RESEARCH 地域外からの若者を地域の力にする 地域おこし協力隊員の活躍を広げるには 目次 1. はじめに 2. 地域おこし協力隊の現状 1 制度の概要 2 任期終了後の動向 3 活動事例 1 方策1 協力隊員を育成する 2 方策2 地域おこし協力隊員で地方自治体と民間事業者をつなぐ 4. おわりに ボランティアとしてアフリカ エチオピア 屋の周囲に植樹し それを農民たち自 の一農村で植林事業に携わった経 身が育て 一定の大きさになったら燃 他地域からの若者の移住を促すと 験がある 筆者は当時 大学院を卒 料や建築資材として 自身で使ったり ともに 当該地域の活性化を図る制度 業したばかりのワカモノであり 企業 換金作物として売却したりするという として 近年 地域おこし協力隊の活 等に就職することが常識だった中 就 方法で植樹を広める事業を始めた 用が増えている 職せずに海外での国際協力ボラン 農民たちの中には 換金作物として自 地域活性化にとって有用な人材の ティアとなったバカモノであり 日本か 分の土地に積極的に植樹をする者も 3要素として ワカモノ バカモノ ヨソ ら遠く離れたエチオピアでヨソモノとし 出てきた 私たちの試みは民間主導 モノ ということがよく言われる 地域お て働いた 地域活性化における ワカ の地域活性化の一つであり 国有地 こし協力隊員は 熱意にあふれた ワ モノ バカモノ ヨソモノ の役割を身 で行政の予算で植樹するよりも 民間 カモノ であり これまでの土地や仕事 を持って体験した の事業とした方が 農民のやる気を引 1. はじめに 23 3. 地域おこし協力隊員の活躍方策 を離れて移住するという点で常識にと もう一つ この国際協力の体験から き出し その後の事業の展開や拡大 らわれない バカモノ であり そして地 地域活性化について欠かせないと感 にとって有効であることがうかがえた 域外からやって来る ヨソモノ であ じたものがある 当時 エチオピアでは ただ 残念ながらそれは長い間社会 る まさに地域活性化人材の3要素を 爆発的な人口の増加で 山林が過剰 主義政権下にあったエチオピアでは 兼ね備えている に伐採され 森林資源の保全 回復 新しい方法の事業であり 現地行政 この地域おこし協力隊とよく比較さ が課題となっていた それまでの植林 の理解を得られず 事業を継続するこ れる青年海外協力隊も 若者が海外 事業の多くは 国際援助による資金を とはできなかった の開発途上国で地域の人たちと活動 もとに行政が大規模に樹木の苗を育 筆者が国際協力において経験した し 国際協力の一端を担う制度であ て 農民たちを雇ってその苗木を国有 ワカモノ バカモノ ヨソモノ と民間 り ワカモノ バカモノ ヨソモノ の力 地の山の斜面に植樹するという方法 主導の力は 国内における地域活性 を生かした海外でのいわゆる 地域お がとられていた しかし 国有地である 化にとっても力になりうると考える 以 こし への協力である ため誰も植樹後の手入れに関心を持 下では ワカモノ バカモノ ヨソモノ 筆者も今から20年前 日本政府が たず せっかくの苗木の多くが手入れ の3要素を兼ね備えた地域おこし協力 派遣する青年海外協力隊と同じよう をされずに枯れ 無駄になってしまって 隊を 民間事業者との事業に配属す に 日本国際ボランティアセンターとい いた そのため 筆者たちは農民たち ることで 地域活性化に効果的な活動 う民間の国際協力団体が派遣する と話し合い 農民たち自身の農地や家 とすることを考えてみたい
2. 地域おこし協力隊の現状 b 受け入れ制度 活動地と同一の市町村内に定住し た 隊 員 の 進 路 は 全 国 では 就 業 地域おこし応援隊 とは郡上市独 47.4% 就農 17.8% 起業 17.2% 自の制度であり 過疎地域に認定され 地 域おこし協 力 隊は 総 務 省 が となっている 図表3 岐阜県では就 ている郡上市内の明宝地域と和良地 2009年から始めた制度である 人口 業が7割程度 起業が3割弱となって 域にて活動し 活動報酬や活動経費 減少や高齢化などの進行が著しい おり 今のところ就農した者はいない を過疎債により賄う制度である 受け 1 制度の概要 入れ方法や活動報酬 活動経費の額 地域において 地域外の人材を積極 的に誘致し その定着 定住を図る 3 活動事例 などは 地域おこし協力隊 と同じであ ことで 地域の活力の維持 強化を 以下では 協力隊を受け入れた地 るが 隊員の雇用形態が異なる 地 図る制度である 具体的には 地方 方自治体と 協力隊として地域で活動 域おこし協力隊 では郡上市が隊員 自治体が他地域から若者を受け入 した経験をもつ協力隊OBを採り上げ を委嘱するが 地域おこし応援隊 れ 地域おこし協力隊員として委嘱 協力隊を受け入れる側と協力隊とし は受け入れ団体が隊員を雇用する する 隊員は概ね1年以上3年以下 て活動する側の状況を見てみる 郡上市では両者とも受け入れ団体 が市からの委託を受けて隊員を受け入 の期間 地域で生活しながら 農林 漁業の応援 地場産品のPR活動 住民の生活支援などの地域協力活 動に従事し 地域への定着 定住を 目指す れ 隊員の住居や車両など活動にかか A 郡上市 る費用等を委託費から支出している a 受け入れ概要 郡上市は 岐阜県内でも地域おこ c 受け入れ態勢 し協力隊の受け入れに積極的な市町 2015年度現在 664市町村と9都 村の一つである 郡上市の地域おこし 郡上市における受け入れ態勢には 道府県合わせて673の地方自治体で 協力隊等の受け入れ人数は2016年 2つの特徴がある 一つは 協力隊員 2,625人の協力隊員が活動している 11月現在11人である 図表4 そのう の活動について 市役所だけでなく 図表1 岐阜県内では 2016年10 ち 6人が総務省の制度 地域おこし 受け入れ団体が責任を持っているこ 月現在 13市町村で53人が活動して 協力隊 であり 残りの5人は過疎債を とである いる 利用した郡上市の制度 地域おこし 協力隊員には 活動報酬として1人 あたり年200万円程度 が総務省か もう一つは その受け入れ団体をそ れぞれの地域にある市役所の地域振 応援隊 である 注 ら地方自治体を通して支払われる さ らに 活動に必要な費用 例えば 旅 費や作業道具等の消耗品費 定住に 向けた研修等の経費などとして 1人 あたり200万円が総務省から地方自 治体に交付される 図表 1 地域おこし協力隊員数および受け入れ自治体数の推移 地域おこし協力隊員数 左軸 人 3,000 受け入れ自治体数 右軸 団体 800 2,625 2,500 700 600 2,000 1,511 1,500 500 400 978 2 任期終了後の動向 全国では任期を終了した隊員のう ち6割程度 岐阜県では同5割弱が活 動地と同一もしくは近隣の市町村に定 住している 図表2 300 1,000 617 200 413 500 257 100 89 2009 2010 2011 2012 2013 2014 0 2015 年度 出所 総務省ホームページよりOKB総研にて作成 24
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