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平成 24 年度維持管理記録 ( 更新日平成 25 年 4 月 26 日 ) 1. ごみ焼却処理施設 (1) 可燃ごみ焼却量項目単位年度合計 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 A B 炉合計焼却量 t 33, ,972

第 2 編 地下水の水質測定結果

現場での微量分析に最適 シリーズ Spectroquant 試薬キットシリーズ 専用装置シリーズ 主な測定項目 下水 / 廃水 アンモニア 亜硝酸 硝酸 リン酸 TNP COD Cr 重金属 揮発性有機酸 陰イオン / 陽イオン界面活性剤 等 上水 / 簡易水道 残留塩素 アンモニア 鉄 マンガン

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14551 フェノール ( チアゾール誘導体法 ) 測定範囲 : 0.10~2.50 mg/l C 6H 5OH 結果は mmol/l 単位でも表示できます 1. 試料の ph が ph 2~11 であるかチェックします 必要な場合 水酸化ナトリウム水溶液または硫酸を 1 滴ずつ加えて ph を調整

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注 3) 化学物質環境実態調査 ( 黒本調査 ) は 非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査 ( 平成 5 ~13 年度 ) モニタリング調査 ( 平成 14 年度 ~) のデータをまとめた 注 4) 化学物質環境実態調査 ( 黒本調査 ) 内分泌攪乱化学物質における環境実態調査 については 環境中の

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水質

2009年度業績発表会(南陽)

A6/25 アンモニウム ( インドフェノールブルー法 ) 測定範囲 : 0.20~8.00 mg/l NH 4-N 0.26~10.30 mg/l NH ~8.00 mg/l NH 3-N 0.24~9.73 mg/l NH 3 結果は mmol/l 単位でも表示できます 1. 試料の

Agilent 7900 ICP-MS 1 1 Ed McCurdy 2 1 Agilent Technologies, Japan 2 Agilent Technologies, UK

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地下水の水質及び水位地下水の水質及び水位について 工事の実施による影響 ( 工事の実施に伴う地下水位の変化 地下水位流動方向に対する影響 並びに土地の造成工事による降雨時の濁水の影響及びコンクリート打設工事及び地盤改良によるアルカリ排水の影響 ) を把握するために調査を実施した また

一例として 樹脂材料についてEN71-3に規定されている溶出試験手順を示す 1 測定試料を 100 mg 以上採取する 2 測定試料をその 50 倍の質量で 温度が (37±2) の 0.07mol/L 塩酸水溶液と混合する 3 混合物には光が当たらないように留意し (37 ±2) で 1 時間 連

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様式処 3 号 最終処分場水質検査の記録 最終処分場名 : 守山南部処分場 測定対象 : 放流水 試料採取場所 : 調整槽放流水試料採取口 試料採取年月日 H H H H H H 測定結果の得られた年月日 H30.5.7

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1/120 別表第 1(6 8 及び10 関係 ) 放射性物質の種類が明らかで かつ 一種類である場合の放射線業務従事者の呼吸する空気中の放射性物質の濃度限度等 添付 第一欄第二欄第三欄第四欄第五欄第六欄 放射性物質の種類 吸入摂取した 経口摂取した 放射線業 周辺監視 周辺監視 場合の実効線 場合

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環境モニタリング結果について 資料 1 環境モニタリング調査地点図 ( 浸出水 浸出水処理施設放流水 センター内地下水 発生ガス 悪臭 ) ( 放流先河川 周辺地下水 ) Ⅰ Ⅱ 浸出水 放流水 1 浸出水 2 浸出水処理施設放流水 センター内地下水 1 観測井 1 号 2 観測井 2 号 3 観測

近畿中国四国農業研究センター研究報告 第7号

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水質

1 1 H Li Be Na M g B A l C S i N P O S F He N Cl A e K Ca S c T i V C Mn Fe Co Ni Cu Zn Ga Ge As Se B K Rb S Y Z Nb Mo Tc Ru Rh Pd Ag Cd In Sn Sb T e

埋立てた一般廃棄物の種類及び数量の記録 ( 平成 30 年度 ) 最終処分場名 : 第二処分場 単位 : トン 種 類 数量 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 搬入量一般廃棄物焼却灰 1, , , 合計

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IS(A3) 核データ表 ( 内部転換 オージェ電子 ) No.e1 By IsoShieldJP 番号 核種核種半減期エネルギー放出割合核種番号通番数値単位 (kev) (%) 核崩壊型 娘核種 MG H β-/ce K A

様式処 3 号 最終処分場水質検査の記録 最終処分場名 : 船見処分場 測定対象 : 放流水 試料採取場所 : 放流水槽 試料採取年月日 H H H H H 測定結果の得られた年月日 H H H30.6.6

公共用水域水質データファイル 利用説明書 検体値 環境省水 大気環境局水環境課 第 1 版作成年月日平成 24 年 8 月 22 日

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2 号機及び 3 号機 PCV - 分析内容 原子炉格納容器 (PCV) 内部調査 (2 号機平成 25 年 8 月 3 号機平成 27 年 10 月 ) にて採取された (LI-2RB5-1~2 LI-3RB5-1~2) を試料として 以下の核種を分析した 3 H, Co, 90 Sr, 94 N

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別紙 2 平成 28 年度水環境の状況について 県は 水質汚濁防止法に基づいて 国土交通省 同法の政令市である横浜市 川崎市 相模原市 横須賀市 平塚市 藤沢市 小田原市 茅ヶ崎市 厚木市及び大和市と共同して 公共用水域及び地下水の水質の測定を行いました 1 測定結果の概要 (1) 公共用水域測定結

参考資料

(3) イオン交換水を 5,000rpm で 5 分間遠心分離し 上澄み液 50μL をバッキングフィルム上で 滴下 乾燥し 上澄み液バックグラウンドターゲットを作製した (4) イオン交換水に 標準土壌 (GBW:Tibet Soil) を既知量加え 十分混合し 土壌混合溶液を作製した (5) 土

青森県環境保健センター所報No11

3. 調査結果 (1)PM2.5, 黄砂の状況調査期間中の一般環境大気測定局 5 局の PM2.5 濃度 ( 日平均値 ) の平均値を図 1 に示す 平成 26 年度は 9.9~49.9μg/m 3 ( 平均値 28.4μg/m 3 ), 平成 27 年度は 11.6~32.4μg/m 3 ( 平均


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検査項目 病原生物 重金属 無機物質 一般有機化学物質 消毒副生成物 重金属 ( 着色 ) 平成 24 年度水質検査結果表 ( 浄水 ) 上水道恩志水源系統採水地点 : 大谷地内給水栓 検査機関 :( 財 ) 鳥取県保健事業団 項目 基準値 単位 4 月 5 日 5 月 10 日 5 月 28 日

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電子配置と価電子 P H 2He 第 4 回化学概論 3Li 4Be 5B 6C 7N 8O 9F 10Ne 周期表と元素イオン 11Na 12Mg 13Al 14Si 15P 16S 17Cl 18Ar 価電子数 陽

IC-PC法による大気粉じん中の六価クロム化合物の測定

1 はじめに土壌汚染対策法 ( 以下 法 という ) 第 12 条に基づく土地の形質の変更届出とは 形質変更時要届出区域内で土地の形質の変更をする にあたり 形質変更の施行方法等について届出する手続きです 2 土地の形質の変更とは 土地の形質の変更 とは 土地の形状又は性状を変更することであり 宅地


No. QCVN 08: 2008/BTNMT 地表水質基準に関する国家技術基準 No. QCVN 08: 2008/BTNMT National Technical Regulation on Surface Water Quality 1. 総則 1.1 規定範囲 本規定は 地表水質

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Agilent AA ICP ICP-MS ICP-MS AA 55B AA LCD AA PC PC 240 AA / / AA 240FS/280FS AA AA FS 240Z/280Z AA GFAA AA Duo 1 PC AA 2 280FS AA

CH 2 CH CH 2 CH CH 2 CH CH 2 CH 2 COONa CH 2 N CH 2 COONa O Co 2+ O CO CH 2 CH N 2 CH 2 CO 9 Change in Ionic Form of IDA resin with h ph CH 2 NH + COO

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[ 廃棄物の最終処分場 ( 管理型 )] 平成 29(2017) 年度 1 施設名称 1 号管理型処分場 (1) 埋立てた廃棄物の各月ごとの種類及び数量 規則第 12 条の 7 の 2 第 8 項イ 種類汚泥燃え殻紙くずばいじん 合計 単位 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月

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施設名施設住所項目一般埋め立てた廃棄物廃棄物 (ton) 擁壁の点検 遮水効果低下するおそれが認められた場合の措置 遮水工の点検 遮水効果低下するおそれが認められた場合の措置 周縁地下水の水質検査結果 斜里町清掃センター最終処分場斜里町以久科北 破砕ごみ 内容 生ごみ残差 合計 点検を行った年月日

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Al アルミニウム Cu 銅 Fe 鉄 Ni ニ

コロイド化学と界面化学

都民の健康と安全を確保する環境に関する条例 ( 平成十二年東京都条例第二百十五号 ) 新旧対照表 ( 抄 ) 改正案現行目次 ( 現行のとおり ) 目次 ( 略 ) 第一条から第百十二条まで ( 現行のとおり ) 第一条から第百十二条まで ( 略 ) ( 土壌汚染対策指針の作成等 ) 第百十三条知事

1. 測 定 原 理 アルカリ 溶 液 中 で 亜 鉛 イオンは ピリジルアゾレゾルシノール(PAR)と 反 応 して 赤 色 の 錯 体 を 形 成 し これを 光 学 的 に 測 定 し 2. アプリケーション 本 法 は 亜 鉛 イオンを 測 定 し 不 溶 性 や 錯 体 と 結 合 した

ISSN X 山梨衛公研年報 第53号 2009 山梨の名水百選における水質調査について 辻 敬太郎 佐々木 裕也 小林 浩 清水 源治 Survey of the water quality in the Japanese brand-name water best 100 of

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1. 測定原理 弱酸性溶液中で 遊離塩素はジエチル p フェニレンジアミンと反応して赤紫色の色素を形成し これを光学的に測定します 本法は EPA330.5 および US Standard Methods 4500-Cl₂ G EN ISO7393 に準拠しています 2. アプリケーション サンプル

( 速報 ) ~ 騒音 振動調査 ( 騒音 )~ 騒音レベル (db) 騒音レベル (db) 各地点の騒音調査結果 騒音調査結果まとめ (L のみ表示 ) NVR-2 NVR-3 L L L9 LAeq L L L9 LAeq 騒音レベル (db) 9 8 7

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第3章 焼却灰溶融システムの現状、焼却灰溶融スラグのリサイクルの動向・問題点

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武蔵 狭山台工業団地周辺大気 環境調査結果について 埼玉県環境科学国際センター 化学物質担当 1

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 資  料 


2 Zn Zn + MnO 2 () 2 O 2 2 H2 O + O 2 O 2 MnO 2 2 KClO 3 2 KCl + 3 O 2 O 3 or 3 O 2 2 O 3 N 2 () NH 4 NO 2 2 O + N 2 ( ) MnO HCl Mn O + CaCl(ClO

登録プログラムの名称 登録番号 初回登録日 最新交付日 登録された事業所の名称及び所在地 問い合わせ窓口 JCSS JCSS 年 12 月 1 日 2018 年 5 月 23 日公益社団法人日本アイソトープ協会川崎技術開発センター 神奈川県川崎市川崎区殿町三丁目

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北清掃工場 平成 28 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7 4

土壌勉強会スライドHP用2

微小粒子状物質(PM2

温泉の化学 1

品川清掃工場 平成 28 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7

汚染の除去が行われた場合には 指定を解除その他 区域の指定等 1 要措置区域 ( 法第 6 条 ) 土壌汚染の摂取経路があり 健康被害が生ずるおそれがあるため 汚染の除去等の措置が必要な区域 汚染の除去等の措置を都道府県知事等が指示 ( 法第 7 条 ) 土地の形質の変更の原則禁止 ( 法第 9 条

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CuSO POINT S 2 Ni Sn Hg Cu Ag Zn 2 Cu Cu Cu OH 2 Cu NH CuSO 4 5H 2O Ag Ag 2O Ag 2CrO4 Zn ZnS ZnO 2+ Fe Fe OH 2 Fe 3+ Fe OH 3 2 Cu Cu OH 2 Ag Ag

4 1 Ampère 4 2 Ampere 31

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第 11 回化学概論 酸化と還元 P63 酸化還元反応 酸化数 酸化剤 還元剤 金属のイオン化傾向 酸化される = 酸素と化合する = 水素を奪われる = 電子を失う = 酸化数が増加する 還元される = 水素と化合する = 酸素を奪われる = 電子を得る = 酸化数が減少する 銅の酸化酸化銅の還元

項目ご意見等の概要部会の考え方 ( 案 ) 1 操業中及び猶予中の工場等における土壌汚染状況調査 有害物質使用届出施設等の廃止後の土壌汚染状況調査が実施されておらず かつ 調査の猶予を受けていない土地についても 土地の利用履歴等の報告や土壌汚染状況調査の対象とする規定を設けるべきである 有害物質使用

ドラム缶位置平面図0219

富士山南麓の地下水水質と流動 ( 藤川 ) 研究ノート 富士山南麓の地下水水質と流動 Groundwater Quality and Flow at the Southern Foot of Mt.Fuji 榑林直紀 1 小長谷裕紀 2 藤川格司 KUREBAYASHI Naoki, KONAGAY

1 海水 (1) 平成 30 年 2 月の放射性セシウム 海水の放射性セシウム濃度 (Cs )(BqL) 平成 30 年 平成 29 年 4 月 ~ 平成 30 年 1 月 平成 25 ~28 年度 ~0.073 ~ ~0.

Transcription:

高知環研所報 31,2014 3. 高知県に発生した地下水の六価クロム汚染 ( 第 2 報 ) * 大森真貴子 田嶋誠 小松隆志 The Groundwater pollution by hexavalent chromium in Kochi Prefecture(Part2) Makiko Oomori, Makoto Tajima, Takashi Komatsu 要旨 2007 年 7 月に, 水質汚濁防止法に基づく地下水概況調査の対象井戸から, 地下水の水質環境基準値 (0. 05mg/L) を超過する六価クロムが検出された. その後周辺調査を実施したところ, 汚染は周辺地下水の流水方向に帯状に広がり, 六価クロム濃度の上昇も確認できた. 発見から 3 週間あまりで工場からの有害物質による土壌汚染であることが判明し, 汚染の拡大をくい止めることができた.8 年後の現在, 採水回数, 採水地点数は発生当初からは減少しているが, モニタリング調査は継続して行っている. 現在の採水地点での六価クロム濃度は, 定量下限値 (0. 02mg/L) 未満を示し, 天候にかかわらず検出することはなくなった. key words : 六価クロム, 地下水汚染, モニタリング調査 1. はじめに一般的に, 水質に関する事故においては, 人の健康被害が広範囲に広がる可能性が大きいため, 発見から迅速な対応が必要となる. まず, 第一に関係者への情報収集と情報の周知, 第二に原因の究明と発生源の対策, 第三に緊急的な対応と長期的な対応が考えられる. 今回の地下水汚染は, 常時監視地点の地下水水質検査の際, 通常時との相違を感じた測定機関からの報告で始まり, 汚染の初期段階で対応することができ, 大きな汚染事故に発展しなかった. また, 汚染源の企業, 住民, 市町村, 県関係機関が協力体制を築き, 汚染に対しできる限りの対応を行ってきたことにより, 健康被害への拡大を防止することができた.2007 年から 8 年間, 土壌汚染対策では短い期間であるが, 一定の傾向が見え始めたことより, 第 1 報に続き報告する. 2. 地下水汚染の発見経緯今回の地下水汚染については, 高知県が水質汚濁防止法第 15 条に基づいて行っている地下水の常時監視によって発見された. この調査は毎年違う地点を選定しており, 地下水の水位の高い時期と低い時期の年 2 回実施されている. 今回, 高水位 期である 7 月に採水地点の 1 つから0.12mg/Lの六価クロムが検出された. 検出された井戸の再検査を行い, 六価クロムの検出が確認されたため, 地下水汚染を疑い, 周辺井戸 12か所について水質調査を実施した. しかし, それらの調査井戸には影響が認められなかった. その後台風による大雨のため調査は中断するが, 後日の調査では周辺井戸 4 か所のうち 2 か所で六価クロムが検出された. 第一発見井戸の六価クロム濃度は発見から 2 週間で1.1mg/Lとなった. これらのことから, 地下水汚染と判断され, 地域住民への周知とともに, 調査井戸を拡大していった. 3. 汚染の状況 1 汚染の状況については, 山中らの第 1 報 ) において, 詳細な汚染状況は述べられているため, ここでは概略だけを述べる. 汚染の原因となった工場は, 薬液の漏出防止策として厚さ35cmのコンクリート壁でプール状のピットを設け, この中に処理槽を設置して六面管理をしていた. 今回の六価クロムによる地下水汚染の情報を得て, 行政と工場側による調査を行ったが, 目視調査では異常は見つけられなかった. その後, 再度工場側が自主調査を行ったところ, クロムメッキ槽の漏出防止ピットに異常が見 * 現衛生研究所 33

高知県に発生した地下水の六価クロム汚染 第 2 報 31 2014 つかった メッキ槽を撤去してピット底部のコン クリートを抜き取り調査したところ 裏面にク ロム漏出が確認され 土壌溶出試験で国の基準 値 250mg/kg を大幅に超える560mg/kgの六価ク ロムが検出された 工場側から県に報告があり 2007年 7 月31日に報道機関へ公表された その後 2008年 2 月19日に土壌汚染対策法に基づく指定区 域に指定された た その後汚染源が判明し 汚染土壌の除去や通 水洗浄や地下水のくみ上げなど工場側の汚染対策 が進んでいくことになった それらの汚染対策に より六価クロム濃度にも変化がみられ これ以上 の汚染拡大はなくなった 六価クロム濃度の低下 に伴い 表 1 のように水質調査の頻度や調査地点 数も変化していった 表 1 調査地点の変動 4 汚染の広がりと調査地点の変動 4 1 汚染の広がり 地下水への汚染が見つかってからは 周辺に上 水道の水源や飲用井戸があるため早急な対応が必 要となった 調査を行う井戸を汚染井戸の周辺地 域のみでなく 調査範囲を拡大して井戸を選定 調査期間 水質調査 の 頻 度 調査井戸数 Cr6+検出値 mg/l 2007年 7 月 8 月まで 1 回のみ 154 0.02 1.1 2007年7月 1 回/日 19 0.02 1.1 2007年 8 月 2009年 1 月 ま で 1 回/週 16 0.02 0.68 2009年 2 月 2011年12月 ま で 1 回/月 16 0.02 0.06 2012年 1 月 2013年 3 月 ま で 1 回/2 ヶ月 16 0.02 0.03 2013年 4 月 2015年 3 月 ま で 5, 7, 9, 1月 16 0.02 5月 し 汚染範囲の確認を急いだ この周辺は現在で も地下水を多く利用する地域であったこともあ り 詳細な調査を行い 汚染の広がりを細かく確 認することができた 当初は汚染の広がりの確認 とともに 汚染源の発見も緊急を要しており 第 一発見井戸から全方向に調査を広げ 合計173地 点の井戸を調査した その結果は図 1 に示したと おりであり 六価クロムが検出された井戸の状況 より汚染源や地下水の流水方向が推定され 汚染 範囲が特定できた 2015年 4 月 現在 1月モニタリング井戸のみ モニタリング井戸 1 7月 13 9月 モニタリング井戸 1 1月 モニタリング井戸 0.02 4 3 モニタリング井戸の設置 汚染源の確定後の2007年 8 月下旬 汚染源の工 場から地下水の流水方向に位置する場所に基礎調 査を行うためのモニタリング井戸を設置した こ のモニタリング井戸は他の調査対象井戸よりも汚 染源に近い場所に位置しており その概要は図 2 のとおりである モニタリング井戸では汚染発見当初に連続水位 測定を実施し また採水には 1 mの井戸用採水器 を用い 地表面から4. 20m 5. 20mの上層と6. 55m 7. 55mの中層と8. 65m 9. 65mの下層を撹拌す ることなく層別に採水した 1m 地表面 0m 赤色 検出井戸 環境基準値超過 4.20m 黄色 検出井戸 環境基準値以下 青色 未検出井戸 上層 採 水 器 中層 採 水 器 下層 採 水 器 図 1 初期調査地点と六価クロム検出結果 5.20m 6.55m 2007年 8 月 4 2 調査地点の変動 7.55m 8.65m 初期調査地点での測定結果と 地質や地形から 考えられた地下水の汚染予測が合致したことによ り 汚染源の推定と調査地点の絞り込みが行われ 9.65m 図 2 モニタリング井戸の概要 34

高知環研所報 31,2014 5. 地下水モニタリング調査 5.1 試験項目の決定 発見当初に行った汚染井戸の水質調査の結果 は, 表 2 のとおりであり, クロム以外の項目につ いては目立った値は見られなかった. このことから, 今回の地下水汚染の試験項目については, 地下水の常時監視で検出された六価クロムの測定のみとなった. その他基礎データとして, 採水時には気温, 水温,pH, 電気伝導度の測定を行った. 表 2 汚染井戸の水質測定結果 単位 (mg/l) 元素 汚染井戸 1 汚染井戸 2 2007. 7. 11 2007. 7. 17 2007. 7. 17 B <0. 0004 0. 021 0. 017 Al 0. 0087 0. 0013 <0. 0002 Cr 0. 227 0. 337 0. 064 Mn <0. 00003 0. 0022 <0. 00003 Fe 0. 161 0. 28 0. 017 Ni <0. 00001 <0. 00001 <0. 00001 Cu 0. 0025 <0. 00002 <0. 00002 Zn <0. 0002 <0. 0002 <0. 0002 As <0. 000008 <0. 000008 <0. 000008 Se 0. 0035 <0. 0005 <0. 0005 Mo <0. 00007 <0. 00007 <0. 00007 Cd <0. 000003 <0. 000003 <0. 000003 Sb <0. 000002 <0. 000002 <0. 000002 Pb <0. 00003 0. 00008 0. 00028 Cr 6+ 0. 20 0. 27 0. 07 Anion(mmol/L) Cation(mmol/L) Ratio HCO - 3 Cl - SO 2-4 NO - 3 -N PO 3-4 -P H + Na + K + Ca 2+ Mg 2+ + NH 4 Anion Cation C/A 0. 83 0. 15 0. 28 0. 27 0. 00 0. 00 0. 27 0. 04 1. 42 0. 22 0. 01 1. 54 1. 95 1. 26 汚染井戸 0. 94 (2007/7/19) 0. 17 0. 28 0. 29 0. 00 0. 00 0. 29 0. 03 1. 31 0. 19 0. 01 1. 69 1. 83 1. 09 0. 86 0. 17 0. 25 0. 16 0. 00 0. 00 0. 28 0. 02 1. 04 0. 24 0. 01 1. 43 1. 60 1. 12 非汚染 0. 83 0. 16 0. 26 0. 17 0. 00 0. 00 0. 29 0. 02 1. 08 0. 22 0. 01 1. 43 1. 62 1. 14 井戸 0. 9 0. 15 0. 27 0. 24 0. 00 0. 00 0. 27 0. 03 1. 29 0. 19 0. 01 1. 55 1. 79 1. 15 (2007/7/19) 1. 07 0. 16 0. 28 0. 28 0. 00 0. 00 0. 28 0. 04 1. 42 0. 22 0. 01 1. 79 1. 96 1. 10 5.2 試験方法六価クロムの測定については,JIS K 0102のジフェニルカルバジド吸光光度法で行った. 試験管に検体 10mLを採取し,(1+9) 硫酸 0. 5mL, ジフェニルカルバジド溶液 0. 2mLを加えて発色させ,15 分以内に波長 540nmで吸光度を測定した. 定量下限値は0. 02mg/L, 有効数字未満は切り捨てとした. 6. 結果 6.1 六価クロムの検出状況と今後 2007 年 7 月 3 日の地下水の水質概況調査により汚染が発見された地点 ( 以下, 汚染発見井戸 という.) で0. 12mg/Lの六価クロムが検出され, その後, 同じ汚染発見井戸について, 7 月 19 日には六価クロム濃度が発見時の10 倍の1. 1mg/Lと急激な増加を示した. 他の調査井戸についても, 上昇傾向を示したが, 汚染発見井戸の検出濃度までは上昇しなかった. 高濃度が 7 月末まで検出され続けたが, その後 1. 1mg/L 以上を示すことはなく減少傾向になり, 2007 年末までに発見時の濃度以下である0. 06mg/L まで低下した. その後ゆるやかな減少に変化し, 2008 年末には定量下限値の0. 02mg/Lとなった. 発生当時から現在までの継続調査の井戸の状況を図 3 に示した. 減少後も低濃度での検出は続き, 第 1 報で述べたように, 地下水の水位の上昇によっては再度上昇することがあり,2010 年 8 月までは水質環境基準値 0. 05mg/Lを超えて検出することがあった. しかし, 現在は降水量が増加して水位が上昇してもほとんど変化はなく, 環境基準値以下の濃度が続いている状況である. 汚染発見井戸とモニタリング井戸の六価クロムの検出状況と降水量を図 4 に示す. また, 汚染範囲についても図 5 に示すとおり縮小しており,2010 年 8 月にモニタリング井戸で 0. 10mg/L 検出されたのが最後となり, 現在は全調査地点で地下水の環境基準値以上の六価クロムは検出されていない. 汚染源の工場は土壌汚染対策法に基づく指定区域のため, 現在も汚染対策が継続して行われている. 調査井戸の六価クロム濃度は定量下限値 (0. 02mg/L) 未満を示しており, 汚染対策が適切に行われていると考えられ, 今後も工場側の通水洗浄等の汚染対策は継続していく必要があると思われる. また, モニタリング調査についても, 汚染源の工場が同じ汚染対策を継続している間は, 現状の継続が望ましいと考える. しかし, モニタリング調査の実施方法については, 地域住民と協議のうえ, 調査頻度や調査時期の見直しの時期に来ていると思われる. 35

高知県に発生した地下水の六価クロム汚染 ( 第 2 報 ) 31,2014 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 2007/7 2007/10 2008/1 2008/4 2008/7 2008/10 2009/1 2009/4 2009/7 2009/10 2010/2 2010/5 2010/8 2010/11 2011/2 2011/5 2011/8 2011/11 2012/2 2012/5 2012/7 2012/10 2013/1 2013/4 2013/7 2013/10 2014/1 2014/4 2014/7 2014/10 2015/1 2015/4 2015/7 図 3 調査井戸の六価クロム検出の推移 (2007 年 7 月 ~ 2015 年 9 月 ) 2010/1 /L) /L) (mg/l) 36

高知環研所報 31,2014 1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 2007/7/3 2008/7/3 2009/7/3 2010/7/3 2011/7/3 2012/7/3 2013/7/3 2014/7/3 図 4 汚染発生井戸及びモニタリング井戸の六価クロム検出と降水量 250 200 150 100 50 0 L 37

高知県に発生した地下水の六価クロム汚染 第 2 報 31 2014 6 2 現在の調査井戸の金属濃度 現在の調査井戸では六価クロムについては 定 量下限値の0. 02 /L未満であり 大きく変動す ることがなくなってきた クロムの存在を確認す るため全クロムの測定を行ったところ 表 3 と なった その測定値は低濃度であるが 調査井戸 が汚染源から離れるとともに全クロムの検出値も 減少する傾向を示した また 全クロムの測定と同時に他の微量金属の 測定を行ったところ表 4 図 6 となり 全クロム については他の金属との相関は見られなかった また 全調査地点でホウ素が0. 02mg/Lで推移して いる一方で 他の金属については井戸ごとに変動 があり アルミニウムと鉄とマンガン間で強い相 関が見られた これらは 土壌の混入や井戸の打 込み管の腐食等の影響が考えられる 全クロムについては調査井戸間では大きな違い は見られないが 自然由来のホウ素との相関も小 さいことから 土壌からの微量の六価クロムの溶 出がまだ少しは存在すると考えられる 表 5 2007 年 7 月 30 日 ま で の 調 査 結 果 2008 年 8 月 4 日 時 点 の 調 査 結 果 表 3 調査井戸の六価クロムと全クロム 単位 mg/l 六価クロム 全クロム 井戸-0-1 0. 011 井戸-0-2 0. 010 井戸-0-3 0. 0076 井戸-9 0. 0028 井戸-1 0. 0081 赤色 検出井戸 環境基準値超過 井戸-49 0. 0095 黄色 検出井戸 環境基準値以下 井戸-15 0. 0081 井戸-41 0. 0071 井戸-34 0. 0039 井戸-137 0. 0047 井戸-127 0. 0045 井戸-88 0. 0033 井戸-100 0. 00013 2010 年 8 月 2 日 時 点 の 調 査 結 果 青色 未検出井戸 図 5 六価クロム検出の状況 調査日2014年 7 月 38

高知環研所報 31,2014 表 4 調査井戸の金属組成 単位 (mg/ L) 元素 井戸 -0-1 井戸 -0-2 井戸 -0-3 井戸 -9 井戸 -1 井戸 -49 井戸 -15 井戸 -41 井戸 -34 井戸 -137 井戸 -127 井戸 -88 井戸 -100 B 0. 022 0. 022 0. 023 0. 021 0. 021 0. 023 0. 022 0. 023 0. 023 0. 022 0. 023 0. 023 0. 022 Al 0. 015 0. 025 0. 63 0. 0048 0. 031 0. 0025 0. 0015 0. 0013 0. 52 0. 0029 0. 0017 0. 00011 0. 0010 Cr 0. 011 0. 010 0. 0076 0. 0028 0. 0081 0. 0095 0. 0081 0. 0071 0. 0039 0. 0047 0. 0045 0. 0033 0. 00013 Mn 0. 0011 0. 0015 0. 029 0. 000093 0. 0023 0. 00025 0. 000011 0. 000086 0. 058 0. 00014 0. 00012 0. 00000 0. 0010 Fe 0. 018 0. 025 0. 72 0. 0029 0. 32 0. 0030 0. 00057 0. 0040 0. 57 0. 0021 0. 0012 0. 00052 0. 050 Ni 0. 00086 0. 00036 0. 0011 0. 00017 0. 00026 0. 00007 0. 00003 0. 00005 0. 00081 0. 00007 0. 000042 0. 00054 0. 00030 Cu 0. 0020 0. 0019 0. 0034 0. 0053 0. 0047 0. 0023 0. 0082 0. 0013 0. 0051 0. 0012 0. 0024 0. 044 0. 019 Zn 0. 012 0. 0031 0. 0042 0. 0012 0. 024 0. 00085 0. 00038 0. 00034 0. 0021 0. 0015 0. 00067 0. 016 0. 015 As 0. 00008 0. 00007 0. 00022 0. 00006 0. 00006 0. 00006 0. 00005 0. 00005 0. 00012 0. 00006 0. 00005 0. 00005 0. 00004 Se 0. 00043 0. 00044 0. 00044 0. 00038 0. 00031 0. 00041 0. 00025 0. 00037 0. 00036 0. 00033 0. 00033 0. 00035 0. 00017 Mo 0. 00027 0. 00026 0. 00017 0. 00023 0. 00031 0. 00019 0. 000054 0. 00021 0. 00028 0. 00016 0. 00017 0. 00013 0. 000039 Cd 0. 00001 0. 00001 0. 00001 0. 0000018 0. 0000084 0. 000003 0. 0000023 0. 000002 0. 0000053 0. 000002 0. 000033 0. 0000026 0. 0000085 Sb 0. 00005 0. 00006 0. 00005 0. 000033 0. 000047 0. 000027 0. 000014 0. 000023 0. 00024 0. 000021 0. 000023 0. 000030 0. 000010 Pb 0. 00035 0. 00025 0. 00081 0. 00050 0. 00023 0. 00026 0. 00029 0. 00010 0. 00063 0. 00014 0. 00013 0. 00091 0. 00039 Cr 6+ <0. 02 <0. 02 <0. 02 <0. 02 <0. 02 <0. 02 <0. 02 <0. 02 <0. 02 <0. 02 <0. 02 <0. 02 <0. 02 ( 調査日 :2015 年 9 月 ) 1000 100 10 金属濃度 (μg/l) 1 井戸 -0-1 井戸 -0-2 井戸 -0-3 井戸 -9 井戸 -1 井戸 -49 井戸 -15 井戸 -41 井戸 -34 井戸 -137 井戸 -127 井戸 -88 井戸 -100 0.1 0.01 0.001 B Al Cr Mn Fe Ni Cu Zn As Se Mo Cd Sb Pb 図 6 調査井戸の金属の濃度変動 39

高知県に発生した地下水の六価クロム汚染 ( 第 2 報 ) 31,2014 表 5 調査井戸の金属相関表 B Al Cr Mn Fe Ni Cu Zn As Se Mo Cd Sb Pb B 1 Al 0. 207 1 Cr 0. 077-0. 026 1 Mn 0. 180 0. 903-0. 129 1 Fe -0. 020 0. 945-0. 001 0. 844 1 Ni 0. 129 0. 752 0. 149 0. 650 0. 711 1 Cu 0. 038-0. 148-0. 479-0. 122-0. 154 0. 128 1 Zn -0. 491-0. 153-0. 067-0. 163 0. 092 0. 259 0. 482 1 As 0. 178 0. 926 0. 180 0. 697 0. 875 0. 788-0. 220-0. 131 1 Se 0. 368 0. 290 0. 634 0. 172 0. 200 0. 406-0. 335-0. 287 0. 484 1 Mo -0. 120 0. 188 0. 457 0. 286 0. 291 0. 277-0. 438 0. 112 0. 220 0. 657 1 Cd -0. 183 0. 271 0. 414 0. 161 0. 353 0. 689-0. 151 0. 514 0. 403 0. 206 0. 294 1 Sb 0. 096 0. 663-0. 048 0. 906 0. 622 0. 528-0. 126-0. 101 0. 420 0. 209 0. 498 0. 141 1 Pb 0. 079 0. 579-0. 282 0. 486 0. 510 0. 720 0. 628 0. 227 0. 558 0. 158-0. 098 0. 144 0. 331 1 7. 考察 1 今回の地下水汚染は, 工場の有害物質の入った処理槽からの漏出を確認及び防止するためのピットからの漏出が原因であった. 土壌汚染対策法の改正により, 有害物質による土壌汚染防止のための対策と点検が必要となった. 今回は漏出防止ピットの設置を行っていたにも関わらず, 有害物質が漏出してしまった. 今後, 日常点検で漏出等が十分に確認できる設備であるかということが重要になってくる. 2 今回の地下水汚染に関しては, 発見が早かったことに加え, 汚染源の工場側の十分な対策により汚染の拡大を防ぐことができたと思われる. 今後, 有害物質を使用する業種については, 汚染防止のための設備の設置と点検はもちろんのこと, 汚染発生の際の対策も重要になってくると考える. 3 今回は常時監視が有効に作用した事例であり, 有害物質等による目視確認できない環境汚染では, 今後も早期対応への有効な手段となると感じた. 有害物質のモニタリング調査は検出されないことが多く, 経費削減の対象になりやすいが, 今回の事例により重要性が再認識されることとなった. 4 調査井戸の六価クロム濃度も2010 年 8 月以降は地下水の環境基準値を超過することがなくなり,2012 年 7 月以降は定量下限値未満で継続している. このことから, 降水量増加に伴う水位の上昇による六価クロムの溶出は少なくなったと考えられる. 今後の調査方法についても, 当 該地下水の妨害物質は少なく, パックテストなどによる簡易検査で確認することもできると考える. 5 今回の地下水汚染については, 周辺住民, 汚染源の企業, 各関係機関による十分な協議が行われたことにより汚染の拡大を防ぎ, 終息に向かっていると考えられる. 謝辞第 1 報に続き, この調査においては多くの関係各部局や民間の方々から多くの御協力を得ました. ここに記して感謝いたします. 文献 1 ) 山中律ら : 高知県に発生した地下水の六価クロム汚染とその対策, 高知県環境研究センター所報,25,17-35,2008 2 ) 髙宮真美ら : 六価クロムによる地下水汚染, 高知県衛生研究所所報,55,55-59,2009 3 ) 桑尾房子 : 高知県における地下水質, 高知県環境研究センター所報,20,51-66,2003 4 ) 金田妙子ら : 香南地域における地下水水質の類型化, 高知県衛生研究所報,49,55-60, 2003 5 ) 斉藤亨治 : 日本の扇状地,p266,1998, 古今書院 6 ) 5 万分の 1 地形図 ( 高知 ),2000, 国土地理院, 2008 7 ) 石川靖 : 高濃度の六価クロムを含有する浸出水の挙動と処理対策, 全国環境研会誌,40, 47-53,2015 40