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平成 29 年 7 月九州北部豪雨における流木被害 137 今回の九州北部における豪雨は 線状降水帯 と呼ばれる積乱雲の集合体が長時間にわたって狭い範囲に停滞したことによるものである この線状降水帯による記録的な大雨によって 図 1 に示す筑後川の支流河川の山間部の各所で斜面崩壊や土石流が発生し 大

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Q3 現在の川幅で 源泉に影響を与えないように河床を掘削し さらに堤防を幅の小さいパラペット ( 胸壁 ) で嵩上げするなどの河道改修を行えないのですか? A3 河床掘削やパラペット ( 胸壁 ) による堤防嵩上げは技術的 制度的に困難です [ 河床掘削について ] 県では 温泉旅館の廃業補償を行っ

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水防法改正の概要 (H 公布 H 一部施行 ) 国土交通省 HP 1

近畿地方整備局 資料配付 配布日時 平成 23 年 9 月 8 日 17 時 30 分 件名土砂災害防止法に基づく土砂災害緊急情報について 概 要 土砂災害防止法に基づく 土砂災害緊急情報をお知らせします 本日 夕方から雨が予想されており 今後の降雨の状況により 河道閉塞部分での越流が始まり 土石流

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目 次 桂川本川 桂川 ( 上 ) 雑水川 七谷川 犬飼川 法貴谷川 千々川 東所川 園部川 天神川 陣田川

浸水深 自宅の状況による避難基準 河川沿いの家屋平屋建て 2 階建て以上 浸水深 3m 以上 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難 浸水深 50 cm ~3m 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難上階に垂直避難 浸水深 50 cm未満 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難 自宅に待

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ダムの運用改善の対応状況 資料 5-1 近畿地方整備局 平成 24 年度の取り組み 風屋ダム 池原ダム 電源開発 ( 株 ) は 学識者及び河川管理者からなる ダム操作に関する技術検討会 を設置し ダム運用の改善策を検討 平成 9 年に設定した目安水位 ( 自主運用 ) の低下を図り ダムの空き容量

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2. 急流河川の現状と課題 2.1 急流河川の特徴 急流河川では 洪水時の流れが速く 転石や土砂を多く含んだ洪水流の強大なエネルギー により 平均年最大流量程度の中小洪水でも 河岸侵食や護岸の被災が生じる また 澪筋 の変化が激しく流路が固定していないため どの地点においても被災を受ける恐れがある

Microsoft PowerPoint - 参考資料 各種情報掲載HPの情報共有

2.2 既存文献調査に基づく流木災害の特性 調査方法流木災害の被災地に関する現地調査報告や 流木災害の発生事象に関する研究成果を収集し 発生源の自然条件 ( 地質 地況 林況等 ) 崩壊面積等を整理するとともに それらと流木災害の被害状況との関係を分析した 事例数 :1965 年 ~20

避難開始基準の把握 1 水害時の避難開始基準 釧路川では 水位観測所を設けて リアルタイム水位を公表しています 水位観測所では 災害発生の危険度に応じた基準水位が設定されています ( 基準となる水位観測所 : 標茶水位観測所 ) レベル水位 水位の意味 5 4 ( 危険 ) 3 ( 警戒 ) 2 (

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NMM-DDAによる弾塑性解析 およびその適用に関する研究

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【参考資料】中小河川に関する河道計画の技術基準について

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新川水系新川 中の川 琴似発寒川 琴似川洪水浸水想定区域図 ( 計画規模 ) (1) この図は 新川水系新川 中の川 琴似発寒川 琴似川の水位周知区間について 水防法に基づき 計画降雨により浸水が想定される区域 浸水した場合に想定される水深を表示した図面です (2) この洪水浸水想定区域図は 平成

資料 -5 第 5 回岩木川魚がすみやすい川づくり検討委員会現地説明資料 平成 28 年 12 月 2 日 東北地方整備局青森河川国道事務所

~ 二次的な被害を防止する ~ 第 6 節 1 図 御嶽山における降灰後の土石流に関するシミュレーション計算結果 平成 26 年 9 月の御嶽山噴火後 土砂災害防止法に基づく緊急調査が国土交通省により実施され 降灰後の土石流に関するシミュレーション結果が公表された これにより関係市町村は

現行計画 ( 淀川水系河川整備計画 ): 川上ダム案 治水計画の概要 事業中の川上ダムを完成させて 戦後最大の洪水を 中下流部では ( 大臣管理区間 ) 島ヶ原地点の流量 3,000m 3 /s に対して 川上ダムで 200m 3 /s を調節し 調節後の 2,800m 3 /s を上野遊水地や河道

SIP4D SIP 防災研究開発項目 4: ICT を活用した情報共有システムの開発及び災害対応機関における利活用技術の研究開発 ため池に関する情報の利活用技術の研究開発 ため池防災支援システム の開発 平成 29 年 7 月 27 日国立研究開発法人農研機構株式会社コア株式会社オサシ テクノス株式

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Microsoft PowerPoint - ◯06_出水期における防災体制

第 2 回久留米市街地周辺内水河川連絡会議 議事次第 1. 開会 2. 出席者紹介 3. 挨拶 4. 議事 前回連絡会議での確認事項〇各支川の浸水被害のメカニズム〇地域防災力の向上について〇その他 5. 閉会

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Microsoft PowerPoint 「平成28年熊本地震活動記録(第17報) 案-2.pptx

(6) 災害原因荒廃渓流の源頭部にある0 次谷の崩壊は 尾根付近から発生している 尾根部は山腹斜面に比べ傾斜が緩やかであるが 記録的な集中豪雨 (24 時間雨量 312.5mm( 平成 30 年 7 月 6 日 6 時 ~ 平成 30 年 7 月 7 日 6 時まで ) 累積雨量 519.5mm(

ハザードマップポータルサイト広報用資料

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重ねるハザードマップ 大雨が降ったときに危険な場所を知る 浸水のおそれがある場所 土砂災害の危険がある場所 通行止めになるおそれがある道路 が 1 つの地図上で 分かります 土石流による道路寸断のイメージ 事前通行規制区間のイメージ 道路冠水想定箇所のイメージ 浸水のイメージ 洪水時に浸水のおそれが

平成16年度 台風災害調査報告書(WEB).indd

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河川工学 -洪水流(洪水波の伝播)-

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Transcription:

2018.12.7 河川情報シンポジウム 平成 29 年九州北部豪雨災害人命被害の発生状況死者 行方不明者は 41 名 ( 福岡県 38 名 大分県 3 名 ) 近年の豪雨災害から得られた貴重な教訓と今後の対策 黒川 乙石川 宝珠山川 小野川 奈良ヶ谷川 九州大学 小松利光 北川白木谷川寒水川赤谷川 大肥川 発表内容 1. 平成 29 年九州北部豪雨災害 2. ではどういう対策が考えられるか? 3. 平成 30 年 7 月西日本豪雨災害 4. 住民の命を守るために今すぐ出来ること 5. 超過洪水時のダム操作について 西日本新聞提供被災一か月後 家族 3 人が犠牲になった自宅跡で花を供えて合掌する遺族 ( 朝倉市杷木林田 ) 6. まとめ 1. 平成 29 年九州北部豪雨災害 平成 29 年 7 月九州北部豪雨降水量分布図 (7 月 5 日 ~6 日 ) 福岡県 朝倉市 朝倉 586mm 福岡県朝倉市北小路公民館 865mm 梅雨前線に向かって暖かく湿った空気線状降水帯朝倉市や日田市 24 時間降水量が観測史上 1 位 大分県 日田市 日田 403mm 1

北小路公民館 ( 福岡県 ) の雨量 150 2017 年 7 月 5~6 日の雨量 900 800 時間雨量 (mm/hr) 100 50 ( 日本全国の一年間の平均降水量は 700mm) 9 時間で 774mm 短時間集中型非常に狭い範囲に集中的に降雨 700 600 500 400 300 累加雨量 (mm) 2017.7.5 線状降水帯域に発生した積乱雲の柱 ( 初期の段階 ) ( 福岡市の多々良川河口部から撮影 ) 初期の 4 時間で約 400mm 200 100 0 7 月 5 日 7 月 6 日 0 8 ) 9 ( 河川情報センター越智繁雄理事提供 ) 12 時間雨量が400mmを超えると斜面災害が集中的に起こってくる 10 累計降雨コンター図 妙見川 奈良ヶ谷川 北川 寒水川 白木谷川 赤谷川 洪水流到達範囲と土砂崩壊地 ( 国土地理院大木章一氏提供 ) 洪水流到達範囲と土砂崩壊地 ( 国土地理院大木章一氏提供 ) 2

河川別の崩壊率 ( 国交省委員会資料 ) 降雨量に対応して発生 崩壊率は 赤谷川はそれほど大きくはなく 大肥川は小さい 読売新聞社 洪水だけでなく流木が出るとどうなるのか? ( 橋梁部等での ) 河道の閉塞 河道からの氾濫 無数の表層崩壊 ( 福岡県朝倉市周辺 ) 豪雨により多量の流木が発生 大量の流木が発生 集積した福岡県朝倉市寒水川 朝倉市奈良ヶ谷川流域 ( 鹿児島大地頭薗教授提供 ) 国土地理院の 2017 年 7 月 17 日撮影 UAV 映像より作成 西日本新聞社提供 3

2018/12/7 3/15 北川 本陣橋付近に集積して河道を閉塞した流 砂流氾濫の原因となる 北川下流架橋による氾濫被害の拡 洪 が迂回 時事通信社 7/6 北川本陣橋 集積した流木の撤去後 橋の上流側から 水 流木 土砂の三重の相乗型複合災害に なったらどうなるのか 橋の桁下は4m近くあるが 流木が集積した 河道の閉塞と河道の埋塞 谷底平野全体に流れが拡がって流下 橋の下流側から 豪雨により多量の土砂が流出 あまぎ水の文化村 駐車場に仮置きされた土砂 朝倉市 赤谷川流域 鹿児島大地頭薗教授提供 国土地理院の2017年7月7日撮影UAV映像より作成 4

2018/12/7 赤谷川合流点付近 河道が埋塞して大きく拡大 被災前 被災後 先生提供 赤谷川支川乙石川 被災前 被災後 赤谷川支川乙石川 九州大学島谷幸宏教授提供 九大島谷教授提供 更に段波の発生 (小規模天然ダム ログジャムの崩壊等による 計画洪水流量の2 3倍となり 河川計画が全く役に立たない 四重苦災害 洪水 流木 土砂 段波 も 今回の水害はターニングポイント 転換点 だった 筑後川右岸流域の被害の特徴 国交省委員会資料 5

大分県が作成した災害の様相による分類図流木 土砂 流水により 降雨の強度雨の総量 河川の大きさ橋梁の大きさ 洪水 Ex. 桂川花月川 気候変動等 河川規模が大きくなる程 流木 土砂による複合災害は出にくい 洪水流木 ( 土砂 ) 洪水流木土砂 Ex. 大肥川 ( 大部分 ) Ex. 赤谷川寒水川 増大化 ( 災害要因 ) 黒川北川白木谷川奈良ヶ谷川大肥川 ( 上流部 ) 流域面積 ( 小河川 & 大 中河川の上流部が相当 ) 降雨の大きさ 強さと河川の規模 による災害の様相の変化 総降雨量雨量強度 降雨の大きさ 強さと河川の規模による災害の形態 様相の分類 流木 土砂 洪水災害大肥川上流部赤谷川白木谷川黒川寒水川疣目川奈良ヶ谷川た北川玉来川星野川大肥川中 下流部 流木 洪水災害 山国川 :H29 九州北部豪雨 :H24 九州北部豪雨 溜め池の決壊 ( 奈良ヶ谷川 山の神溜め池 ) ため池の余水吐きが流木等により閉塞し 越流が発生した ため池にも流木がたまっており 流木捕捉機能はある程度働いたと考えられる ため池が決壊後 右岸の道路が崩落した 被災前 被災後 右岸 桂川 花月川 筑後川本川 出水時のため池内の流木 小河川中河川上流部大河川上流部 洪水災害 中河川中 下流部大河川中流部 大河川下流部 流域面積 ( 河川の規模 ) 流域の小さい山地河川ほど 3 重の相乗型災害が発生しやすい 余水吐きの上に道路が走り 余水吐きがスリット状となっていたため 流木を流しきれなかったものと思われる ため池にも網場 ( アバ ) が必要である ため池上流左岸 出水時の山の神ため池の状況大量の流木が集積 流下 福岡県内だけで 1400 カ所の決壊リスク (2018.9.2 朝日新聞 ) もしため池に網場 ( アバ ) が設置されていたらため池も決壊せずに かつ流木も捕捉できて下流域の防災に大きく貢献できた可能性が高い 6

東日本大震災で福島県の藤沼ダムが決壊し 下流の住民 8 名が死亡 地震により決壊した福島県の藤沼ダム本堤から流れ出るダム湖の水 ため池のチェック 特に堤体 洪水吐き 排水口のストレスチェックが必要 九州北部豪 災害での 的被害 死者 40 名 ( 朝倉市 34 名, 東峰村 3 名, 市 3 名 ) ( 朝倉市に1 名関連死含む ) 不明者 2 名 ( 朝倉市 ) 福岡県における死因別割合 その他圧死 胸腹部圧迫による窒息 15% 溺死 溺死の疑い 溺 吸引による窒息 35% 砂泥 泥 吸引による窒息 41% 死者 不明者の被災時の状況 避難以外の外出中 10% 避難中 12% その他 宅待機 73% 2. ではどうした対策が考えられるか? 被災者の 7 割が 宅待機中に被災した. 垂直避難ではダメだった. 39 九 井明准教授提供 (Ⅰ) 砂防堰堤における流木 土砂の捕捉 妙見川における砂防施設整備効果透過 : コンクリートスリット型 42 7

2018/12/7 Ⅱ ダムによる流木 土砂の捕捉 土砂は100 網場がしっかりしていれば流木も100 捕捉 今回 寺内ダムの網場には全く流木は 溜まってなかった また網場も上流側に 向かってたわんでいた 43 流木対策Ⅲ 平成24年九州北部 豪雨災害 玉来川 橋桁の低 い市道の 橋の撤去 を自治体 が決定し 実行した 平成24年九州北部豪雨での玉来川 越水部分下流の阿蔵新橋に集積した大量の流木 橋桁の嵩上げ 平成24年九州北部 豪雨災害 玉来川 大分県竹田市の玉来 川に架かる阿蔵新橋 大分県津久見市の小さな橋 かって流木被害を受けたため 架け替えの際に橋桁を高くし た 手前のコンクリート橋 撤去前 後方のアーチ橋は別の橋 橋のたもとに人家がない とこういう対応も比較的容 易なのだが 撤去後 8

流木対策 Ⅳ 先人の知恵 仁淀川の沈下橋 Ⅵ. 災害外力増大下の治水対策としての穴あきダム 堤防の強化や嵩上げ等は線対応 ( 膨大な総延長距離 ) となることから極めて難しい 一方 引き堤や河床掘削などの対策 遊水池等もコスト 環境面 時間的制約等から容易ではない 一方 点で洪水制御を行えるダムは効率的で現実的かつ有利な対策と言える 但し ダムは嫌われもの 環境的にも問題 自然へのインパクト これらの問題を解決する必要 四万十川の沈下橋 今も使われてて流木も引っかからない 自然と調和できる流水型ダム ( 穴あきダム ) の適用 特にオーストリア方式のアースフィルダムの導入 更なる技術開発による機能の拡大小規模流水型ダム群のネットワーク化小規模ダム群 カスケード方式 貯留方式 天然ダム崩壊対策 オーストリアの小規模穴あきダム 小規模ダム群による順応的治水 ダム貯水池側から見たダム堤体 ( 自然の丘に似てる ) 自然の中に溶け込み 自然と共生している 小規模流水型ダム ( アースフィル形式 ) 洪水 流木 土砂の三重の相乗型複合災害に備えるために (a) 砂防堰堤は土砂 流木の捕捉に対して一定の効果を有する 一方 ダムは今回の寺内ダムに見られるように ( 網場がしっかりしてれば ) 完璧に土砂 流木を捉える 従って 電力ダムや灌漑用ダムにも流木捕捉を義務付けることが望ましい (b) 橋梁などの河川横断構造物に流木が引っかかって集積 閉塞し氾濫被害を拡大した 橋等の撤去 ( 平成 24 年九州北部豪雨災害の例 ) や沈下橋の復活という選択肢も含めて対策や新たな技術開発が必要である (c) 流木の発生を少しでも抑えるために川沿いの人工林をきちんと管理することが必要である (d) 水だけでなく流木や土砂を含んで流れが大規模化すると直進性が高くなる ( 伊豆大島土石流災害の例でも ) 今回の災害では河川の合流部の対岸や河川の湾曲部の外側に溢れ 人命が奪われた 災害リスクの評価法の見直しが必要である (e) 農業用ため池においても流木 土砂の捕捉効果を上げるため またため池自体を守るために網場 ( アバ ) の設置 排水口のチェックが必要である 3. 平成 30 年 7 月西日本豪雨災害 9

2018/12/7 西日本水害の累積降雨分布 脆弱な場所が発災 広島県108人 岡山県61人 山口県3人 朝日新聞 H29年九州北部豪雨と異なり 24 72時間降雨量が災害を引き起こす 平成30年西日本豪雨災害 読売新聞のデータを著者が一部加工 広域に拡がる被災地 岡山県高梁川 小田川氾濫水害 朝日新聞提供 低平地が浸水したら一体どうなるのか 東京 大阪 名古屋 佐賀等 最大浸水深 5 m 以上 の低平地は 倉吉市真備町における氾濫 髙馬川 高馬川の小田川への合流点 合流点の下流側が破堤 倉敷市真備町の浸水状況 朝日新聞 小田川の河道には沢山の樹木や植生 10

小田川 樹木伐採前 小田川の堤防の外に拡がる田圃と住宅低平地に住宅や田畑が拡がっている 小田川の河道内 樹木伐採後 写真提供 : 和田章東工大名誉教授 高梁川の河道に繁茂する樹木 高馬川 小田川の破堤箇所の特徴小田川と髙馬川の合流点破堤部髙馬川小田川 小田川 小田川 真谷川 小田川 小田川と真谷 ( マタニ ) 川の合流点 真谷川 内山谷川の合流箇所 内山谷川 内山谷川 内山谷川 小田川 小田川 支川合流部の下流側が破堤した例がいくつか見られた 合流部のスペースにより流れが廻り込んで合流部下流側が水衝部的になるためと思われる 末政川の破堤箇所 橋の下流側の両サイドが破堤 橋による流れの攪乱が原因? 11

小田川の破堤 広島県の土石流災害 破堤しやすい箇所への対応が必要 高水敷へのアクセス道路が河道を遮蔽 河川の構造物が流れを阻害 破堤箇所 小田川 河道の樹木も流水を阻害 広島市県道 34 号線昭和入口近くで発生した土石流災害 ( 矢野川流域 ) 道路下のボックス カルバートのところで土石流が詰まり上流側が完全に埋まり道路に溢れ出て 多数の車を襲い数名の人命が失われた 土石流の流下で埋塞した川の土砂の撤去作業 砂防指定地土石流危険渓流にも拘わらず下図のようなボックス カルバートが更に上流部でも使われている これでは土石流は流せない 道路上を流下した土石流によりなぎ倒された電柱と破壊された車 12

平成 29 年竣工の治山ダムがあったが土石流ですぐ埋まり ダムを越流して下流の住宅地を襲った 防災インフラへの過大な依存は極めて危険! 土石流で埋塞した治山ダムの下流部を浚渫 土石流で完全に埋塞した治山ダムの上流部 土石流により埋塞した治山ダムの下流部 治山ダムを越流した土石流により破壊された下流の住宅地 破壊された砂防ダム 治山ダムを越流した土石流により破壊された下流の住宅地砂防ダムがあったが土石流で破壊される ( 広島市坂町小屋浦天地川 ) 13

もしも時間が巻き戻せたら ( 被災者の言葉 ) 後悔のない賢い自衛策 更に上流にも砂防ダムがあったが土石流で破壊される ( 広島市坂町小屋浦天地川 ) 2 階や平屋建ての屋根の上まで浸水 垂直避難が役に立たない! ( 九州北部豪雨災害との類似点 ) 破堤部付近以外は家そのものは残っている 九州北部豪雨災害との大きな相違点 ( 低平地の浸水対策 ) 浸水深は地形特性に大きく規定される 家は浸かるが流されないことが多い 浸水深予測で平屋が完全に浸かる場合は 近所の知人宅等の二階建て以上の避難場所 ( 一次 ( 一時 ) 緊急避難場所 ) を確保しておく 二階まで浸かる可能性がある場合は 屋根の上に逃げる手段( 梯子や特別な工夫等 ) を準備しておく 勿論 早期避難が一番望ましいが今後は早期避難すら困難な状況の出来も考えられる 2 階まで浸水 しかし家は流されていない 屋根に逃げられれば命は助かる 屋根まで避難できる手段もしくは救命胴衣や浮き輪 (2 リットルのペットボトル 2 個を紐でつないだものでも可 ) 等が必要 ( 岡山大学前野詩朗先生提供 ) 平成 22 年 10 月奄美大島水害 ( 住用町 ) 急激な浸水に対し建物の屋上に避難する人々 4 時間後辛うじてこの女性は救出される 84 14

山地小河川や低平地 内水氾濫危険地域 ( 豪雨 流木 土砂 段波等や破堤により ) 避難する時間的余裕のない洪水 土石流の来襲 避難所への水平避難の時間はない しかし 垂直避難が役立たない ( 被災死 ) 4. 住民の命を守るために今すぐ出来ること ではどうやって備えるのか? 各自緊急避難場所の決定 ( 共助 ) 山地河川の場合で適当な既存の避難場所がない時 RC 構造の一次 ( 一時 ) 避難場所の設置 ( 普段は住居 公的な部分支援 ) 低平地の場合に自助の自衛策として 例えば屋根まで避難するためのハシゴの常備 ( インドネシアの例 ) 救命胴衣 浮き輪 空ペットボトルの常備 ( 既存のハード施設の更なる点検 強化 + ( 緊急的措置 ) + ソフト対策 ) が必要 人びとの命を守るため 大きな費用はかからない 福岡県朝倉市松末地区本村 ( ほんむら ) 集落 災害外力と防災力 被害の関係 被害 被害はかなり軽減 被害は急激に増大 温暖化の進行 緩和策 災害外力 緊急的措置 H 氏宅 N 氏宅 地域住民が相談して少し高台にあって 山地斜面からも距離がある防災力人命を救う 緊急的措置 が防災力の向上に大きく貢献家屋 (H 氏宅とN 氏宅 ) を緊急避難場所として決め 平成 29 年の時間九州北部豪雨災害時に成果につながる 過去現在未来 Gap 叩かれっぱなしだけど, 何がどうなるか見えた インフラ整備 インフラの老朽化 適応策 叩かれっぱなし. 更に災害の様相が見えない!( 想定外のことが起こる ) 最近自然災害の多発で国民の防災意識はかってなく高まっている 今が大きなチャンス 協働し束になって防災 減災に邁進し 安全 安心な社会を構築していく 5. 超過洪水時のダム操作について 全ての地域の防災力 減災力を上げていくためには 大きなお金はかけられない ハード施設の更なる点検 強化にプラスする ( 緊急的措置 ) はそんなにお金も時間もかからない 15

2018/12/7 西日本豪雨災害時の肱川のダム操作 現行の洪水調節計画 鹿野川ダム 野村ダム 鹿野川ダムの操作 但し書き操作に移行しても放流量が流入量以上になることはないが 放流量増 加の勾配が流入量より急になっている 下流側住民にしてみれば サイレンが 鳴ってダムが放流量を増やし始めてすぐに水位がミルミル急上昇して 家が浸 かったり流されたりする ここだけ見れば ダムの放流が原因 と言われても仕 方のない部分があると思われる せめて放流量増加の勾配を流入量の勾配以 下に抑える 下流住民に 異常洪水時防災操作 但し書き操作 に移る事 氾濫 を意味 することを前もって十分認識してもらっていることが不可欠である リスク事前周知を万全に ダム下流の肱川の状況 ダム下流の肱川の状況 16

野村ダムの下流部 2006 年の鹿児島川内川水害の場合 [ 流量 ]m 3 /s 鶴田ダムの洪水調節計画 一定率一定量方式を採用 3 5,000 V 3 =3500 万 m 3 4600m /s 最大流入量 4,600m 3 /s 最大放流量 2,400m 3 /s 4,000 流入量 V 2 =2000 万 m 3 3,000 V 1 =1000 万 m 3 2400m 3 /s 2,000 1400m 3 /s 放流量 1,000 600m 3 /s 1100m 3 /s 900m 3 /s 一定率放流 一定量放流 被災した家屋 洪水調節開始 [ 時間 ] 九州大学大学院工学研究院 2006 年 7 月の鶴田ダムのダム操作 鶴田ダムの洪水調節手法に対する指摘 九州大学大学院工学研究院 ダム操作手法の見直しのための検討委員会が国土交通省九州地方整備局により設置され,5 回の委員会の開催と九州大学大学院工学研究院 3 回の技術検討 WGの作業が行われた. ダム操作の見直しに対する検討結果 多くの時間と労力をかけて技術的な可能性を追求 以下のことが有効と判断され決定されて実行されることとなった. 1. 予備放流基準の見直し 2. ただし書き操作時の操作方法の見直し ただし書き操作開始水位の見直し ただし書き操作開始後の操作手法の見直し 今後の気候変動下で全国のダムで鹿野川ダム 野村ダムと同じことが起こる可能性が強い 通常洪水時用と異常洪水時用のダム操作規則の2 通りを用意しておいて 雨の状況を見て使い分けることを検討する時期に来てるのではないか? ダムの総貯水量を上回る洪水のが来襲が予測されたら調節法を変更し ピーク部分をカットして減災を図る [ 流量 ]m 3 /s 3 5,000 V 3 =3500 万 m 3 4600m /s 最大流入量 4,600m 3 /s 最大放流量 2,400m 3 /s 4,000 流入量 V 2 =2000 万 m 3 3,000 V 1 =1000 万 m 3 2400m 3 /s 大洪水の場合 2,000 1400m 3 /s 放流量 1,000 600m 3 /s 1100m 3 /s 900m 3 /s ただし書き操作 異常洪水時防災操作 九州大学大学院工学研究院 洪水調節開始 川内川鶴田ダムの場合 [ 時間 ] 17

まとめ 平成 29 年の九州北部豪雨災害は短時間小領域集中型 平成 30 年の西日本豪雨災害は広い範囲に降った 12 時間 ~24 時間程度の降雨が大きな被害をもたらした また 台風が東から西に向かうなど 地球温暖化による気候変動下では 何でも有り うることを前提に対策を講じることが必要である 6. まとめ ハード ソフト ヒューマンウェアを総動員して また自助 共助 公助で協働して 対策技術面でも既存の知識 新しい技術 インフラ等をフル稼働させて 束になって かからなければ対応しきれない 新潟県見附市では水害経験から学び あらゆる対策を総動員して対策を講じ 大きな成果をあげている 今回の九州北部豪雨のように小さな領域に集中的に強い降雨があると 川も小さいためすぐに水位が上昇し溢れる また洪水が川を溢れないでかろうじて流れていても流木が橋等に集積して閉塞すると アッという間に川から溢れて流水が住宅地を襲ってくる また流木や土砂に塞き止められてできた小規模な天然ダムの崩壊による段波の来襲も起こり得る このことを前提にして対策を考える必要がある 農業用ため池においても流木 土砂の捕捉効果を上げるため またため池自体と下流を守るために網場 ( アバ ) の設置 排水口の点検が必要である 今回の豪雨ではため池の決壊による被害の拡大があった 想定外の事故を防ぐためにも既存の大型インフラに大きな外力を与えた場合に何が起こるかストレステストを早急に実施し 事前に対策を講ずるべきである 今後の減災策 ( まず人命の損失ゼロを目指して ) 人命を救うために地域のリスクに応じた緊急避難場所 ( 避難所ではない ) を早急に地域で話し合って ( 共助 ) 決める必要がある ( 緊急的措置 ) 今回の九州北部豪雨災害のような流木 土砂を含む流れが谷底平野全体に拡がって流れる場合は 流れが破壊力を有するために家ごと流される可能性が高い 木造より鉄筋コンクリートの家の 2 階 3 階等に避難することは有効と思われる. 緊急時に近所の人達の取り合えずの避難所として機能し 普段は通常の個人住宅として使われる頑丈な RC 構造 ( 鉄筋コンクリート構造 ) の 2~3 階建て家屋 ( 緊急避難場所 ) に対し部分的にでも公的補助が行われるような制度の創設が望ましい そういう時期に来ていると思われる 西日本豪雨災害における倉敷市真備町のように低平地で大きな浸水深が予測される地域では 逃げ遅れた場合は自助の自衛策として 2 階の屋根の上まで避難できる手段 ( 梯子の常設等 ) や救命胴衣 浮き輪 空のペットボトル等を用意しておく 逃げ遅れゼロ で人命の損失を防ぐのは絶対に必要であるが 命が助かっても家や財産を無くすと 特に高齢者は再建の意欲 生きる気力を失うことが多い 完全な防災が今後も望めない以上 被災者の経済面の救済措置の充実 ( 保険や共済制度等 ) が必要である 今は全てが中途半端なように思える 防災も不十分 被災者支援も不十分である 被災者の数は全国民から見ればごく一部である 皆で支えれば被災者支援は決して不可能ではない Ex. 土地のリスクに応じた ( 車の自賠責保険のような強制保険金制度の創設 安全な地域への住居の移転の誘導 ( 二世代くらいかけて ) 熊本地震後の復旧 復興作業に対する地元の住民の方の感謝の表現 "Tomorrow I will live, the fool dose say: today itself's too late; the wise lived yesterday." American sociologist Charles Horton Cooley 明日は何とかなると思うのは愚か者 今日でさえもう遅すぎるのに 賢者は昨日のうちに済ませている 米国の社会学者チャールズ クーリー Fin! ご清聴 ありがとうございました 18