生活習慣改善へのアプローチ -知識と技術

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私の食生活アセスメント

2214kcal 410g 9.7g 1 Point Advice

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スライド タイトルなし

青年期を対象とした携帯食事手帳システムの提供 目 次 1. 目的 1 2. 携帯食事手帳システムの概要 1 (1) システムの基礎データ 1 (2) 利用方法 1 (3) 確認できる情報 1 3. 携帯食事手帳利用の手引き 2 (1) 携帯食事手帳 (QRコード) 3 (2) 料理選択の仕方 4 (

私の場合 上記表より男性 年齢 51 歳の所を確認しました 活動量低い 普通以上を選択します 活動量は低いにあてはまります ( 座り仕事が中心 歩行 軽いスポーツ等は 5 時間未満 ) 表よりエネルギーは 2200±200 キロカロリーになり 1 日にとる 5 種類の分類のうち摂取量 ( つ (SV



スライド 1

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1 栄養成分表示を活用してみませんか? 媒体の内容 1 ページ 導入 ねらい : 栄養成分表示 とは 食品に含まれているエネルギー及びたんぱく質 脂質 炭水化物 食塩相当量などを表示したものであることを理解する 栄養成分表示を見たことがありますか? と問いかけ 普段から栄養成分表示を見ているか 見て

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Microsoft Word - ☆5章1栄養.doc

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

次世代ヘルスケア産業協議会第 17 回健康投資 WG 資料 6 職場における食生活改善の質の向上に向けて 武見ゆかり第 6 期食育推進評価専門委員会委員 ( 女子栄養大学教授, 日本栄養改善学会理事長 )

2. 栄養管理計画のすすめ方 給食施設における栄養管理計画は, 提供する食事を中心とした計画と, 対象者を中心とした計画があります 計画を進める際は, それぞれの施設の種類や目的に応じて,PDCA サイクルに基づき行うことが重要です 1. 食事を提供する対象者の特性の把握 ( 個人のアセスメントと栄

2 夜食 毎日夜食をとっている者は では 22.5%( 平成 23 年 23.9%) であり で % と割合が高い では 18.3%( 平成 23 年 25.2%) であり 40 歳代で割合が高い 図 夜食の喫食状況 (15 歳以上 性別 年齢階級別 )

Microsoft PowerPoint - ③食事指導 [互換モード]

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結果の概要

【0513】12第3章第3節

保健機能食品制度 特定保健用食品 には その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をすることができる 栄養機能食品 には 栄養成分の機能の表示をすることができる 食品 医薬品 健康食品 栄養機能食品 栄養成分の機能の表示ができる ( 例 ) カルシウムは骨や歯の形成に 特別用途食品 特定保健用

(5) 食事指導食事指導は 高血圧の改善 耐糖能障害の改善 代謝異常の改善について 各自の栄養状況 意欲などに応じて目標をたて これを達成できるよう支援する形で行った 開始時点で 食事分析を行い 3ヶ月ごとに 2 回進捗状況を確認する面接を行った 1 年後に終了時点の食事分析を行った 各項目の値の増

日常的な食事に関する調査アンケート回答集計結果 ( 学生 ) 回収率 平成 30 年 12 月 1 日現在 134 人 問 1 性別 1 2 男性女性合計 % 97.0% 100.0% 3.0% 男性 女性 97.0% 問 4 居住状況 家族と同居一人暮らし

Shokei College Investigation into the Physical Condition, Lifestyle and Dietary Habits of the Members of a Boy s Soccer Team and their Families (1) Ph

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血糖値 60 歳女性 HbA1c : 6.5 従来のカロリー制限食 糖質制限食 糖質 ( 米など ) を制限しない食事では カロリーを制限しても血糖値は食後に急上昇するそれに対し 糖質制限食では血糖値上昇はわずか

2) エネルギー 栄養素の各食事からの摂取割合 (%) 学年 性別ごとに 平日 休日の各食事からのエネルギー 栄養素の摂取割合を記述した 休日は 平日よりも昼食からのエネルギー摂取割合が下がり (28~31% 程度 ) 朝食 夕食 間食からのエネルギー摂取割合が上昇した 特に間食からのエネルギー摂取

平成 29 年度食育活動の全国展開委託事業報告書 ( 食生活と農林漁業体験に関する調査 ) 平成 30 年 2 月

調査の概要 本調査は 788 組合を対象に平成 24 年度の特定健診の 問診回答 (22 項目 ) の状況について前年度の比較から調査したものです 対象データの概要 ( 全体 ) 年度 被保険区分 加入者 ( 人 ) 健診対象者数 ( 人 ) 健診受診者数 ( 人 ) 健診受診率 (%) 評価対象者

ちゃんと (450~650kcal 未満 ) 栄養バランスを考えて ちゃんと 食べたい女性や中高年男性の方向けしっかり (650~850kcal) 栄養バランスを考えて しっかり 食べたい男性や身体活動量の高い女性の方向け スマートミールの基準 1 エネルギー量 ( カロリー ) は 1 食あたり

ウ食事で摂る食材の種類別頻度野菜 きのこ 海藻 牛乳 乳製品 果物を摂る回数が大きく異なる 例えば 野菜を一週間に 14 回以上 (1 日に2 回以上 ) 摂る人の割合が 20 代で 32% 30 代で 31% 40 代で 38% であるのに対して 65 歳以上 75 歳未満では 60% 75 歳以

②肥満 やせの状況 3 歳児における肥満児の割合は減少していました 成人男性の肥満は横ばいで 代女性の肥満は増加傾向がみられました 一方 20 代女性のやせは倍増しており 肥満だけでなく 子どもを産み育てる世代への支援が必要となります 20代 60代の肥満 BMI 25以上 の割合 肥満

学校給食摂取基準の活用 学校給食摂取基準は全国平均を示したものであるから その考え方を踏まえた上で 各学校の実態に応じた摂取基準 ( 給与栄養目標量 ) 作成する必要がある EER 算出シートに数字を打ち込めば EER( 推定エネルギー必要量 ) は算出できるが 専門職 ( 管理栄養士 栄養士 )

日本スポーツ栄養研究誌 vol 目次 総説 原著 11 短報 19 実践報告 資料 45 抄録

栄養表示に関する調査会参考資料①

Microsoft Word - P  第1部(第1表~第6表)


食育って, ご存知ですか? 食育とは 生きる上での基本であって, 知育, 徳育及び体育の基礎となるべきもの 様々な経験を通じて 食 に関する知識と 食 を選択する力を習得し, 食育の推進に取り組んでいます! 28 年 ( 平成 2 年 )3 月に 福山市食育推進計画,213 年 ( 平成 25 年

う について知り ご飯のたき方を理解する 6 おいしいみそ汁の作り方の秘密を調べよう だしの有無やみそ汁の具の種類や切り方によってみそ汁の味や作り方が違うことを理解する 7 8 ご飯とみそ汁を作る計画を立てよう みそ汁の具の組み合わせや切り方 入れる順番等を考え ごはんとみそ汁を同時にできるように時

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第 4 章 地域における食育の推進 1 栄養バランスに優れた 日本型食生活 の実践 ごはんを中心に 魚 肉 牛乳 乳製品 野菜 海藻 豆類 果物 茶など多様な副食などを組み合わせて食べる 日本型食生活 は 健康的で栄養バランスにも優れている 農林水産省では 日本型食生活 の実践等を促進するため 消費

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2 11. 脂肪 蓄 必 12. 競技 引退 食事 気 使 13. 日 練習内容 食事内容 量 気 使 14. 競技 目標 達成 多少身体 無理 食事 仕方 15. 摂取 16. 以外 摂取 17. 自身 一日 摂取 量 把握 18. 一般男性 ( 性. 一日 必要 摂取 把握 19. 既往歴 図

はじめに 目次 はじめに 目 次 この冊子は ゲンボイヤをお飲みになる方に向けて作成されたものです 注意事項などが記載されていますので お飲みになる前にご一読ください なお この冊子の記載内容だけでは十分ではありませんので 担当の医師や 看護師 薬剤師などからの説明をよく聞き 指示をしっかり守ってく

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標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

Ⅵ ライフステージごとの取り組み 1 妊娠期 2 乳幼児期 (0~5 歳 ) 3 学童期 (6~12 歳 ) 4 思春期 (13~19 歳 ) 5 成年期 (20~39 歳 ) 6 壮年期 (40~64 歳 ) 7 高年期 (65 歳以上 ) ライフステージごとの取り組み ( 図 )

Q1. あなたが 普段健康のために積極的に摂取している栄養成分 控えている栄養成分をお答えください ( 単数回答 ) n=1000 積極的に摂っている栄養成分 TOP5 積極的に摂っているどちらとも言えない摂取を控えている 水分 61.7% 34.1% 4.2% たんぱく質 44.7% 48.4%

健康くるめ21概要

実践内容 (1) 視点 1 教育活動全体で推進できるよう 指導体制を整備し 食に関する指導の充実 を図る 1 食育全体計画の整備既存の食育全体計画を見直し 教科 学級活動における食に関する指導の時間を確保するとともに 栄養教諭とのティーム ティーティング ( 以下 TT) についても明記した また

奈良ウォーキングベスト1

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14栄養・食事アセスメント(2)

gh 第 6 学年 3 組家庭科学習指導案 単元名 : わたしは料理家 ~ おすすめ給食献立を考えよう ~ 朝食から健康な 1 日の生活を 男子 15 名 女子 14 名計 29 名 指導者 T1 宮地仁美 ( 学級担任 ) T2 須山明香 ( 栄養教諭 ) 題材について 小学校学習指導要領家庭科第

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肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

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せきがはら10月号.ec6


食品には たんぱく質や脂質 炭水化物などの栄養成分が含まれています 私たちが健康な生活を送ることができるのは 食品から必要な栄養を必要な量とっているからです 食材を加熱すると 食材に天然に含まれている成分から新たな成分ができることがあります それによって 例えばパンを焼いたときの美味しそうな色 コー

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カテゴリー別人数 ( リスク : 体格 肥満 に該当 血圧 血糖において特定保健指導及びハイリスク追跡非該当 ) 健康課題保有者 ( 軽度リスク者 :H6 国保受診者中特定保健指導外 ) 結果 8190 リスク重なりなし BMI5 以上 ( 肥満 ) 腹囲判定値以上者( 血圧 (130 ) HbA1

結果の概要 1 栄養 食生活に関する状況 (1) 野菜の摂取状況 20 歳以上における 1 日の野菜摂取量の平均値は 288.1g 性別にみると男性 297.1g 女性 281.1g 年齢階級別にみると 男女ともに 40 歳代で最も少ない 図 1 野菜摂取量の平均値 (20 歳以上 性 年齢階級別

野菜産地と量販店の皆様へ 国民の健康志向の高まりとともに 野菜の栄養 機能性成分について情報提供を求める声が消費者や量販店から多く寄せられています 生鮮食品の栄養成分表示については 栄養表示基準 ( 健康増進法 ) の対象外 であるため 表示規制はないものの 栄養成分等の表示に関する基準や定めがない

目次 1, 研究背景 1-1, ダイエッに対する関心 1-2, 現代の食生活の問題 2, 肥満になる原因 2-1, 肥満になるメカニズム 2-2, 原因 3, 食事パターンによる比較 3-1, 食事パターンの構造と栄養素等の摂取状況の研究 4, 研究目的と分析手順 4-1, データ概要 4-2, 用

もくじ 糖尿病食は健康食 特別な食事ではありません 食事療法が基本 といわれる理由なにが食事療法を難しくしているのでしょうか? なにも 特別なことを始めるわけではありませんとりあえず 始めましょう 難しく考えずに 太り気味の人は まず減量 自分にあった量 って どれくらい? バランスのよい食事 って

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1カップ 74gあたり 6311 エネルギー (kcal) ブイ クレスゼリーカップタイプりんご水分 (g) たんぱく質 (g) 脂質 (g) ナイアシン (mg) 1.5 炭水化物 (g) ナトリウム (mg) 22 ビタミンB12(μg)

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SoftBank 301SI 取扱説明書

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山梨県生活習慣病実態調査の状況 1 調査目的平成 20 年 4 月に施行される医療制度改革において生活習慣病対策が一つの大きな柱となっている このため 糖尿病等生活習慣病の有病者 予備群の減少を図るために健康増進計画を見直し メタボリックシンドロームの概念を導入した 糖尿病等生活習慣病の有病者や予備

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食生活指針の解説要領 1. 食生活指針改定の趣旨我が国は世界でも有数の長寿国であり 平均寿命は男女ともに 80 年を超え 今後も平均寿命が延びることが予測されています こうした平均寿命の延伸には 日本人の食事が一助になっていると考えられます 日本人の食事の特徴としては 気候と地域の多様性に恵まれ 旬

3 12 西中学校給食予定献立表 冬野菜のオムレツ味噌ドレッシングサラダじゃこ豆ぶどうゼリー TEL: kcal トンテキほうれん草ゅうまい春雨とひじきの和え物レモンゼリー ニラ玉焼き枝豆とコーンのサラダフルーツヨーグルト 39.g 2.g キャベツのイタリアンサラダりんご缶 キャベ

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2015 1,200 A B J 一般社団法人 J ミルク牛乳乳製品の知識改訂版 001

宗像市国保医療課 御中

わりについての教育, 例えば,1 食料の生産 加工 流通, 安全な食品の選択と選択能力の獲得,2 生活環境や生活行動, 個人の健康意識, 心理的状態と食の状況などを考慮した上での個人や集団に合った食生活管理, などについて教育する 2 食育国民一人一人が, 生涯を通じた健全な食生活の実現, 食文化の

第 3 部食生活の状況 1 食塩食塩摂取量については 成人男性では平均 11.6g 成人女性では平均 10.1gとなっており 全国と比較すると大きな差は見られない状況にあります 図 15 食塩摂取量 ( 成人 1 日当たり ) g 男性

Ⅳ 第 2 次計画の目標 : 第 2 次計画で新たに設定した項目 府民主体 府民と行政と団体 行政と団体 1 内 容 新 規 栄養バランス等に配慮した食生活を送っている府民の割合 2 朝食欠食率 第 1 次計画策定時 35 現状値 第 2 次計画目標 第 2 次基本計画目標 24% 15% 60%

10.Z I.v PDF.p

各推進主体の具体的な取り組み 家庭 幼稚園 保育所 関係団体 家族で一緒に朝 早寝 早起き 朝 朝食の大切さを 食を食べる日を ごはんを推進し 伝えていきまし 増やしま ま ょう 朝食の大切さ 早寝 早起き 朝 園便りや給食便 簡単に作れる朝 の推進 ごはんを心がけ りで食育推進を 食のメニューを

Microsoft Word 栄マネ加算.doc

栄養成分表示ハンドブック-本文.indd

食育に関する意識調査の結果について ( 速報 ) 基本目標 1 毎日きちんと朝ごはんを食べます 規則正しい生活を心がけ, 毎日朝ごはんをしっかり食べて充実した 1 日を過ごす 1 朝ごはんを毎日食べる人の割合 (1) 一般問 6 朝食を食べていますか ( は1つだけ) 0% 10% 20% 30%

茨城県食育推進計画―第三次―

A ふつう 将来糖尿病になる可能性は高くありま せん ただし, 日本人はもともと糖尿 病になりやすいので, 生活習慣に気をつけることが重要です B やや危険 将来糖尿病になる可能性が高く, 生活 習慣を見直す必要があります 保健師 等に相談して下さい C とっても危険 すでに糖尿病を発症しているか,

肥満と栄養cs2-修正戻#20748.indd

モスクワ市の外食市場は 2015 年まで安定した伸長を遂げたが 2016 年は減少 2010 年から2015 年にわたって 外食市場は年平均伸び率 7.9% で拡大 外食市場規模は 2016 年に1,609 億ルーブルに減少 ロシアでは庶民的な価格帯のカフェ ( レストラン ) の利用が最も多い カ

目次 < 栄養表示の特徴 > 栄養表示の特徴 1 < 健康 栄養政策と栄養表示の関係 > 健康 栄養政策と栄養表示基準 2 健康 栄養政策と栄養表示 3 健康 栄養政策と栄養表示の関係 4 21 世紀における国民健康づくり運動 ( 健康日本 21) の具体的な推進について 5 < 栄養表示の重要性の

Ⅰ. 調査概要 1. 調査目的児童の食事状況を調査し 食品の摂取状況や栄養摂取量等を把握することにより 食の指導 教育に活用し 児童の正しい食習慣の育成に役立てるための資料とする 2. 調査の対象者及び種類佐賀市内の小学校 7 校に在籍する小学 5 年生の男子 117 人 女子 118 人の計 23

Transcription:

特定健診 保健指導の実際 食生活指導のポイント 2007 年 5 月 女子栄養大学 大学院 ( 食生態学研究室 ) 武見ゆかり

食生活指導の基本的な流れ 1 食行動アセスメント 2 行動変容の準備状態と 食への関わり に応じた目標設定の支援 3 セルフモニタリングの支援 4 食行動変容の把握 客観評価次の目標設定への支援

1 食行動アセスメント身体状況 健診結果との関連で 食生活の問題点の認識があるか ( 気づき ) 行動変容する気があるか ( 準備状態 ) 現在の身体状況を引き起こす要因となっている食行動は何か ( 食事のリズム 食物選択 食嗜好 食事づくりへの関わり 本人以外の要因 )( 問題行動の特定 ) その中で 本人が変えられそうな食行動は何か ( 行動目標の設定へ ) それを変えることで どのくらい身体状況の改善が見込めるか

トランスセオレティカルモデルの 食生活への応用 ( 米国の先行研究の例 ) (Glanz,K. et al, 1994, Curry, SJ. et al, 1992 など ) 前熟考期熟考期準備期実行期維持期 ある食行動を変えようと試みなかったし, 今後 6 ヶ月以内にも変えるつもりはない ある食行動を変えようと試みなかったが, 今後 6 ヶ月以内に変えるつもりである ある食行動を過去 6 ヶ月間変えようと試みたことはあるが, うまく継続できていない または, 今後 1 ヶ月以内に始めようと思っている ある食行動を実際に試みていて, うまく継続できている 但し,6 ヶ月以内 ある食行動が 6 ヶ月以上継続できている 食の場合は ターゲット行動をどう設定するか 準備機のとらえ方が難しい!

2 行動変容の準備状態と 食への関わり に応じた 目標設定の支援

レベル 何を どれくらい 食べたらよいかの基準 栄養素 食品 食材料 調理 料理 食事 食べる 内容 エネルギー 炭水化物 たんぱく質 脂質 ビタミン ミネラル 食品成分表 (18 分類 ) 6 つの基礎食品 3 色分類 糖尿病交換表など 主食 主菜 副菜 牛乳 乳製品 果物 基準 食事摂取基準 食品構成 食事バランスガイド 食べる側 目に見えない 重量の把握が難しい 食べるときに見ている状態 つくる側 食品成分表や分析結果 食材料の量を計量する 提供量と目安の量を比較 枠組み栄養素選択型食材料選択型料理選択型

見てわかる 何を どれだけ 食べたらよいかの目安 食卓で食べる時の状態で考えるツール 料理で

野菜は 1 日 350g 食べましょう D-4 野菜 350g の目安 料理例 重量はあくまでも一例です ほうれん草のおひたし 80g レタスとキュウリのサラダ 85g 冷やしトマト 100g かぼちゃの煮物 100g 具だくさんのみそ汁 75g ひじきの煮物 80g きのこのバター炒め 75g 野菜の煮しめ 140g ( 出典 ) 食事バランスガイド を活用した栄養教育 食育実践マニュアル どうやって 各料理の重量を把握するの!?

野菜料理を 5 皿程度食べましょう 野菜 350g の目安 料理例 重量はあくまでも一例です ほうれん草のおひたし 1 つ (SV) レタスとキュウリのサラダ 1 つ (SV) 冷やしトマト 1 つ (SV) かぼちゃの煮物 1 つ (SV) 具だくさんのみそ汁 1 つ (SV) ひじきの煮物 1 つ (SV) きのこのバター炒め 1 つ (SV) 野菜の煮しめ 2 つ (SV) ( 出典 ) 食事バランスガイド を活用した栄養教育 食育実践マニュアル 野菜などを主材料とする副菜は 1 日に 5-6 つ (SV)

食事バランスガイドを活用して欲しい 重点ターゲット層 30 歳代 ~60 歳代男性 ( 特に肥満者 ) 単身者 子育てを担う世代 食育

すべてを満遍なく説明する必要はない 対象者の問題行動に対応した活用を 例 1) エネルギー摂取を控えるポイントはアルコール! ヒモの話中心適量飲酒とは 例 2) 主菜の食べすぎ! しかも揚げ物 炒め物が多い 主菜の適量の目安 3 ー 5 つ (SV) 調理法への配慮

料理例 ( 絵 ) を上手に活用した説明を! 主菜 たんぱく質の供給源となる肉 魚 卵 大豆及び大豆製品などを主材料とする料理 量の目安 ( 基本形の場合 ) 1 日 =3~5 つ (SV) ( 注 ) 主菜を選択する際は 脂質やエネルギー過剰摂取を避けるよう注意が必要

要注意! この情報は原則 専門家用 主食 1 つ (SV) 炭水化物約 40g 副菜 1 つ (SV) 野菜等約 70g 主菜 1 つ (SV) たんぱく質約 6g 牛乳 乳製品 1 つ (SV) カルシウム約 100mg 果物 1 つ (SV) 約 100g

チェックリスト (1 週間用 ) 武見敬三副大臣 気持ちいい 身体づくりに挑戦!! 生活習慣チェックリスト 身体チェック 月日 ( 月 ) 日 ( 火 ) 日 ( 水 ) 日 ( 木 ) 日 ( 金 ) 日 ( 土 ) 体重計測 計測した 計測した 計測した 計測した 計測した 計測した ( 毎朝計測 ) 計測しなかった 計測しなかった 計測しなかった 計測しなかった 計測しなかった 計測しなかった 今日の体重 ( )Kg ( )Kg ( )Kg ( )Kg ( )Kg ( )Kg 腹囲計測 計測した ( )cm ( 毎週明けに 1 回計測 ) 計測しなかった 運動チェック目標 :60 kcal/ 日消費量アップ目安 普通歩行 (10 分間 ) 約 25kcal 速歩 (10 分間 ) 約 40kcal 普通歩行 10 分 できた できた できた できた できた できた できなかった できなかった できなかった できなかった できなかった できなかった 速歩 10 分 できた できた できた できた できた できた 速歩 10 分約 1,000 歩 できなかった できなかった できなかった できなかった できなかった できなかった 腹筋 できた ( ) 回 できた ( ) 回 できた ( ) 回 できた ( ) 回 できた ( ) 回 できた ( ) 回 できなかった できなかった できなかった できなかった できなかった できなかった 今日の歩数 ( ) 歩 ( ) 歩 ( ) 歩 ( ) 歩 ( ) 歩 ( ) 歩 食事チェック目標 :140 kcal/ 日摂取量ダウン目安 クリームパン / ジャムパン ( 各 1 個 ) 約 300kcal ざるそば ( 普通盛 1 人前 ) 甘い炭酸飲料は飲まないシ ンシ ャーエール (500ml) 約 200kcal できた できた できた できた できた できた できなかった できなかった できなかった できなかった できなかった できなかった できた できた できた できた できた できた できなかった できなかった できなかった できなかった できなかった できなかった できなかった できなかった できなかった できなかった できなかった できなかった 菓子は 2 日に 1 回 1 個まで 菓子を食べなかった 菓子を食べなかった 菓子を食べなかった 菓子を食べなかった 菓子を食べなかった 菓子を食べなかった クリームパン / ジャムパン 1 個食べた 1 個食べた 1 個食べた 1 個食べた 1 個食べた 1 個食べた ( 各 1 個 ) 約 300kcal 2 個以上食べた 2 個以上食べた 2 個以上食べた 2 個以上食べた 2 個以上食べた 2 個以上食べた 3 食以外の夜食は食べない できた できた できた できた できた できた ご飯 (1 杯 ) 約 300kcal できなかった できなかった できなかった できなかった できなかった できなかった 総合チェック 今日はよく頑張った! 3 セルフモニタリングの支援 コーヒーの砂糖は甘味料 ( エネ ルギー量の低いもの ) とする スティックシュカ ー (1 本 ) 約 12kcal 甘味料 (1 本 ) 約 2kcal 揚げ物 炒め物は1 日 1 料理まで できた できた できた できた できた できた Yes Yes Yes Yes Yes Yes No No No No No No

食事の行動目標対象者が自分で 容易に 正しく チェックできる具体的な項目にする 甘い炭酸飲料は飲まないシ ンシ ャーエール (500ml) 約 200kcal できた できなかった できた できなかった コーヒーの砂糖は甘味料 ( エネルギー量の低いもの ) とする スティックシュカ ー (1 本 ) 約 12kcal 甘味料 (1 本 ) 約 2kcal 揚げ物 炒め物は1 日 1 料理まで できた できなかった 菓子は2 日に1 回 1 個まで 菓子を食べなかったクリームパン / ジャムパン 1 個食べた ( 各 1 個 ) 約 300kcal 2 個以上食べた 3 食以外の夜食は食べない できたご飯 (1 杯 ) 約 300kcal できなかった

食生活指導の基本的な流れ ( 動機づけ支援 ) 1 食行動アセスメント 2 行動変容の準備状態と 食への関わり に応じた目標設定の支援 面接による 1 回の支援運動やタバコも含めて 1 人 20 分以上 ( 個別 ) 3 セルフモニタリングの支援 4 食行動変容の把握 客観評価次の目標設定への支援 6 ヵ月後評価

食生活指導の基本的な流れ ( 積極的支援 ) 1 食行動アセスメント 2 準備状態と 食への関わり に応じた目標設定の支援スモールステップ法 3 セルフモニタリングの支援 4 食行動変容の把握 客観評価次の目標設定への支援 初回時の面接による支援 行動計画の作成 3 ヵ月間以上の継続的支援 6 ヵ月後評価 丁寧な食事調査 目標項目の変更 追加 詳細な情報提供 各学会診療ガイドライン

高脂質血症の食事療法の基本 摂取エネルギーの適正化標準体重 25-30 kcal 栄養素配分の適正化炭水化物 60% たんぱく質 15-20% ( 肉より魚 大豆を ) 脂質 20-25% ( 肉の脂肪より 植物 魚の油を ) 食物繊維 25g 以上アルコール 25g 以下その他ビタミンやポリフェノールの多い食品 野菜や果物などを多くとる 果物は 1 日 80-100kcal 程度 日本動脈硬化学会ガイドラインより一部改変 関係学会の診療ガイドラインは 栄養素レベルの内容であり 専門職向け それを行動 料理 食品という具体的なレベルに変えて 対象者にどう伝えるか が専門職の力量!

食生活指導の基本的な流れ ( 情報提供 ) 1 食行動アセスメント 2 行動変容の準備状態と 食への関わり に応じた目標設定の支援 3 セルフモニタリングの支援 4 食行動変容の把握 客観評価次の目標設定への支援 これらのステップが自分でできるような情報提供 対象者に合った食事バランスガイドの摂取の目安 ( つ SV) と使い方の基本の情報 ( 体重チェックも ) 1 年後の健診

食生活指導のポイント 1 食行動アセスメント 2 行動変容の準備状態と 食への関わり に応じた目標設定の支援 3 セルフモニタリングの支援 食事は 保健行動 ではなく 日常の生活行動だからこそ セルフコントロールが重要 4 食行動変容の把握 客観評価次の目標設定への支援

健康情報へのアクセ食べる食スマスメディアインターネット 医療機関保健所 保健センター大学 研究機関児童館 公民館塾 スポーツクラブ 学校 職場友人 近隣家族 家庭 人間 食生活を営む力を形成し伝承する 外国からの食情報と食物農 水 畜産場食品企業 つくる 食料品店 スーパー コンビニ 自動販売機 飲食店ファーストフード 給食 食物 食物へのアクセス( 足立己幸, 食生活論 1987 の 地域の食活動 環境とのかかわりの図 を基に作成 ) 地域社会 自然文化社会の条件 歴史 対象者が食生活を営む 食環境 を視野におく

食生活指導のポイント 1 食行動アセスメント 2 行動変容の準備状態と 食への関わり に応じた目標設定の支援 食事は 保健行動 ではなく 日常の生活行動だからこそ セルフコントロールが重要 3 セルフモニタリングの支援 セルフコントロールがしやすい食環境づくり ( ポピュレーション対策 ) も重要!! 4 食行動変容の把握 客観評価次の目標設定への支援

食事バランスガイドは 保健指導のツールであると同時に 食環境づくりのツールでもある