目 次 脂質異常症 脂質異常症ってどんな病気? 診断基準 予防 改善 脂質異常症 日本動脈硬化学会より 動脈硬化性疾患予防ガイドライン27 年版 が発表されました このガイドラインでは 高脂血症の診断基準 脂質異常症の診断基準 と変更されました 脂質異常症ってどんな病気? 血液中の 中性脂肪などの 脂質 の数値で診断されるのが 脂質異常症 です 脂質異常が続くと 動脈硬化が起こりやすくなります とは? 中性脂肪とは? 細胞膜や胆汁酸 ホルモンなどを作る原料となり 身体にとって必要な物質です 悪玉 LDL を血管に運ぶ 動脈 肝臓 HDL 善玉 血管から余分なを回収 中性脂肪( トリグリセリド :TG) は血液により各組織に運ばれ 体脂肪として蓄えられます 貯蔵用のエネルギー源 消エネルギーとして使いきれずに筋肉や臓器など全身の組織へ余ったものは脂肪に 化 吸収1
脂質異常症はなぜ怖い 脂質異常症から動脈硬化へ 放 放 脂質異常症置動脈硬化置 心筋梗塞 脳梗塞 自覚症状は でないけれども QOL の低下 死亡 メタボリックシンドローム 不健康な生活習慣 遺伝素因 内臓脂肪蓄積 代謝異常 高血糖 高血圧 脂質異常 動脈硬化の進行心筋梗塞 脳卒中の発症 遺伝 体質 ( 原発性 ) 加齢 ( 女性は閉経後 ) どんな人がなりやすい? 喫煙 悪い生活習慣 肥満 偏食 アルコールの摂り過ぎ 脂質異常症に 食べ過ぎ 運動不足 他の病気 ( 続発性 ) これらの人は要注意! 冠動脈疾患の LDL-C 以外の危険因子 低 HDL 血症糖尿病 ( 耐糖能異常を含む ) 喫煙 加齢 ( 45 歳 55 歳 ) 診断基準 冠動脈疾患の家族歴 高 TG 血症も考慮する 高血圧 2
脂質異常症の診断基準 ( 血清脂質値 : 空腹時採血 ) リスク別脂質管理目標値 高 LDL 血症 LDL 14mg/dL 以上 低 HDL 血症 HDL 4mg/dL 以下 この診断基準は薬物療法の開始規準を表記しているものではない 薬物療法の適応に関しては他の危険因子も勘案し決定されるべきである LDL- 値は直接測定法を用いるか Friedewald の式で計算する [LDL-C=TC-HDL-C-TG/5(TG 値が 4mg/dl 未満の場合 )] TG 値が 4mg/dl 以上の場合は直接測定法にて LDL 値を測定する 高トリグリセライド血症 トリグリセライド 15mg/dL 以上 治療方針の原則 一次予防まず生活習慣の改善を行った後 薬物治療の適応を考慮する 二次予防生活習慣の改善とともに薬物治療を考慮する Ⅰ( 低リスク群 ) Ⅱ( 中リスク群 ) Ⅲ( 高リスク群 ) LDL- C 以外の主要危険因子 1~2 3 以上 LDL-C <14 <12 HDL-C 脂質管理と同時に他の危険因子 ( 喫煙 高血圧や糖尿病などの治療 ) を是正する必要がある LDL-C 値以外の主要危険因子 TG <15 加齢 ( 男性 45 歳 女性 55 歳 ) 高血圧 糖尿病 ( 耐糖能異常を含む ) 喫煙 冠動脈疾患の家族歴 低 HDL-C 血症 (<4mg/dl) 糖尿病 脳梗塞 閉塞性動脈硬化症の合併はカテゴリ Ⅲ とする 家族性高血症については別に定める カテゴリー 冠動脈疾患の既往 脂質管理目標値 (mg/dl) <16 <1 4 カテゴリーと管理目標からみた治療方針 血清脂質測定 問診 身体所見 検査所見 冠動脈疾患なし ( 一次予防 ) 冠動脈疾患あり ( 二次予防 ) 主要危険因子数 LDL-C 以外の主要危険因子の評価 加齢 ( 男性 45 歳 女性 55 歳 ) 喫煙 高血圧 冠動脈疾患の家族歴 糖尿病 ( 耐糖能異常を含む ) 低 HDL-C 血症 (<4mg/dl) カテゴリー 1( 1( 低リスク群 ) 1~2 3 以上 Ⅱ( Ⅱ( 中リスク群 ) Ⅲ( Ⅲ( 高リスク群 ) 脂質管理目標値の設定 糖尿病 脳梗塞 閉塞性動脈硬化症があれば他に危険因子がなくても Ⅲ 予防 改善 目標達成の評価 生活習慣の改善 血清脂質測定 : 原則として 12 時間以上の絶食後採血とする ( 表 1 参照 ) 脂質管理目標値を参考 注 ) 糖尿病 脳梗塞 閉塞性動脈硬化症があれば他に危険因子がなくても Ⅲ とする 薬物治療の考慮 生活習慣の改善 薬物治療の考慮 生活習慣の改善 生活習慣の改善は 一次予防 二次予防を問わず 動脈硬化性疾患の発症 進展阻止を目的とした治療の基本となります 1. 2. 3. 4. 禁煙 食生活の是正 身体活動の増加 適正体重の維持と内臓脂肪の減少 心筋梗塞 肺がん 1 禁煙 喫煙に関係する疾患等 脳卒中 喘息 歯周病 早産 狭心症 禁煙は すべての動脈硬化性疾患に対して危険な要因となります 心血管死や総死亡のリスクを増加させます 参考 : 厚生労働省 たばこに関する現在の状況 3
1 禁煙 5 4 脳卒中死亡の相対危険度 非喫煙者 =1 5 4 冠動脈疾患死亡の相対危険度 非喫煙者 =1 1.2 禁煙期間別にみた冠動脈疾患死亡の多変量調整相対危険度 冠動脈疾患 冠動脈疾患 3 3 1 2 2.8 1 禁煙者 1 日 2 本以下 1 日 2 本以上 男性 51,774 人 年の追跡 NIPPON DATA8 調整因子は 年齢 収縮期血圧 BMI TC 値 飲酒 糖尿病 1 禁煙者 1 日 2 本以下 1 日 2 本以上 男性 51,774 人 年の追跡 NIPPON DATA8 調整因子は 年齢 収縮期血圧 BMI TC 値 飲酒 糖尿病 1 禁煙相対危険度.6.4.2 現在喫煙者 ~1 年 2~4 年 5~9 年 1~14 年 15 年以上非喫煙者 対象 : 日本人の男性 41,782 人 女性 55,592 人 年齢 :4~79 歳 調査期間 :1988~199 年から 1999 年まで 動脈硬化性疾患予防ガイドライン 27 年版より 禁煙期間 Iso H,Date C,Ymamoto A,et al.;smoking cessation and mortality from cardiovascular disease among Japanese men and women : the JACC Study. Am J Epidemiol, 161 :17-179,25 2 食生活の是正 第 1 段階総摂取エネルギー 栄養素配分および摂取量の適正化 食事療法の基本 1) 総摂取エネルギーの適正化適正エネルギーを知る 第 1 段階 ( 総摂取エネルギー 栄養素配分および摂取量の適正化 ) 第 1 段階の食事療法を 3 ヶ月行っても脂質値が目標に達しない場合には ( 例 ) 標準体重身体活動量適正エネルギー 55 25~3 = 1375~165 Kg Kcal 標準体重 = 身長 (m) 身長 (m) 22 Kcal 第 2 段階 ( 病型別食事療法と適正な脂肪酸摂取 ) 腹 8 分が目安 決められたカロリーの中でバランスよくいろいろな食べ物を摂るのが食生活の基本です 第 1 段階総摂取エネルギー 栄養素配分および摂取量の適正化 第 2 段階 病型別食事療法と適正な脂肪酸摂取 2) 栄養素配分の適正化 炭水化物 タンパク 脂肪 食物繊維 アルコール その他 6% 15~2% 2~25%( 獣鳥肉より魚肉 大豆タンパクを多くする ) 1 日 3 mg以下 25g 以上 25g 以下 ( 他の合併症を考慮して指導する ) ビタミン (C E B6 B12 葉酸など ) やポリフェノールの含量が多い野菜 果物などの食品を多くとる ( ただし 果物は単糖類の含量も多いので摂取量は 1 日 8~1kcal 以内が望ましい ) 1) 高 LDL C 血症が持続する場合 脂質制限の強化 : 脂肪由来エネルギーを総摂取エネルギーの 2% 以下 摂取量の制限 :1 日 2 mg以下 飽和脂肪酸 / 一価不飽和脂肪酸 / 多価不飽和脂肪酸の摂取比率 :3/4/3 程度 2) 高 TG 血症が持続する場合 アルコール : 禁酒 炭水化物の制限 : 炭水化物由来エネルギーを総摂取エネルギーの 5% 以下 単糖類 : 可能な限り制限 できれば 1 日 8~1kcal 以内の果物を除き調味料のみでの使用とする 3) 高血症と高 TG 血症がともに持続する場合 1) と 2) で示した食事療法を併用する 4) カイロミクロン血症の場合 脂肪の制限 :15% 以下 4
栄 養 素 糖 質 体や脳を動かす エネルギー源 6 たんぱく質 血や肉など体の 組織を作る 15 2 脂肪酸の種類 脂 脂 質 質 飽和脂肪酸を含む動物性脂肪 減らす バター ヘット パーム油 ラード ココナッツ油 ショートニングなど 体の細胞膜を作る エネルギー源 2 25 OR 一価不飽和脂肪酸を含むもの 2 以下 ビタミン ミネラル 体の調子を整える 体の調子を整える 食物繊維25g以上 体の潤滑油 体の潤滑油 鶏肉 ピーナッツ油 ごま油など 多価不飽和脂肪酸を含む植物性脂肪 油はなるべく新鮮なものを使い切りましょう の多い食品 お酒の量 アルコール25g 瓶ビール いか 蒲焼 1串100g 1 2杯80g 230mg 256mg ベニバナ油 コーン油 ヒマワリ油 シソ油 魚油など 増やす ワイン 日本酒 ウィスキー 焼酎 鶏卵 卵黄 乙類 1個20g ししゃも 3尾66g 191mg 280mg たらこ 1 2腹40g 140g 大瓶1本 鶏レバー 50g 185mg グラス1杯 1合 水割り 水割り1杯 シングル2杯 あんこうの肝 20g 112mg すじこ 20g 102mg など 脂肪の少ない部位や種類を選びましょう 肉 野菜やきのこ 海藻類は低エネルギーでビタミン ミネラル 食物繊維が豊富です 上手に利用しましょう 摂取量にも注意しましょう おすすめ肉 ヒレ肉 185kcal 食物繊維を積極的に摂りましょう 181kcal 控えたい肉 肩ロース肉 バラ肉 318kcal 454kcal ヒレ肉 115kcal 肩肉 171kcal 148kcal ロース肉 263kcal バラ肉 386kcal ささみ 15kcal むね肉 皮なし 皮なし 18kcal 116kcal 皮つき 皮 もも 513kcal 2kcal 野菜は1日350gを目標に 適量を目で覚えましょう 1食分約120gの目安 生のものなら両手いっぱい 加熱したものなら片手にのる量 可食部1gあたり 種類や部位でこんなにエネルギーが違います 5
油を控える調理方法を 3 身体活動の増加 調理法を工夫する ~ 同じ素材でも調理法でこんなに差がでます!~ 揚げる 339kcal 牛 (1g) 29kcal( 脂身つき ) 炒める 22kcal 煮る 25kcal 蒸す 21kcal 網焼き 21kcal ゆでる 189kcal 血清脂質の改善 血圧の低下 インスリン抵抗性耐糖能障害の是正 内皮機能の改善 易血栓傾向の軽減 調理に油を使うことで エネルギーはプラスに 素材の脂が流れ出てエネルギーはマイナスに フッ素加工のフライパンを使って油を節約しましょう! 材料をゆでてから調理すると少量の油で調理ができます! 揚げ物は大きなままで揚げると食材への吸油が減ります 冠動脈疾患の一次および二次予防に有効 運動強度 量 頻度種類 運動強度 1) 運動時の脈拍から推定する方法 3 身体活動の増加 最大酸素摂取量の約 5% 1 日 3 分以上 ( できれば毎日 ) 注意! 週 18 分以上 速歩 社交ダンス 水泳 サイクリングなど 急激な運動による怪我 筋力が低下している高齢者の場合には 軽度のレジスタンス ( 筋力 ) トレーニングも有用 1 心拍数 ( 脈拍 / 分 )=((22 ー年齢 )- 安静時心拍数 ) 運動強度 + 安静時心拍数 簡易法 ( 運動強度 5% のとき ) 心血管疾患がある人は 激しい運動による心筋梗塞など に注意しましょう 2 心拍数 ( 脈拍 / 分 )=138-( 年齢 /2) 2) 自覚的な感じから推定する方法ボルグ スケールで 11~13 2 19 18 17 16 15 14 13 12 11 1 9 8 7 非常にきついかなりきついきついややきつい楽であるかなり楽である非常に楽である 運動の強度 1 エクササイズの消費カロリー 体重 健康づくりのための運動基準 を参考に エクササイズ という単位が基準に エネルギー消費量 POINT 4kg 42kcal 5kg 53kcal 詳しくは厚生労働省の HP を参考にしてください 3 身体活動の増加 = メッツ 強度 時間 = エクササイズ 6kg 63Kcal 7kg 74Kcal 8kg 84Kcal 9kg 95Kcal と覚えましょう この基準では1 週間に23エクササイズ ( うち活発な運動を4エクササイズ ) の活発な身体活動を目標に挙げています 運動 中強度以上の運動速歩 ジョギング テニス 水泳 低強度の運動ストレッチング 身体活動生活活動(3メ中強度以上の生活活動ッツ歩行 床そうじ 子供と遊ぶ 以介護 庭仕事 洗車 運搬 階段 上)低強度の生活活動立位 オフィスワーク 洗濯 炊事 ピアノ 中強度以上低強運動生活活動 3 身体活動の増加強度 ( メッツ ) 3メッツボーリング 2 分バレーボール 2 分普通歩行 2 分 4メッツゴルフ ( カート使用 ) 15 分速歩 15 分自転車 15 分 6メッツエアロビクス 1 分テニス 1 分階段の昇り降り 1 分度床掃除 2 分 子供と遊ぶ 15 分 ランニング 7~8 分 水泳 7~8 分 8メッツ重い荷物を運ぶ 7~8 分 1エクササイズに相当する活発な身体活動 6
4 適正体重の維持と内臓脂肪の減少 肥満 内臓脂肪の過剰蓄積は心血管疾患の危険な要因と考えられ 脂質異常症 耐糖能障害 高血圧などから間接的に あるいはアディポサイトカインなどにより直接的に動脈硬化を促進します 健康的な生活を営むためには 運動 栄養 休息 標準体重の維持 + 腹囲 脂質異常症予防のコツは どれも健康作りの基本となるもの この機会に自分の生活を見直して生活改善してみましょう! 参考資料 動脈硬化性疾患予防ガイドライン 27 年版 日本動脈硬化学会 糖尿病 肥満のためのヘルシーレシピ おいしく食べてエネルギーダウン 健康と料理社 7