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北海道胆振東部地震被害調査報告書 1. 調査日 平成 30 年 9 月 10 日 ( 月 )~12 日 ( 水 ) 2. 調査員 愛媛大学大学院理工学研究科小野耕平, 今村衛 3. 調査対象地域 1 札幌市東区東 15 丁目 ( 屯田通り ) 北 21~46 条 2 札幌市北区西 4 丁目北 34~37 条 3 札幌市清田区里塚 1 条, 美しが丘 2 条 4 勇払郡むかわ町鵡川, 美幸地区 4. 地震の概要本地震は,2018 年 9 月 6 日 3 時 8 分に北海道胆振地方中東部を震源として発生した逆断層型の地震である. 気象庁の発表によると, 震源深さは約 40km, マグニチュードは 6.7, 最大震度は厚真町鹿沼で計測された震度 7 である. 今回調査を行った地域では, 札幌市東区で震度 6 弱, 北区および清田区で震度 5 強の揺れが観測された. いずれも札幌市内では観測史上最大の強い揺れである. むかわ町では, 震度 6 強の揺れが観測された. 2 北区 1 東区 3 清田区 4 むかわ町 図 1 調査地域図 2 推定震度分布図 ( 気象庁 )

5. 被害の概要札幌市東区東 15 丁目 ( 屯田通り ) では約 3.0km にわたって道路陥没が発生し, 交通障害が生じた. 加えて, 札幌市北区の西 4 丁目北 34 条 ~37 条においても道路陥没が発生した. 札幌市清田区里塚 1 条では宅地造成地盤の液状化が生じ, 道路や家屋に著しい沈下傾斜が生じた. 水道管の破損に伴い噴出した水流が液状化した土砂を標高の低い北東側へ流亡させ, 広い範囲で土砂の堆積被害が生じた. 同地区では, 複数の斜面崩壊も確認されている. 清田区では美しが丘 2 条においても液状化が生じ, 土砂が堆積した. 勇払郡むかわ町の鵡川では, 河口から約 4km にわたって河川堤防の天端に多数の縦断クラックが確認されたものの, 堤防の機能を低下させるほどの深刻な被害は生じなかった. 同美幸地区では, 多くの木造家屋の倒壊が確認された. 6. 道路陥没 ( 東区, 北区 ) 図 3 に札幌市東区および北区の調査位置図を示す. 東区東 15 丁目 ( 屯田通り ) では約 3.0km にわたって, 北区西 4 丁目では 0.3km にわたって道路陥没が生じた. 調査を実施した 9 月 10 日時点では復旧工事が依然として進められており, 東区屯田通りでは復旧のためほぼ全区間が通行止め ( 写真 6-1,6-2), 北区では仮復旧済みの状況であった. 住民からのヒアリングによると, 屯田通りでは先ず西側の 2 車線 ( 北向き ) が沈下を起こし, 続いて中央分離帯を挟んで東側の 2 車線 ( 南向き ) の沈下が始まった. 沈下はある程度時間をかけて進行していったようである. 写真 6-3 に示すように車道全体が波打っており, 中央分離帯が沈下したことにより道路標識が大きく傾斜した ( 写真 6-4). 写真 6-5 に示すように, 調査時点では復旧作業に着手されていない陥没穴も多く残されていた. 写真 6-6 に示すようにアスファルト舗装下は空洞となっており, 同地点では 60cm 程度の沈下が確認された. 加えて, 舗装も沈下していることから, 従来の位置からの沈下量は 1m 前後に達していると推定される. このような沈下および陥没が約 3km にわたる区間全体で発生した. 北 26 条付近では少量の噴砂が確認されたものの ( 写真 6-7), その他の区間では噴砂は見られなかった. 車道の沈下被害が顕著だったものの, 隣接する歩道や駐輪場においても被害が散見された ( 写真 6-8). 東区の道路陥没はこの屯田通りでのみ確認されており, 東西に交差する道路においては被害が生じていない. また, 北区と東区の被災道路には, 図 3 に示すように両区間とも地下鉄線路の真上に位置していることが共通している. これらのことから, 地下鉄トンネル上部の埋戻し土に用いられた地盤材料や施工方法が被害に影響を及ぼしたことが推察される. 同地区では開削工法により地下鉄トンネルが建設されていることから, 液状化強度の低い地盤材料が道路床下に埋め戻されていた可能性が考えられ, 今回の強い地震動により液状化を起こしたと推察される. 今後, 地盤材料に対して室内試験による液状化強度の把握が必要とされる. また, 液状化が生じた場合, 一般に 5% 前後の体積圧縮が生じると言われているものの, これは 1m の沈下が生じた場合, 液状化層の厚さが 20m 相当存在することを示

している 今後 被害地点における液状化層の厚さや地下鉄トンネルまでの深さなどを把握 し 沈下量と液状化の関係を多角的に検証することが必要である 東区 3.0km 北区 0.3km 6-1 6-4 6-3,5,6,7 6-8 6-2 図 3 調査位置図 東区 北区 写真 6-1 屯田通りの様子 写真 6-2 復旧の様子

写真 6-3 車道の凹凸 写真 6-4 道路標識の傾斜 写真 6-5 車道の陥没穴 写真 6-6 舗装下の空洞 写真 6-7 噴砂 写真 6-8 駐輪場の陥没

7. 液状化 ( 清田区里塚 ) 図 4 に札幌市清田区里塚 1 条の調査位置図を示す. 同地区では, 直線距離約 250m の範囲で多数の家屋に傾斜沈下の被害が生じた. また, 里塚中央ぽぷら公園の東側で埋設管路が破損し, 水流の噴出によって液状化した土砂が標高の低い北東側へ流亡し, 被害範囲が拡大した. 調査を実施した 9 月 11 日時点では堆積土砂の撤去が進んでいたものの, 液状化発生箇所から直線距離で 320m もの距離まで土砂の到達が確認された ( 写真 7-1). 写真 7-2 は, 水道管の破損個所を下流の北東側から捉えたものである. 車道は大きく抉れ, 周辺には土砂が散乱している. 噴水により破損箇所正面の家屋は水没しており, 大きく傾斜沈下していた ( 写真 7-3). 同地区では, 里塚中央ぽぷら公園の周辺で家屋の沈下被害が特に深刻であった. 公園の南側では, 写真 7-4 のように外観から明らかな傾斜沈下が多数確認された.9 月 10 日の時点で, 同地区において外観調査により危険とみなされた家屋数は 83 戸に上る. 写真 7-5 のように比較的新しい住宅では基礎が深く, 住宅の傾斜沈下はある程度抑制されている. 計測されたブロック塀の傾斜角は約 7 度である. 右側に写る家屋の外扉の沈下量から露出した基礎の長さは 2m 前後と推定できるものの, 家屋全体が沈下していることも考えられるため, その沈下量は 2m 以上であると考えられる. 沈下被害が著しい区域では写真 7-6 のようなマンホールの連続的な浮上が確認されており, 液状化の発生を示す証拠のひとつとなっている. 写真 7-7 は里塚中央ぽぷら公園を北側から捉えたものであり, 公園全体がうねるように傾斜沈下している様子がわかる. 公園南側のフェンスの傾斜角と斜距離をレーザー測量した結果, 沈下量は約 3.6m と概算された. 調査時には, 同公園内でボーリングによる地質調査が実施されていた. 公園内には写真 7-8 に示すような噴砂も確認できたものの, 住宅街における噴砂は確認されなかった. 公園の東側では家屋の沈下傾斜が深刻であり, 写真 7-9 に示す家屋は今回調査した中で最も傾斜が大きく, 写真から 13 度の傾斜と推定される. この家屋は, 上述の写真 7-3 の家屋の裏側に位置する. 公園の北側では, 写真 7-10 に示すようにマンホールが露出していた. 写真から 1.7m 程度浮上しているように見えるものの, マンホールの上面は付近の健全な地表面高さと比較して 0.1m 程度しか隆起していないことから, 道路全体が 1.6m ほど大きく沈下し, マンホールは 0.1m ほど浮上したものと推察される. 家屋の傾斜被害が特に顕著な領域を, 流動経路として青色の線で図 4 内に示している. この線から, 液状化による沈下被害は住宅街の中央から公園を通って北東部へ抜け, 水道管が破損した箇所へと繋がっていることがわかる. 液状化層上部の道路舗装は流動せずに形状を維持したため, 大規模な沈下となって被害が顕在化したと考えられる. この主要な流動経路に加えて, 写真 7-10 で示したように局所的に液状化被害が生じている. 一方, 黒線で囲った範囲が顕著な住宅被害の見られた範囲であるものの, 住宅街の中で最も西側に位置するブロックでは, 道路 家屋ともに外観被害は見られなかった. これは, 同地点の標高が最も高いこと, 宅地造成部の端にあたることが要因であると考えられる.

ここで, 図 5 に 1976 年に撮影された同地区の空中写真を示す. 同地区は元々田畑として利用されていたことがわかり, 液状化の被害が深刻な範囲と田畑の範囲が一致する.1982 年に撮影された空中写真では既に宅地が確認されており,70 年代後半に宅地の開発が進んだものと推察される. 液状化した範囲は小河川が通る谷地形であったことも明らかとなっており, 谷地形を盛土によって埋め立てて造成したことで, 集水しやすく地下水位が上昇しやすい地形となっていた可能性が考えられる. また, 地震発生前日の 9 月 5 日の深夜には台風 21 号が通過しており, 多量の降雨が地下水位の上昇に影響を与えた可能性も考えられる. 盛土材料には, 周囲の切土による火山灰質砂質土が用いられたと考えられ, 今後地盤材料の土質試験が必要である. 7-10 7-7 7-3 7-2 土砂の流亡 7-1 250m 7-6 7-9 7-8 水道管の破損 土砂の到達点 7-5 7-4 図 4 調査位置図 ( 清田区里塚 )

写真 7-1 土砂の到達点 写真 7-3 家屋の水没 写真 7-2 水道管の破損 写真 7-4 家屋の傾斜沈下 北向きに撮影 写真 7-5 家屋の傾斜沈下 南向きに撮影 写真 7-6 マンホールの浮上

写真 7-7 公園内の沈下 写真 7-9 家屋の傾斜沈下 写真 7-8 公園内の噴砂 写真 7-10 道路沈下とマンホールの浮上 図 5 1976 年の空中写真 1 国土地理院 筆者加筆

8. 再液状化 ( 清田区美しが丘 ) 図 6 に札幌市清田区美しが丘 2 条の調査位置図を示す. 同地区は, 国道 36 号線を挟んで里塚地区の南側に位置している. 同地区では 2003 年の十勝沖地震においても液状化の発生が確認されており 2), いわゆる再液状化が生じている.9 月 10 日の調査時点では地表に現れた噴砂はほとんど撤去されていたものの, 白色の細粒分が排水溝周辺に広がっていた ( 写真 8-1). 周辺では所々噴砂が発生しており ( 写真 8-2, 3, 4), 美しが丘南公園では水道管の破損によると思われる流水が確認された. 美しが丘小学校北側では道路の沈下が生じており, 校庭には亀裂が生じていた ( 写真 8-5). 同地点においても白色の噴砂が確認された ( 写真 8-6). 8-5,6 8-3 8-1 8-2 8-4 図 6 調査位置図 ( 清田区美しが丘 ) 図 7 に札幌市が 2017 年に公表した同地区における大規模盛土造成地マップを示す. 同マップでは, 国交省が定めた基準に則り, 谷埋め型の造成地では盛土の面積が 3,000m 2 以上のものが示されている. 今回の被害範囲は造成地に位置しており, 元々の地形や盛土材料の土質が液状化被害に関係している可能性があることがわかる. その一方で, 先に示した里塚 1 条は盛土造成地とみなされていない. これは, 盛土による造成箇所が連続していないことで盛土面積がマップ作成の基準に達していなかったことが原因と考えられ, 今後基準の検証が必要である. また, 図 8 には札幌市が公表している液状化危険度マップを示す. 同地区で

は以前にも液状化が発生していたこともあり 危険度マップとの整合性は比較的高いとい える 里塚 1 条においても液状化発生の可能性が高いと評価されている 写真 8-1 堆積土砂 写真 8-3 噴砂 住宅街 写真 8-5 道路の沈下 写真 8-2 噴砂 美しが丘南公園内 写真 8-4 噴砂 美しが丘すみれ公園内 写真 8-6 噴砂 美しが丘小学校

図 7 大規模盛土造成地マップ 3 札幌市 筆者加筆 図 8 液状化危険度図 4 札幌市 筆者加筆

9. 河川堤防被害, 家屋倒壊 ( 勇払郡むかわ町 ) 図 9 に勇払郡むかわ町の調査位置図を示す. 同地区では, 河川堤防と家屋の外観調査を実施した. むかわ町内を流れる 1 級河川である鵡川では, 河川堤防の天端中央や法肩部において, 写真 9-1 に示すような数 cm オーダーの縦断亀裂が左岸 右岸ともに河口から KP5.0 程度の地点まで多数確認された. 被害箇所では, 写真 9-2 に示すようにブルーシートによる応急 5) 処置が行われていた. 国交省の速報によると, 縦断亀裂以外の被害としては, 左岸 KP2.1 において約 20m にわたって堤体の沈下が生じた. 堤外側では, 写真 9-3 に示すような舗装の破損が散見された. また, 左岸 KP2.5 付近では, 堤外側に写真 9-4 に示すような噴砂が複数確認され, 液状化に起因するものであると推察される. むかわ町役場などが集まるむかわ町の中心部では, 家屋が多数倒壊した. 今回調査した範囲では, 図 9 に示すとおり 1 つの通りに被害が集中していることがわかる. 確認した中では, 倒壊した家屋の多くが木造であることが特徴的である. 本地区の地震波の周期が, 木造家屋の固有周期に一致したことが原因である可能性が考えられる. また, 広い範囲でマンホールの浮上や周辺の沈下が確認された. 9-2 9-9 9-5 9-6 9-7 9-8 9-3 9-1 9-10 9-4 図 9 調査位置図 ( 勇払郡むかわ町 )

写真 9-1 天端の縦断クラック 写真 9-3 堤外側の破損 写真 9-5 家屋の倒壊 1 写真 9-2 天端の応急処置 写真 9-4 堤外側の噴砂 写真 9-6 家屋の倒壊 2

写真 9-7 家屋の倒壊 3 写真 9-8 家屋の倒壊 4 写真 9-9 家屋の倒壊 5 写真 9-10 マンホール周辺の変状 参考文献 1) 国土地理院, 地図 空中写真閲覧サービス, https://mapps.gsi.go.jp/maplibsearch.do#1 ( 参照 2018-09-13) 2) 三浦ら,2003 年十勝沖地震による地盤災害について, 土木学会 2003 年十勝沖地震被害調査報告書,2003 3) 札幌市, 地震防災マップ, http://www.city.sapporo.jp/kikikanri/higoro/jisin/jbmap.html ( 参照 2018-09-13) 4) 札幌市, 札幌市大規模盛土造成地マップ, http://www.city.sapporo.jp/toshi/takuchi/kisei/daikibomoridozouseichi.html ( 参照 2018-09-13) 5) 国土交通省, 北海道胆振東部地震による被害状況等について ( 第 26 報 ),2018