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15. 放送 通信業界が注目すべき外部環境の変化 - インターネット動画配信の普及加速を巡る放送 通信事業者の競合 協業の可能性 - 要約 インターネット動画配信 を軸に 放送と通信の融合を加速させる外部環境変化として 1 テレビ離れによるインターネットへのシフト 2OTT 1 の台頭を契機とした動画配信コンテンツ投資の拡大 3 通信事業者の 数から単価 への成長モデルの変化が挙げられる 1 タイムシフト視聴等の増加により視聴者のメディア接触はテレビからインターネットにシフトしており 今後ハード面での環境が整うことからより加速する見通しである また 広告主によるテレビ広告からインターネット動画広告へのシフトも進むと予想される状況下 民放キー局は各社とも無料見逃し配信サービスへの取組に着手しており 今後はさらに加速する見込みである 2 国内のインターネット動画配信市場は放送系 通信系を始め多くの事業者が参入しており競争が激化しているが オリジナルコンテンツを制作する Netflix の日本市場参入を契機に 各社がコンテンツ制作に注力し良質コンテンツが充実すれば コンテンツの質というソフト面の課題も解決され インターネット動画配信の普及加速が見込まれる 3 一方で国内の通信事業が頭打ちを迎え 数 から 単価 の勝負へとシフトする中 インターネット動画配信市場の拡大に対する通信事業者の期待は高い また課金モデルの転換によって増え続けるトラフィックをマネタイズできる仕組みが整ったこともあり 今後通信事業者によるインターネット動画配信市場への一層の主体的な関与が見込まれる こうした外部環境を踏まえ 地上波放送事業者はコンテンツプロバイダーとしての強みを活かし 通信事業者との協業も視野に入れつつ強大な動画配信プラットフォームを早期に構築することが有効な戦略であろう また 通信事業者は自らの成長戦略として動画配信サービス事業者を取込むことが有効な戦略であると考える はじめに インターネット動画配信 を契機に放送 通信量業界の融合が中後期的に進展 放送と通信の融合は言われて久しい 放送と通信の融合が 1 端末 2 伝送路 3 コンテンツ サービス 4 事業者の 4 つの領域で構成されると考えた場合 地上デジタル放送の開始以降 1 通信インフラの進展もあり 地上波放送を携帯端末で視聴する端末レベルでの融合 ( ワンセグ ) 2 同一コンテンツを放送と通信の両方で流す伝送路レベルの融合 (VOD) 3 地上波放送と同時に関連するコンテンツを通信で配信するコンテンツレベルの融合 ( ハイブリッドキャスト ) 等 各種の取組がなされてきたが 現状においては視聴者に対して十分に浸透しているとは言えない状況である しかしながら中長期的に見た場合 インターネット動画配信 の拡大を契機に放送 通信両業界の融合が進むと考えられる そこで本稿では インターネット動画配信 を加速させる外部環境の変化を採り上げ これに対して放送事業者と通信事業者がどのように取り組んでいくべきかを以下に考察したい 1 OTT(Over The Top) とは 動画 音声などのコンテンツ サービスあるいはこれらを提供する事業者のうち 通信事業者やインターネットサービスプロバイダー (ISP) とは関係がない Netflix Hulu Youtube Skype 等の企業を指す テレビ スマートフォン タブレット等のマルチデバイスからアクセスできるのが特徴 73

1. テレビ離れによるインターネットへのシフト テレビ視聴時間は短縮傾向 インターネット接触時間が長期化し逆転 近時 日本人のテレビ離れが進んでいる 下げ止まり感のあった総世帯視聴率 (HUT) は再び低下し 長期化傾向にあるインターネットメディア ( パソコン タブレット端末 携帯電話 スマートフォン ) の接触時間が 2014 年に初めてテレビの接触時間を上回り もその差が拡大している ( 図表 1 ) また NHK により 5 年に一度行われる調査によると日本人のテレビ視聴時間は 2015 年に初めて短時間化した 特にデジタルネイティブ世代 2 を中心とした若年層だけではなく 50 代までの幅広い年齢層において短時間化が見られた ( 図表 2 ) ことが象徴的である これらの要因として 30 代以下はテレビからスマートフォン タブレット等のインターネットメディアへのシフトが進んだこと 40 代以上はデジタル録画再生機によるタイムシフト視聴が増加したことが考えられる このように世代別に要因は異なるものの テレビ離れが進んでおり 今後も引き続きこの傾向が続くだろう 2006 N=1,797 2007 N=1,949 2008 N=1,834 2009 N=2,236 2010 N=2,112 2011 N=2,127 2012 N=2,076 2013 N=1,899 2014 N=2,086 2015 N=1,844 図表 1 メディア総接触時間の媒体別推移 テレヒ ラシ オ新聞雑誌ハ ソコンタブレット携帯電話 スマートフォン分 0 50 100 150 200 250 300 350 400 171.8 163.7 161.4 163.5 172.8 161.4 161.4 151.5 156.9 152.9 35.2 39.3 35.2 31.1 33.0 31.9 30.5 28.9 44.0 28.7 28.2 28.5 32.3 26.0 17.6 27.8 16.0 23.3 18.6 24.0 16.6 27.1 16.0 23.4 13.6 19.9 13.0 ( 出所 ) 博報堂 DY メディアパートナーズメディア環境研究所 メディア定点調査 2015 より作成 ( 注 1)2012 年から 携帯電話 にスマートフォンを追加し 携帯電話 スマートフォン に変更 ( 注 2)2014 年から タブレット端末 を追加 ( 注 3)2014 年から パソコンからのインターネット を パソコン に 17.8 17.1 68.1 19.6 69.1 59.4 67.6 61.8 77.4 81.7 77.1 72.8 56.6 20.6 18.2 17.7 14.1 18.1 11.0 25.2 32.0 40.4 50.6 74.0 80.3 335.2 324.9 319.3 323.9 347.9 350.0 351.4 353.1 385.6 383.7 全メディア合計 ( 年層別 ) ほとんど (%) まったく見ない 30 分ぐらい 1 時間 2 時間 3 時間 4 時間 5 時間 6 時間以上 2010 年 4 3 10 14 11 15 16~19 歳 2010 年 20 代 2010 年 30 代 2010 年 40 代 2010 年 50 代 2010 年 60 代 2010 年 70 歳以上 2010 年 携帯電話 スマートフォンからのインターネット を 携帯電話 スマートフォン に変更 6 7 4 3 6 2 6 2 3 2 1 図表 2 1 日にテレビを見る時間 ( 年層別 ) 8 16 8 13 4 17 19 35% % 40% 14 20 19 12 10 短時間 視聴 38% 普通 視聴 19% 長時間 視聴 37% 無回答 短時間 視聴 普通 視聴 長時間 視聴 52 56 17 20 23 25 26 36 46 40 44 43 19 17 50 46 51 22 23 22 20 18 23 15 13 52 48 31 40 32 26 26 31 22 15 1 62 61 2 ( 出所 )NHK 放送文化研究所 日本人とテレビ 2015 調査より 作成 無回答 今後テレビのインターネット接続が進むことでテレビ離れが加速する 今後 テレビ離れが加速する要因として テレビのインターネット接続が一般化することが挙げられる インターネット接続されたテレビの保有世帯割合は 2014 年 12 月時点では 23.9% 3 である 2011 年 7 月の地デジ完全移行までに多くの家庭でテレビが買い替えられたが 当時の薄型テレビの売れ筋はインターネット対応が約半数 そのうち無線 LAN 内蔵はほとんどなかった しかしながらテレビの平均買替期間が約 8 年であることを考えると 2020 年の東京五輪までに買い替えが一巡することが見込まれる 現在の売れ筋テレビはほとんどインターネット接続が可能 そのうち無線 LAN 対応機種が過半を占めることから 今後大半のテレビはインターネットに接続され 放送番組だけでなくインターネット配信コンテンツもテレビで視聴することが一般的となる時代が到 2 デジタルネイティブ世代とは 生まれながらにデジタル機器 インターネットに親しんでいる世代 日本では商用インターネットが開始した 1992 年以降に生まれた世代を言うことが多い 3 出所 : 総務省の通信利用動向調査 (2014 年 12 月末時点 ) 2012 年 12 月からの 2 年間で 10% 増加している 74

来するであろう 視聴者のメディア接触行動の変化に加え 広告主の動向にも変化が見込まれる ( 図表 3 ) 紙媒体である新聞 雑誌やラジオ広告が大幅に減少している一方で テレビ広告はこれまで深刻な影響を受けてこなかったが 今後はテレビ広告からインターネット広告へのシフトが進むと予想される 動画広告の普及 ターゲティング手法の進化によりテレビ広告からインターネット広告へのシフトが進んでいく これまでテレビ広告は 認知 目的 インターネット広告は 販促 目的との棲み分けがされてきたが 視聴者のメディア接触行動がインターネットメディアへとシフトしていく中で 特に 認知 目的のインターネット広告としてブランディング効果の高い動画広告の普及が加速していくことが予想される 加えて インターネット広告の優位性であるターゲティング技術の進歩も著しく 今後リアル店舗での行動履歴等も統合したマーケティング分析手法が確立されれば これまでに無い精緻な分析が可能となることからも 将来的にはインターネット広告が 認知 目的としてのテレビ広告の地位を脅かす存在となるであろう ( 億円 ) 70,000 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 図表 3 媒体別広告費推移 テレビ 新聞 雑誌 ラジオ インターネット その他 テレビ広告費シェア インターネット広告費シェア 30% 25% 20% 15% 10% 5% 0 0% 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 ( 年度 ) ( 出所 ) 経済産業省 特定サービス産業動態統計調査 より作成 民放キー局 5 社は 無料見逃し配信を開始し 今後インターネット動画配信を本格化 斯かる状況下 放送事業者は来るべき危機に備えて 無料見逃し配信における動画広告への取組を加速している 従来 民放キー局各社は無料見逃し配信について権利処理の問題や地上波放送とのカニバリゼーションのため慎重姿勢であった しかし リアルタイム視聴への誘導 違法動画サイトでの視聴抑止に一定の効果が見込まれること デジタルネイティブ世代への訴求効果の期待も高いことから 民放キー局 5 社全てが 4 月までに地上波番組を放送後 1 週間程度配信する広告付き無料見逃し配信を開始した 配信コンテンツ数は 各社とも 10 番組程度と限定的な規模であることに加え 動画広告にはマネタイズできる CM 搬入基準 4 が確立されていない等の課題があるが 今後配信コンテンツ数の増加に伴い 動画広告の CM 搬入基準等の整備も進み番組のインターネット配信が更に加速する見込みである 2.OTT の台頭を契機とした動画配信コンテンツ投資の拡大 国内の動画配信市場には 既に多数の業界 事業者が参入 インターネット動画配信市場には 放送系 ( 地上波 衛星 多チャンネル ) キャリア系 メーカー系 IT 系 コンテンツ系 ( 映画 アニメ ) ゲーム系等 既に様々な業種から数多くの事業者が参入しており ( 図表 4 ) 極めて厳しい競 4 1 テレビ CM をそのまま配信し テレビ広告費に上乗せしてタイム広告主に販売する方法 あるいは 2 テレビ CM を差し替え タイム広告主とは異なる広告主に販売する方法がある 75

争環境となっている その中でも最も多くの事業者が参入しているのが有料動画配信サービス 特に定額制課金モデル (SVOD) である 民放キー局では 2014 年 2 月に日本テレビが他局に先んじて米国の動画配信事業者である Hulu の日本事業を買収し SVOD サービスに参入したことから 他局も追随して SVOD サービスを開始している 地上波系 各社オンデマンドサイト 民放 5 社共同の無料見逃し配信 TVer 多チャンネル放送系 スカパー! オンデマンド J:COMオンデマンド WOWOWメンバーズオンデマンド 通信 キャリア系 dtv ビデオパス UULA ひかりTV メーカー系 アクトビラ ネット企業系 Gyao! 楽天 SHOWTIME U-NEXT コンテンツ系 バンダイチャンネル YNN 東映アニメオンデマンド ボノボ ゲーム系 PlayStation Store ビデオストア Xbox Video レンタルビデオ系 TSUTAYA TV DMM.com プラットフォーム系 itunesビデオ Google play ムービー &TV Amazonプライム ビデオ 動画共有 ライブ配信系 ニコニコ動画 YouTube Ustream 外資系 Netflix Hulu ( 出所 ) 公開情報より作成 図表 4 国内のインターネット動画配信サービス Netflix が日本で引き起こすパラダイムシフトの可能性 ~ コンテンツ投資の拡大 ~ しかしながら 現在の我が国の SVOD サービスには 前述のハード面の課題に加え 使い回しのコンテンツが多く消費者を惹きつけるキラーコンテンツが不足しているというソフト面の課題が存在する このような状況下 従来の SVOD サービスのイメージを覆す可能性がある事業者が米国の Netflix である 当社は全世界で 6,500 万人超の会員数を有する世界最大の SVOD 事業者であり 9 月には日本でも SVOD 事業を開始している 日本では無料地上放送が充実しており そもそも有料放送の視聴層が限定的であることや Netflix の保有する日本向けコンテンツ数が限定的であること等を勘案すると 日本における Netflix の普及は短期的にはさほど進まない可能性もある しかし Netflix は豊富なコンテンツ製作費に加え 全世界 6,500 万人超の会員に対してコンテンツを配信できるリーチがあること 広告主であるスポンサーがいないため CM 処理不要で表現上の制約もないことから 米国において有力なコンテンツ制作者を自陣営に引き込み 5 オリジナルコンテンツを強みに米国を中心に世界 50 カ国以上で事業展開を行っている実績がある 同社は日本においてもこれまでと同様のビジネスモデルでオリジナルコンテンツ制作に注力する姿勢を示しており 有力な制作事業者が同社のコンテンツ制作に流れる可能性がある Netflix の上陸に伴いコンテンツの質を巡る競合が激化すれば 放送事業者 通信事業者を含む SVOD 事業者がこれまで課題としてきたコンテンツの充実に注力する契機となり得 インターネット動画配信の普及を後押しすると予想する なお Netflix は 7 年以内に 1,000 万人の会員獲得を目指す 6 と述べており 仮に月額 1,000 円の SVOD サービスに 1,000 万人が加入した場合に市場規模は 1,200 億円増加し 2,000 億円を超え 映画市場に匹敵する規模を有する 5 Netflix オリジナル作品の政治サスペンスドラマ House of Cards は 2013 年 9 月に米国テレビ業界で最高の権威あるプライムタイム エミー賞全 9 部門にノミネートされ 3 賞を受賞 エミー賞にテレビ局以外がノミネートされたのは史上初であり 全 13 話の総製作費は $100M($7~8M/ 話 ) 6 出所 9 月 3 日日本経済新聞記事 76

3. 通信事業者の 数から単価 への成長モデルの変化 通信事業者はインターネット動画配信市場の有力な担い手 通信事業は 数 から 単価 の勝負に 課金モデルの転換により増え続けるトラフィックをマネタイズ 収益モデルの転換がインターネット動画配信市場への一層の主体的な関与を後押し また インターネット動画配信市場の有力な担い手として 通信事業者の存在も忘れてはならない NTT ドコモ KDDI ソフトバンクの 3 キャリアはそれぞれコンテンツホルダーと提携しつつ独自の有料動画配信プラットフォームを展開しており 3 キャリアの合計会員数は約 800 万に達するなど 当該分野への注力姿勢は現状においても既に並々ならぬものがある 斯かる取組の背景には 本業である通信事業の頭打ちがある これまで成長の柱であった携帯電話事業についてはスマートフォンの普及が一巡する中 事業戦略上の焦点は 数 ( 加入者純増数 ) をいかに増やすか から 単価 (ARPU/ARPA 7 ) をいかに上げるか という点に移行している 各キャリアはインターネット動画配信を含むコンテンツ アプリケーションサービスや 金融 決済サービス 生活関連サービスなど 付加サービスの提供に腐心しているが とりわけノウハウの蓄積もあり また今後の成長が見込めるという意味においてインターネット動画配信分野にかける期待は高い 更に今後 通信事業者が当該分野への注力を加速すると思われる背景として 通信サービスにおける課金モデルの転換がある 我が国のキャリアは長らく音声通話については従量制 データ通信については定額制という課金モデルを採用してきたが 2014 年 6 月以降 大手キャリア 3 社は相次いで携帯電話の新料金プランを導入した 新料金プランは 音声通話の完全定額と データ通信の利用量に応じて通信料金が段階的に設定されたパケットパックの組み合わせから構成されており 音声が定額制 データ通信が従量制と これまでとは逆の課金モデルに大きく舵を切ったものとなっている 今後も我が国のモバイルデータトラフィックは動画関連のトラフィックを中心に 8 年率 150% 程度の高い伸びが続くと想定されており この課金モデルの転換によって 通信事業者は今後も増え続けることが見込まれるデータ通信の利用量 ( トラフィック ) をマネタイズする仕組みを整備できたと言える 9 従って 通信サービスの今後の持続的成長のためには 新料金プランの裾野拡大を進めていくことが差し当たっての課題となる 例えば NTT ドコモの場合 新料金プランの提供開始から約 1 年で 2,100 万契約と 順調に移行を進めてきたが これまで新料金プランに移行したのは音声通話の利用が多く 音声定額制の新料金プランに変更することのメリットが比較的明確なユーザー層であったと思われる 今後は移行ペースの鈍化も想定されるが 新料金プランのメリット訴求や機種変更時の割引施策等も活用しつつ 粘り強く裾野を拡大していくことが求められる 裾野の拡大の次に いかに動画視聴等のデータ通信を多く使ってもらうか とりわけ現状データ通信の利用が多くないライトユーザー層をいかに開拓していくかという点も重要となる その際 キラーサービスとなるのは難しい操作や高度な知識を必要とするアプリケーション系のサービスではなく 誰でも手軽 7 ARPU(Average Revenue per User/Unit): 1 契約回線あたりの月間平均収入 ARPA(Average Revenue per Account): 1 アカウント ( ユーザー ) あたりの月間平均収入 8 2012 年に報告書が取りまとめられた総務省 無線 LAN ビジネス研究会 資料によれば スマートフォンのトラフィックのおよそ半分は動画等のストリーミングによるものと推定されている 9 なお宅内においては携帯電話回線ではなく Wi-Fi( 固定通信回線 ) を活用した通信も想定されるが 3 月からは大手キャリア 3 社が固定通信 (FTTH) サービスとのセット割の提供を開始していることから 仮に Wi-Fi の活用が進む場合であっても 固定回線の拡販まで含めた広い意味での課金機会の拡大と捉えることができる 77

に楽しめるインターネット動画配信ではないだろうか 斯かる中長期的な通信事業者の収益モデルの転換 そしてライトユーザー層へのターゲット層の変化を鑑みれば 今後 通信事業者がインターネット動画配信市場においてこれまで以上に主導的に振る舞う蓋然性は一層高まるものと思われる 4. 放送 通信業界へのインプリケーション このような外部環境の変化を踏まえ 地上波放送事業者と通信事業者が今後どのように取り組んでいくべきかを以下に考察したい 地上波放送事業者はコンテンツプロバイダーとしての強みを活かして 強大な配信プラットフォーム構築に舵を切るべき 地上波放送事業者は日本最大のコンテンツプロバイダーであり 他の事業者と比べ動画配信において有利な条件がそろっている 地上波テレビ広告収入の減少分を最小限としつつ 今後成長が見込まれる無料見逃し配信と有料動画配信普及のカギとなる良質なコンテンツを惜しみなく投入することで 他事業者に先んじて強大なプラットフォームを早期に構築する戦略が有効であり 利便性の観点からも視聴者の目線にかなうのではないか 特に 有料動画配信サービスでは現状強固な顧客基盤を誇る既存事業者 その中でも強力な新規加入勧誘チャネルを有する通信事業者との協業も有効と思われる また プラットフォームビジネスの特徴としては ネットワーク効果 10 により独占化あるいは寡占化する傾向がある しかしながら 現状民放キー局は無料見逃し配信 有料動画配信ともに 5 社共同での連携も部分的に行ってはいるものの 依然自社のプラットフォームを軸とした個社別のサービス展開となっている この状況はニュース配信における新聞業界での苦い教訓 11 が想起されることからも 民放キー局は 5 社共同で強大なプラットフォームを早期に構築すべきであろう 一方 通信事業者は斯かる環境変化に対して如何に対応すべきであろうか 通信事業者にとってインターネット動画配信への取組は 数千万規模の顧客基盤と販路を活用できることに加え 放送事業者のように既存ビジネスとのカニバリゼーションを懸念する必要も無いこと また既述のとおり動画視聴により発生するトラフィックを通じた間接課金が可能であるなど本業とのシナジー効果も高く 総じて取組を加速すべき分野であると言える 通信事業者は自らの成長戦略として動画配信サービス事業者を取込むことをより積極的に狙うべき 今後 我が国における最大のコンテンツホルダーである地上波放送事業者が満を持して動画配信サービスに本腰を入れるのであれば 通信事業者としては率先して提携等を含めた囲い込みを仕掛け 有料 無料を問わず動画配信市場の成長を自らの成長の一部として取り込むことを加速させる必要がある 今後 動画配信を舞台とした放送と通信の融合が進み 両業界のプレイヤーが入り乱れる形で動画配信市場が拡大していくと思われる中 通信事業者は自らがサービス提供主体となりユーザーへの直接課金を狙う従来型の戦略のみならず 場合によっては動画配信を手掛ける放送事業者と手を組み 自らは動画視聴により発生するトラフィックを通じた間接課金を狙う 通信事業者ならでは の成長 提携戦略についても検討を加速する必要があろう 10 ネットワーク効果とは その製品やサービスのユーザー数が増加するに従い 各々のユーザーがその製品やサービス自体から得られる効用や価値が大きくなること 11 新聞業界では 朝日 読売 日経の各社が独自にネットでサービスを展開していた際に 検索サービスでリードしていたヤフーはニュースサービスの提供を開始し早期にプラットフォームを確立した結果 2008 年 1 月に立ちあげた 3 社共同のニュースサイト あらたにす は苦戦し 2012 年にサービスを終了した 78

図表 5 ( まとめ ) インターネット動画配信市場を巡る放送 通信事業者のポジション 接触行動変化 放送 ( 地上波 ) 通信 ( ネット ) 今後の成長領域 有料動画配信 テレビ広告 + ネット広告 + 視聴者課金 極大化する 方程式 を模索 視聴者課金収入 トラフィック課金 + 視聴者課金 ( 有料の場合 ) 有料市場が立ち上がった方がより好ましい 地上波 放送事業者 通信事業者 無料動画配信 地上波吸収合併テレビ広告収入 縮小 カニバリ ネット広告収入 ( 出所 ) 作成 ( 電機 IT 通信チーム中村伊佐夫 / 石川真一郎 / 小川政彦 ) isao.a.nakamura@mizuho-bk.co.jp shinichirou.ishikawa@mizuho-bk.co.jp masahiko.ogawa@mizuho-bk.co.jp 79

/52 2015 No.4 平成 27 年 9 月 29 日発行 2015 株式会社みずほ銀行本資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり 取引の勧誘を目的としたものではありません 本資料は 弊行が信頼に足り且つ正確であると判断した情報に基づき作成されておりますが 弊行はその正確性 確実性を保証するものではありません 本資料のご利用に際しては 貴社ご自身の判断にてなされますよう また必要な場合は 弁護士 会計士 税理士等にご相談のうえお取扱い下さいますようお願い申し上げます 本資料の一部または全部を 1 複写 写真複写 あるいはその他如何なる手段において複製すること 2 弊行の書面による許可なくして再配布することを禁じます 編集 / 発行東京都千代田区大手町 1-5-5 Tel. (03) 5222-5075