枠組条約締約国会合では 2013年以降の枠組みに の実効的な枠組みの構築とともに 開発途上国の緩和 ついて議論される予定です 2008年のG8北海道洞爺 策 適応策に対する支援を進め 地球温暖化という地 湖サミットにおいても 気候変動は主要な議題の一つと 球的規模の課題に対処していく方針です とう や なるものと思われ サミット議長国である日本のリーダー シップが求められています 現在の京都議定書には 主要排出国である米国等 は参加していません 中国やインド等の開発途上 国は 京都議定書上 温室効果ガスの排出削減義務 を負っていません しかし 2002年時点で中国は世界 第2位 インドは第5位の温室効果ガス排出国であり 今 後 経済成長に伴って排出量は更に増加することが予 想されています 京都議定書の約束期間が終 わる2013年以降 すべての主要排出国が参加する実 効的な枠組みを構築することを目指しています 日本が地球温暖化対策という国際社会の共通課題 26 2007年9月 第62回国連総会にて演説する高村正彦外務大臣