平成 17 年度免疫学追追試 以下の問いの中から 2 問を選び 解答せよ 問 1 B 細胞は 一度抗原に接触し分裂増殖すると その抗原に対する結合力が高く なることが知られている その機構を説明しなさい 問 2 生体内で T 細胞は自己抗原と反応しない その機構を説明しなさい 問 3 遅延型過敏反応によって引き起こされる疾患を 1 つ挙げ その発症機序を説明 しなさい 問 4 インフルエンザウイルスに感染したヒトが 高熱 咳が続き 肺炎を起こした後 2 週間を経過して回復した この例での回復までの感染防御機構を説明しなさい 問 5 自己抗体を産生する疾患を 1 つ挙げ その自己抗体に反応する自己抗原が何か またその発症機序について説明しなさい 問 6 あるヒトがハチに刺された直後 気持ちが悪くなったかと思うと 意識を消失 してしまった この機構を説明しなさい 問 7 MHC クラス Ⅰ 分子が先天的に欠損すると どのような症状がでるか 問 8 重症複合免疫不全症の中で T 細胞および B 細胞の両者に欠陥のある場合どの ようなタンパク ( 遺伝子 ) の欠陥が考えられるか 1
問 9 B 細胞が抗体産生細胞へと分化 成熟するのに ヘルパー T 細胞の存在が必要である この際 ヘルパー T 細胞は 2 つの機構を通して この役割を演ずる この 2 つの機構を説明しなさい 問 10 MHC 拘束とは何か 説明しなさい 本試は 5 択の選択問題で問題は回収されちゃったそうです 追追試の問題とは全然違ったそうですが参考までに 問題の雰囲気からして中澤先生の出題でしょうね 問 4とか いかにも彼らしい 細胞性免疫だけとか 体液性免疫だけ起こるなんてことはありえない!! ということを彼はよく言ってるんで 問 4は両方書かなあかんのですかね?? まあ よくわかんないけど解答作ってみますか 問 8 は免疫不全症の問題で 今年はやってない (FDA のせいで一回授業がとんでますんで ) ので割愛します 本試は南先生が 5 択 中澤先生と市野先生は記述です ( 本人に確認済 ) 2
問 1 B 細胞は 一度抗原に接触し分裂増殖すると その抗原に対する結合力が高くなることが知られている その機構を説明しなさい 胚中心においてナイーブ B 細胞が抗原に接触すると BCR の CDR 領域に突然変異が起こる これを Somatic Hypermutation( 体細胞高頻度突然変異 ) という Somatic Hypermutation においては その抗原との親和性の強化につながる突然変異だけが残され メモリー B 細胞への分化につながる 突然変異によって抗原との親和性が下がってしまった B 細胞はアポトーシスによって死ぬ エッセンシャル免疫学 p.190 にいい図が載ってました 図は TD 抗原の話ですが TI 抗原もあるので 解答ではあえて T 細胞には触れませんでした 3
問 2 生体内で T 細胞は自己抗原と反応しない その機構を説明しなさい 自己反応性の T 細胞は 胸腺髄質において Negative Selection を受けて排除される このとき DC のクロスプレゼンテーション mtec における AIRE の発現によってほとんどすべての自己抗原が提示される これを中枢性寛容という Negative Selection で排除しきれず 末梢に出てきてしまった自己反応性 T 細胞は 末梢性寛容によって活性が抑えられる 末梢性寛容には 樹状細胞から抗原提示を受けると T 細胞がアポトーシスをおこす Deletion 抗原提示の補助シグナルが欠損することで T 細胞が活性化できない Anergy T 細胞に対する十分な活性化刺激が生体内には存在しない Ignorance Treg からの抑制機構がはたらく Suppression がある 問 3 遅延型過敏反応によって引き起こされる疾患を1つ挙げ その発症機序を説明しなさい ツベルクリン反応では 少量の結核菌由来のタンパク質抗原を皮内か皮下に注射する 結核菌に免疫のある人では 注射された結核菌タンパク質由来のペプチドはマクロファージや樹状細胞に貪食され HLA クラスⅡ 分子を介して結核菌に特異的な Th1 に抗原提示され Th1 が産生する炎症性サイトカインによって炎症反応が起こる この反応は接種後 24~72 時間で起こる Th1 が活性化されると 液体の滲出やタンパク質の漏出 他の白血球の局所への遊走など さらなる炎症反応が開始される 遅延型過敏反応とはⅣ 型アレルギーの一種です Ⅳ 型過敏反応の代表として出てきた接触性皮膚炎は接触性過敏反応に分類されます ツベルクリン反応は疾患でもないような気がするんですが 遅延型過敏反応の代表なので挙げときました エッセンシャル免疫学 p.336,337 も参考にしてください 4
問 4 インフルエンザウイルスに感染したヒトが 高熱 咳が続き 肺炎を起こした後 2 週間を経過して回復した この例での回復までの感染防御機構を説明しなさい インフルエンザウイルスは上皮細胞に感染し 続いて DC や Mφなどの APC に感染する APC( 主に DC) に感染したインフルエンザウイルスは細胞内で増殖し その RNA などの抗原が TLR と結合し DC が活性化される また 上皮細胞からは IFNα βが産生され DC や Mφを増殖させる 活性化した DC は 抗原を MHC クラスⅠ 分子を介して CD8T 細胞 MHC クラスⅡ 分子を介して CD4T 細胞へ抗原提示する なお インフルエンザウイルスによる DC の活性化は非常に強く DC は Th のサポートがなくても CD8T 細胞を活性化させ CTL に分化させることができる CTL は細胞傷害作用により ウイルスを排除する 活性化された CD4T 細胞の大半は Th1 へ分化する Th1 は IFN-γを産生し CTL の誘導をさらに促進する また CD40-CD40L interaction によって IgM を産生するナイーブ B 細胞を活性化し IgG1 や G3 を産生する活性化 B 細胞へ分化させる 活性化 B 細胞はさらに メモリー B 細胞や形質細胞に分化する 形質細胞は抗体を産生し 主に中和によって ウイルスの感染拡大を防ぐ 最終目標は CTL によってウイルスを殺すこと また 抗体の中和作用によって感染拡大を防ぐ この 2 つが達成されるまでをひたすら書きまくりましょう 図で描くと 次のページのような感じですかね 赤い矢印は分化 青い矢印は活性化を示しています 5
インフルエンザ 感染 IFN-α IFN-β 上皮細胞 DC TLR CD8T CD4T CTL IFN-γ CD4T CD4T IFN-γ CD40-CD40L B クラススイッチ メモリ ー B 形質 抗体産生 中和 6
問 5 自己抗体を産生する疾患を1つ挙げ その自己抗体に反応する自己抗原が何か またその発症機序について説明しなさい 全身性エリテマトーデスは 細胞の核成分に対して特異的に反応する自己抗体によって引き起こされる この抗体が細胞表面に結合すると 細胞や組織の損傷が引き起こされ それが炎症を引き起こす さらにこの過程で 可溶性細胞内抗原が放出され それが可溶性免疫複合体を形成する それが血管 腎臓 関節などに沈着し さらなる炎症反応を引き起こす 問 6 あるヒトがハチに刺された直後 気持ちが悪くなったかと思うと 意識を消失してしまった この機構を説明しなさい ハチの毒は マスト細胞上の FcεR と結合して存在している IgE と結合する 続いて 2 つの IgE が架橋されるとマスト細胞が活性化し ヒスタミンなどのケミカルメディエーターが分泌され 炎症が惹起される ハチの毒は刺咬創から血液中に直接侵入し 血流を介して全身へ広がる すると 広範囲にわたってマスト細胞活性化し 血管透過性の亢進や血管平滑筋の収縮が起こる 血管からの体液の喪失はアナフィラキシーショックとよばれる急激な血圧の低下や組織の浮腫を引き起こす Ⅰ 型アレルギーが全身で起こって やばいことになるのをアナフィラキシーショックといいます 気持ちが悪くなったり意識を消失したのは 急激な血圧低下 喉頭浮腫や気道閉塞による呼吸困難が原因と考えられます エッセンシャル免疫学 p.324 を参考にしました てゆうか ほぼパクらせていただきました 7
問 7 MHC クラスⅠ 分子が先天的に欠損すると どのような症状がでるか ウイルスに感染しやすくなったり 腫瘍の排除が行われなくなることが考えられる MHC クラスⅠ 分子のはたらきを考えると ウイルスや癌抗原を CD8T 細胞に抗原提示するのが一番大きな仕事 それができなくなると考えました MHC クラスⅠ 分子の他のはたらきとしては NK 細胞活性の抑制 Negative Selection などがあるんですが これらの障害によって何か症状が出るとは考えにくいので書きませんでした はっきり言って自信ないです 問 9 B 細胞が抗体産生細胞へと分化 成熟するのに ヘルパー T 細胞の存在が必要である この際 ヘルパー T 細胞は 2 つの機構を通して この役割を演ずる この 2 つの機構を説明しなさい IL-4 や IL-5 などのサイトカインを産生して 抗原を結合している B 細胞を活性化する ヘルパー T 細胞の CD40L が B 細胞の CD40 と結合することで BCR のクラススイッチを誘導する 問 10 MHC 拘束とは何か 説明しなさい ペプチドが特定の MHC 分子に結合している場合にのみ TCR が抗原ペプチドを認識すること 8